大賀ハスのふるさとの会

東京大学からハス見本園の管理を引き継ぎ、観蓮会の開催・ ハス文化の継承と普及を行うため組織されたボランティア団体です

2022年8月20日 活動報告 環境整備と蓮の系統保存について

2022-08-21 16:31:33 | 日記
今日は残暑の厳しい気温30℃のなかでの活動となりました。作業内容としては、主に咲き終わった蓮の果托の切り取りと下草の処理を行いました。

日陰のない炎天下での作業なので、汗が滝のように流れてきます。湿度が高かったので辛かったです!

それでも美しく咲き誇る蓮たちを見ていると、涼しい穏やかな気持ちになります。請所(うけしょ)という背の高い蓮と、同じく背の高いボランティアK氏です。
刈った下草をあつめていたら、クワガタの残骸がたくさん散っていました。おそらく鳥に食べられたあとでしょう。
ハス品種見本園では、珍しいチョウトンボが飛んでいます。今年はじめて発見したときは、ボランティア一同どよめきました。ボランティアO氏による一枚です。


ここで、なぜハス品種見本園では、咲き終わった蓮の果托を必ず切り取るのかについて少しお話します。

毎年、種がこぼれる前に果托を切り取るのは、蓮の品種を現状のまま保存・維持するためで、「系統保存」と言います。大賀ハスのふるさとの会では、すべての蓮を蓮根からのみ繁殖させています。蓮根から増やさないと純粋な品種であると言えないからです。下の写真は、長いあいだ系統保存されてきた艶陽天と西光寺白蓮です。(ボランティアO氏撮影)

例えば、ハス品種見本園では「大賀蓮」が栽培されています。名札に「大賀蓮」とあるのは、70年前に検見川の遺跡から発掘されて発芽した一粒の実の蓮根からのみ増やしてきているからです。

逆に、大賀蓮の蓮根ではなくその「種」から育った蓮は、姿かたちが同じに見えても、もはや「大賀蓮」とは呼んでいません。見本園ではそれを「検見川蓮」と名付けて栽培しています。下の写真は検見川蓮の果托です。

それでも広い見本園、見逃されて大きくなった果托は多くの成熟した種をかかえて茶色くなります。空洞ばかりの果托が残っているということは、種を採取したのでなければ、水中に落ちた種は発芽し、異品種が交雑した蓮が生まれる可能性があります。

翌年以降、そこから咲いた花が明らかに名札の品種名の特徴と異なる場合は、系統保存された蓮根と差し替えることにしています。きれいに花を咲かせるだけでなく、ちゃんと系統保存しようと思ったらけっこう大変なのです。下の写真は、品種の特徴がちゃんと出ている系統保存された杏花春雨です。

とは言え、この状況を蓮の立場からみるとどうでしょう? 1億年以上前から激しい気候の変化を生きのびてきた蓮は、蓮根と実生(みしょう)からの繁茂をうまく使い分けてきたのではないでしょうか。というのが、実際にお世話をしていて感じるのは、蓮とは蓮根の生長もすごいのですが、種の生成と拡散も凄まじい勢いがあるということです。
今年は特にベトナム蓮が多くの花をつけています。

夏になれば日本のあちこちで蓮の花が咲きますが、なかでもこの見本園に来れば大賀蓮をはじめ、世界の蓮の花の景色に触れることができる素晴らしさを実感した活動でした。

活動報告は以上です。

(担当: れい)
コメント (3)
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2022年8月6日の活動報告 ハスはまだ咲いています

2022-08-07 11:34:32 | 日記
私たちの活動している旧東京大学農学部付属緑地植物実験場のハス見本園の一般開放が7月24日で終わり、その後久しぶりの、8月最初の活動日です。猛暑の後の雨と涼しさのおかげで、けさは朝9時の気温26度、薄曇りの空模様です。
今日の作業は、藻取り、ハス茶を作るための葉の採取、追加の肥料やり、などです。さらに一部の果托も刈り取りました。

今日は嬉しいニュースがありました。珍しい黄色い花をつけるバージニアが、ちょうど2本開花したとのこと。作業の前にバージニアを見てきてくださいとの、事務局からのお知らせです。

中央手前と一番奥がバージニア。右側のピンクの花は琴台歌手です。バージニアは他のハスの爽やかな香りとは違って、キャラメルのような甘い香りがします。7月の一般開放中にも2本咲いたのですが、その後この2本が咲き、蕾が2本でました。(さらに翌8月7日(日)にはもう2本の蕾が確認されたそうです。)
今年は頑張って、珍しい黄色い花を咲かせてくれています。見出し画像はこのバージニアのアップ写真です。ボランティア仲間Oさん撮影の写真を使わせていただきました。

下は別の角度から見たバージニアと他のハスたちです。琴台歌手の蕾にはちょうどトンボが止まっていますね。


ハス茶用の葉の刈り取り作業です。蕾がついている立葉は、刈り取ってしまうと蕾がそのまま枯れてしまうので切ることができません。注意して刈り取る葉を選び、品種名を書いた名札をつけておきます。A列から始めました。これは蜀紅蓮です。

下は毎葉蓮の刈り取りです。ラベルに品種名を書いています。

だいぶ葉が採取できました。右側では西湖紅蓮がきれいに咲いています。

下はC-2の天昇ですが、蕾にヤゴの抜け殻がついていました。よく見ると他にも蕾が2本あって、これから咲いてくるはずです。


葉っぱの採取が終わったので、一部の形の良い果托を採取し始めました。品種名の名札もつけて、種がこぼれ落ちないように袋に入れます。


採取した果托は、温室内で乾燥させています。こぼれた種も、品種名を書いた名札とともに保管しています。次回の活動日にも果托の採取をするでしょう。

B1-15の大賀ハスのマスです。今年は一度花を咲かせたのですが、ご覧のように葉っぱも少な目であまり生育がよくありませんでした。今は藻がはびこっていますので、取り除く作業をします。
網でもなかなか掬いきれない藻を、この竿でからめとります。


藻がズルズルと引っ張り出されてきました。竿の先を見せてもらうと

このように棕櫚を竿の先に取り付けたお手製のものだそうです。ハスの葉や蕾を傷つけにくく、取れた藻もはがしやすいそうです。

その他今日は事務所前の鉢を移動したり、追加の肥料を撒いたりしました。肥料が効いて、ハスたちがもう一花咲かせてくれるといいですね。

今日はハス見本園の一番奥にあるベトナム(桃)が満開でした。

さらにその隣の菊花粉です。小型のハスです。

その前、E列の一番端、八重茶碗蓮も満開です。
上から撮るとこんな感じです。八重で赤色がかなり濃いです。


A1列奥の蜀紅蓮(上)とその隣A2列の唐蓮(下)も、背丈高く花を咲かせています。


中央の大きな花は西湖紅蓮です。左側に上の写真にある唐蓮が写っていますが、どちらも背がとても高く葉っぱも大きいです。もう一つよく似たピンクの花を咲かせている、背の高いハスがありました。明光蓮です。


奥のD列E列には中国、ベトナム、タイなどのハスが多く植えられています。下は西施殿(上)、チェンマイ(白八重)(下左)、暁色雲開(下右)です。どれもE列にありますが、タイミングが合わないとなかなか開花中に巡り合いません。


下左は細碗碧蓮、右は露華紅です。


ところで今日は、事務所入り口に置いてある大きな盥の大賀ハスが咲いていました。蕾もあります。


ハスではありませんが、ここでは睡蓮も花をつけています。ベトナム(桃)の隣です。ちょうど白い花が咲いていて、水面にその姿を映していました

ハスの葉とスイレンの葉の違い。スイレンは切れ込みがありますが、ハスの葉にはありません。またスイレンは水面上に葉が浮き、花を咲かせますが、ハスは葉も花も水面から上に伸びます。スイレンのマスには金魚とメダカも泳いでいますよ。

最後にご報告です。正門入ったところの修景池ですが、大賀ハスの蕾がまた出てきました。いつもお世話をしてくださるボランティア仲間のSさん、ほんとうにありがとうございます。


今日の活動報告は以上です。
(担当: えむ)

コメント (1)
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