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自動ピアノ4  1920年代のオリジナル作品集

2016-03-13 22:18:13 | CD


・ストラヴィンスキー:ピアノラのための練習曲
・ヒンデミット:トッカータ
・ハース:ハ長調のフーガ
・ハース:間奏曲
・トッホ:習作IV:ジャグラー
・トッホ:ヴェルテ=ミニョン・ピアノのための3つの独創的小品
・ムンク:6つのポリフォニックな練習曲 エレクトリック・ピアノのための
・ロパトニコフ:スケルツォ
・カゼッラ:ピアノラのための3つの小品
・マリピエロ:ピアノラのための3つの即興曲
・デュシャン:彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも:音楽的誤植
・アンタイル:メカニック 第1番
・アンタイル:バレエ・メカニック 4台のピアノと8手のための

ベーゼンドルファー・グランドピアノ
監修:ユルゲン・ホッカー

MDG: 645 1404-2



 自動ピアノと言えばナンカロウのようなキワモノのイメージがありますが、このディスクではリストを見てもわかる通り結構メジャーどころの作曲家が並んでいます。中には作曲家でない人も混ざっていますが……。

 自動ピアノ作品の魅力はなんといっても人間には到底演奏不可能であることです。複雑で高速なリズムを正確に刻み、広い音域をよどみなく横断し、何十もの音を同時に発生させるのは機械でしかできません。とはいえ、この作品集ではナンカロウのようなブッ飛んだものは少なめで、非常に聴きやすい一枚になっています。

 特にお気に入りなのがエルンスト・トッホの『ジャグラー』です。



 最初はファミコンの音楽のような雰囲気ですが、どんどん音の量が増えてきます。まさにジャグリングをしているように、投げ上げるボールが次々と増えていくような感じで、非常に楽しい一曲。人間が演奏するバージョンもあるようなので、興味のある方は探してみてください。

 アンタイルの『バレエ・メカニック』は以前に紹介したように打楽器やら何やらで演奏する作品で、収録されているのはピアノバージョン。まるで違う曲に聴こえるのが不思議。逆にテンポを落としてずっしりと演奏しています。

 そして、作曲家でない人というのはもちろんダダイズムの美術家マルセル・デュシャンのことです。『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』という作品はデュシャンの代表作で、通称「大ガラス」と呼ばれています。人間の生々しさを概念化・象徴化して、機械的に設計して大きなガラスに描き込み、そのうえ偶然にもガラスにヒビが入った、という作品。私はそのレプリカを観に行ったことがありまして、非常に謎めいた作品ですが、巨大かつ繊細で、限りなくドライではあるけれども人間を肯定する眼差しがあると感じました。その展覧会で買ったプログラムがまだあったので、図版を紹介。



 音楽の方のタイトルには「音楽的誤植」とありますが、その意図は不明です。7曲からなり、合計でも3分ちょっとの短い作品。比較的ゆったりとしたテンポで、幾つかの音のラインを聴き取ることができますが、やっぱり「大ガラス」同様になにやら謎めいていてよくわかりません。「音楽的誤植」というからには「大ガラス」そのものではないと考えられますが、なんせダダイストのデュシャンのことですから意味があるのかどうかも疑わしいですね。

 というわけで、現在の電子音楽の祖先のような自動ピアノ作品集、1920年代でありながら極めて現代的な一枚でありました。

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