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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

人種的マイノリティに対する制度的差別

2010年08月27日 | 人権
 ◆ 人種的マイノリティに対する制度的差別
 カナダ人権委員会が扱った人種的マイノリティに対する制度的差別の事例の要約を執筆者の許可を得て、掲載しました。

(1) 当時50歳であった日系の女性は電話会社に勤めていて勤務成績も優秀だった。しかし彼女が属する部署の責任者が交替してから職場環境が悪化し、性差別的発言や人種差別的な言動が部内で平然となされるようになり、さらに高齢者を侮辱するような振る舞いも見られるようになった。彼女はその部署では最も高齢だったので、それらの発言や行為は自分に向けられたものであると感じ、会社に窮状を訴えたが、彼女の満足のいくような対応は得られず、その後、彼女は配置転換され、事実上降格された。
 そこで彼女は人権委員会に救済を申立てたが、会社側は自分たちの対応は誠実なものであったと反論した。人権委員会はこの事案を調査に付し、その結果、会社側がとった対策は一応評価に値するものであると認め、職場環境の改善に努めた事実もあると判断した。しかし現実的にはそれらの対策が成功したとは言えないと結論付け、会社側と被害女性との調停を試みた。人権委員会の調停によって会社側が7000カナダドルの慰謝料を彼女に支払うことで合意し、事案の解決を見た。
 このような性差別、人種差別、年齢差別という複合差別は、今後日本でも重視していかなくてはならない分野である。実際的な被害者救済が得られなければ被害者本人にとって意味がないことから、これは、人権委員会が会社側の取り組みを評価しつつ、被害者の満足のいく救済を模索した事例といえる。
(2) ある連邦政府機関に勤めていたインド系の男性が、彼の肌の色や人種について陰に陽に嫌がらせを受け、差別的なジョークや陰口を言われていた。彼が抗議しても上司や職場の仲間たちは「冗談が通じない」、「お前は神経質すぎる」と言うだけだった。
 そこで彼は人権委員会に救済を申立て、人権委員会が調停した。その結果、職員が差別的な嫌がらせをしないようにするための研修を行うことや、被害者の男性に謝罪し、1万カナダドルの慰謝料を支払うことで合意した。
 ジョークに名を借りた差別発言は日本においてもよく見られることであり、被害者は往々にして泣き寝入りを強いられている。裁判に訴えたとしても、会社を相手にして個人が闘うことには多くの困難が伴い、勝訴したとしても得られるのはわずかな慰謝料だけなので、会社の差別的な体質を改善することはできない。
 人権委員会は被害者の立場に立って調停し、個人的な救済だけでなく会社側には職員研修を義務付けるなどして、差別的な慣行や企業体質の改善を図ることができるという総合的な解決を導き出せることこそ、人権委員会制度の利点の一つである。

 出典:『人権保障の新たな展望 国内人権機関の機能と役割』(財団法人アジア・太平洋人権情報センター、2004年)
『人権市民会議』(2010/8/23)
http://www.geocities.jp/mkaw8/hrcc/nhridata/ca/001.html

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