どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

くすぐったがりやのキジー・・サモア

2019年09月30日 | 昔話(オセアニア)

          世界むかし話/太平洋諸島/光吉夏弥・訳/ほるぷ出版/1979年

 

 サモアは、南太平洋に位置し、ウポル島、サバイイ島および7つの小島からなる国家。

 太平洋諸島の昔話は、島の特徴をあらわし、ほかの国にはみられないものがあります。

 この話は、水をめぐる二つの島がでてきます。

 アポリマの島は、きれいな真水が出るのにマノノにはぜんぜんでませんでした。どちらの島も果物やヤシの実はふんだんにとれていましたが、マノノの人たちが、真水をてにいれるのは雨水をためておくか、真水のある島へ、カヌーで出かけて行って、大きな葉や貝殻にいれてもってかえるよりありませんでした。

 マノノの酋長の十一歳の息子、キジーは、アポリマにいって、真水をどうにかしてきますよと、カヌーにのって、ほら貝をもってでかけます。

 お父さんは、こっちの半分だけをもらって、あとは、のこしてくるようにいいました。

 アポリマの真ん中の丘には泉が。アポリマの真水は、その中腹から湧き出ていたのです。

 キジーはさっそく、ほら貝に水をすくいはじめます。このほら貝は魔法のほら貝で、泉の水も、泉から流れ出ている小川の水も飲みほしてしまいました。

 ところがアポリマの酋長の息子テリーが、泉の水も小川の水もなくなっていることにきづきます。泉には小さなほら貝のかけら。テリーは、キジーが、真水が手に入るなら、なんでもかんでもでもするといっていたのを思い出します。

 テリーはキジーのところへでかけ、「きみがとったんだろう?」と、問います。ばれたのかとキジーは魔法のほら貝をもって、一目散に にげだします。まもなくキジーにおいついたテリーは、ほら貝を取り戻そうとします。しかしキジーは、また逃げ出しますが、おいついたテリーがキジーのわき腹をくすぐりはじめます。くすがったりやのキジーは、からだをよじらせながら、またにげだし、おいついたテリが、また腹をくすぐります。三度目に、ほら貝をうばいとったテリが、島に引き上げ、ほら貝の水を泉に戻すと、たちまち泉は水でいっぱいになり、小川にも水が流れ出しました。

 一方、マノノの島でも不思議なことが、おこります。テリがくすぐったせいで、あちこち、ほら貝の水が、こぼれおちたところに、小さな泉ができて、真水がわきだしたのです。

 マノノの島で真水にこまらなくなったのは、くすぐったりやのキジーのおかげだと、島の人たちはいっています。

 いじめとか、死、殺し殺されたというのが一切出てこないので、安心?して楽しめる話でしょうか。

 生活するうえで水はなくてはならないもの。しかし世界には、アフリカを筆頭に、まだまだ水不足になやんでいるところも多い。世界をみても、約12億人が安全な水を飲むことができないというレポートもあります。


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