Photo by Ume氏
今朝家を出て、爽やかな五月晴れを喜びながら、こんな日はどこへ一番行きたいかと自問してみた。そしてその答えがなんと、その時まさに向かおうとしている職場、入笠だった。ただ単に山の牧場へ行くだけでなく、そこでする作業も、やはり一番したいことだった。
仕事など放り出し、つい、どこか山奥の温泉に浸かり、上げ膳据え膳で旨いものを食べて酒を飲む、などということを夢想しがちだが、今朝はとにかく入笠が最も身を置きたい場所だった。
考えてみれば、これほどの幸福はない。頭、心、下半身には年齢相応の疾患、不調らしきもないわけではないが、それでも行きたい所が1700㍍の山の上で、やりたいことは肉体労働だというのだから、他人事のように言うが、有難い話だと思う。
きょうのUme氏の空撮写真、ほぼ中央に上から下へと細い緑の帯が見えているが分かるだろうか。この左内側の斜面が「追い上げ坂」と呼ぶ、入牧したばかりの牛を何人もで第1牧区へと追っていく坂である。
6月10日には第一陣が上がってくる。ただ今年はすぐには第1に持っていかず、しばらくは今捕らわれの鹿のいる囲い罠の中に置く予定になっている。実はこの囲い罠は本来は牛のための設備で、それを後から鹿の捕獲のために囲いを強化し、罠としても使えるようにしたものだ。
牛の馴化が上手くいけば、あまり多くの人の手を借りずに牛を追い上げ坂経由で、第1牧区へ移すことができる。先代の種牛がいたころは、彼の助けを借りて一人でやったこともある。顔は不細工で、種牛としての評価はそれほど高くはなかったが、性格が温厚であの牛1頭で種牛としての役割の他に2,3人分の働きをしてくれた。いい相棒でもあったのだがもう何年になるか、病気のため殺処分されてしまった。
そういえば、今思い出した。明日29日、入笠山の開山祭が行われる。前任者のMさんは毎年出席していたようだが、まだ一度も出てない。covid-19のせいで、簡素なものになるらしい。
赤羽さん、あれは掛け算割り算をようやく覚えたばかりの者が、微分積分に挑むような話で、自死という見方もできるのではと思いました。それでも、彼は燃焼し尽くしたでせう。
本日はこの辺で。