どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

いたずらのすきなけんちくか

2020年08月15日 | 絵本(日本)

   いたずらのすきなけんちくか/原作・安藤忠雄 絵・はたこうしろう/小学館/2020年

 

 新しく出来た図書館『こども本の森 中之島』に来た小学生の兄と妹が図書館の探検です。

 高い壁一面に子どもの本がぎっしり。

 秘密の匂いがする空間に入ると、天井のまあるい穴から 光がさしこんでいます。

 建築家のおじさんが館内を案内してくれました。

 おじさんは建物にいたずらを しこむといいます。

 外観にピーナツみたいなあなぼこがあり、よるとやみに うかびあがるオペラホール

 宇宙船みたいな美術館、だれもが おもっきり はしりたくなる島のホテル

 壁一面の十字架から 光がふりそそぐ教会

 一見、無駄に思えるもの、すぐには こたえがわからないもの そういうものが じつはいちばんおもしろい というおじさん。

 建物ができまでのプロセスも簡単ではありません。建物にいつのまにか 命がやどり 新しい物語がはじまるといいます。

 安藤さんの設計された建物の写真、表紙の見返しには建物のスケッチものっています。

 想像をふくらませ、夢のあるつかいやすい住まい、手が届きませんが空想が広がりました。

 この図書館は、コロナの影響で開館が7月にのびていますが、動画でもみることができました。ただいろんな意見もあります。


食う 寝る

2020年08月13日 | 昔話(日本)

        いまに語りつぐ日本民話集5/監修:野村純一・松谷みよ子/作品社/2002年

 

食って寝の男(山形県)

 あるところに、たいそうななまけ男がいて、食うのも 食わせてくれないと食わないでいたので、干死んだと。

 この男エンマ王に、ネコに生まれ返してやると言われ、口ばしと鼻を白くしてくれという。

 「寝転んでいて、ネズミが団子と思って食いついたら、すぐに捕まえて食うから」と男が言ったので、エンマさまもあきれたと。

寝てて食れるところ(岩手県)

 寝てて食くれるところへ婿に行かないかといわれ、奥山の古寺につくと、仲人は「この六地蔵の前にいると、山から化け物がでてきて食れるから、寝てれ食れるとこだ」といったと。

寝とって食われる(和歌山県)

 村の祭りに見世物師がやってきて、寝ておっても食うていける方法があるという。

 死んでしまった虎の皮を着て、虎の小屋で寝てくれればいいという。

 何日かして、見世物師は、別の檻に入れられているライオンと戦わせるからと、客に特別料金を払うようにいった。

 虎の皮をかぶっていた男が、もう命がないと覚悟していると、ちかずいてきたライオンが「心配すんなよ。わしも皮着せてもろうておるんじゃ」と、いったと。

 

 楽して食えたならいうことはありません。昔話になまけ者がよくでてくるのは、それだけ労働が厳しかったことの反映でしょう。


菊酒

2020年08月12日 | いろいろ

          クレヨン王国笑えるむかし話/福永令三/講談社/2010年

 

 落語の中から・・。

 庭先の菊をめでながらの酒もり。そのうち一人の客が、「御秘蔵の菊、失礼ながら。」と、花を少々、盃にちらして飲む。亭主が聞くと「薬どころか、これを飲めば七百歳も生きというから」

 一座のもの、それは妙薬と、われもわれもと菊の花をむしっては飲むので、亭主も気が気ではなくなって、つい、いった。

 「それは結構な寿命のお薬かもしれませんが、ちっとは、ご子息や嫁御の身にもなってごろうじませ」

 

 オチは複雑です。


ブラウンぼうやの とびきり さいこうの ひ

2020年08月11日 | 絵本(外国)

       ブラウンぼうやの とびきり さいこうの ひ/イソベル・ハリス・文 アンドレ・フランソワ・絵 ふしみ みさを・訳/ロクリン社/2019年

 
 ブラウンぼうやは4歳。アメリカの大都市で豪華なホテル暮らし。暑さ寒さは気にする必要がありません。
 
 ホテルは地下鉄のトンネルにまっすぐつながっていて、地下鉄はパパの会社のビルにつながっています。
 ママも、働くお店が地下鉄につながっていて、一度も外に出ないですみます。
 
 出だしは近未来風。原著は1946年の発行です。
 
 メイドのヒルダさんが田舎の家に招待してくれました。ヒルダの弟の おまわりさんが迎えに来てくれて びっくり。
 ブラウンぼうやは階段が珍しくて11回ものぼったり、おりたり。
 
 ケーキ作りを手伝ったり、カナリヤやイヌとなかよしになり、雪だるまをつくったり。
 
 大きなテーブルをかこんでお茶の時間。
 
 楽しい時間があっという間に終わって、バスでかえる途中、街ではせっせと雪かきしている最中。せっかくの きれいな雪なのに かたづけられるなんて。
 
 またホテル生活にもどりますが、パパとママは今夜は外でごはん。一人目を閉じていると、まだヒルダの家にいるみたい。
 
 ほんとに ほんとうに、とびきりさいこうの 一日でした。
 
 70年以上も前の絵本で、彩色は茶色の濃淡がうまくいかされています。

 ホテル生活で全てがすむブラウン一家とヒルダさんの生活を対比させ、なにが幸せかさらりと考えさせてくれます。70年前より今の時代に訴えるものがあります。


くそとみその話・・山梨

2020年08月10日 | 昔話(北信越)

・くそとみその話(山梨県/いまに語りつぐ日本民話集5/監修:野村純一・松谷みよ子/作品社/2002年)

 でかけたついでに味噌を買ってかえる途中、野糞をした市兵衛が、このままおいては惜しいと、蕗の葉っぱに包んで家に帰り、味噌で「ほうとう」でもつくるように女房にいう。

 「珍しく気がきいたこと」と、女房が包みを開けると鼻持ちならないくささ。

 糞だめに投げ込んだ方が味噌だったというおち。昔話、落語、小話には共通部分も多い。

 昔は排せつ物も貴重な肥料の時代。

 小話のような昔話でおちが 楽しめます。ただ、子どもには説明が必要でしょうか。

 

 「くそみそ一緒」というと、価値あるもの、ないものを一緒にするという慣用句。


まちがいまちにようこそ

2020年08月09日 | 絵本(日本)

     まちがいさがしにようこそ/斉藤倫・うきまる・作 及川賢治・絵/小峰書店/2019年

 

 いい天気の日、おとうさんとおかあさん、犬のころと、ぼくが引っ越したのは「まちがいまち!」。
 到着してすぐに目にとびこんできたのは「あなばたけ」。あなを そだてています。

 町の人が忙しそうにかけているのは、携帯電話ならぬ「兵隊でんわ」。

 町の住宅の屋根には、煙突ならぬ「鉛筆」。

 駅の改札では、定期ならぬ「ケーキ」をみせて 通ります。

 バスは、椅子ならぬ「リス」に 座ります。

 池のフラメンコ、水族館でマンゴーが泳いでいたり、金魚すくいでは、人魚をつり、駒回しならぬ熊回しと、あれれと思うばかり。

 「言葉遊び」ですが、ちょっと例が多すぎて、ちょっとついていけないところも。

 普段当たり前と思っているものでも、視点を変えると見えるところもありそうです。


トランクのなかの日本

2020年08月09日 | 画集・写真集


     トランクのなかの日本 米従軍カメラマンの非公式記録/ジョー・オダネル/小学館/1995年初版


 若い海兵隊員が、カメラマンとして1945年9月から1946年3月まで、ヒロシマ、ナガサキほか日本を記録した非公式記録写真(私用のカメラ)で、戦後ずーとそのままにしていたという。出版されたのは1995年。

 1995年には、スミソニアン博物館でも展示が企画されていたのが、キャンセルになったといいます。

 出版直後に、日本で写真が展示され、昨年も安全保障関連法案が国会で議論されていたとき、この写真展が開催されていたようです。

 戦争の傷跡だけでなく、少ないながら戦後直後の人びとの生活の状況もうかがえます。

 雨の夜、海兵隊員が蒸気機関車との事故で10名が亡くなって、その出棺風景もあります。

 もちろん、広島、長崎の廃墟と化した風景に息をのみますが、やはり衝撃だったのは、一人の少年が、直立不動で赤ん坊の焼却を見送る場面です。

 少年の弟は夜の間に死んでしまったのだといいます。幼児の焼却を、まっすぐ背筋を伸ばし、見つづけた少年。

 長崎に原爆が落とされてから75年。2019年11月、長崎でのローマ教皇の演説では「焼き場に立つ少年」のパネル写真をそばにき、核廃絶の必要性を訴え、あらためて注目されました。

 NHKEテレで「焼き場に立つ少年をさがして」と、写真の撮影日時、場所を特定する特集が放送されていました(2020.8.8)。

 この当時、親を亡くし戦争孤児になった子どもは2300人ほどだったといいます。当時のことは家族にもはなしていないという人が、この放送をきっかけに体験を話されていました。

 原爆はうつるとからかわれ、何年後かに自殺したという話を聞いて、思わず絶句。

 焼き場に立つ少年とおなじような体験をした人も高齢化で少なくなります。この少年はその後、どうなったのでしょうか。


へのかっぱ

2020年08月08日 | 絵本(日本)

    へのかっぱ/飯野和好/絵本館/2014年

 

 絵本のテーマもさまざま。

 さまざまな慣用句が、強烈な絵で展開します。一度に読む必要はありません。とはいえ、次が気になります。

 表題の「へのかっぱ」や「鼬の最後っ屁」「馬が合う」「狐につままれる」など、15の慣用句(蛇足として一覧になっているのも親切)。

 身構えなくても、楽しみながら覚えられるのが絵本の特権。ただいまでは あまり使わない慣用句もありました。


へんしーん ねずみくん

2020年08月07日 | 絵本(日本)


    へんしーん ねずみくん/作・なかえよしお 絵・上野紀子/ポプラ社 2014年

 

 きつねの「へんしんや」でうさぎさんに へんしんした ねずみくん。

 ねみちゃん、あひるさん、おさるさん、ぶたさん、ぞうさん、らいおんさんもきがつきません。

 ところが、あかいリボンをつけた うさぎさんが ついてきます。どこまでも ついてくるので 正体をあらわすと、じつは ねみちゃんが へんしーん していたのでした。

 余白がいっぱいのなかに、ねずみくんが ちょこっと 描かれ 文字は地が一面緑の中です。

 表紙のねずみくん こぶしを つきだして 気合十分。

 ねみちゃん ねずみくんの へんしんに どうやら きづいていたみたい。なぜ?


せんそうがやってきた日

2020年08月06日 | 絵本(社会)

   せんそうがやってきた日/ニコラス・デイビス・作 レベッカ・コップ・絵 長友恵子・訳/すずき出版/2020年

 

 コロナ禍で普段当たり前と思っていた日常が失われています。人と交流し、にぎやかに会話し、劇場にいくのもできなくなりました。

 いつもの朝。学校での授業。けれども学校のランチタイムのすぐあとに、ヒューンという音がきこえてきたとおもったら とつぜん かみなりのような音がとどろき、煙と火と 大きな音にのみこまれました。

 町が瓦礫になって、なにもかも うばってしまい わたしは ぼろぼろで 血だらけで ひとりぼっち。

 さむさと雨の中で 野原を 山を 道を 泥だらけになって 走り トラックや荷台に のせてもらい いまにもしずみそうなボートに乗って 浜辺につくと 砂の上には、小さな靴がいくつも。

 せんそうは からだに 目のおくに 夢の中まで おいかけてきて 心は せんそうに 占領されてしまった。

 学校の窓の中には 火山の勉強をしたり 歌を歌ったり 鳥の絵をかいたりしている子どもたちが。

 先生は わらいながら「あなたの場所はありません。わかりますね。いすがないのです。さあ、いきなさい」

 ひきかえして 難民小屋までもどり 毛布に くるまっていると・・・。

 2016年春、イギリスで、3000人の孤児の難民の受け入れが拒否され、同じ頃、座るイスがないという理由で難民の女の子が学校への入学を断られことを聞いた作者が書いた詩がウェブサイトに掲載されると、数えきれないほどの誰も座っていない椅子のさまざまな画像がツイッターに投稿されたと あとがきに ありました。

 色も形も違う椅子がいくつもならび、「せんそうをおしかえしながら 一歩 一歩 すすむ」という最後にジーンとしました。


ぶんぶくちゃがま

2020年08月05日 | 絵本(昔話・日本)

       ぶんぶくちゃがま/富安陽子・文 植垣歩子・絵/小学館/2010年

 

 村はずれのお寺にやってきたタヌキが、おそなえの団子を失敬しようとした時、小僧どんにみつかりそうになり、あわててドロロンパッと、大きな 茶釜に化けました。

 小僧どんが、和尚様にいわれ、茶釜を磨くと「こぞう、こぞう。そうっと みがけや。きつう こすると、おしりが むけるぞ」と茶釜の声。

 びっくりした小僧どんが、和尚様に報告すると、「高価な茶釜と いう ものは、みがけば そんな音がするもんじゃ。もうみがくのはいいから、茶釜に水を入れて、火にかけておくれ。茶を 一ぷく のみたいでな」

 そういわれて、囲炉裏に茶釜をのせると、茶釜が あばれ、囲炉裏を転げまわりました。

 タヌキのばけた茶釜は村のはずれの はらっぱに すてられてしまいました。

 それを拾ったのは古道具屋のおやじ。

 元の姿にもどれなくなったタヌキのいうとおり、見世物小屋でタヌキの芸当を披露すると、大評判。毎日毎日、あちこちからお客がつめかけて、小屋は、おすな おすなの 大賑わい。お金もたっぷり儲かります。

 ところが、古道具屋のおやじさん、欲はなく、お金儲けは、もう じゅうぶんだ。これからは のんびり 山のお寺で 暮らしてはどうだ?とタヌキに提案。

 タヌキは茶釜のまま、お寺で暮らすことになりました。

 

 小僧どんが、力仕事や驚いてかく汗 仕事も大変そうです。本文にはでてこない ネコの表情にも注目です。


そらがおちてくる、この世のおわり、たいへんたいへん、にげろ!にげろ?

2020年08月04日 | 絵本(昔話・外国)

 いろいろな国に「空がおちてくる」と大騒ぎする話が数多くあります。


       そらがおちてくるんです/スリランカの昔話/福音館書店/2015年

 月刊予約絵本「こどものとも年中むき」。

 空がこわれておちてきたらどうなるかと、うとうとしていたうさぎ。
 何かが落ちる音がして、びっくりしたうさぎは飛び起きて走り出します。途中あったカメ、シカ、ゾウ、キリンさん。
「話す時間がない。空がおちてくるんだ」
 動物たちが
  ぴょん ぴょん ぴょん
  たっとこ たっとこ たっとこ
  どすん どすん どすん
  すたたた すたたた すたたた
 とみんな走ります。
 昼寝をしていたライオンの王さまがゆっくりと話をきいて、「きみは それを みたのかい? よし、では みんなで やしきのしたまで いってみよう」
 とみんなで、屋敷にいってみると、そこには木の実がひとつ落ちていただけ。

 シンプルな絵で、ライオンがネコのよう。


この世のおわり(世界のむかし話/瀬田貞二・訳 太田大八・絵/1971学習研究社 2000年のら書房)

 メンドリが森を歩いていると、ドングリが一つ落ちてきて、「空がこなごなになって落ちてきたんだわ。この世のおわりがきたんだわ」と思ったメンドリが、ぶたやめうし、犬、きつね、おおかみ、くまと森の洞穴にかくれます。
 しかしいつまでたってもなんにもおこらず、お腹をすかせた動物たちは、さわぎをはじめたメンドリを食べてしまいます。
 それでもまだ、お腹がすいてたので、ぶた、めうし、おんどりも食べられてしまいます。
 のこったのはくま、おおかみ、きつね。
 今度はきつねが食べられそうになりますが・・・・。
          

 「そらがおちてくるんです」は、事件はおきないのですが、「この世のおわり」では、食べられてしまう場面もでてきます。どちらが子どものこころをとらえられるか興味のあるところです。




        たいへん たいへん/渡辺 茂男・訳 長 新太・絵/福音館書店/1968年

 「こどものとも」1968年の発行で、イギリスの昔話です。

 ある日、めんどりが、とうもろこしばたけで とうもろこしを食べていると、ぽとん! なにかが、頭の上に落ちます。
 「おうさまにおしらせしなくちゃ」とかけだしためんどりは、おんどり、ぐわぐわがちょう、くっわくっわあひる、しちめんちょうにあって、そらがおちてくると大騒ぎ。
 みんなが走るさまが「はしりました。はしりましたとも」とリズミカルです。

 ところが、こんこんぎつねが、この道は、おうさまのところにはいかないから、道をおしえてあげるといって、案内したのは、ほそい、くらい穴。

 最初に入ったこんこんぎつねは、しちめんちょう、くっわくっわあひる、ぐわぐわがちょうを すぽん!となげて穴の中へならべます。
 ところが、おんどりのときは すいん!といっただけ。おんどりが危険?をめんどりにしらせると、めんどりは、くるりと しっぽをあげると 逃げて帰り、おうさまにおしらせできませんでした。

 きつねが、みんなを食べようとしたのが少し希薄なのがいまいちなのですが、そのへんは想像に任せているのかも知れません。

 長さんの絵もピッタリで、みんなが、走るさまが、いい味をだしていて楽しい絵本です。

めんどりペニー(夜ふけに読みたい不思議なイギリスのおとぎ話/吉澤康子・和爾桃子:編・訳/平凡社/2019年)

 渡辺 茂男訳とは、もとがちがっているのかも知れませんがイギリスの昔話。

 でてくる動物には、それぞれ名前が。めんどりはペニー。おんどりはロッキー、アヒルはダドルズ、がちょうはプーシー、七面鳥はラーキー、きつねはウオクシー。

 楽しいのはオチ。めんどりペニーは暗い穴に入ってすぐ、おんどりロッキーの鳴き声が聞こえたので「あらま、たいへん! 夜が明けちゃった。卵を産む時間だわよ」と、くるっと向きを変えて、自分の巣へあわてて走り出すところ。



空がおちてきた(たのしいどうぶつ昔話 じょうずなわにのかぞえかた/マーガレット・メイオ 再話 エミリー・ボーラム 絵 竹下 文子・訳/偕成社/1997年初版)

 ちびねずみが落ちてきたヤシの実に驚いて、「空がおちてきた。王さまにしらせなくちゃ」と大騒ぎ。
 おさぼさ犬、おしゃべりさる、のんびりとら、ぶつくさらくだ、のっそりぞうと、王さまライオンのところにいきます。
 ライオンはゆったり、どすんと音がしたところにでかけていきます。
 みんなはヤシの実が原因だっだとしって、さっさと帰っていきます。


       にげろ!にげろ?/絵:ジャン・ソーンヒル:再話・絵 青山 南・訳/光村教育図書/2008年

 心配性のうさぎが、うしろで おおきなおとがして、なにかが爆発したのだと思い、「せかいが こわれはじめた!」と走り始めます。

 ひたすらはしるうさぎのあとを、1000匹ものノウサギ、1000頭のイノシシ、1000頭のシカ、1000頭のトラ、1000頭のサイが。

 ただライオンだけは、冷静に原因となったヤシの葉におちたマンゴーを見つけます。

 インドのジャータカの話がもとになっています。

 何しろ森をうめつくす動物の躍動感は、絵本ならではです。

 他の絵本では集団で大騒ぎするさまが、あまりでてきませんが、この絵本のように1000頭もの大集団だと、集団心理の怖さが伝わってきます。

 原題は”うわさ”というのですが、なにが本当か、真実を見抜く目を養いたいと思っても、集団の中では流されてしまいそうです。


あわてウサギ(魔法のゆびわ/世界むかし話13インド/光吉夏弥・訳 畠中光亨・絵/ほるぷ出版/1979年)

 「大地がわれだした」と一番最初に騒ぎ立てたのはウサギ。
 十万匹ものウサギ、オオシカ、水牛、サイ、トラ、ライオン、ゾウなど、その長さは10km以上、最後はライオンの王さまが・・。

 「にげろ!にげろ?」も、もとはインド。10万匹と千頭よりもスケールが大きい。

 「ライオンの王さまがたすけてやらなかったら、けものたちはまだ走りつづけているか、それとも、西の海に飛び込んで死んでしまっていたかもしれません」と、結びがよくできています。


絵本のかたち

2020年08月04日 | いろいろ

 いろいろな絵本にであって驚くのは、おなじような作りにならないこと。

<絵本を開く> 右からと左からページをめくる二種類。これだけでなく巻物風は広げていきます。文字が縦書きなのが右から、横書きなのは左からというのは目線を考慮したものか。外国のものは、左からと思っていると必ずしもそうなっていません。

<文字と絵> 絵本は文字と絵。文字は活字、手書き文字などがあるが、活字の書体にもいろいろ。手書き文字も一律ではありません。文字の大きさもポイントの一つ。文字がないという絵本もありました。

 文字と絵のバランスもさまざま。見開いたぺージの左に文字、右に絵というのはもっともオーソドックス。しかし最近の絵本にはこうした構成になっているのは少ない。文章部分が枠に入っているもの、絵に直接描かれたものなど。さらに吹き出しを利用したものも。

 絵も油絵、絵の具、色鉛筆、布絵、鉛筆といったものから切り絵があり、さらにCGなど。作者が絵のあちこちにちりばめている遊びも楽しい。

 ページの使い方も、ページが折込になって広げると4ページにもわたる描き方や縦に描かれているものも。

 思いがけない仕掛けにびっくりすることもあります。

<紙質> 絵本の紙質は、雑誌などと比較するとしっかり?したものが使われています。世代を通じて読み継がれている絵本にとっては欠かせません。

<大きさ> 大きさも、小型からやや大きめ、さらに大人二人が必要になる大型絵本など。横に長いもの、縦に長いものも。ただ、収納を考えると大きさがバラバラなのは取り扱いが不便です。

<表紙と裏表紙> 表紙と裏表紙にも工夫があって、表と裏がつながっているもの、さらに本文を補完する裏表紙もあります。見返し部分にはあまり目がいかないのですが、ここにも、さまざまな工夫が見られます。

 舞台が外国では、作者が現地を取材して丹念に描いていることも忘れてはいけないことですし、訳者の方の工夫で、ポイントをついた親しみやすいタイトルになっているものも。

 一冊の絵本に込められている努力に感謝です。


三枚の羽根・・イギリス

2020年08月03日 | 昔話(ヨーロッパ)

       夜ふけに読みたい不思議なイギリスのおとぎ話/吉澤康子・和爾桃子:編・訳/平凡社/2019年

 

 フローラ・アニー・スティールが編者になっているというイギリスの昔話。

 求婚されて結婚したのはいいが、夫は暗くなるまで帰らず、夜が白みだすとかならずでかけていました。

 こうなると正体をつきとめたいというのは当然。ある晩寝室に入ってきた夫へろうそくをつきつけると、世のどんな女でも一目でたちまちのぼせあがってしまうような美青年。だが夫は大きな茶色い鳥に変わり、「七年と一日のあいだ真心を見せてくれなければ」絶対にもどってやらないと宣告。

 妻を翼に乗せ、とあるおおきな屋敷へひとっとび。鳥の夫は、翼の下から抜くよう話し、これこれの仕事をすようにと唱えれば、言いつけを何でもこなしてくれるといいます。

 洗濯もアイロンもできないという娘は、屋敷の奥様から洗濯を命じられると、「まことの恋人の心臓から抜いた三枚の羽根の力で、銅器具をピカピカに磨き、衣類を仕分けて洗濯と煮沸をすませ、乾かしてアイロンをかけ、しわをのばしてたたむように」といいます。そんなわけでいつも仕事は完璧。四年もたつと、だれもかれもがよめにするのはあの子というようになります。でも娘は鳥の亭主が片時も忘れられず、人間の姿でもどってきてくれる日をまっていました。

 さて、この家の執事が娘の秘密に気がつき、プロポーズをはねつけるなら、ご立派な洗濯女は魔女ですよと奥様に暴露すると脅します。

 納得のいくだけのお金がなくちゃ誰だってお断りという娘に、執事は旦那様に預けた貯金70ポンドをわたします。娘は、洗濯場の鎧戸を開けっ放しなので、閉めてくるといいだします。執事はいいところを見せようと戸を閉めてくるといいだしてでかけます。すると娘は三枚の羽根を手のひらにだし早口で「まことの恋人の心臓から抜いた三枚の羽根の力で、鎧戸が朝までずっとバタバタしていますように。執事さんの手が鎧戸でずっとふさがっていますように」といいます。鎧戸にふりまわされた執事は、ゆうべのできごとはくれぐれも他言無用にしよう、人に笑われるのがおちだと心に誓います。

 実直な中年の馭者、若い従僕のプロポーズも、三枚の羽根の力であきらめさせた娘でしたが、三人の被害者は共同して思い知らせてやろうと策略します。けれども娘は三枚の羽根の力で切り抜けます。そして七年と一日たつと、美青年にもどった鳥の亭主と馬車でかえっていきます。

 亭主が鳥になってしまうのは、魔法にかけられるというのが定番ですが、この話では鳥になった理由はしめされません。

 娘は、執事から70ポンド、馭者から40ポンド、従僕から100ポンドを手に入れますが、屋敷をでるとき「鎧戸閉めの残念料」「洗濯物を取り込んだ礼金」「一滴ももってきてなかったけど、これはブランデーのお代よ」と、優しくお金が入った袋をのこしていきます。

 羽根が出てくると結婚の相手探しがおおいのですが、この話では、求婚者をあきらめさせるために使われています。


ちゃいろいつつみ紙のはなし

2020年08月02日 | 創作(外国)

    ちゃいろいつつみ紙のはなし/アリソン・アトリー/作 松野正子・訳 殿内真帆・絵/福音館書店/2015年

 

 いまは包装紙といってもカラフル。一時代前の何の変哲もないちゃいろい包み紙のおはなしですが、大事にされた紙の気持ちがこもっています。

 クリスマスの前に買われていった ちゃいろの包み紙は おばあさんへの贈り物の包み紙として利用されました。

 箱の中には、内側が、ふわふわの白い毛皮でできたお部屋ではく真っ赤な靴。

 三か月がすぎて、イースターがちかづくと、おばあさんは自分あての名をけして、孫たちへのあて名をかきました。

 箱の中には、二つはチョコレートで、一つは青いビロードで、四つ目は木でできた 小さなイースターのたまご。

 木のたまごの中には小さなきいろいひよこ、青いビロードのたまごには銀のゆびぬきがはいっていました。

 男の子は、クリスマスのときつかった紙と きがつき、「うわあ、すっごい!もどってきたんだ。この紙もよろこんでいるかなあ!」といいますが、お姉ちゃんは「紙はなんにもかんじられないわ」と、素っ気ありません。けれども紙は体じゅうでばりばり音をたてて、「よころんでいますとも。とってもよろこんでいます」と、ささやきました。

 男の子は、ちゃいろいつつみ紙に花や小鳥、動物、空や飛行機も描いて、お母さんに絵を壁にとめてもらいます。

 ちゃいろい紙は、元気いっぱい、いきいきとうたいました。

 「うれしい、うれしい、うれしいな!だって、わたしは、ほんとの絵、ちゃんと、壁に貼ってもらって、みんなが、みんなが、みてくれる!」

 日本の方の絵ですが、切り絵でしょうか。とても雰囲気が出ている素敵な絵で、見るだけでも楽しめます。


 昔、子どもたちが包み紙の裏によく絵をかいていました。なんでも手に入るようになってほとんど利用しなくなりましたが、我が家では何かに使えるだろうと、たっぷりの包み紙が保管されています。

 小包の結び目は、ロウを火で溶かして固めた封蝋がされますが、以前NHKテレビで放映された「ツバキ文具店 鎌倉代書屋物語」のなかにも、でてきました。

 封蝋された手紙には、その人の思いが詰まっています。