開花状況報告の第2部は、見本園の蓮のなかでも、とくに珍しい妙蓮(みょうれん)をご紹介します。
妙蓮のマス全体はこんな感じです。
妙蓮は、その名のとおり、妙な蓮です。第一に、その花弁数が300~6000枚! 蓮の花弁の数は、25枚以下を一重、50枚以上を八重としていますので、その凄さが分かります。
蕾を見ても、すでに多くの花弁が重なり合っているので分かります。蕾のときは、通常の八重咲種と同じで、一つの茎に一つの花がついている状態です。
ところが、どんどん大きくなって外の花弁が落ちると、今度は同じ茎から新しい丸い花が2つ、3つ、4つと現れてきます。時には12もの花がひとつの茎からひしめき合って咲くそうです! え? ひとつの花から複数の花へ?
渡辺達三著『魅惑の花蓮』(190ページ)では、妙蓮が次のように解説されています:
「花托が分岐し、それぞれの花托に花弁をつけるため、複数の花をつけているようにみえます。花弁は多いものでは数千枚に達します。雄ずいはありません。花つきは少ない。」
*雄ずい(ゆうずい)とは、雄しべのことです。
上と下の写真では、すでに外側の花弁が落ちて、なかで複数の花がつきはじめています。花弁に条線はほとんど見られません。他の蓮の花びらより薄いのか、羽毛のようにふわふわしています。
その花弁の多さから、他の蓮のような満開の状態にはならない、というか、なれないようです。下の写真は、会員O氏が2011年8月2日に撮影したものです。O氏にいろいろと妙蓮について教わりました。
前述のとおり、雄ずいがないので、蓮の実はできません。妙蓮の第二の特性は、繁殖は蓮根によってのみ行われることです。ひたすら純血を保つ蓮なのですね! だから花つきが少ないのでしょうか。あとでできた小型の丸い群花たちは散ることがなく、そのまま乾燥花になります。この時期、雨に濡れると黒ずんできます。
妙蓮のマスには、果托がなく、花たちがゆっくりと枯れていきます。妙蓮は、花弁が多く重いので、支えがないと下を向いたままの花も。
下の枯れた妙蓮は、花が三つ以上あります。
さらに上記の『魅惑の花蓮』(190ページ)によれば、妙蓮はその歴史も妙だったようです――
「滋賀県守山市の田中家は1406年頃より本種を保存していましたが、一時たえ、同所から分根したとみられる金沢市持明院のものを1963年に植えています。金沢市持明院、守山市大日堂の妙蓮は、それぞれ、国、県の天然記念物に指定されています。」
(担当: れい)