広島のお話です
原爆から10年…
一時は100年はペンペン草も生えないだろうっと言われた街も…
道端に草が生え、人々が日々の生活を営んでいます
「夕凪の街」
主人公は「平野皆実」(ヒラノ ミナミ)
母と二人で立ち退きを予定されているボロ長屋に住んでいる
あの…広島に原爆が投下された昭和20年8月6日午前8時15分…
それから数時間後、皆実は行方不明の父と母、姉と妹を探して街をさ迷った
疎開先の叔母の家に預けていた弟の旭(アサヒ)は無事であった
数ヵ月後、旭は叔母の家に養子に出される
救護所で別な生き物の様に顔が腫れあがっていた母と出会い
翌日には姉とも出会えた
父は職場で被爆し、
妹は遂に見つからなかった
あれから…10年経って人々は何事も無かったかの様に生活を営む
皆実は思う…
ぜんたい この街の人は 不自然だ
誰もあの事を言わない
いまだに訳が解らないのだ
解っているのは…
「死ねばいい」っと誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということ
そして…一番怖いのは
あれ以来…本当にそう思われても仕方のない人間に
自分がなってしまったことに
自分で気付いてしまうことだ
皆実は家族を探しに街へ出て
沢山の「助けて下さい」っと言う声に答えることが出来なかった
同級生も見殺しにした
何人もの人を見殺しにしてしまった
それに…死体から履けそうなゲタを盗った。
それらの行為が、あの風景から10年経っても
皆実を逃れられないように縛る。
一人の男性が皆実に好意を寄せてくれた
でも…皆実は「自分は幸せを望んではいけない」っと思ってしまう
抱きしめられても…あの川にうず高く折り重なる様に倒れていた
死体の山が見えるのだ
それでも好意を寄せてくれている人は
ゆっくりと皆実の心を解きほぐしてくれる
まだ…亡くなってしまった人の分まで懸命に生きようとは思えないが
幸せを望んでも良いのかもしれないっと思い始める
そんな時、皆実の体を死の病が襲った
あの日の翌日に出会えた姉は
あの日から2ヶ月後に倒れた
紫のシミだらけになって、時々突然殴りかかったり
叫んだりしながら逝ってしまった
皆実が寝込んでから…
母も皆実も一言も姉の話をしなくたった
死に際に皆実はヒッソリと思う
嬉しい?
十年経ったけど…原爆を落とした人は私を見て
「やった!またひとり殺せた!」っとちゃんと思うてくれとる?
ひどいなあ
てっきり私は死なずにすんだ人かと思ったのに…
昭和30年9月8日皆実は23歳で殺された。
「桜の国」
叔母さんに預けられていた旭君の子供、七波が主人公のお話です
皆実の弟の旭は、被爆者の京子さんと結婚して
七波(ナナミ)と弟の凪生(ナギオ)の二人の子供に恵まれました
被爆者の京子さんも亡くなり
その後、お婆さん(皆実の母)も亡くなって行きます
凪生君の結婚話に
「被爆者の子供と結婚はさせられない」っと言われます
その頃、父である旭が散歩と称して2~3日戻らない日が続きます
不審に思った七波は父の後をつけて行くのです
その年は丁度、旭の姉の皆実の50回忌の年でした
旭は姉の供養の為に姉の事を知っている人達の元を巡り
昔の話を聞きに回っていました
父の後をつけていた七波は始めて色々な事情を知ります
七波は思います
母さんが38で死んだのが原爆のせいかどうか
誰も教えてくれなかったよ
おばあちゃんが80で死んだ時は原爆のせいなんて
言う人はもういなかったよ
なのに…凪生も私もいつ原爆のせいで死んでも
おかしくない人間とか決め付けられたりしてんだろうか…。
それでも…自分はこの両親を選んで
生まれてこようと決めたのだっと七波を考えるのです
最後に父の旭が七波に言います
「お前は姉ちゃんに似ているから…
お前が幸せにならなきゃ、姉ちゃんが泣くよ」っと
そんな…100ページにも満たない漫画のお話です
私は広島へも長崎へも行った事がありません
学校の授業で原爆の事は習いましたし写真も見ました
「凄いな~」っと思っていました
前に勤めていた会社に広島出身の男の子が居ました
彼は元ヤンキーで任侠映画が大好きな普通の子です
その彼が…朝、両手を合わせて黙祷をしている姿を見ました
私は笑いながら彼の背中をポンっと叩き
「ナニやってんの~?」っと声をかけました
彼は少しビックリした様子をみせながら
「今日は8月6日だから…」っと言いました
子供の頃から原爆投下のあの日、あの時刻が来るたびに
黙祷を捧げて居たそうです
私が始めて生の原爆に触れた瞬間でした
広島に飛んできた飛行機はB29で
積んでいた原爆の名前は「リトルボーイ」っと言います
ふざけた名前です
大人達は、もっと学んで子供達に伝えなければならない事が
沢山あるような気がします
そんなに悲しい漫画ではありません
絵も少し昔風な絵柄です
粛々と一家族の3世代が語られていきます
機会があれば読んでみても損にはならないっと思います
毎年、黙祷を捧げていた広島の彼からお手紙が届きました
長年付き合っていた同僚の女の子と結婚するそうです
色んな事で悩んでいたそうですが…やっと一歩踏み出すことに決めたそうです
良かったね。おめでとう!