どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

人間だって空を飛べる

2014年07月22日 | 創作(外国)

    人間だって空を飛べる/アメリカ黒人民話集/金関 寿夫・訳/福音館文庫/2002年初版


 中学生以上を対象としたお話で、これというものがあまりないように感じていました。

 しかし、この話は、背景がわかっている中学生以上にはうなずける話。

 酷使され続けられている黒人奴隷が、ある日、自由の地に向かって、空を飛んでいくというもの。

 老いた人も、若者も手をつなぎ、輪のようになって、青い空を黒々としたかたまって飛んで行ったという場面が、印象的です。

 飛ぶことができなかった奴隷たちが、飛べた人の話を、自分の子どもたちにしてやったという最後にも余韻が残ります。


悪魔をだましたジプシー

2014年07月22日 | 昔話(外国)
          悪魔をだましたジプシー/太陽の木の枝 ジプシーのむかしばなし/内田莉莎子 訳/福音館文庫/2002年初版


 13人の若者が旅に出て、木一本もなく、川も小川もなく、草もはえていない砂漠に迷い込みます。
 この砂漠を4日間迷っているうち、大きな岩屋の鉄の門にたどり着きます。

 ここには悪魔がすんでいたが、なぜか食べ物とごちそうを提供してくれる。さすがに無償で提供してくれたわけでなく、若者が岩屋をでるとき、一人がとりのこされてしまいます。

 若者が砂漠を抜け出そうとするが、また岩屋のそばにでてしまう。またごちそうになるが、帰るときまた一人が岩屋にとりのこされてしまう。

 これを13回くりかえし、最後の一人が取り残されそうになったとき、最後の一人は、自分の影を悪魔にみせ、「どうです。こいつをつかまえたら!」という。
 悪魔が、この影を捕まえようとするあいだに、若者は、この岩屋から逃げ出します。

 この話は、残虐なところがなく安心感がある。そして昔話のパターンを踏まえながらも、他の話にあまり見られない展開がいい。

 13人目の若者が影をなくしてしまう最後も、意表をつくおちである。