オーディオのお作法は人それぞれです。
ただパワーアンプだけはスピーカーの近くに置くことが許され、他のプレーヤーだのプリアンプだのはそれを許さない、なんとなくそんな暗黙の了解があります。
とはいえ、どこに置くかは人それぞれ。アマチュア界隈で音像を壊すだのと言われている場所にプロが平気で置いていたりと、何が正しくて何が間違っているのかよく分からなくなってきます。
分からないからこそ理屈で考察してみたので、現時点での私見を書き残しにするのが今回の投稿分。
少なくとも言えるのは、どこに置くのが一番良いのか、それは部屋の形やセッティングの仕方によって次第なので、それを無視して論じても結論はでないということ。
とりあえず自室のセッティングの近似設定で考えてみることにします。
早期反射音のシミュレーターをしてくれるサイトが見つかったので概算ながら演算してもらって考察しました。
https://amcoustics.com/tools/amray
耳に届く2回以内の反射音の挙動
耳に届く3回以内の反射音の挙動
この分布を見ると、耳に届く反射音が通過しやすいポイントとあまり通過しないポイントがあります。通過しづらいポイントにコンポーネントを設置するのはコンポーネントの存在による室内音響の影響が比較的少ないと考えられます。
ただしコンポーネントを設置することによって反射音の通過ルートが変わり、耳に届かないはずの音が入ってきてしまう可能性もないとは言えません。
到達音が少ないエリアを狙う場合
①リスニングポジションの真横
この考えでいくと最も妥当なポジションかもしれません。真横から少し後ろ気味に過疎エリアがあります。
ただリスニングポジションに比較的近い位置にあり、後期反射音や残響音に影響することは想定されるので、左右対称にコンポーネントを設置しないと反射音の挙動に多少の左右差が出るのは間違いないと思います。
左右対称にしようとすると導線も長く難しいセッティングとはなります。
シミュレーション結果としてはかなり影響が少ない印象。
②リスニングポジションの真後ろ
真後ろにも過疎エリアがあるのですが、いかんせん幅が狭いです。ただ機材の操作をしやすいというメリットがあります。真後ろはドアを設置のが理想なのかもしれません
シミュレーション結果としても理想通りにはならないような気がします。
③スピーカーの真後ろ
真後ろはシミュレーション上あまり影響がなく、点音源のシミュレーションになるため実際にはさらに影響が少ないと考えられます。
ただ余裕を持ってスピーカーの真後ろに機材を設置できるほど大きな空間というのはあまり現実的では無いのかもしれません。
他の考え方としてオーディオ機材自体を音の挙動を変化させる拡散材として利用する方法があります。市販されている拡散材は高級品と言えども十分拡散させるにはとにかく物量が必要。量が必要ならその分コストも増える。なのでいかに安価で大きいものが作れるかがポイントになってきます。その分不要な共振の抑制にコストを掛けきれない面があります。
市販の拡散材に比べればオーディオ機材の筐体の方が方がよっぽど共振抑制にコストを振り向ける余裕があり、音波の挙動を変化させるモノとしては機材の筐体自体がそれなりに適性があると言えます。
それを利用して、素の壁の反射を変化させたい部分にコンポーネントを設置するという考えに基づいて、どこに置くと良いのか考えます。ただし、これを狙うのであればツィーターはまだしもミッドレンジと同じ高さくらいまでコンポーネントを積み上げないと中域まで効果を期待できないので、高く積み上げることが前提になってきます。
残響音は四方八方から降り注ぐのが良いと言われていますが、初期反射音があまりに異なる方向から入ってくると定位が悪くなります。定位が明確であればあるほど良いのかというのは断言はできませんが、定位の悪影響になる部分にコンポーネントを設置するという考え方で置くとするとどこがいいのか考えてみることにします。
④右側のスピーカーが左壁に反射して耳に到達する一次反射面に設置
左右の定位を悪くする音としてこの音が代表的ですが、その部分にコンポーネントを設置して、音波の反射経路をずらすことが期待できます。ただこれには難点があって、右のスピーカーが右壁に反射する音にも影響してしまう可能性が高いという点です。部屋のレイアウトにも寄るのですが、それなりに大きい部屋で精密にシミュレーションを検証をしないと、道連れになる可能性が高いです。
⑤後ろの壁に反射して耳に到達する一次反射面に設置
後ろの壁の中心から左右に少しずつずれた所に一次反射面が存在し、他にも二次反射音、三次反射音がその辺りに集中しています。後ろからの反射音をケアしないと極端に音像が前に出てきてしまうので個人的には処理の優先度の高いポイントとは考えます。その部位にコンポーネントを設置することのメリットとして、中心近いので左右対称に合わせやすいというのもあります。3列以上のラックを組めば左右対称に拡散体を設置したことにはできます。
ただ難点としてリスニングポジションに比較的近くなり易いので果たしてコンポーネントを設置しただけで反射音を逸らしきることができるのかという疑問があります。
個人的にはそのポイントには本格的な吸音、拡散、傾斜などを行った方がいい場所とは考えているので、拡散目的でコンポーネントを設置するにしても、その他の処理も同時に行った方が良いようには感じます。
⑥右側のスピーカーが正面の壁に反射し左側の壁に反射して耳に到達する反射面に設置
あまり影響の大きな反射音ではないのですが、上記の反射で到達する音があり、これも右の音が左側から聞こえるので定位に良い影響はないものです。これを逸らすためのコンポーネント設置をしようとするとスピーカーの間の壁になるのでケーブルの取り回しが非常に楽というメリットがあります。難点としては初めからこう処理することを狙ってスピーカーのセッティングを行わないと、正面の壁に反射してそのまま耳に到達する有用な一次反射面も近くに来てしまうことが多く道連れになってしまうことです。設置される頻度の多いテレビでこの効果を狙おうとすると、テレビは幅が広く拡散効果も薄いため結局耳に到達してしまう可能性があるので使い方は限定されてしまいます。
⑦リスニングポジションの前に低く並べる
よく業務用のコンソールやメーカーの試聴室やオーディオショップなどでよくやる位置です。
この位置には音はよく通過することは間違いないのですが、耳の高さまで設置せず低い位置に置くことで音響障害を軽減しています。とは言え床経由の反射音の挙動が変わるのは間違いなく、遮蔽効果も期待はできますが、逆に耳に届かないはずの反射音が逸れて入ってくる可能性もあります。なかなかシミュレーションが難しく、経験上もここに置いて良い効果を引き出すのは難しいと考える置き方ではあるように感じます。
参考:テレビを設置し、テレビのすぐ近くにスピーカーを置いたときのシミュレーション結果
テレビのを置くと音が濁ると言われるのはこの反射音のせいなのかもしれない。
ということで色々シミュレーションした感じとして比較的どんなケースでも期待できそう、測定しなくても予測が立てやすそうなセッティングとしては
・スピーカーの真横から少し後ろにかけての機材設置
・耳の高さまで積まない
・左右対称性に機材を置く
これだと有害な影響は最小限に抑えられることが期待しやすいと思います。
他の設置の仕方であればケースバイケースと言ったところでしょうか。
ただパワーアンプだけはスピーカーの近くに置くことが許され、他のプレーヤーだのプリアンプだのはそれを許さない、なんとなくそんな暗黙の了解があります。
とはいえ、どこに置くかは人それぞれ。アマチュア界隈で音像を壊すだのと言われている場所にプロが平気で置いていたりと、何が正しくて何が間違っているのかよく分からなくなってきます。
分からないからこそ理屈で考察してみたので、現時点での私見を書き残しにするのが今回の投稿分。
少なくとも言えるのは、どこに置くのが一番良いのか、それは部屋の形やセッティングの仕方によって次第なので、それを無視して論じても結論はでないということ。
とりあえず自室のセッティングの近似設定で考えてみることにします。
早期反射音のシミュレーターをしてくれるサイトが見つかったので概算ながら演算してもらって考察しました。
https://amcoustics.com/tools/amray
耳に届く2回以内の反射音の挙動
耳に届く3回以内の反射音の挙動
この分布を見ると、耳に届く反射音が通過しやすいポイントとあまり通過しないポイントがあります。通過しづらいポイントにコンポーネントを設置するのはコンポーネントの存在による室内音響の影響が比較的少ないと考えられます。
ただしコンポーネントを設置することによって反射音の通過ルートが変わり、耳に届かないはずの音が入ってきてしまう可能性もないとは言えません。
到達音が少ないエリアを狙う場合
①リスニングポジションの真横
この考えでいくと最も妥当なポジションかもしれません。真横から少し後ろ気味に過疎エリアがあります。
ただリスニングポジションに比較的近い位置にあり、後期反射音や残響音に影響することは想定されるので、左右対称にコンポーネントを設置しないと反射音の挙動に多少の左右差が出るのは間違いないと思います。
左右対称にしようとすると導線も長く難しいセッティングとはなります。
シミュレーション結果としてはかなり影響が少ない印象。
②リスニングポジションの真後ろ
真後ろにも過疎エリアがあるのですが、いかんせん幅が狭いです。ただ機材の操作をしやすいというメリットがあります。真後ろはドアを設置のが理想なのかもしれません
シミュレーション結果としても理想通りにはならないような気がします。
③スピーカーの真後ろ
真後ろはシミュレーション上あまり影響がなく、点音源のシミュレーションになるため実際にはさらに影響が少ないと考えられます。
ただ余裕を持ってスピーカーの真後ろに機材を設置できるほど大きな空間というのはあまり現実的では無いのかもしれません。
他の考え方としてオーディオ機材自体を音の挙動を変化させる拡散材として利用する方法があります。市販されている拡散材は高級品と言えども十分拡散させるにはとにかく物量が必要。量が必要ならその分コストも増える。なのでいかに安価で大きいものが作れるかがポイントになってきます。その分不要な共振の抑制にコストを掛けきれない面があります。
市販の拡散材に比べればオーディオ機材の筐体の方が方がよっぽど共振抑制にコストを振り向ける余裕があり、音波の挙動を変化させるモノとしては機材の筐体自体がそれなりに適性があると言えます。
それを利用して、素の壁の反射を変化させたい部分にコンポーネントを設置するという考えに基づいて、どこに置くと良いのか考えます。ただし、これを狙うのであればツィーターはまだしもミッドレンジと同じ高さくらいまでコンポーネントを積み上げないと中域まで効果を期待できないので、高く積み上げることが前提になってきます。
残響音は四方八方から降り注ぐのが良いと言われていますが、初期反射音があまりに異なる方向から入ってくると定位が悪くなります。定位が明確であればあるほど良いのかというのは断言はできませんが、定位の悪影響になる部分にコンポーネントを設置するという考え方で置くとするとどこがいいのか考えてみることにします。
④右側のスピーカーが左壁に反射して耳に到達する一次反射面に設置
左右の定位を悪くする音としてこの音が代表的ですが、その部分にコンポーネントを設置して、音波の反射経路をずらすことが期待できます。ただこれには難点があって、右のスピーカーが右壁に反射する音にも影響してしまう可能性が高いという点です。部屋のレイアウトにも寄るのですが、それなりに大きい部屋で精密にシミュレーションを検証をしないと、道連れになる可能性が高いです。
⑤後ろの壁に反射して耳に到達する一次反射面に設置
後ろの壁の中心から左右に少しずつずれた所に一次反射面が存在し、他にも二次反射音、三次反射音がその辺りに集中しています。後ろからの反射音をケアしないと極端に音像が前に出てきてしまうので個人的には処理の優先度の高いポイントとは考えます。その部位にコンポーネントを設置することのメリットとして、中心近いので左右対称に合わせやすいというのもあります。3列以上のラックを組めば左右対称に拡散体を設置したことにはできます。
ただ難点としてリスニングポジションに比較的近くなり易いので果たしてコンポーネントを設置しただけで反射音を逸らしきることができるのかという疑問があります。
個人的にはそのポイントには本格的な吸音、拡散、傾斜などを行った方がいい場所とは考えているので、拡散目的でコンポーネントを設置するにしても、その他の処理も同時に行った方が良いようには感じます。
⑥右側のスピーカーが正面の壁に反射し左側の壁に反射して耳に到達する反射面に設置
あまり影響の大きな反射音ではないのですが、上記の反射で到達する音があり、これも右の音が左側から聞こえるので定位に良い影響はないものです。これを逸らすためのコンポーネント設置をしようとするとスピーカーの間の壁になるのでケーブルの取り回しが非常に楽というメリットがあります。難点としては初めからこう処理することを狙ってスピーカーのセッティングを行わないと、正面の壁に反射してそのまま耳に到達する有用な一次反射面も近くに来てしまうことが多く道連れになってしまうことです。設置される頻度の多いテレビでこの効果を狙おうとすると、テレビは幅が広く拡散効果も薄いため結局耳に到達してしまう可能性があるので使い方は限定されてしまいます。
⑦リスニングポジションの前に低く並べる
よく業務用のコンソールやメーカーの試聴室やオーディオショップなどでよくやる位置です。
この位置には音はよく通過することは間違いないのですが、耳の高さまで設置せず低い位置に置くことで音響障害を軽減しています。とは言え床経由の反射音の挙動が変わるのは間違いなく、遮蔽効果も期待はできますが、逆に耳に届かないはずの反射音が逸れて入ってくる可能性もあります。なかなかシミュレーションが難しく、経験上もここに置いて良い効果を引き出すのは難しいと考える置き方ではあるように感じます。
参考:テレビを設置し、テレビのすぐ近くにスピーカーを置いたときのシミュレーション結果
テレビのを置くと音が濁ると言われるのはこの反射音のせいなのかもしれない。
ということで色々シミュレーションした感じとして比較的どんなケースでも期待できそう、測定しなくても予測が立てやすそうなセッティングとしては
・スピーカーの真横から少し後ろにかけての機材設置
・耳の高さまで積まない
・左右対称性に機材を置く
これだと有害な影響は最小限に抑えられることが期待しやすいと思います。
他の設置の仕方であればケースバイケースと言ったところでしょうか。