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にしみの鉄道情報局付属ブログ

電気主任技術者の話・8 油入変圧器のメンテンス

2021-08-30 | 電気主任技術者
高圧受電であれば、地域電力会社の配電線から6600Vで受電して、単相100/200Vや三相200Vに変換しています。電気炉やコンプレッサなどは三相400V駆動のものがあり、変圧器メーカーのカタログには大体単相と、三相200Vと三相400Vの3シリーズのラインナップがあります。

特高受電の場合、送電線の電圧が様々で、容量も大きいので注文生産品になります。サブ変電所の構内配電線が6600Vの場合、そのまま高圧受電の変圧器と兼用できるので、市販のカタログ品を用いているケースが多いと思われます。
ビルの電気室や地下などでは、モールド形と言われる乾式変圧器が使われるケースもありますが、それ以外はほとんど油入変圧器となっています。

変圧器の絶縁油は熱によって変化して劣化していきます。細かく管理されている需要家では、変圧器にサーモラベルを貼り付け、夏季の電気の需要が多い時期にどこまで変圧器と絶縁油の温度が上昇したかを確認し、絶縁油を年次点検時に取り出して、サンプリング調査を行います。代表的な所で、試薬による酸化値、放電による耐圧試験があり、さらに、フルフラール試験やガス分析試験などもあります。
酸化値と耐圧試験は、どれだけ絶縁油が劣化しているかを測定する試験ですが、フルフラールやガス分析試験は変圧器がどれだけ劣化しているかを測定する試験です。

絶縁油は入れ替えが可能で、酸化値や耐圧試験の値が悪いなど、劣化した際に入れ替えるケースがあります。ただフルフラール試験はこの入れ替えが仇になって、あまり意味がなくなるケースがあります。
フルフラール試験は、変圧器の絶縁紙からセルロース分が溶け出したものを測定する試験で、絶縁紙の劣化を測定できますが、絶縁油を入れ替えると、その時点でリセットされ、絶縁紙の劣化度が分からなくなります。
絶縁油を直前に入れ替えていた変圧器だと、絶縁紙が劣化していてもフルフラール試験ではわかりません。

ガス分析は、変圧器内の巻線で微小な放電が発生すると、ガス分が絶縁油内に溶け込みます。これを、測定すれば変圧器の劣化がわかりますが、これも問題が有って、単年度ではあまり意味がなく、複数年測定して、過去との差分を見る必要があります。

フルフラール試験やガス分析試験まで頻繁に行っている需要家は少ないと思われます。

電気主任技術者の話・その7 C-GIS

2020-12-08 | 電気主任技術者
特高受電の場合、設備を作るメーカーは日本に8社前後あり、自分が知っている限りでは富士電機、東芝、三菱電機、日立製作所、明電舎、日新電機、ダイヘン、東光高岳です。最近は受電用の遮断器から変圧器、高圧側の送り出し遮断器まで、制御や監視システムも含めて、全て一体でプラントとして特高受変電設備を納入するケースが多いです。

受電用の遮断器は、最近ではキュービクルの中に遮断器断路器が一体で入ったC-GIS式が、省スペースの点から多く見られます。
C-GISは断路器と遮断器と電線路が、SF6ガス(六フッ化硫黄)が内部が充填されたキュービクル内に収められています。SF6は絶縁性能が高く、電力関係では1970年代から広く使われています。
このC-GIS式の遮断器は、メーカーによって個性があり、VCB(真空遮断器)を採用しているメーカー(東芝・富士電機・三菱・明電舎)もあれば、GCB(ガス遮断器)を採用しているメーカー(日新電機・東光高岳)もあります。SF6で絶縁した中に、更に別でVCBやGOBが入っていて、2重の絶縁構造になっているわけです。GIS式のガス遮断器などと比べて非常にコンパクトで、メンテナンスも数年に1回のメーカー点検のみで、キュービクル内に全ての機器が入っているため、碍子磨き等の作業も必要ありません。
SF6ガスによる変圧器は大容量の需要家や、ビルなどの地下変電所が必要な需要家では見られますが、工場などではそこまで必要がないため、大容量の油入変圧器が一般的です。

このC-GISは数年に1回メンテンスが必要です。注油ぐらいならば、出来る整備業者はあるようですが、交換用の部品などはメーカーから出てこないので、このメンテナンスは事実上メーカーしか出来ません。

C-CISは前述にように省スペースの点からビルや工場などでは一般的になっています。

電気主任技術者の話・その6 月点検

2020-08-25 | 電気主任技術者
電気主任技術者の毎月の業務に月点検があります。常勤選任の場合、目の前に特高変電所やサブ変電所となるキュービクルがあります。そのため、いつでも出来るのですが、天候や他の仕事との兼ね合いからする日は限られます。まあ、梅雨の時期以外は、点検日が無いと悩むことはないのですが。

特高変電所は点検箇所が多く、機器の目視点検以外に、VCBやDSの動作回数、変圧器の油温、制御用の蓄電池を見ています。
ただし、C-GIS式の特別高圧機器はすべて密閉式のため、目視点検で見れるところは限られます。VCBの動作回数は、投入不調などで複数回のカウントをする可能性があり、記録を行っています。VCBの動作は、バネをモーターで巻き上げ、ロックを解除することで投入開放しています。このモーターの巻き上げが不調になり、回り続けて焼けることがあるそうです。

蓄電池は鉛電池やアルカリ蓄電池が使われるケースが多く、車のバッテリーと同じく、電解液の減少を確認しています。
電解液の減少は精製水を補充しますが、変電所クラスの鉛電池では触媒栓がついているケースがほとんどです。蓄電池は充放電を繰り返すと、電解液の水が電気分解して、水素と酸素に別れます。そのまま進むと、電解液が減少し、蓄電池のキュービクルの換気が悪いと、水素が充満して最悪の場合、爆発します。大抵は換気扇や換気口あるので、爆発まで至るケースはないのですが、電解液が減少して、電池の容量が減少します。
それを防ぐために触媒栓にて、水素と酸素を再び結合させて、水に戻しています。この触媒栓には寿命があり、電池の余寿命も考慮して交換しています。


サブ変電所、キュービクルの月点検は異音異臭の確認以外はすべて目視でみています。ただしキュービクルそのものの点検ではなく、低圧機器の漏電状況を同時に確認しています。
交流は単相100/200V、三相200Vともに、接地しており、対地電圧が0Vの相が存在します(動灯兼用トランスからの三相供給を除く)。単相3線式の場合は、中性点が接地相、三相200Vの場合、白相が接地されています。
この接地のことをB種接地線といい、変圧器が内部で破損して高圧巻線と低圧巻線が接触したとき、低圧側へ高圧の電流が流れ込んで、負荷側の電気事故を防ぐために接地してあります。
このB種接地線は、逆に低圧側で漏電した電流が、変圧器に戻る時に通る経路になります。このB種接地線の電流をクランプメーターで測定すれば、その変圧器の負荷での漏電が測定できることになります。
高圧受電の外部委託の場合、このB種接地線にセンサーを取り付け、漏電を常時監視することで、月点検を2ヶ月周期に伸ばすことも行われています。常勤の電気主任技術者の場合は、月点検を伸ばすメリットはあまりなく、取り付けていないところが多いです。

このB種接地線の漏洩電流値ですが、許容値は考え方によって異なり、50mAという人もいれば、法令で定められた定格電流の1/2000(0.05%)という人もいます。ちなみに自分は定格電流の1/2000としています。
キュービクルから各機器までの配線と対地間で、静電容量が発生するため、回路の絶縁抵抗値が十分にあってもゼロになりません。とくに、負荷にインバータがある場合、電源側へも高周波ノイズが発生するため、測定器に高周波分をカットする機能をもたせたクランプメーターを用います。
これでも、許容電流まで漏洩電流が下がらないケースがあり、実効値電流を測定するためにI0R式のクランプメーターを使用する場合もあります。電流と電圧の位相差から、容量分の漏洩電流(I0C分)を引いて、抵抗分の漏洩電流(I0R)だけを測定します。このI0R式のクランプメーターは電圧分の位相が必要になるため、電圧センサーが必要になります。

もっとも、実際に機器や配線などで漏電が発生すると、突然B種接地線に1Aを超える電流が流れるので、過去の値の傾向を見ていると大体漏電か異なるかは判断できます。
ここから先の漏電地点を特定できるかは、三相一括クランプである程度把握できますが、低圧側の分電盤系統をどれだけ把握できてるか日頃の鍛錬がものをいいます。

電気主任技術者の話・その5 構内配電線の規格

2020-05-10 | 電気主任技術者
前回の続き

特高受電の工場では、特別高圧で受電した電気を特高変電所にて6600Vもしくは3300Vの高圧に落として、構内配電線にて各建物ごとにある変圧器に送って、ここで低圧の三相400/200Vもしくは単相100/200Vにして、現場の各機器、エアコン、コンセントなどの負荷に送っています。
この高圧から低圧に変換する変圧器は、ほぼ高圧受電のキュービクルと同じものが用いられます。このキュービクルの事をサブ変電所や二次変電所、二次変電設備などと呼ぶケースが多いようです。

もともと、高圧受電の工場で、規模拡大などで特高受電化した場合、高圧受電時代のキュービクルをそのまま、サブ変電所として使うケースがほとんどのようです。ただ、高圧受電時代の継電器の扱いは微妙で、撤去して特高変電所の側でカバーするケースもあれば、そのまま残して、機能させる場合もあるようです。この場合、保護協調をしないと、先に特高変電所の送り出しの継電器が動作してしまいます。

特高変電所とサブ変電所の間は、電力会社の配電線と同じOC電線(もしくはOE電線)を用いるケースもあれば、CVケーブルを用いるケースもあります。このあたりは、特高受電化の時期や会社の方針などで決まりますが、配電線が建屋の中や埋設の場合、CVもしくはCVTケーブルを用います。

OC電線の場合、裸電線に近い扱いなので、腐食以外では寿命にそれほど気を使う必要はないのですが、CVケーブルは絶縁体の寿命が有限なので、定期的に引き直す必要があります。
この高圧ケーブルの地絡による、事故というのは度々発生していて、このメンテナンスや寿命診断については神経を使うところです。
CVケーブルは停電が可能であれば、直流にてケーブル診断を行いますが、停電が難しい場合は活線診断という方法もあるようです。

電気主任技術者の話・4 構内配電線の電圧

2020-04-03 | 電気主任技術者
前回からの続き

特高受電の場合、22KVを超える特別高圧から三相400V・200V(動力)や単相100・200V(電灯)に直接変圧することはまずありません。法律上も様々な規制があり、変圧器が故障した場合に特別高圧が低圧回路に流れ込む事を防止する対策がされた変圧器や、特殊用途のみ認められています。そのためほとんどの特別高圧受電は、特別高圧から高圧に電圧を下げて、その上で低圧に電気を下げています。
この中間の高圧の電圧は多くが6600Vです。これは、現在電力会社の配電線が6600Vなので、高圧受電用の変圧器の流用ができるためです。ところが世の中には、6600V以外の構内配電線の工場が少なからず存在します。

戦前、電力会社の配電線の電圧は3300Vでした。1950年代から70年代にかけて順次6600Vに配電線は昇圧していき、現在全国の配電線はすべて6600Vとなっています。
そのため1950年代以前からある古い工場などでは、構内線がそのころの名残で3300Vのところが少なからずあるようです。

工場内の配電線を3300Vから6600Vに昇圧するのは、その工場にとっては一大プロジェクトで、聞いたところによると10年近くかけて行った会社もあるそうです。高圧から低圧に変換する変圧器をタップ切替の3300V/6600V両用トランスに順次更新して、一部では3300V/6600V変圧のタイトランスをいれて対応したところもあるようです。特殊な例では、大型の空気圧縮機や電気炉、冷房用の大型冷凍機などが3300V駆動で、3300V/6600V変圧のタイトランスで対応した例もあります。

また、鉄道の信号、踏切用の電源は、走行用の架線の系統とは別系統ですが、電化路線の場合、変電所を架線とそれ以外の電源を共有している場合が多いので、架線柱には信号や踏切、駅で使用する電気の配電線があります。高圧で電気を送って、踏切などの近接箇所で、低圧に落としています。この配電線の電圧も少なからず、3300Vのところがあります。

現在ではほぼ無くなりましたが、かっては6600Vの配電線に中性線1本を架設して11KVに昇圧していた配電線があり、この電圧で受電していた工場があったようです。
そのような工場だと、22KV以上の特別高圧受電になった後も、昔の名残で構内配電線が11KVという例もあり、11KVから直接低圧に変圧していたり、11KVの電気炉があったりします。

現在では、新規に特高受電の工場や商業施設を作る場合、既設の工場を特高受電化する場合、構内配電線は6600Vを用いている例がほとんどです。

続く