どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

魔術師キャッツ

2022年12月13日 | 絵本(外国)

    魔術師キャッツ/T・S・エリオット・文 エロール・ル・カイン・絵 たむら りゅういち・訳/ほるぷ出版/1991年

 

 猫が主人公の話がふたつ。ひとつは、「大魔術師ミストフェリーズ」、もうひとつは、「マンゴとランブルの悪ガキコンビ」。

 大魔術師ミストフェリーズは超一流の奇術使いで目が鋭い黒ねこ。マンゴとランプルの悪がきコンビは、どこへでもでかけ大暴れ、口のうまいこと天下一品。それはそれは腕の良いドロボウ猫。

 絵は静止画、文章は口上風ですから、見ている側で絵を動かしていく必要があります。

  ミスター・ミストフェリーズは神出鬼没。

  ふだんの彼ときたら、暖炉のまえで丸まって、ぼーっとしているだけ。

  なにがきても気にしない。

  こんな内気で臆病な猫も、ほかにはいないと思うくらい。

  ところが、これまた不思議。

  暖炉のまえで丸まって、寝ているはずなのに屋根の上で声がする。

  屋根の上をうろついていたはずなのに、暖炉のまえで声がする。

  とうとう最後には、気持ちよさそうに彼がのどをゴロゴロ鳴らすのを、家中のみんなが聞くのです。

 これだけの文に、絵は、猫が暖炉前の椅子の上で寝ている一枚。

 文章のリズムが楽しめる話です。

 ミュージカル「キャッツ」の原詩で、ミュージカルにでてくるさまざまな猫でも、ミストフェリーズは人気のようです。これがエロール・ル・カイン(1941-1989)の最後の作品。若くして亡くなっているのが残念です。


こおり山ギツネ・・広島

2022年12月13日 | 昔話(中国・四国)

          広島のむかし話/広島県小学校図書館協議会編/日本標準/1974年

 

 尼子と毛利の戦いの際、毛利方に味方して勝利をもたらしたというキツネの話。

 こおり山城の北にあるなんば谷に、年とったキツネが多くのキツネとすんでいて、猟師が鉄砲や弓でとろうとしても、人間のにおいをしってしまい、女や子どもにばけたり、大木や岩にでもばけるので、とることができなかった。このキツネは銀色のそれはそれは美しい毛のキツネで、こおり山城の毛利元就が「そんなにきれいなキツネなら、ころしてはいけない」と、おふれを出した。

 この立て札の話を聞いて、わざわざ見にいった銀キツネが感激し、いつかは、毛利さまに、ごおんがえしをしたいと、家来のキツネに話しました。

 まもなく、三万の尼子がたが、五千人の毛利方の城を取り囲みます。銀キツネは、あつめた五百びきのキツネに鎧、兜をつけさせ、お城にかけつけます。昼は城のばん、夜にはキツネの軍が、あっちのやまに三百、こっちのやまに五百というように、ちょうちん(しっぽであかりをともす)で、いかにも多くの軍勢がいるように偽装します。さらに馬や牛のふんを、ごちそうにばけさせて、敵方の陣屋にもっていくなど、戦の手伝いをしました。

 さんざんくるしめられた尼子軍が、山陰へかえると、とのさまは、キツネに こおり山ばんのご用をつとめるようにさせたという。

 それからは、おさむらいにばけた銀キツネが、長い槍をもって山の中をあちこちとばんをしてあるいたという。