どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

頭のいい大工・・チベット

2024年06月19日 | 昔話(アジア)

      チベットの昔話/アルバート・L・シェルトン 西村正身・訳/青土社/2021年

 

 とにかく素晴らしい作品を描く画家、もうひとりは最高の仕事をする大工がいましたが、ふたりはいがみあっていた。

 画家が大工をおとしいれようと、天国から持ち帰ったという手紙を王さまに差し出しました。その手紙は、亡くなった王さまの父からの手紙で、「寺院を立てたいが、こちらには優れた大工がいないので、そなたの町に住む最高の大工を送り届けてほしい。」とありました。大工は、厄介払いをするため画家の思いついたたくらみに違いないと、どうして天国に行くかを画家にたずねました。画家は必要な道具類を地面に積み上げた薪の上に置き、そのうえにすわったら、そのまわりにさらに薪を積み上げて火をつけ、煙にのれば天国にいけるといいました。

 大工は、自分を殺すためのたくらみに違いないと、準備のための七日間のあいだに、家から焼かれる予定の畑までトンネルを掘りました。そして火が燃え上がる瞬間にトンネルにとびこみました。

 大工は三か月間家のなかにこもり、神々が着るような服をつくらせました。そいて、三か月が過ぎると、ユリのような白い肌をして家をあとにし、王さまのところへ出かけました。そして、「寺院が完成したので、こんどは最良の画家を天国に送り届けて、寺院に絵を描いてほしい」という手紙をさしだしました。画家を送り届けるには大工を送り届けたときとおなじやりかたをするようにとありました。大工は王さまに、父上がどんなに豊かな暮らしをしているか、天国でどんなすばらしい体験をしているかを語って聞かせました。

 王さまは画家をよんで、天国へいって絵を描くようにいいました。画家は大工が真っ白な肌をし、見慣れぬ服を身にまとい、首にサンゴのネックレスをかけているのを目にし、一方自分は相も変わらず着古した服を着ているのをみて、大工はほんとうに天国へ行っていたのだと信じるようになりました。

 火が画家に燃え移り、画家が焼け死にそうだと大声で叫びましたが、太鼓やラッパ、シンバルの大きな音で、声がかき消され、画家は本当に天国へ行ってしまいました。

 

 画家は素晴らしい絵を(・・天国か? 地獄か?・・)描き続けているでしょう。


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