令和5年1月31日 日本農業新聞
国産小麦拡大「給食パン」から
食育推進、適性品種普及が後押しに
課題は価格…補填の動きも
学校給食のパンに使う小麦を、国産や県産に切り替える動きが広がっている。
食農教育などの観点から地元産利用を進めており、各県でパンに向く小麦品種が普及し始めたことも転換を後押し。
課題である輸入小麦との価格差を補填(ほてん)する動きもある。
学校給食では、米飯を増やす取り組みも進み、2021年度は週平均3・5回となっている。
一方、パンでも国産や地元産を使う機運が高まる。
滋賀県は、22年度から全量を県産に置き換えた。
全市町の公立小中学校などに年間約460万食を供給する。
小麦産地でありながら輸入を混ぜていたことに疑問を抱き、パンメーカーでつくる県学校給食協同組合が動いた。
パンに向く品種の栽培がなかったため、強力粉の「ゆめちから」を作付けする生産者を探し約50ヘクタールまで拡大。
従来品種と混ぜ100%を達成した。
宮城県でも、パンに向く品種の栽培が増え、22年度から県内の給食パンの原材料を100%国産にした。
5割が県産「夏黄金」と「シラネコムギ」、残りは北海道産「ゆめちから」だ。
23年産「夏黄金」は480ヘクタールと19年産の倍近くに増える。
県保健体育安全課は「県産品の使用割合を増やし、地産地消と食育を進めていきたい」と説明する。
課題となるのが輸入との価格差だ。
和歌山市の農家、貴志正幸さん(64)は、安心して食べられる国産を提供しようと、県内で小麦の作付けを呼びかけた。
県内137校で22年11月から今年1月まで県産小麦100%のパンの提供が実現。
輸入との差額は県学校給食会が負担した。
貴志さんも農家の協力や国の交付金がもらえる体制づくりに奔走する。
それでも輸入物との価格差は約7倍。給食会では、県産を使うため寄付も呼びかける。
貴志さんは「給食会が地産地消に理解を示してくれているからこそできる。
継続のためにも賛同者を増やしたい」とする。