前回は高圧受電の話をしましたが、今回は電力会社の送電線から直接電気をもらう特別高圧受電(特高受電)の話をします。
大規模工場や大型の商業施設、タワーマンションやオフィスビルなどの高層ビル、鉄道変電所などが特高受電の代表例です。
特高受電になる条件ですが、原則として電気を1時間あたり2000kW以上使う需要家となります。
また、2000kW以上の自家発電機がある場合、特高受電でないと電力会社は系統連系を許可してもらえません。そのため、2000kW以上の自家発がある場合、電力会社からの受電が1時間あたり2000kW以下でも、特高受電になります。これは、自家発電機が故障等で停止したとき、バックアップ用の電気を電力会社から供給するためで、バックアップ用の電力は自家発補給電力と呼ばれます。この自家発補給電力も含めて、2000kW以上の場合、特高受電になります。
ただし、近隣に送電線がない場合など、1時間あたりの使用量が2000kW以上でも自家発電がなければ、例外的に高圧受電になります。
特別高圧は、法令上の定義では7000V以上ですが、実際の受電電圧は22KV、33KV、66KV、77KVが多く、一部では154KVも見られます。
1時間あたりの受電電力が10000kW以下であれば、22KV、33KV受電、10000kW以上が、66KV、77KV受電、50000kW以上が154KVとされていますが、近隣の送電線との兼ね合いで、郊外の工場などでは5000kW以下でも66KV、77KV受電が多く見られます。
高圧受電ではほぼ1回線受電ですが、特別高圧受電からは2回線以上で受電するケースも多数見られます。これは特別高圧の場合、電力会社側、需要家側ともに送電線路の補修や遮断器の点検は、原則として停電が必要なためです。高圧の配電線では、停電を伴わない補修工事のケースもあります。
2回線受電の場合だと、通常、片側から受電して、予定された停電時は予備の側に手動で切り替えて受電します。また突発的な停電時には、予備の側に自動的に受電を切り替えて復電する機能もあります。
電力会社側では2本の送電線を1号線2号線として区別していますが、同じ送電線路でも、需要家および配電変電所によって2回線のどちらから受電しているかは異なります。また受電している側の送電線を常用線や本線、予備の側を予備線と呼ぶ場合もあります。
3回線で受電するスポットネットワークという方式もあります。これは3回線のうち2回線で受電して、回線の停電時に瞬時に予備線に切り替える方式です。この切替が自動で、瞬時に行われるので、データセンターには好まれますが、供給電圧が原則22KVもしくは33KVなので、大きな需要化には対応できません。周りの特高受電の需要家は3回線受電のスポットネットワークなのに対して、超高層ビルのような大きな電力が必要な需要家だけ、77KVの2回線受電というケースもあります。
また、スポットネットワークの送電網があるのは、東京23区の半分程度と横浜市、川崎市、名古屋市、札幌市、仙台市、大阪市、福岡市などの中心部に限られます。
また、1回線の特高受電も少なからず見られます。これは、電力会社の変電所と需要家の送電線路が直結していて、配電用変電所や他の需要家がない場合などは比較的多くみられます。
また、古い時代からある33KV送電線路では、もともと1回線しかなく、送電線路の点検工事などの時は、その送電線から受電している特高受電の需要家すべてを停電にする必要があります。鉄道変電所が1回線の送電線路から受電していると、終電後の夜間しか送電線路の停電ができないケースもあります。
この特高受電では電気主任技術者の常勤が義務付けられます。高圧受電までは、電気主任技術者は外部委託可能なので、社内で電気主任技術者を雇い入れる必要はないのですが、特高受電の場合、工場などでは社員の中から電気主任技術者を選んで選任します。また商業ビルなどでは、ビル管理会社に電気主任技術者が電気主任技術者を選任しています。
第三種電気主任技術者は50KVまでしか管理できないので、66KV・77KV・154KV受電が多い郊外の工場は第二種電気主任技術者が必要になります。
ただし、第一種電気主任技術者、つまり170KV以上の純然たる需要家は、知られている限りでは、275KV受電のJR東日本の新幹線の鉄道変電所でぐらいです。そのため第一種電気主任技術者は非常に需要が少なく、電力会社や発電事業者を除くと、ほとんど必要ない資格になります。
続く
前回は、電気主任技術者がどのような資格なのかを紹介しました。今回は、電気主任技術者の管理する対象について、さらに詳しく述べていきます。
高圧受電の場合、ほとんどでキュービクルという箱に中に、変圧器を収めたものを用います。高圧受電でも、電気室を設ける例や、屋上などに変圧器をおいてフェンスで囲った露出型の設備、電柱を2本立ててその間に変圧器を置く例もわずかにあります。
電力会社の配電線、市街地や郊外などで見られる電柱の電線の電圧は6600Vで、これを柱上にある変圧器で、降圧して一般家庭や商店などに交流100/200Vを供給しています。商店や小規模工場などへは、単相トランス2台を用いてV結線で三相200Vを供給するケースも多く見られます。
その電柱の6600Vから直接電気をもらい、需要家の側で電気を必要な電圧に落とすのが、高圧受電ということになります。
低圧受電と高圧受電の境界は50kWと言われていますが、前述の低圧にて三相交流を引き込んでいる場合、単相100/200Vと三相200Vをそれぞれ50kW受電して、最大100kWまで電気を使うことができます。
最近では、電気料金の安さなどから、コンビニはたいてい高圧受電していて、小型のキュービクルがあります。このあたりは電気料金の安さを取るか、それも設備の初期投資費用と維持管理費用を取るかで考え方が分かれ、高圧受電の設備が老朽化したことで、設備更新をやめて、低圧受電の切り替える例もあります。
ただし、前述のように低圧受電には限度があるので、単相、三相のどちらかで50kWを超える場合は、高圧受電が必要になります。
さて、高圧受電の場合、旧来の電力会社の場合、契約電力が500kW以上と未満で契約の形態が変わってきます。
契約電力が500kW未満の場合、高圧小口扱いになり、契約電力は前年の最大値が、翌年に自動的に適用されます。旧来の電力会社からの扱いは、どちらかというと一般家庭に近く、契約が自動更新されます。
それに対して、500kW以上は高圧大口になり、電力会社と個別契約を結びます。このあたりから、電力会社と需要家側の関係が、企業と企業の関係になっていきます。
この高圧受電の場合、電力会社が供給するのは原則2000kWまでで、それ以上電気を使う場合は、特別高圧受電が必要になります。
原則と書いたのは、色々特別事情があるからで、近くに送電線がないなどの事情で、高圧受電で2000kWを超える需要家も存在します。また、敷地内を区画で分けて、それぞれ個別で高圧受電を行い、2000kW以下にして特高受電になるのを避けるケースもあります。
この、高圧受電の場合、小規模な箇所で、電気工事士が管理する例外がありますが、それ以外は電気主任技術者による管理が必ず必要になります。
ただし、6600Vでの高圧受電の場合、電気主任技術者の常勤は義務付けられていません。また社内で電気主任技術者を選任する必要もなく、外部に委託することができます。外部へ委託する場合の委託先は、電気保安協会などの電気保安法人、もしくは電気管理技術者になります。
複数の事業場を持つ企業で、電気主任技術者が社内にいる場合、電気主任技術者が勤務する事業場から2時間以内で到達でき、かつ2000kW以下の高圧受電の事業場の電気主任技術者については、5ヶ所(常勤を入れると6ヶ所)まで1人の電気主任技術者が管理することができます。常勤以外の事業場の管理をすることを兼任と呼んでいます。
高圧受電だけでは、自社で電気主任技術者をわざわざ雇って選任及び兼任するケースは少ないのですが、特高受電の事業場の近隣に高圧受電の事業場がある場合、特高事業場の電気主任技術者が複数の高圧受電の事業場の電気主任技術者を兼任するケースが多いようです。
続く
高圧受電の場合、ほとんどでキュービクルという箱に中に、変圧器を収めたものを用います。高圧受電でも、電気室を設ける例や、屋上などに変圧器をおいてフェンスで囲った露出型の設備、電柱を2本立ててその間に変圧器を置く例もわずかにあります。
電力会社の配電線、市街地や郊外などで見られる電柱の電線の電圧は6600Vで、これを柱上にある変圧器で、降圧して一般家庭や商店などに交流100/200Vを供給しています。商店や小規模工場などへは、単相トランス2台を用いてV結線で三相200Vを供給するケースも多く見られます。
その電柱の6600Vから直接電気をもらい、需要家の側で電気を必要な電圧に落とすのが、高圧受電ということになります。
低圧受電と高圧受電の境界は50kWと言われていますが、前述の低圧にて三相交流を引き込んでいる場合、単相100/200Vと三相200Vをそれぞれ50kW受電して、最大100kWまで電気を使うことができます。
最近では、電気料金の安さなどから、コンビニはたいてい高圧受電していて、小型のキュービクルがあります。このあたりは電気料金の安さを取るか、それも設備の初期投資費用と維持管理費用を取るかで考え方が分かれ、高圧受電の設備が老朽化したことで、設備更新をやめて、低圧受電の切り替える例もあります。
ただし、前述のように低圧受電には限度があるので、単相、三相のどちらかで50kWを超える場合は、高圧受電が必要になります。
さて、高圧受電の場合、旧来の電力会社の場合、契約電力が500kW以上と未満で契約の形態が変わってきます。
契約電力が500kW未満の場合、高圧小口扱いになり、契約電力は前年の最大値が、翌年に自動的に適用されます。旧来の電力会社からの扱いは、どちらかというと一般家庭に近く、契約が自動更新されます。
それに対して、500kW以上は高圧大口になり、電力会社と個別契約を結びます。このあたりから、電力会社と需要家側の関係が、企業と企業の関係になっていきます。
この高圧受電の場合、電力会社が供給するのは原則2000kWまでで、それ以上電気を使う場合は、特別高圧受電が必要になります。
原則と書いたのは、色々特別事情があるからで、近くに送電線がないなどの事情で、高圧受電で2000kWを超える需要家も存在します。また、敷地内を区画で分けて、それぞれ個別で高圧受電を行い、2000kW以下にして特高受電になるのを避けるケースもあります。
この、高圧受電の場合、小規模な箇所で、電気工事士が管理する例外がありますが、それ以外は電気主任技術者による管理が必ず必要になります。
ただし、6600Vでの高圧受電の場合、電気主任技術者の常勤は義務付けられていません。また社内で電気主任技術者を選任する必要もなく、外部に委託することができます。外部へ委託する場合の委託先は、電気保安協会などの電気保安法人、もしくは電気管理技術者になります。
複数の事業場を持つ企業で、電気主任技術者が社内にいる場合、電気主任技術者が勤務する事業場から2時間以内で到達でき、かつ2000kW以下の高圧受電の事業場の電気主任技術者については、5ヶ所(常勤を入れると6ヶ所)まで1人の電気主任技術者が管理することができます。常勤以外の事業場の管理をすることを兼任と呼んでいます。
高圧受電だけでは、自社で電気主任技術者をわざわざ雇って選任及び兼任するケースは少ないのですが、特高受電の事業場の近隣に高圧受電の事業場がある場合、特高事業場の電気主任技術者が複数の高圧受電の事業場の電気主任技術者を兼任するケースが多いようです。
続く
工学系の資格の中に、電気主任技術者という資格があります。この資格は電気工作物の、維持及び運用に関する保安監督を行うとされています。
電気主任技術者は、3種から1種までの3段階に別れていて、3種が50,000V未満の電気工作物、2種が170,000V未満の電気工作物、1種がすべての電気工作物を扱うことができます。
この電気主任技術者ですが、取得方法には2ルートあって、一つは試験での取得、もう一つは実務経験での取得です。試験での取得のことを電験といって、電験3種攻略とか電験3種問題集という参考書が大きな書店の資格参考書売り場には並んでいます。
試験での習得は、3種が一番簡単で工業高校電気科卒業程度の難易度、2種が短大電気科程度の難易度、1種が大学工学部電気科卒業程度の難易度と言われていますが、実際のところそれほど簡単ではありません。一番簡単な3種でさえ工業高校の生徒が受験して合格するのは聞くところによると学年で数人で、合格すれば新聞の地域面に載るほどです。実際に受験するのは、半数が工学系の大学生といったところです。
第2種はかなり難しく、大学生でも実際に取得する人は珍く、受験者数もかなり少なくなります。3種が毎年4~5万人受験するのに対して、2種は5~7千人ぐらいにまで減少します。
1種に至っては、非常に難しく、一部では弁理士、一級建築士よりも難易度が高く理系最難関の資格とか、旧司法試験よりも合格率が低いとか言われています。
電気の分野では技術士の知名度や必要性があまり高くないこともあり、第一種電気主任技術者が最高峰とされています。
さて、この電気主任技術者を取得し、それを活かすにはどのような就職先があるかというと、3種では主に4つのルートがあります。
全国にある電気保安協会などの電気保安法人、大規模工場などの大口電気需要家、ビルメンといわれるビル管理会社、電力会社やそれに準じる発電事業者などへの就職もあります。純粋に電気の知識だけのために受験して、電機メーカーなどに就職する例もごく僅かですがあるようです。
ここで、何を求めるかによって、電気主任技術者の進むルートは大きく変わります。受電設備には、高圧受電と特別高圧受電の2種類があります。高圧受電は、通称キュービクルといわれる受電方式で、道路わきにある配電線の電柱から6600Vで電気を受電しています。高圧受電では対応できない、たくさん電気を使う工場や商業施設などは、送電線から直接、7000V以上の特別高圧で電気を受電しています。地域によって異なりますが、特別高圧受電の受電電圧は22KV、33KV、66KV、77KVが標準電圧になります。一部ではそれよりも高い電圧のところもあります。
電気保安協会などの電気保安法人は高圧までの管理業務が原則なので、特別高圧受電の変電所に関わりたい場合は、大規模工場などを選んで就職する必要があります。
続く
電気主任技術者は、3種から1種までの3段階に別れていて、3種が50,000V未満の電気工作物、2種が170,000V未満の電気工作物、1種がすべての電気工作物を扱うことができます。
この電気主任技術者ですが、取得方法には2ルートあって、一つは試験での取得、もう一つは実務経験での取得です。試験での取得のことを電験といって、電験3種攻略とか電験3種問題集という参考書が大きな書店の資格参考書売り場には並んでいます。
試験での習得は、3種が一番簡単で工業高校電気科卒業程度の難易度、2種が短大電気科程度の難易度、1種が大学工学部電気科卒業程度の難易度と言われていますが、実際のところそれほど簡単ではありません。一番簡単な3種でさえ工業高校の生徒が受験して合格するのは聞くところによると学年で数人で、合格すれば新聞の地域面に載るほどです。実際に受験するのは、半数が工学系の大学生といったところです。
第2種はかなり難しく、大学生でも実際に取得する人は珍く、受験者数もかなり少なくなります。3種が毎年4~5万人受験するのに対して、2種は5~7千人ぐらいにまで減少します。
1種に至っては、非常に難しく、一部では弁理士、一級建築士よりも難易度が高く理系最難関の資格とか、旧司法試験よりも合格率が低いとか言われています。
電気の分野では技術士の知名度や必要性があまり高くないこともあり、第一種電気主任技術者が最高峰とされています。
さて、この電気主任技術者を取得し、それを活かすにはどのような就職先があるかというと、3種では主に4つのルートがあります。
全国にある電気保安協会などの電気保安法人、大規模工場などの大口電気需要家、ビルメンといわれるビル管理会社、電力会社やそれに準じる発電事業者などへの就職もあります。純粋に電気の知識だけのために受験して、電機メーカーなどに就職する例もごく僅かですがあるようです。
ここで、何を求めるかによって、電気主任技術者の進むルートは大きく変わります。受電設備には、高圧受電と特別高圧受電の2種類があります。高圧受電は、通称キュービクルといわれる受電方式で、道路わきにある配電線の電柱から6600Vで電気を受電しています。高圧受電では対応できない、たくさん電気を使う工場や商業施設などは、送電線から直接、7000V以上の特別高圧で電気を受電しています。地域によって異なりますが、特別高圧受電の受電電圧は22KV、33KV、66KV、77KVが標準電圧になります。一部ではそれよりも高い電圧のところもあります。
電気保安協会などの電気保安法人は高圧までの管理業務が原則なので、特別高圧受電の変電所に関わりたい場合は、大規模工場などを選んで就職する必要があります。
続く