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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

教科「道徳」は、子どもの成長の芽を摘む「闇教育」

2019年04月15日 | こども危機
  道徳教育③(毎日新聞【現場から】)
 ◆ 国策の「闇」に目向けて/大阪


 劇作家、くるみざわしん=本名・胡桃澤伸=さん(52)の作品「テキスト闇教育」は、架空の団体「教育復興会議」と、その意図に迎合する下請け会社の教科書作りを巡るドタバタを描く。歴史、公民とともに道徳の教科書も俎上(そじょう)に載せた。
 道徳を巡る場面に、こんなせりふがある。
 …最後はこの22項目にそって教師が子供たちを評価しますから、学びの方向はおのずと決まってきます。子供たちはおとなからのいい評価を求めますから、自分で考え、我々がいい評価を与える答えにたどり着き、自分で考えた気になって、誇りを感じる。あらかじめ敷かれたレールに乗っていることに気づかない
 大阪で医師として働く胡桃澤さんは、「東大阪で教育を考える会」代表として教科書問題にも取り組む。
 きっかけは友人の丁章(チョンチャン)さん(50)だった。丁さんは長女の教科書「中学社会 新しいみんなの公民」(育鵬社)に引用された作家、曽野綾子さんの文章にショックを受けた。
 「人は一つの国家にきっちりと帰属しないと、『人間』にもならないし、他国を理解することもできない」とあった。
 丁さんは在日3世。祖国統一への思い、南北分断への抗議のため、法的には国籍ではない「朝鮮籍」、つまり無国籍を選んでいる。東大阪で育ち、公立校で民族教育も受けてきた。
 「こんな教科書は『平和・人権・多文化共生』を教えてきた東大阪にふさわしくない」。
 採択されないよう運動し、街頭でちらしを配った。そうした活動中「朝鮮人、帰れ」と罵倒されたこともある。育鵬社の教科書は11年に続き、15年にも採択された。
 東大阪市の野田義和市長は、全国の保守系首長でつくる「教育再生首長会議」の会長だ。
 同会議は育鵬社の教科書採択を支援する団体に有償で事務局を委託していたが、首長会議の会費・参加費には公費が支出され、それが不当だとして、胡桃澤さんが代表の市民団体「オール東大阪市民の会」は今年3月に住民監査請求をした。
 「教科書の問題が政治やヘイトスピーチの問題につながること自体がおかしい」と胡桃澤さんは話す。
 胡桃澤さんの祖父は、戦争中、長野県河野村で村長を務めた。
 国策に従い、村人を満蒙開拓団として中国東北部に送り出した。
 敗戦で開拓団の73人は集団自殺。祖父も1947年に自殺。「開拓民を悲惨な状況に追い込んで申し訳ない」と遺書にあった。
 祖父の死は長く語られなかったが、実家のかもいには祖父が縄をかけた跡がいまも残っている。
 「満蒙開拓の悲劇を繰り返すな」
 よく使われてきたスローガンを引き合いに出し、胡桃澤さんは「無責任な国策で国民が切り捨てられる『満蒙の悲劇』は既に繰り返されている」と言う。
 原発米軍基地などの問題と共に「道徳の教科化」もその例に挙げる。「政治と結びついた修身の復活」と考えるからだ。
 「われわれがそれを許しているのが問題。そこに目を向けなけれぱ」と指摘する。

 「闇教育」とは、スイスの心理学者が提唱した子供の心の成長の芽を摘む教育。道徳は政治主導で教科化された背景がある。思想のすり込みに変質する恐れはないのか。
 丁さんは「運動をしてみると、状況はまさに闇。でも、だからこそ希望の光を求めたい」と、あきらめず、取り組みを続けている。【亀田早苗】
『毎日新聞』(2019年4月12日 地方版)

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