職人の道具 髭剃りナイフ

小学生の頃親父と一緒に散髪屋に行った時の一場面を何故かはっきりと憶えている。

名前は柿沼散髪屋と云い今はもう廃業している。

親父の散髪が終わりに近づいた頃、後ろの方で「シュ、シュ、シュ、シュ・・・」とリズミカルな音が聞こえて来た。

「はて、何の音だろう？」と親父の隣の椅子から振り返ると散髪屋の主人が柱に備え付けられた長いなめし革に髭剃り用のナイフを真剣な表情で擦りつけて磨いているのだった。

あの時が僕が初めて職人が仕事をする時の真剣な顔に気づいた瞬間だったのだ。


この髭剃りナイフを西洋骨董店で見つけた時、鮮明にそのときの光景が蘇って来てどうしても欲しくなってしまった。

当時かなり高額だったと思われる商売道具を心を込めて大切に取り扱っていた散髪屋の主人の気持ちが伝わって来る。


このナイフは製作年代不詳なるも骨董舶来品で実は３ヵ国の人間が関わっている。


販売元　Son Bros. 　サンフランシスコ　（カリフォルニア州　アメリカ）

製造元　The Sultana Razor (ドイツ）

主要部品　ナイフの製造元　WADE & BUTCHER (イギリス）




本皮のケースに型押しにより刻まれた文字

The Sultana Razor 　☆　　縦書 made in Germany 　☆ San Bros.　　San Franncisco
WARRANTED 　　　　　
5/8 round Bl.

5/8 round Bl. の意味不明。Bl.はBarrel（樽）の略が一般的だが。
刃の構造が刃の背中部分から刃先にかけて両刃ともえぐれて曲線（BOW RAZOR)を描いており約８分の５とはその角度のことか？
どなたかかご存知でしたら教えて下さい。

刃の側面に彫りこまれた文字

THE ORIGINAL AND GENUINE BOW RAZOR
MANUFUCTURED SOLELY BY
WADE & BUTCHER, SHEFFIELD, ENGLAND

さて気になるお値段は？

ガラクタ市でもとめたものですが正真正銘の本物でした。

発表したいのは山々なれど破格の安値ゆえ内緒にしておきましょう。

（問い合わせ先）　　うたちゃんの店へリンク


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