9(ナイン) 〜9番目の奇妙な人形〜
2010年 79分 アメリカ
3DCGアニメ。雰囲気とパッケージでディズニーの作品だろうと思って借りたのだが違うようだ。『新人監督シェーン・アッカーの11分の短編アニメに触発されたティム・バートンにより製作された長編アニメーション。』だそうで、ひょっとしたらDVDのおまけにその11分の作品も入っていたのかも知れないが、いつも本編しか見ずに返してしまうから見てない。入っていたなら惜しいことをしたなと思う。
冒頭は麻の袋のようなもので人形を作るところから始まる。粗い目の布を針で刺していく・・。
科学者が言う。「もう人類はダメだ、終わりを迎えた。」 彼は人形を作っていた。稚拙な外観だが、目はシャッターのようで良くできている。体の前にはジッパーがついている。中に何か入っているようだし、バッグ代わりに入れることもできる。
その後その人形が目覚める。部屋の中はシンとしている。動くものは何もない。傍らにはその科学者が倒れているのだが、彼はそれが分からない。
自分は何だ。なぜここにいる。ここはどこだ。何が起こっているのだ。
彼は何も分からない。窓から外を見る。何か動くものがあった(いた)。彼は外に出た。そこは見渡す限りの荒廃した風景。建物は壊れ、崩れ、壊れた車はさびついている。中を覗いた彼の目に映ったものは、もう動かなくなった人間の母子。人類は、文明は、滅亡していた。
彼は仲間を見つけた。同じ麻袋人形だ。その老人人形は声の出ない彼を喋れるようにしてくれ、仲間に加えてくれた。彼は言う。危険だ。気をつけろ。そこにその危険なビーストが襲ってきた。それは機械でできた凶暴な猫。戦い虚しく、その老人人形<2>は連れ去られてしまう。その後彼は色々な仲間に出会う。リーダーや女剣士、芸術家の人形たち。彼らは壊れた聖堂に隠れ住み、殺戮機械が止まって平和になるのを待っていた。彼<背中に9と書いてある>は2を助けに行こうという。渋る仲間を連れ、本拠地に乗り込んだ彼だったが、頭にうっすら記憶のある何かに惹かれたように、自分が元いた部屋から持って来たボタンを機械にはめ込んだ。それにより大きな機械が作動を始めた。それは人類を滅亡させた機械の生き残りだった・・。
3DCGの画像は嫌いだと何度も書いた。特に人の描写は違和感がある。例えばティンカー・ベルの顔は、フニュフニュしたゴムが動いているようで気持ち悪い。日本の手書きアニメのような微妙な表情ができないので面白くない。それが印象だ。
ところがこの映画では全くそう思わなかった。
どうやら私が嫌いなのは人間(形のもの)を3DCGで表現したものらしく、それ以外はOKみたいだ。この映画に関して言えば、例えば麻袋の質感などは違和感がないとかではなく賞賛に近い感じを持った。美しく質の高い画像だと思う。
内容だが、傑作と感じた。
見始めてすぐこれはいいと思ったのだが、見終わってもその感想は変わらない。最後に魂が天にあがっていく描写は私は東洋的と思ったが、多くの書き込みでは「キリスト教的世界観」と書いてあるのでそうなのだろう。私には、「肉体は滅んでも魂は永遠に生き続ける」という我々の思想の表現と感じた。
ストーリー展開はターミネーターと変わらない。その意味ではよくあるパターンとか二番煎じと言ってもいいが、ターミネーターのように救いの少ない未来を何作にも連続しているのではなく、一話でハッピーエンドなのは良いだろう。子どもが見ていいかどうかは何とも言えない。きつい表現もあるかな。子どもなら戦闘シーンを面白いと感じるぐらいで、意味までは分からないかも知れない。大人(せめて少し成長したぐらいの中学生)の映画だと思う。
ランク:素晴らしい。映像も内容も大のお勧めです。