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「ブラック企業大賞」今年はワタミが大賞

2013年08月17日 | 格差社会
 ◆ ”ブラック企業”という言葉は社会問題として定着するか
水島宏明 | 法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター

 8月11日午後、ブラック企業大賞実行委員会が発表した「ブラック企業大賞2013」の入賞企業名は、以下の通り。
http://blackcorpaward.blogspot.jp/

 大賞は、ワタミフードサービス株式会社
 特別賞に、国立大学法人東北大学
 業界賞に、株式会社クロスカンパニー
 教育的指導賞に、株式会社ベネッセコーポレーション

 ワタミフードサービスは、昨年の市民賞に続き、2年連続の受賞。

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 以上の速報だけ、発表会場から携帯で送ったが、続く文章をパソコンから続けて打つ。
 「ブラック企業大賞」が発表されるのは、昨年に続いて今回で2回目だ。
 日本の労働環境はますます悪化の一途をたどっている。
 パワハラ、セクハラ、アカハラ(大学での立場の違いを利用した嫌がらせ)、マタハラ(マタニティーハラスメント、妊娠した労働者への嫌がらせ)などのハラスメント。
 過労死。過労自殺。過労うつ。過労による適応障害
 長時間労働。サービス残業の横行。
 派遣への差別。偽装請負、名ばかり管理職など、
 いろいろな問題が重なって働く人間を追いつめている。

 働く者に何も仕事を与えず自ら退職する方向にしむけようと隔離する「追い出し部屋」。そんな異常な場所が実際に存在する有名企業がある。
 「夢に日付を!」というような、経営者が作った『標語』を集めた本の読書を事実上強制する有名企業もある。
 こうした”ブラック企業”の実態を世に知らしめよう。行政やマスコミが企業名の公表に及び腰ならば、市民の立場から悪質な企業名を公表しても良いではないか。
 様々なルートで寄せられる労働相談や過去の法令違反などの事案が集まっている。そのうち特に問題ありと思われる企業の名前や違反行為の内容を世間に知らせて、少しでも改善する方向に持っていきたい。
 そういう目的で企画されたのが「ブラック企業大賞」だ。

 理不尽な労働問題について相談を受けている弁護士、労働組合、市民団体、学者、ジャーナリストなどが、こうした企業を生み出す背景に注意喚起をしようと「ブラック企業大賞」は始まった。寄せられる相談のケースは、本当にひどいものばかりだ。
 2012年は、大賞に選ばれたのは東京電力。史上類をみない放射能による環境汚染を起こした企業だが、そういう理由よりむしろ、5次6次という多層な下請け構造で、作業員に事故対応をさせながら、被ばく放射線量隠しやずさんな健康管理をしていたこと。さらに偽装請負など違法な働かせ方をしていたこと、などが授賞理由となった。
 「ブラック企業大賞」は、あらかじめ10社以内の「ノミネート企業」を選んでおいて発表し、大賞発表当日までウェブ投票を受け付け、その投票数も賞の選考に反映される。
 2012年、投票数が大賞になった東京電力よりも圧倒的に多い数だったのが、ワタミフードサービス株式会社だ。
 2008年に入社してわずか2ヶ月という新入社員の女性が精神疾患と過労自殺に追い込まれるという悲劇が起きた。月141時間という残業を強いられていた。厚労省が定める過労死認定ラインになっている月80時間の残業をはるかに超える労働量だった。
 「ブラック企業大賞2012」では、ワタミフードサービスは投票数のダントツ1位を理由に「市民賞」を与えている。
 そうしたなかで、昨年に続き、2013年もワタミフードサービスがノミネートされた。過労自殺した女性社員の両親と支援する労組が同社の責任ある立場の人間との面会を求めているが、同社は「顧問弁護士のみとの面談」だけに絞る姿勢に終始していることから、心からの反省が見られないというのが理由だ。
 8月2日の朝日新聞は、先の参議院選で当選したワタミグループの元会長・渡邊美樹議員のインタビューを掲載した。
 女性の新人社員が労災によって自殺したことを事実だと認めたが、その原因を問われて「なぜ採用したのか。なぜ入社1カ月の研修中に適性、不適性を見極められなかったのか」と答えている。自殺の原因は本人の適性に問題があったから、という認識を示す一方、長時間労働についてはまったく触れていない。こうした態度も他社と比べ、圧倒的に「ワタミを大賞にすべき」という声が多数を占める理由につながった。
 「ブラック企業大賞2013」のウェブ投票では、ワタミフードサービスが2万1000票以上(投票数の72%)を集めて圧倒的な1位。
 11日に行われた授賞式のニコニコ生放送でも、同社に関する書き込みが圧倒的に多く、大賞が発表された時には「祭り状態」になり、しばらく画面が文字で埋まった。
 授賞式では、各企業についての個別の事案について発表した他、当該企業の経営トップを含む、経営者たちのブラックな言葉の数々を紹介したところ、授賞式会場とニコニコ生放送の双方に大きな反響があった。
「労働基準法なんておかしい。今は24時間働かないといけない時代なのに」
「経営やビジネスといった最も縁遠い領域にまで、人権というペスト菌が蔓延しはじめている」
「業界ナンバー1になるには違法行為が許される」

「業績が悪いのは従業員が働かないからだ」
 これらは日本の名のある会社のトップたちが、マスコミのインタビューなどで話した語録だ。
 「365日24時間死ぬまで働け」と言ったのはワタミグループの渡邊美樹元会長だが、彼のような精神論はかなり極端としても彼だけの専売特許でもない。同様の精神論を振りかざす経営者は他にも少なくない。
 ”ブラック企業”は、けっして受賞企業だけの問題でなく、氷山の一角に過ぎないのだ。
 ”ブラック企業”とされる会社の経営者に共通するのが、働く人間の気持ちやその家族の気持ちが理解できないことだ。
 入社してわずか2ヶ月で娘を失った両親の話を聞くことは、会社としての最低限の誠意のはずだ。
 “ブラック企業”という言葉が曖昧だという批判はある。
 議員になった渡邊美喜氏も朝日新聞のインタビューで「社会が『ブラック』とレッテルを貼るなら何らかの基準が必要だ。離職率が高いのか、給料が安いのか、労災事故が頻繁に起きているのか。(中略)一部の指数だけでブラックかブラックじゃないかと見極めることは、中小企業やベンチャー企業の育成を大きく邪魔することになる」と発言している。
 だが、働く人間の命や健康を大切にしない会社、働く人間を使い捨てにする構図の会社、ということは共通項と言ってよい。
 ”ブラック企業”という言葉が使われるようになってから、やっと見えてきた一部の会社の体質がある。
 厚生労働省も9月に苦情や相談の多い企業への立ち入り調査を実施するという。悪質な場合は企業名を公表するそうだが、せっかくのこの流れを確かなものにしていきたい。
 ”ブラック企業”という言葉をもっと定着させて、理不尽な働かせ方に対しては、泣き寝入りせず、声を上げられる社会にしていきたい。
『水島宏明 - 個人 - Yahoo!ニュース』(2013年8月11日)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20130811-00027182/
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