満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

最悪の芝居

2008-10-23 | 昔話のハチャメチャ
昨日の記事はゴルフの話から思い出話となってしまったが…
思い出ついでに、もうひとつ(笑)

台本のタイトルは忘れたのだが…ヨーロッパの芝居の一つだったと思う

とある田舎町に、
子供の頃の病気が元で、声が出ない若者が住んでいた
話すことが出来ない彼は、人とのコミュニケーションに臆病となり
人と接するのが嫌になり、家に引きこもるようになって行く

息子のことが心配な母親は
「足の悪い私のために、病院へ行き、薬を取って来て欲しい」っと息子に頼み
週に一度だが、息子を外へ出すことに成功する

最初は嫌々通っていた息子だが、
回を重ねるごとに嬉しそうに病院へ出かけていくようになっていった

実は病院で出会う美しい少女に恋をしてしまったのである

どうしても彼女に、自分の恋心を伝えたい若者であったが
なにせ声が出ない。
思い悩んだ彼は、毎日熱心に教会へ通い神に祈ることにした

春が来て、夏が過ぎ、やがて町が色付き始めたころ、病院からの帰り道に
彼の目の前に黒い帽子を被り、黒い服を着た男が現れた
「毎日熱心に神に祈りを捧げているじゃないか」
「彼女に愛を告白したいんだろう」
「私なら君の悩みを解決してあげられるんだがね~」
「1分間だけなら、君に声をプレゼントしてあげられるよ」
っといって、黒い丸薬を差し出した

「神の使い」か「悪魔の使い」かは知らないが、若者は喜んで黒い丸薬を受け取り
今来た道を病院へと取って返した

病院へ着く手前、線路脇の道で若者は少女と出会った

若者は一気に黒い丸薬を飲み、話かけようと口を開いた
その時、二人の側の線路を貨物列車が爆音を響かせて通る
丸太を積んだ貨物列車の車列は長い。
1分という時間が過ぎようとした時に、それでも若者は大声で言う

「ずっと前から、あなたのことが好きでした」

貨物列車が通り過ぎ、あたりは急に静かになる

少女はおもむろに口を開き「えっ?今、なんとおっしゃったの?」

で、暗転。

っという内容の芝居であった
短い芝居だったので、他にも同じように短い芝居が4本上演された

手紙で伝えればいいじゃん。とか、筆談でもいいじゃん。とか
知らない人から貰った薬を飲むかね? なんぞの突っ込みは無視
「純粋」で「純愛」な、お芝居なのである(ガハハハハハ)

この時、男性の役者が少なかったという理由で
私がこの若い純粋男を演じることになった(笑)

前回お話した「ノラ犬」のメッカチ役は
「渡る世間は鬼ばかり」並みにセリフが多く、覚えるのにも一苦労したが
今回のセリフは一言。主役とはいえ気楽なもんである(笑)

が…私はこの時…役者として、
一番やってはいけないミスを犯してしまったのである

「体調管理を怠ってしまったのだ」

相当ヒドイ風邪をこじらせてしまい、
役柄の若者と同じように声が出なくなってしまったのである

「へん。」も「な。」も「お。」も「じさん。」もでない(笑)

芝居前日まで病院へ通い、
何とか当日にはハスキーな低い声は出せるようになったので
「どうせ、若い男の役だから問題はないべさ」っと言われ、舞台へ出た
粛々と芝居は続き、なんとか無事に終わりそうな予感がしたラスト10分

黒い服の人がニヤニヤしながら渡してくれた「黒い丸薬」を受け取り
口に含んだ瞬間。黒服の正体が解った……筋金入りの「悪魔」であった
それはなぜかと言うと…
普段の練習時には麦チョコだった黒い丸薬が
本番時には「正露丸」になっていたからである

「ギョ」っとしたが芝居は続いているのである

少女と向き合い列車の爆音が響きだし、セリフを言おうと息を吸い込んだとき
正露丸も息に引っ張られたのか、腫れたノドにへばりついてきた
「ブウェゲホゲ~~~」ってな咳が出てしまい…言葉が出ない。
しかも…声が出なくなる1分を過ぎても咳が止まらんのだ
苦しくって出た涙すら正露丸の匂いがした
最悪である…(ハハハハハハハ)

それでも芝居は続き、少女の一言で幕とならねばならん

少女はチョイと小首をかしげ「大丈夫?」っと言ってくれた。
機転の利いた一言である
そこで無事に暗転となった…が…暗いなか咳だけが響いた…客には大変ウケたがの

軽いジョークのつもりで麦チョコが正露丸になったらしい

このお話を書いた作者も、黒い丸薬が正露丸だったとは知らなかったであろう

この芝居の教訓は

正露丸は飲む薬であって、吸う薬ではない。
何かを口に入れるときは、匂いを嗅ぐべし。
これから寒くなる。風邪には気をつけよう。
で、ある(笑)

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