入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「夏」 (25)

2020年06月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 滅多に鳴らない小屋の固定電話が鳴って、牧場へ行けば牛を見ることができるかとの問い合わせがあった。現在牛の放牧に使っている牧区は、入笠の前衛である小入笠の山腹になるため、一般の人が道路からでは、必ずしも見ることができるわけではないと話した。北海道のように、遠くまで地平線が続いているような牧場を想像されているのだと思うが、ここは起伏の大きな山岳の牧場で、きょうなど牛たちはかなり高い場所に移動している。だから、頭数確認をするにはそこまで歩いていかねばならない。
 また、ここへ来れば新鮮な牛乳を飲むことができるかとも聞かれた。当然な質問であり、期待であろうが、それもここではできない旨を、可能な限り分かるように説明した。
 ここのような公共牧場は、乳牛がいても搾乳を対象にするような牛は置かない。出産も里に下りてから行う牛が放牧の対象となり、まだ未経産の牛が多い(ということは乳は出ない)。妊娠している牛もいるが、それが早産をして騒ぎになったこともあった。
 ここでは自然を楽しんでもらうことが一番の"ウリ"で、それ以上でもそれ以下でもないというここでの事情を理解してもらうことは結構難しい。それくらい一般の人には、酪農を含めて畜産に関することは知られていないからだと思う。
 もちろん、美味しい新鮮な牛乳が飲めて、緑一面の放牧地に牛の姿を目にできれば充分だろうし、山を見て、地質や造山活動などについて考える人は少数なように、不要な知識を増やすこともないというのは分かる。ただ、野生の鹿を捕獲したり殺処分したりすることを野蛮だと言い、そういう人が高級牛肉に舌鼓を打つというのは如何か、とは思う。

 それでも、余裕があるときは牧場内を案内することもあるし、それで喜ぶ人たちを目にすれば、こちらも同じように悪い気はしない、ということも言い添えておかねば。

 本日はこの辺で、また明日。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする