布屋忠次郎日記

布屋忠次郎こと坂井信生の日記

高松宮日記 第六巻

2005-12-01 23:43:18 | 読書
今年読んだ本。

高松宮宣仁親王 著
中央公論社
1997年3月25日 初版
ISBN 4-12-403396-6

第六巻は、昭和18(1943)年2月から9月の日記を収録。殿下は依然、軍令部に属され、この巻も軍用電報の書き写しを中心とする戦況記録がほとんど。

以下は7月15日の日記より。
----------
一○○○皈。一○三○近衛公来談。時局困難に伴い国内体制の問題につき談話。要するに癌は陸軍にして、その皇道派と統制派と問題なり。「近」(近衛)は…皇道派は比較的素朴であって、国体変革には無害なるも、統制派は「インテリ」であり転向者を周囲に集めてゐるので変革論者であるが、…もともと薩長の対立から進んでゐるものなり。
----------
殿下は海軍だから陸軍に批判的ということもあるだろうけれど、御日記を読んできているとどうも陸軍が悪役に思えてきてしまう。それにしてもまだ「薩長」の問題がある時代なんだなぁ。

7月22日の日記より。
----------
戦局益々困難となり、どうも東條総理では国民の心を満足して敗勢を挽回することに一致せしめることは出来ないであろう。国民は未だ勝っておるつもりでゐる。
----------
いわゆる「大本営発表」というやつが、逆に戦時政府を縛っていっている。韓国政府や中国政府が、国民を反日に誘導してきた結果引っ込みつかなくなってるのも同工異曲だな。

7月31日の日記より。
----------
戦局の困難は増大すべく、国際情勢又有利ならざるは速に改善せらるべき予想立たざる時、最悪の場合を考え其の処置を案ずるは極めて必要なるなり。即ち私として直ちに迷う問題はやはり生か死の分れ道に立つことなり。一つは都にありて陛下の側近にあることにして、一つは戦場に赴きて敵中に突撃することなり。何れも国体変革の暴動に際し皇位を守るためなり。敗戦による国民の怨みが天皇に直接向けらるるとせば、私が戦死することによって感情的に慰撫すると共に国民を発奮再起を誓わしむることを得べし。
----------
殿下のこの覚悟を「国民のことなど考えていない。皇室を守ることしか考えていない」ということもできるかもしれない。しかし殿下は、戦後(敗戦後)に国民が復興に邁進するためにも、日本の芯としての国体を護持することが必要とお考えだったのであり、それはこの日の日記の最後にも現れている。
----------
皇族の立つは主として精神作興にして、之をもって国民の物質生活を恵まんとするにあらざればなり。
----------

それにしても、殿下の目には敗戦濃厚な戦況に映っていたようである。がしかし、まだ昭和18年9月。まだ戦争は終らない。
御日記は全8巻。次の第7巻は昭和18年10月から19年末までを納め、最後の第8巻は昭和20年から22年だ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿