ぴすけはイギリスのヴォーカルグループ、ザ=キングス=シンガーズの30年来の大大大ファンである。
大大大ファンなのに、公演情報のチェックを怠っていて、3月下旬に何気なしに
「あーあ、キングス=シンガーズ、最近来ていないなー。今年あたり、来ないかなー」
と、公演情報を検索したところ
ガガーン
5月28日(土)東京・紀尾井ホール完売
5月30日(月)ミューザ川崎シンフォニーホール完売
6月3日(金)小金井宮地楽器ホール 残席3
しかも小金井の残席3は、席の位置がよろしくないし、ダーリンと離ればなれになってしまう。
えーい、後は5月27日(金)豊岡市民会館文化ホール、5月29日(日)豊田市コンサートホール
6月2日(木)富山市オーバードホール、6月4日(土)伊丹アイフォニックホール
6月5日(日)福島市音楽堂…
ワーオふーくーしーまー
福島で公演があるとわかった途端、東京近辺の公演のチケットを取れなかったことさえ忘れて
もう福島まで行く気になっていたぴすけであった
チケット発売は…4月10日(日)の10時。
よっしゃー、これからだ。
ということで、4月10日は10時前からパソコンにはりついて、福島公演のペアチケットを無事に購入。
6月5日(日)の13時に、会場である福島市音楽堂にやってきたのだった。
開場の30分前にもかかわらず、エントランスホールでは多くの人が待っていた。
しばらく待つと、あまりにも人が増えてきたので
係の人が大ホール入口の扉を開けて、ホワイエに入れてくれた。
キングス=シンガーズは、1968年の結成以来メンバー交代を繰り返し
現在、オリジナルのメンバーは誰一人として残っていない。
ぴすけとしては、この20年はキングス=シンガーズの暗黒の時代であった
これは好みの問題なので、致し方ないのだが
テナーがあの麗しきお声のビル=アイヴスからしゃがれ鼻声のボブ=チルコットに替わり
“ビートルズ=コレクション”だけは、かろうじてボブでもいいのかなと思っていたところに
ベースのコリン=メイソンがスティーブン=コノリーに替わったのが決定打だった。
スティーブンは、ベースの真骨頂である低音になると、音程がなくなってしまうのだ
もう後は歯が欠けるようにオリジナルメンバーが入れ替わっていき
時にはグループの調和が完成する前にメンバーが入れ替わってしまうというありさま。
カウンターテナーのデイビット=ハーリーを除けば、ソロも魅力がないし
音楽も混沌として若々しさや活気が失われたと感じたこともしばしば。
キングス=シンガーズの持ち味である、明瞭なメロディーラインのよどみない流れや
明確な発音、若々しさや活気に満ち溢れた希望のある音楽とは感じられなくなっていた。
今回の公演は、2010年の前回の来日時から、半数の3人が入れ替わっている。
果たしてそのバランスや、いかに
プログラムの第1部は、1995年にピーター=ルイス=ファン=ダイクにより
キングス=シンガーズのために書かれた“地平線”を初めに
2014年のアルバム“Postcards”から、北米・ヨーロッパ・日本・イギリス・南米の曲を。
その合間合間にオーストラリアの作曲家エレーナ・カッツ=チェルニンによる“川の嘆き”が入り
20分の休憩を挟んで、第2部はビートルズ名曲集と5つのアメリカンクラシックを。
まず、ステージに入ってくる雰囲気からして良い。
ニカッと白い歯を見せて笑いながら、スマートに登場。
第一声は…
若干緊張しているようだけれど、良い、良いじゃないの
バランスは、バリトンのクリストファー=ガビタスが弱いのが残念だが、全体としては上出来。
新顔の3人は、すごく良い。
テナーのジュリアン=グレゴリーは初々しい素直な声で、この20年のもやもやを掻き消してくれた。
バリトンのクリストファー=ブリュートンのソロは、くせがないのに押しは強く、見事。
ベースのジョナサン=ハワードは、低音になっても声量が落ちず、音程も安定している。
そのうえ、この新メンバー3人が、そろいもそろって芸達者
完全に残りの3人を喰っている。
これは、やっと、待ちに待った、暗黒の20年を払拭するメンバーになったのではないか
プログラムが進むにつれ、キングス=シンガーズの面々も会場も、気分がほぐれてきたとみえ
前の席の人などは体でリズムをとったり、解説が終わり曲が始まる前にもやんやの喝采。
隣でダーリンが、あまりの美しい歌声に感動して泣いているのか、しきりと目を拭っている
ああ、やっと、やっとだよ、キングス(殿様キングスではない)
やっと待ち望んだ、若々しく希望に満ち溢れた、活気あるキングスに戻ったよ
歌声の先に光明が見えるキングスに生まれ変わったよ
最近のぴすけは、近年のキングス=シンガーズのアルバムを買う気さえ起こらず
「昔は良かった」を繰り事のように言うノスタルジジイと化して
“ビートルズ=コレクション”以前のアルバムしか聞かなくなっていたが
このメンバーでのアルバムが楽しみだ。
…と、カウンターテナーのデイビットが、8月に引退するそうな。
彼にはちょっとした思い出があり、また、この日のサイン会でも、うれしい言葉をもらった。
デイビットが抜けて、新メンバーが入ると、またバランスが違ってくるだろうが
トップのカウンターテナーが箸にも棒にもかからないということは、まずないだろう。
この日買ったCDとパンフレットに、メンバー全員のサインをもらい、ご満悦。