スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

ニッケルハルパ製作

2007-02-03 23:27:35 | 楽器製作
エスビョン・ホグマーク(Esbjörn Hogmark)のもとで、ニッケルハルパ製作をはじめた。
もともと本職が物質科学のエンジニア(大学でIC回路の先生もしている。電力関係など国のプロジェクトのマネージャーなどコンサルト的なことも。次は医療と回路を応用させるプランがあるなど、常にマルチに活躍)なので、緻密な工程に独自の工夫を重ねている。
また、プレーヤーとしてもリクスペルマンというタイトルを持ち腕も確かなので、製作の工夫を確かな耳で確認でき、最高級のニッケルハルパ職人という評価を手にしたのでしょう(製作楽器の審査員、スウェーデンのプリンセスにも献上)。学校の名前にもなっている故Eric Sahlstromと共に演奏し、そのスタイルを受け継いでいる貴重な人でもある。
エンジニア、楽器製作、プレーヤー、どれかが本職でどれかが趣味という訳ではなく、全ての道で極めている。ダヴィンチ並みの天才!?ではないかと思う。
また、私が今いる学校を創設した3人のうちの一人でもあり、言ってみれば私が今スウェーデンにいるのはエスビョンのおかげ。

枠が製作過程で一番難しいらしく、この部分はエスビョンがやってくれた。
製作キットを買う場合もこの出来上がった枠から送る場合も多いのだそう。
エスビョンは毎年ではないが製作コースを開いていて、本来は全ての過程を教える。
本当は枠から習うべきなのだろうけど、今回は諸事情で開始が遅れたのと私の帰国に間に合わせるために組んだ特別プランなので、枠以外でもかなりの部分をエスビョンがやってくれることになっている。
なので、どのくらい製作過程に私が手をだせるかは、私の残り時間とエスビョンの都合(多忙を極めている人なので)による。

私の将来の目標としては、
1.製作キット(デザイン、板、CD-ROMによる写真解説付き)から作れるようになることと
2.構造や仕組み(力学的、音響学的な側面)を理解した上で微調整ができるようになること。
わずかにいじるだけでも全体の音色に影響することはすでに体験済みなので、この辺をもっと知りたい。

この日の作業は、荒削りな枠(4つのパーツをくっつけている)を整えていくところから。
材料となる木(Spruce)は、10年ねかせているらしい。
粗い枠にさらに鉛筆でカーブを書き、防音耳あてをつけさらに電動糸のこぎりで切り落とす。細かい部分は各種ナイフで削る。ざっと電動やすりで磨いた後は紙やすり(150と220)でひたすら丁寧に磨いていく。一番もろい段階なので下手な力をいれると割れることがあるらしい。木に触れているとなぜか平穏な不思議な気持ちになる。

そんな穏やかな気持ちで作業にふけっていると、以前にも書いた犬のような猫が入ってきた。(「犬のよう」は見た目ではなく行動)
でも、この子、今日は猫っぽかった。
やすりをかけている私の膝に登ろうとして爪をむきだしにガシっと突き立てる。「いたーい!やめて」と両腕をつかんでおろすと、喉をごろごろ言わせて反対側へ。
再び、爪でガシっ!「いたーいってば!」と両腕をつかみジーンズに刺さった爪をそうっと抜いて再び下ろす。何度やってもやめてくれないので、近寄れないように、ひじをはってがーっとやすりをかけたら、あきらめて隣の机の上に登った。「ふん。やっとあきらめたか」と思ってふと手を休めたら。えぇっ!?猫って一体どういう生き物?飼ったことがないので意図が読めない。
机から私に向かってジャーンプ
膝の上で丸くなりたいのかと思ったら、さらに私の鎖骨に爪をガシっとかけ、這い上がってくる。痛い!痛い!この猫どこまで行きたい訳?頭の上?
お腹をつかんで引き剥がしたら、機嫌を損ねたようで出て行った。助かった。

ところで、エスビョンは工具類のほとんどをドイツの会社から買っている。ネットでも買える。
メーカーの違う似たようなナイフを数本ずつ持っていてまるでコレクションのよう。どれがいいモノか試すために沢山買うらしい。製作過程のこの部分に向いていると思えば、仲間の職人に広めるし、記事をかいたりもするのだとか。

そういえば、楽器製作用の作業台は、使いやすいよう工夫がほどこしてある。これはエスビョンの発案でメーカーに作ってもらったそう。高さも調整できます。もちろん商品として販売されているもの。
(ドイツ製で似たものがあるけど強度面で使えないと言っていた)

ランチもごちそうになった後、少しだけ弾いた。
ニッケルハルパについてのPresent & Pastという本があり、その中で「エスビョンがゴットランド島のSvanpolskaなど違う地方の曲をニッケルハルパで弾くという可能性をもたらした」という記述があり、Svanpolskaは好きな曲だったのでいつか聞こうと思っていたのだ。svanは白鳥。音楽スラングで、フラジオレットの意味もある。このフラジオレット部分のフレーズは、G線上でやるのがトリックだと教えてもらった。なーるほど。意外に簡単に音がとんでくれる。

今日はうちの学校の建物をつかってTierp stämmaがある。なので、夕方にはきりあげて学校へ。
ステンマ(stämma)とは、プロ・アマ・楽器を問わず、誰もでも弾いたり踊ったりできるフェスティバルのようなもの。Tierpは町の名前。たいていは、夏に屋外であるが、冬はどこかの建物を借りて行われる。

写真
左上:外枠、表板と裏板(表板のみドイツ製。スウェーデンは幹が細いので幅が取れない)
右上:各種ナイフを駆使して削っていく様子。
左下:カメラを向けるとあっちを向いてしまう猫
右下:ステンマの風景。トイレ前で。あちこちでみんな好きに弾いてます。
コメント
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