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これどうしようかな・・・どうしようか考えてみます。

あの頃の夏 3 油野版「小公女」 2

2009-03-05 | _よむ__
>何年かたっては読み返し、
>ある時 “さしえ「油野誠一」”であることに
>気が付く時が やってきた。

1993年秋、
私は 須賀敦子「ヴェネツィアの宿」を読んでいる。
所収されていた「寄宿学校」も読み終わろうとしていた時、
いきなり 油野版「小公女」が目の前に現れた。

「・・・
 しゃんと背をのばしなさい。
 修道女たちがそういって注意する声がきこえそうだったのだ。
 まっすぐに立って、私たちの顔を見てはっきり挨拶なさい。  」
寄宿学校だから?
時代を超越した厳しい規則や慣習が描かれていたから?
戦中戦後の 住食衣事欠き、空腹にさいなまれる様子なども出てくるから?
何が理由なのかよく分からないままにも
ごそごそと 昭和40年の「小公女」を引っ張り出し、
そのとき初めて
さしえのかきてである 油野誠一という存在をはっきりと意識したのだった。

世界の名作 全30巻。
表紙には 
アーガイル模様というのだろうか 赤と金(を模した色か)で表裏繋がり、
その第14巻、表下半分に 額付きの絵画のように描かれたところから
セーラ=クルーが まっすぐこちらを見つめている。

生まれて初めて目の合ったトム&ジェリーを母親と思い込むヒヨコのように、
私のセーラは 油野版セーラなのであった。
…それで、あなたはどうなのですか?
読み返すたびに セーラが And, how about you?と問いかけてくるようで
その都度そのつど
言い訳を口ごもってきた。

しゃんと背をのばしなさい。
雑司が谷の墓地を歩いたら
私にも そんな風の音が聞こえるのだろうか。

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