=4・2救援連絡センター総会講演=(月刊救援から)
◆ 強制送還一本やりの入管法改悪阻止へ!
名古屋入管でウィシュマさんが死亡した事件の経過に入管の実態が表れている。
ウィシュマさんは日本で英語教師になることをめざして入国した。しかし同居していた男性からDVを受け警察に相談したら、DV被害者として保護されずに不法残留て逮捕され、二〇年八月に名古屋入管に収容された。収容時の体重は八四・九㎏だった。
相手の男性から「スリランカに帰ったら探し出して罰を与える」という手紙を受け取り、当初は帰国希望だったが、在留を希望する。
入管職員が「帰れ、帰れ」と何度もウィシュマさんの部屋に来たため、恐怖を覚えた。二一年一月二〇日、体重は七二㎏(収容時から一二・九㎏激)。
二月五日、外部病院で胃カメラ実施。医師は「内服できないのであれば点滴、入院。(人院は状況的に無理でしょう)」と記載。点滴は受けられず。
二月一〇日、面会に訪れた支援者に対して「点滴を受けたいが受けさせてもらえない」と訴え、面会簿に記載。
名古屋人管職員は「点滴には時間かかかり入院と同しになるので点滴をさせずに連れ帰った」と支援者に述べているが、最終報告書ではこれを否定。
二月一五日、尿検査の結果「ケトン体3+」という異常な数値が出たが、中間報告書には記載なし。「飢餓状態」を示す数値であり、ウィシュマさんも支援者も点滴や外部病院の受診を求めたが入管は何もしなかった。
三月四日、外部病院受診(精神科)。医師は診療録に「支援者から『病気になれば仮放免してもらえる』と言われた頃から、心身の不調を生じており、仮病の可能性がある」と記載。これは入管職員から提供された情報に基づくものて、支援者はこのようなことは述べていない。「患者が仮放免を望んて、心身の不調を呈しているなら、仮放免してあげれば、良くなることが期待できる。患者のため
を思えは、それが一番良いのであろうが、とうしたものであろうか?」とも記載。
六日、朝から反応が弱く、血圧・脈拍確認できなかったが、救急搬送せず。午後二時七分頃、呼びかけに無反応、脈拍確認できず。三時二五分頃、搬送先病院で死亡が確認された。
司法解剖時の体重は六三・四㎏、収容時から二一・五㎏減。
その後、ウィシュマさんの家族代理人として一一月九日には名古屋地検へ刑事告訴し、二二年三月四日には名古尾地裁へ国家賠償請求訴訟提訴した。
◆ ウィシュマさんの死から見えてきたこと
1、入管は帰国に同意しない者には医療を行わない。これは強制送還のためには外国人の命も人権も顧みないということだ。
一六年四月の入管通知では「送還忌避者の発生を抑制する適切な処遇及び送還業務について、様々な工夫や新たな手法を取り人れるなど、我か国に不安を与える外国人の効率的、効果的な排除に、具体的かつ積極的に取り組んでいく」としている。
2、仮放免不許可を、帰国意思を持たせるための拷問として使っている。
最終報告書では仮放免不許可を相当の根拠があり、不当と評価できないとしている。
その理由①「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要」があること。
理由②「仮放免されてこれら支援者の下で生活するようになれば、在留希望の意思がより強固になり、帰国の説得や送還の実現がより一層困難になる」としている。
3、ウィシュマさん死亡問題の入管開示資料は一万五一一三枚全てが黒塗り。
ビデオを閉示しないのも保安上の理由としており、今も遺族にビテオを渡さない。
4、送還を拒否する外国人の多くは、難民申請者だったり、日本人・永住者等と結婚して子どもがいたり、日本で長期間働いてきた人か多い。
入管は送還を受け入れさせるために、長期収容を継続し、医療を受けさせないのだ。
◆ 戦後の入管体制とは
戦前の台湾・朝鮮の植民地支配は、皇民化政策とそれへの反抗を抑えるために国内における徹底した台湾人・朝鮮人への管理・支配を行った。それを実行したのが特高警察だ。
戦後における台湾人・朝鮮人からの一方的的国籍剥奪と管理・支配から入管体制が成立し、変遷を重ねてきた。
入管法「第五章 退去強制の手続」は、一般の刑事手続きとは異なり、司法権による歯止め(令状主義)や審査を排除している。入管が裁判所、検察、警察の役割をすべて担う。
外国人登録令+出入国管理令
→外国人登録法+出入国管理・難民認定法
→出入国管理・難民認定法(外国人登録法の廃止)
と形を変えてもそこは一貫している。
戦前の特高警察が入管職員に引き継がれ、差別と偏見に基づく社会的冶安制度につながっている。
現在のニュー・カマーに対する徹底した管理・支配はこうした歴史と重なる。
◆ 入管とどう闘うか
ウィシュマさんのことは本当に申し訳ないと思う。二度とくりかえさせないためにも入管庁本省の責任を徹底して追及する。強硬方針で全てを送還しようとする入管庁に問題があるのだ。
今、入管が対象にしているのは三千人強の送還忌避者である。この人たちは難民だったり、日本人配偶者、子どもたちとその家族がいる人たちだ。
何としても入管法改悪を阻止して、送還一本やり方針にとどめを刺すしかない。
『月刊救援 637号』(2022年5月10日)
◆ 強制送還一本やりの入管法改悪阻止へ!
弁護士 指宿昭一
名古屋入管でウィシュマさんが死亡した事件の経過に入管の実態が表れている。
ウィシュマさんは日本で英語教師になることをめざして入国した。しかし同居していた男性からDVを受け警察に相談したら、DV被害者として保護されずに不法残留て逮捕され、二〇年八月に名古屋入管に収容された。収容時の体重は八四・九㎏だった。
相手の男性から「スリランカに帰ったら探し出して罰を与える」という手紙を受け取り、当初は帰国希望だったが、在留を希望する。
入管職員が「帰れ、帰れ」と何度もウィシュマさんの部屋に来たため、恐怖を覚えた。二一年一月二〇日、体重は七二㎏(収容時から一二・九㎏激)。
二月五日、外部病院で胃カメラ実施。医師は「内服できないのであれば点滴、入院。(人院は状況的に無理でしょう)」と記載。点滴は受けられず。
二月一〇日、面会に訪れた支援者に対して「点滴を受けたいが受けさせてもらえない」と訴え、面会簿に記載。
名古屋人管職員は「点滴には時間かかかり入院と同しになるので点滴をさせずに連れ帰った」と支援者に述べているが、最終報告書ではこれを否定。
二月一五日、尿検査の結果「ケトン体3+」という異常な数値が出たが、中間報告書には記載なし。「飢餓状態」を示す数値であり、ウィシュマさんも支援者も点滴や外部病院の受診を求めたが入管は何もしなかった。
三月四日、外部病院受診(精神科)。医師は診療録に「支援者から『病気になれば仮放免してもらえる』と言われた頃から、心身の不調を生じており、仮病の可能性がある」と記載。これは入管職員から提供された情報に基づくものて、支援者はこのようなことは述べていない。「患者が仮放免を望んて、心身の不調を呈しているなら、仮放免してあげれば、良くなることが期待できる。患者のため
を思えは、それが一番良いのであろうが、とうしたものであろうか?」とも記載。
六日、朝から反応が弱く、血圧・脈拍確認できなかったが、救急搬送せず。午後二時七分頃、呼びかけに無反応、脈拍確認できず。三時二五分頃、搬送先病院で死亡が確認された。
司法解剖時の体重は六三・四㎏、収容時から二一・五㎏減。
その後、ウィシュマさんの家族代理人として一一月九日には名古屋地検へ刑事告訴し、二二年三月四日には名古尾地裁へ国家賠償請求訴訟提訴した。
◆ ウィシュマさんの死から見えてきたこと
1、入管は帰国に同意しない者には医療を行わない。これは強制送還のためには外国人の命も人権も顧みないということだ。
一六年四月の入管通知では「送還忌避者の発生を抑制する適切な処遇及び送還業務について、様々な工夫や新たな手法を取り人れるなど、我か国に不安を与える外国人の効率的、効果的な排除に、具体的かつ積極的に取り組んでいく」としている。
2、仮放免不許可を、帰国意思を持たせるための拷問として使っている。
最終報告書では仮放免不許可を相当の根拠があり、不当と評価できないとしている。
その理由①「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要」があること。
理由②「仮放免されてこれら支援者の下で生活するようになれば、在留希望の意思がより強固になり、帰国の説得や送還の実現がより一層困難になる」としている。
3、ウィシュマさん死亡問題の入管開示資料は一万五一一三枚全てが黒塗り。
ビデオを閉示しないのも保安上の理由としており、今も遺族にビテオを渡さない。
4、送還を拒否する外国人の多くは、難民申請者だったり、日本人・永住者等と結婚して子どもがいたり、日本で長期間働いてきた人か多い。
入管は送還を受け入れさせるために、長期収容を継続し、医療を受けさせないのだ。
◆ 戦後の入管体制とは
戦前の台湾・朝鮮の植民地支配は、皇民化政策とそれへの反抗を抑えるために国内における徹底した台湾人・朝鮮人への管理・支配を行った。それを実行したのが特高警察だ。
戦後における台湾人・朝鮮人からの一方的的国籍剥奪と管理・支配から入管体制が成立し、変遷を重ねてきた。
入管法「第五章 退去強制の手続」は、一般の刑事手続きとは異なり、司法権による歯止め(令状主義)や審査を排除している。入管が裁判所、検察、警察の役割をすべて担う。
外国人登録令+出入国管理令
→外国人登録法+出入国管理・難民認定法
→出入国管理・難民認定法(外国人登録法の廃止)
と形を変えてもそこは一貫している。
戦前の特高警察が入管職員に引き継がれ、差別と偏見に基づく社会的冶安制度につながっている。
現在のニュー・カマーに対する徹底した管理・支配はこうした歴史と重なる。
◆ 入管とどう闘うか
ウィシュマさんのことは本当に申し訳ないと思う。二度とくりかえさせないためにも入管庁本省の責任を徹底して追及する。強硬方針で全てを送還しようとする入管庁に問題があるのだ。
今、入管が対象にしているのは三千人強の送還忌避者である。この人たちは難民だったり、日本人配偶者、子どもたちとその家族がいる人たちだ。
何としても入管法改悪を阻止して、送還一本やり方針にとどめを刺すしかない。
『月刊救援 637号』(2022年5月10日)
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