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ディアマンテ インプレッション




190Eとは違うパターンで、且つ調子が悪いわけでもないのに廃車になってしまうディアマンテ。次のオーナーの為の大儀も無いし、巷では殆ど見なくなった初代ディアマンテはもう ただの絶版車。90年の第11回 日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた名車が悲しいことです。でも、我が備忘録としてそのポテンシャルを記しておくのです。

グレードは25V-SE。初代の中期型で、インテリア・エクステリアの細かな仕様変更は大変お得且つリーズナブルな仕上がりとなってました。付加されたのはエアコンスイングルーバー・シェイクルベロアのシート・インパネのウッド仕様。特にインテリアの部分では高級感がグッと増しましたし、シェイクルベロアの表皮は秀逸で、21年間全くヘタリがありませんでした。

エンジンが6G73 水冷V型6気筒DOHC-24V 2497cc 175ps/6000rpm 22.6kg/4500。税制面でエポックメイキングだった事が尤も大きな話題ですが、1.5t以上のボディをしっかり引っ張ってくれるパワー・トルクは必要にして充分でした。ハイソカー時代に普及し始めたATを掴まえて「本来ツインカムはATやNAエンジンに向かない」等と言われましたが、軽快に回りつつ充分なトルクを発生してましたし、良い味付けだと思います。

街中では低回転のまま走っちゃいますし、ゼロ加速・中高速の加速もしっかりしたものでした。高速走行は勿論急な登坂の山道も回転を上げてグイグイ登ってくれました。ベンツに乗っていてもコースに山道がある場合はディアマンテを選んだくらい走行性能は高かったです。

足回りは前マクファーソンストラットと後マルチリンクサスペンション。しなやかな味付けは街乗りで道路からの衝撃をしっかり吸収してくれるし、乗り心地は良かったです。高速ではベンツなどと比較して若干柔らかいとは思いましたが、アウトバーンを持たない日本の高速道路では充分なレベルなんですよね。

足回りに関しては思い出があって、初代セルシオに初めて乗った時「日本の車もここまで来たんだ」とそのハイクオリティーに驚きました。でも同時に、足回りが凄すぎて路面の状況が一切伝わってこない。まるで外界と遮断されたかのような静粛性と相まって、車の外からのフィードバックが全く感じられない。それは同時に車の息吹も聞こえてこないということで、凄いけどつまらない車だなぁと思ったもんでした。でもこのディアマンテは路面の状況を適度に伝えてくれました。初めて乗った時気掛かりだったのはこの足回りの出来だったんです。マルチリンクは複雑な機構で高価だし、リンクブッシュは修理もしました。しかしドライバーズカーとしてサスの味付けはいい落とし所に納まってると思ったもんです。

トランスミッションは電子制御の4速AT。パワー・ノーマルに加えてHOLDモードの切り替えが出来て、シフトタイミング等を変えてくれているようです。HOLDモードは山道のアップダウンやゼロ発進が2速発進となるので渋滞等で重宝しました。パワーモードについては元々力があるので必要で使った事はほぼ無かったですね。2500cc版は軽快に吹け上がるのでレスポンスが良くATに不満は全くありませんでした。

FF 2DWのこの車種にはトラクションコントロールとトレースコントロールが組み合わされています。どちらも任意で解除が出来ますが、オートにしっぱなしでした。その上で作動されることは殆ど無かったです。4WSが搭載されていますが意識することは殆ど無く、恐らく違和感を与えないような味付けが成されていたんでしょう。高速でのレーンチェンジなどでは効果を発揮していた筈で 車体の安定感は確かに覚えましたが、ドライバーにその作動を意識させない所が流石だと思います。

居住性・広さに関しては文句なし。まあ確かに所謂ピラードハードトップですからデザイン優先でパッケージングは多少犠牲になってるはずです。この点兄弟車の純然たるセダンであるシグマの方が優れているでしょう。また70年代のクーペやスペシャリティーカーにあったデカイ前ドアを知る世代としては、決して広々ではないし 後席のフットスペースやヘッドクリアランスは駄目出しレベル。でも、我が家の場合は大丈夫でしたね。

最初から3ナンバーとして設計されたボディは大きく、当初は前後の見切りが悪いと感じたものでした。しかし昨今の車は衝突安全性の向上からより前後四隅に張り出し、且つ空力特性から先端は丸く削るようになっていてより見切りが悪くなってます。それに比べたらごく自然に見て取れる。まあFFで小回りは利かないし駐車場ではちょっと気を遣いますけど。車内でパッセンジャーシートとの間に余裕があって、肘掛けと共にゆったりくつろげる感じは良いもんです。



そのお気に入りのインテリア。質実剛健を謳われたメルセデスベンツW124がお手本だったように、アナログチックなデザインは落ち着いた雰囲気で操作性にも違和感がありません。エアコンの操作はボタンだったりして視覚に頼るところもあるし、例えば経年で基盤のハンダが割れるなど故障した際は操作が不能になる等らしくない不具合にみまわれましたが、お手本にした車の影響はあちこちに見え隠れしました。これは後にオーナーとなったベンツとつき合って感じた個性。トランク開口部の切れ込み形状やフロントガラスをピラーに落とし込みとか。

大きさ的に余裕のあるビークルでありながら燃費は良く、平均して9kmでした。街乗りオンリーでも7km後半から落ちたことがなかったですから 効率の良さを感じてました。

贅沢な快適装備で重宝したのはメモリー機能付きパワーシート・オートライトコントロール・純正オーディオのハンドル通信機能・空気清浄機でしょうか。後2つは社外品ナビに換えてた事で無効と禁煙で無用の長物になってましたが。

実は廃車を決意して最後のドライブだと近隣に出掛けた朝、アイドルが不安定になり吹け上がりが悪くなりました。エンジンチェックランプも点いたんですが、こんなことは初めて。症状からしたらECUユニットの故障を思わせるものです。一度エンジンを切ってリスタートしたら治って、最後の日もその症状は出なかったんですが 愛車が最後に駄々を捏ねたんじゃないかと思ったり。よく聞く話のような気がしますがいやはや全く。重ね重ね、今までどうもありがとう。この思い出は、生涯忘れることなく胸に留めておくよ。
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