『NPJ 訟廷日誌』(2008.5.31更新)
◎ 都立板橋高校卒業式君が代弾圧刑事事件
1 事件の概要
(略)
2 弁護側の主張
弁護側は、藤田さんの行為は、
① 威力業務妨害罪の構成要件に該当しない、
② 仮に構成要件に該当するとしても藤田さんの行為には違法性はない、
③ 本件に威力業務妨害罪を適用して藤田さんに刑事罰を科すことは、表現の自由を侵害する法令の適用として違憲である
等さまざまな主張をし、藤田さんの無罪を主張しています。
【手続きの経過】
2004年3月11日 事件発生
2004年12月3日 起訴
2006年5月30日 1審判決 (罰金20万円) 村瀬均裁判官
2007年10月2日 控訴審第1回期日
2007年11月20日 目撃者(卒業生の保護者)証人尋問
→学校側がコピー配布を制止した事実はなく、語りかけも平穏に行われたものであることなどが明らかになりました。
2007年12月6日 曽根威彦教授(刑法学者)証人尋問
→被告人の行為が威力業務妨害罪に当たらないこと、仮にあたったとしても、被告人の行為は違法性を欠き、無罪となるべき行為であったことなどについて元日本刑法学会理事長代行の曽根教授から証言がありました。
被告人質問
→被告人は、自分が受け持った最後の生徒の卒業を祝うために卒業式に参加するのを楽しみにしていたこと、他方、日の丸君が代強制に伴って従わない教員には処分が下されるという現場教員の苦しみを理解してもらおうと週刊誌のコピーを配布し、その説明をしたことだけで、理不尽に式場から退場を要求されたことなどについて証言がありました。
2008年3 月13日 弁論
2008年5 月29日 東京高等裁判所第10刑事部(須田まさる裁判長)は、控訴棄却の不当判決を下し、1審判決(罰金20万円)が維持されました。
弁護団は即日、上告しました。
【本件当日の経過】
この年の卒業生は、藤田さんが一年生の時に生徒指導を担当していました。特に視覚障害を持っていて、登校指導の際に何度も一緒に横断歩道を渡ったこともある卒業生が、ピアノ伴奏をすると聞いていた藤田さんは、この日の卒業式を大変に楽しみにしていました。
しかし、この年から、東京都教育委員会は、通達(「10.23通達」)を出し、君が代斉唱の際、起立しない教職員を処分するという方針を打ち出しました。
藤田さんは、これを知り、卒業式の日に「日の丸・君が代」を強制することは似つかわしくない、と考えました。藤田さんは、卒業生の晴れの舞台を心から祝いつつ、そして晴れの舞台だからこそ、何らかの強制が働く下では迎えさせたくないという教育者としての信念で、保護者席の前に立って、保護者に語りかけたのです。
それは卒業式開始前、保護者などが自由に着席位置を定め、隣席の保護者たちと会話をしたり、ビデオカメラで撮影の準備をしている、そんな時間帯の数十秒間のことでした。
藤田さんは、語りかけが終わった直後に、「やめろ」などと教頭に言われました。また、藤田さんは、来賓としてこの卒業式に招かれていたにもかかわらず、不当にも式場からの退出を求められました。藤田さんは、このような不当な行為に対して、一切有形力を用いることなく抗議をしつつ、素直に出入り口から退出しました。
【一審判決】
一審判決は、懲役8ヶ月という検察官の求刑に対し20万円の罰金と大幅に刑を軽くしましたが、その理由として、本件行為は卒業式の妨害を目的としたものではないこと、妨害を受けたのが短時間であること、卒業式自体は支障なく実施されたこと、被告人が教員として定年まで職責を果たしてきたことを考慮したことなどをあげています。
しかし、そのように認定するのであれば、本件のような行為を「威力業務妨害罪」に当たるとして処罰する必要があるのでしょうか。本件のような行為が刑事罰の対象とされることは、一人一人が違う意見を持っていて当たり前、その違いを前提にして共生する、という民主主義社会のあり方の根本を突き崩すような、重大な事態です。
【控訴審判決】
2008年5月29日、東京高等裁判所第10刑事部(須田まさる裁判長)は、控訴棄却の不当判決を下し、1審判決(罰金20万円)が維持されました。弁護団は即日、上告しました。
【本件が起訴された理由】
本件では、日の丸君が代強制の急先鋒である土屋たかゆき都議が来賓として出席する中、卒業式開式後の君が代斉唱の際、卒業生の9割前後が着席するという「事件」が発生しました。
都教委は、着席は生徒の自由意思によるものではなく、誰かに扇動されたものであると決めつけ、「犯人探し」を行い、何ら卒業生が着席したことと無関係の藤田さんを標的として、被害事実を「建造物侵入等」とする被害届を出しました。このように、都教委は被害事実の存在を受けて被害を申告したのではありません。
藤田さんを見せしめとすることにより、日の丸君が代の強制に反対する教育現場の言論の自由を抑圧しようという政治的意図に基づいて、都教委は藤田さんの処罰を求めたのです。
そして、その都教委の意図を知りながら、検察は不当にも言論弾圧に加担し、本件起訴を行い、一審の裁判所もそれに加担しました。
本件は、日の丸に向かって東京都教育委員会が強力に推し進める「日の丸・君が代」強制政策が背景にあります。反対意見をもつ教職員に対して処分を、処分ができない一般市民に対しては刑事罰をもって「日の丸・君が代」強制に反対する言論を弾圧しようとしているのです。
文責 弁護士 津田二郎
『NPJ 訟廷日誌』2008.5.31更新
http://www.news-pj.net/npj/2007/itabashikoukou-20071113.html
◎ 都立板橋高校卒業式君が代弾圧刑事事件
事件名:都立板橋高校卒業式君が代弾圧刑事事件【裁判の概要】
被告人:藤田勝久 (元教員)
罪 名:威力業務妨害 (刑法234条)
係属機関:最高裁判所
次回期日:未定
2008年5月29日、東京高等裁判所第10刑事部(須田まさる裁判長)は、控訴棄却の不当判決を下し、1審判決(罰金20万円)が維持されました。弁護団は即日、上告しました。
・判決要旨(リンク) ・不当判決に対する抗議声明2008.5.29(リンク)
紹介者:津田二郎 弁護士
連絡先:東京中央法律事務所内
東京 「日の丸・君が代」 訴訟弁護団事務局 伊藤
電話:03-3353-1911
1 事件の概要
(略)
2 弁護側の主張
弁護側は、藤田さんの行為は、
① 威力業務妨害罪の構成要件に該当しない、
② 仮に構成要件に該当するとしても藤田さんの行為には違法性はない、
③ 本件に威力業務妨害罪を適用して藤田さんに刑事罰を科すことは、表現の自由を侵害する法令の適用として違憲である
等さまざまな主張をし、藤田さんの無罪を主張しています。
【手続きの経過】
2004年3月11日 事件発生
2004年12月3日 起訴
2006年5月30日 1審判決 (罰金20万円) 村瀬均裁判官
2007年10月2日 控訴審第1回期日
2007年11月20日 目撃者(卒業生の保護者)証人尋問
→学校側がコピー配布を制止した事実はなく、語りかけも平穏に行われたものであることなどが明らかになりました。
2007年12月6日 曽根威彦教授(刑法学者)証人尋問
→被告人の行為が威力業務妨害罪に当たらないこと、仮にあたったとしても、被告人の行為は違法性を欠き、無罪となるべき行為であったことなどについて元日本刑法学会理事長代行の曽根教授から証言がありました。
被告人質問
→被告人は、自分が受け持った最後の生徒の卒業を祝うために卒業式に参加するのを楽しみにしていたこと、他方、日の丸君が代強制に伴って従わない教員には処分が下されるという現場教員の苦しみを理解してもらおうと週刊誌のコピーを配布し、その説明をしたことだけで、理不尽に式場から退場を要求されたことなどについて証言がありました。
2008年3 月13日 弁論
2008年5 月29日 東京高等裁判所第10刑事部(須田まさる裁判長)は、控訴棄却の不当判決を下し、1審判決(罰金20万円)が維持されました。
弁護団は即日、上告しました。
【本件当日の経過】
この年の卒業生は、藤田さんが一年生の時に生徒指導を担当していました。特に視覚障害を持っていて、登校指導の際に何度も一緒に横断歩道を渡ったこともある卒業生が、ピアノ伴奏をすると聞いていた藤田さんは、この日の卒業式を大変に楽しみにしていました。
しかし、この年から、東京都教育委員会は、通達(「10.23通達」)を出し、君が代斉唱の際、起立しない教職員を処分するという方針を打ち出しました。
藤田さんは、これを知り、卒業式の日に「日の丸・君が代」を強制することは似つかわしくない、と考えました。藤田さんは、卒業生の晴れの舞台を心から祝いつつ、そして晴れの舞台だからこそ、何らかの強制が働く下では迎えさせたくないという教育者としての信念で、保護者席の前に立って、保護者に語りかけたのです。
それは卒業式開始前、保護者などが自由に着席位置を定め、隣席の保護者たちと会話をしたり、ビデオカメラで撮影の準備をしている、そんな時間帯の数十秒間のことでした。
藤田さんは、語りかけが終わった直後に、「やめろ」などと教頭に言われました。また、藤田さんは、来賓としてこの卒業式に招かれていたにもかかわらず、不当にも式場からの退出を求められました。藤田さんは、このような不当な行為に対して、一切有形力を用いることなく抗議をしつつ、素直に出入り口から退出しました。
【一審判決】
一審判決は、懲役8ヶ月という検察官の求刑に対し20万円の罰金と大幅に刑を軽くしましたが、その理由として、本件行為は卒業式の妨害を目的としたものではないこと、妨害を受けたのが短時間であること、卒業式自体は支障なく実施されたこと、被告人が教員として定年まで職責を果たしてきたことを考慮したことなどをあげています。
しかし、そのように認定するのであれば、本件のような行為を「威力業務妨害罪」に当たるとして処罰する必要があるのでしょうか。本件のような行為が刑事罰の対象とされることは、一人一人が違う意見を持っていて当たり前、その違いを前提にして共生する、という民主主義社会のあり方の根本を突き崩すような、重大な事態です。
【控訴審判決】
2008年5月29日、東京高等裁判所第10刑事部(須田まさる裁判長)は、控訴棄却の不当判決を下し、1審判決(罰金20万円)が維持されました。弁護団は即日、上告しました。
【本件が起訴された理由】
本件では、日の丸君が代強制の急先鋒である土屋たかゆき都議が来賓として出席する中、卒業式開式後の君が代斉唱の際、卒業生の9割前後が着席するという「事件」が発生しました。
都教委は、着席は生徒の自由意思によるものではなく、誰かに扇動されたものであると決めつけ、「犯人探し」を行い、何ら卒業生が着席したことと無関係の藤田さんを標的として、被害事実を「建造物侵入等」とする被害届を出しました。このように、都教委は被害事実の存在を受けて被害を申告したのではありません。
藤田さんを見せしめとすることにより、日の丸君が代の強制に反対する教育現場の言論の自由を抑圧しようという政治的意図に基づいて、都教委は藤田さんの処罰を求めたのです。
そして、その都教委の意図を知りながら、検察は不当にも言論弾圧に加担し、本件起訴を行い、一審の裁判所もそれに加担しました。
本件は、日の丸に向かって東京都教育委員会が強力に推し進める「日の丸・君が代」強制政策が背景にあります。反対意見をもつ教職員に対して処分を、処分ができない一般市民に対しては刑事罰をもって「日の丸・君が代」強制に反対する言論を弾圧しようとしているのです。
文責 弁護士 津田二郎
『NPJ 訟廷日誌』2008.5.31更新
http://www.news-pj.net/npj/2007/itabashikoukou-20071113.html
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