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教育勅語が主権在君並びに神話的國体観に基づいている事実を誤魔化す柴山文科大臣

2018年11月10日 | こども危機
 ◆ 柴山文科相「教育勅語をアレンジし教える」
   ~立憲野党は改憲阻止と参院選勝利で無効化を
(週刊新社会)
永野厚男・教育ジャーナリスト


文科省記者クラブで会見する柴山氏(52歳、10月2日のNHKテレビから)

 教育勅語をアレンジすれば、小中学校の道徳等で使えるとする、柴山昌彦文部科学大臣の発言は、精査するとその内容がコロコロ変わっている。また、4年前にも同趣旨の文科相答弁があった。アナクロニズムの施策に、立憲野党と教育現場は、どう対処していけばいいか、探った。
 ◆ 教育勅語に"国際協調"はない
 柴山氏は10月2日、文科省記者クラブでの就任会見で、「教育勅語は現代風に解釈されたり、アレンジをした形で、例えば道徳等に使うことができる分野というのは十分にあるという意味では、普遍性を持っている部分が見て取れるのではないか」と発言した。
 記者が「どの辺が今も十分に使えると考えているか」と問うと、

 柴山氏は「やはり同胞を大切にするとか、国際的な協調を重んじるとか、そういった基本的な記載内容を現代的にアレンジをして教えていこうということも検討する動きがあると聞いているけれど、そういったことは検討に値するのかなと考えている」と答えた。
 これに対しては10月18日、「子どもたちの『いのち』を守ろう! 柴山文科大臣の『教育勅語』発言の撤回と辞任を求める宗教者共同声明」が、
 ①教育勅語に全くない"国際協調"という言葉をあげつらう柴山氏は、教育勅語を読んでいたのか、
 ②「非常事態発生時は、いつでも公に奉仕して永遠に続く天皇のために命を捧げよ」と子どもたちに命じる、全く非人道的な教育勅語の文脈から、なぜわざわざ"同胞を大切にする"理念を引き出す必要があるのか」と批判している。
 「野党の中に憲法違反、国会軽視。直ちに罷免を求める党首もいる」等、追及する質問が出た10月5日の記者会見では、柴山氏は「教育勅語そのものを離れて、友人を大切にするといった考えは、現在の教育においても通用する内容もあるという意味で、普遍性を持っているのではと申し上げた」と、少しトーンを変えた
 だが柴山氏は、すぐ「基本的な、普遍的な理念というものを考えれば、確かにそれは十分検討に値するのではないか」と開き直り、記者が「誰が何をという文脈か」と質すと、「別に国として検討するとか、国としてそれを積極的に推奨する準備を進めるているとか、そういうことは微塵も申し上げておりません」と、回答を変えた。
 ◆ 下村元文科相答弁と共に無効化を

 教育勅語は1948年6月、衆院で排除、参院で失効決議をしているが、14年4月8日の参院文教科学委員会で、NHKアナ出身の和田政宗議員(みんなの党。現在自民党)が「こうした決議は関係なく、道徳副読本や学校現場で活用できる」と主張。
 これに、当時の下村博文・文科相が「教育勅語そのものを使うことは相当理解を求める必要があるが、その中身そのものは今日でも通用する普遍的なものがあるわけで、この点に着目して学校で教材として使うのは差し支えない」とエール交換の答弁をしている。
 安倍晋三首相の側近である下村・柴山両氏から教育勅語の"内容"を教材として使う発言が出ているということは、安倍政権の実現したい施策なのだ、と言えよう。
 安倍氏の自民党総裁任期がまだ3年もあり、かつ下村氏が同党憲法改“正”推進本部長であることから、私たち立憲野党は改憲阻止の運動と相俟って、来年の参院選で最低でも3分の1以上の議席を獲得し、教育勅語答弁も無効化していく必要がある。
 ◆ 教科書の教育勅語の扱い方

 主権者であった天皇が"家来"である国民に命令した教育勅語を、16年4月から使用している中学社会科・歴史分野教科書の8社は、どう記述しているか?2社を比較しよう。
 「爾臣民・・・一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ」は、「お前たち臣民は・・・日本国に危機が迫ったならば(戦争が起こったら)、忠誠心を発揮し、国家・天皇のため身命を捧げなさい」と現代語訳できる。
 しかし育鵬社版は、「もし国や社会に危急のことがおきたならば、正義と勇気をもって公のために働きなさい」という"要約"を載せ、"国防"のため人々に死を強いる事実を隠している
 この執筆者は、改憲政治団体の日本会議常任理事・百地章氏、それと関係の深い日本教育再生機構の理事長・八木秀次氏、副理事長・石井昌浩・川上和久両氏らだ。
 一方、学び舎版(現場の現・元教職員たちが中心に執筆)は、①正面に"御真影"を掲げた講堂に児童らが整列し、"君が代"斉唱後、礼服・白手袋の校長が教育勅語を厳かな口調で読む間、頭を垂れさせられ、読み終わるとほっとして、鼻をすすりながら頭を上げた、②1933年の三陸海岸大津波時、"御真影"を運び出すため学校に駆け付けた小学校教師が大波にさらわれ死亡し、宿直が始まった、③朝鮮総督府が1911年、日本国内と同様、教育勅語に基づき、子どもたちを"天皇の臣民"とする教育の目的を定めた等、多角的に記述している。
 ◆ ◇ 筆者・永野厚男さんによる補足

 柴山昌彦氏は大臣就任前の18年8月17日、自身のツイッターに「私は戦後教育や憲法の在り方がバランスを欠いていたと感じています」とツイートしている。
 この事案について、前記10月2日の文科省記者クラブの会見で、ある記者が「戦後教育や憲法の在り方がどのようにバランスを欠いていたと感じているか」と質した。
 これに対し柴山氏は、「その私のツイートの趣旨はですね、やはり教育というのは当然のことながら私たちの権利と共にですね、義務や規律ということについても教えていかなければいけないと、これは当然のことだと思っております。ただ、戦前、義務とか規律が過度に強調されたことへの、これもまた大きな反動としてですね、個人の自由とかあるいは権利ということに重きを置いた教育、あるいは個人の自由、非常に最大の価値とする日本国憲法が今制定をされたということだと思っております。そういう中で憲法については、我々、憲法尊重養護義務のある公務員ですから、ここではその在り方について言及をすることは避けたいというように思うんですけれども、少なくとも教育においてはですね、権利や義務、あるいは規律ということをしっかりバランスよく教えていくと、こういったことがこれから求めらるのではないかと、そういう趣旨でツイートしました」と、要領を得ない弁明をした。
 この弁明を後日知った、ある首都圏の高校・公民科教諭は「柴山氏は天賦人権説を勉強するべきだ」と語っている。
『週刊新社会』2018年11月6日号

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