道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

尖閣諸島と経済制裁

2010-09-26 23:09:51 | 国際関係
最近、中国との関係冷却が報じられない日は無い。
あたかも、「冷やし中華はじめました」というような様相を呈している。

一連の中国政府の動きは、領土問題に於ける強硬姿勢としてクローズアップされており、それはもちろん間違いない。しかし、私は、交流制限とかレアアース禁輸とかを、中国政府がやってみたかったのだと思う。だから漁船衝突を良い機会に、今までやりたかったことを一気にやったのだろう。
日本では、中国から客が来なくなれば観光業その他は弱るし、レアアースが入って来なければ産業は成り立たない。逆に中国は、日本から客が来なくてもそれほど困らないし、日本が物を買ってくれなくても何とかなる。
そのくらい中国は強くなったんですよー、と主張したかったのだろう。これを示しておけば、今後の外交でだいぶ有利になる。

その他、 尖閣諸島にはだいぶ中国の漁師が魚を採りに行っているから、ここで強く出ないと彼らの食い扶持に関わるとか、あまり弱腰だと国内の批判が政府に集まるとか、そんな事情も当然あっただろう。
しかし、最も大きいのは、中国の今後の発言力を増すための、外交戦術的な理由である。

日本の三権分立を知らないわけはないのだから、検察がちょっと突っ張って自分の独立性を主張して、拘留を延長することはあっても、政府の判断で早期釈放があり得るとは向こうも思っていないだろう(実際に、今回の釈放も、管首相が日本に帰って来た後にすればその圧力があったものと見えるから、それを嫌って早めに行ったに過ぎない)。
それでも「早く釈放しないと云々」と言い続けたのは、要するに、「我々の警告にも関わらず云々」という大義名分をつけて、経済制裁をしてみたかったからなのだ。
だから、少なくとも中国政府にとっては、今回のおおよその落としどころは始めから分かっていたのだろう。

そして、これから日本政府が賠償金など払わないことも知っているだろう。
向こうにとっては、それで良いのだ。何故なら、この事件を「未解決」としておくことによって、外交カードが一個増えるからだ。

元々自分の領土であろうとなかろうと、とりあえず手を出せそうなところに手を出しておけば、色々な使途がある。
戦争にまでなると大損だが、落としどころが分かっている相手と揉めるのなら、先も見えるし手も打ちやすい。内政で何か問題があったら、すかさずどこかの領土問題カードを切って、不満の目を外に逸らすこともできる。
これが外交巧者のやり方である。

戦略というのは元来こういうもので、「領土問題」を「領土問題」としてのみ扱うような正直者は、一国の戦略を担うべきではない。そうではなく、「領土問題」をネタに、二個も三個もやりたいことをやるのが真の戦略である。
(ただ、今回の件で、かなりの無関係の人間が迷惑を被ったように、良識的にはあまりよろしくない手段である。)