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nishimino

にしみの鉄道情報局付属ブログ

民主の敵

2009-07-27 | 書評

先日、「民主党政権は日本をどう変えるのか(12)」を読みまして、民主党研究を始めて、野田佳彦衆議院議員の著書を読んでみました。それがこの「民主の敵・政権交代に大儀あり」新潮新書刊です。

自民党、民主党のこと、公務員制度改革や自衛隊の事などが一通り紹介されていました。

その中から気になったところを何ヶ所か。

自民党という政党は15年前、つまり宮沢内閣の時に消滅していると述べています。その後、様々な政党と連立して、政権を保ちますが、今の自民党はかっての自民党とは違い、変質してしまったと述べています。かっての自民党の強みは安定性だったのですが、ここ数年、小泉内閣を除いて総理大臣がコロコロ変わり、閣僚に至っては一ヶ月持たない例もあります。


あと特別会計の多さというものも、同氏は指摘しています。
話題になった道路特定財源もその一つですが、これ以外にも多数の特別会計が存在します。国の一般会計は約80兆円ですが、特別会計はそれを上回る140兆円と言われています。特別会計の実態はいまいちはっきりしない面もあり、その多くが族議員や官僚の天下り先などの利権に結びついていると言われています。民主党はこれらを一掃して、一般会計化を行うとしています。
しかもこの使われ方はかなり無茶苦茶といえる状況で、本の中にはこんな一節がありました。

かって「塩爺」こと塩川正十郎元財務大臣が「母屋(一般会計)でおかゆをすすりながら、離れ(特別会計)ではすき焼きを喰っている」と表現したことがありますが、言いえて妙です。

(中略 民主党で特別会計を調査した結果)、数々の無駄遣いは、とてもすき焼きレベルではありませんでした。すき焼きは無論食べ放題、しゃぶしゃぶ、ステーキもあって、ビールから焼酎から、ドンペリまで飲み放題といったぐらいのお金の使い方をしていました。



同氏の挙げている一例ですが、「電源開発特別会計」から計上される経済産業省資源エネルギー庁の広報予算のうち、資源エネルギー庁のwebサイトの年間制作費が3億円であるとのことです。経済産業省本体のwebサイトの年間制作費が120万円なので、いかに無駄遣いが多いかと指摘しています。

この本では、問題になった偽メール問題も取り上げていて、当事者として反省すべき点もあり、自身の甘さも痛感していると書いています。これについては深くは触れませんが、これが民主党の未熟さだったと述べています。

またこれから先、民主党が政権を取れるかは分かりませんが、この本の後書きで、日本が政権交代が出来る普通の国になるべきだと述べています。


民主党政権の可能性・後編

2009-07-13 | 書評
日本の政党は多かれ少なかれ、考え方の異なる寄せ集め集団という面があって、自民党も民主党も考え方の違う人々が存在します(この点主張が一番わかりやすいのは共産党)。民主党の場合、旧社会党系と旧自民党でも新進党を経て民主党に合流した議員では考え方がかなり異なります。考え方のみではなく、選挙の仕方も違って、旧社会党系や旧民社党系の議員は連合などの労働組合主体の組織選挙、旧自民党系、特に旧自由党を経て民主党に合流した小沢一郎に近い議員は後援会主体の選挙、さらに民主党結党以降に入った議員の多くは、テレビに出演して知名度を上げ、都市部の無党派層を取り込むという選挙となっています。
旧自民党、自由党系の議員は、テレビに出る暇があるなら、地元へ戻って後援会の会合などに顔を出した方がいいと考え、それを他の議員から見ると党内や国会の仕事もせず、地元に戻ってばかりとなります。
小沢一郎が代表になってからは、連合などの労働組合との関係を強化して、旧自民党系に縁の無かった労働組合の組織票を取り込もうとしており、また旧社会党系では後援会を作って選挙を行なった経験があまり無く、その手法に魅力があったといわれています。安全保障など旧社会党系と旧自民党系の考え方の違いがあっても、選挙という共通項で利害が一致して、協調が進んでいます。
もっともこれは自民党の派閥政治と同じで、金の切れ目が縁の切れ目という言葉が古くからあります(昔の中選挙区制の選挙には、今以上に金が掛かる)。
自民党の場合も、リベラルといわれる宏池会(古賀派)と、憲法改正・自主防衛を掲げる清和会(町村派)ではかなり思想が異なり、民主党だけの問題ではなく、アメリカの民主共和両党も様々な考え方の人間がいます。


民主党の最大の支持基盤は労働組合ですが、その連合との関係も微妙で、一時期冷却しましたが、最近は労働者保護の政策を民主党が打ち出しており、関係が修復しているといわれています。労働組合との関係は民主党にとって最も難しい問題ですが、今後も最大の支持組織であることに変わりは無いようです。
自民党の支持組織は近年創価学会を除いて、高齢化や構造改革や公共事業の削減で弱体化し、集票力が低下していると言われていますので、ある意味民主党のほうが支持基盤は磐石かもしれません。自民党と公明党の連立で、政治に関わりがある宗教団体は軒並み民主党支持に移行したとも言われており、前述の自民党の支持組織の弱体化もあって、基礎票は民主党の方が多い状況になりつつあります。

民主党が政権を取って、実現すると歓迎すべき公約の一つが記者クラブ制度の廃止があります。民主党はすでに党の会見をすべてのメディアに解放しており、政権交代後は中央省庁や官邸の記者クラブを廃止すると明言しています。これはあまり報道されていませんが、この点、政治の側から会見に参加できるジャーナリストを選べるため、メディアの側にも対応が必要になってきます。


ところで、民主党は警察検察での取調べの完全録画録音などの可視化を主張しています。これは関係機関の猛反発を招くといわれています。ここからが疑った見方ですが、西松建設献金の立件などの検察の動きは、どうも民主党政権を歓迎していないように感じます。政権与党からの陰謀なんていわれていますが、検察そのものの民主党への拒否反応というのも、推測ですがあるのではと思えます。
ただ、検察警察はともかく、前回の参議院議員選挙以来、野党が参議院の多数を占めるようになり、民主党の意向も法案審議に影響を大きく及ぼすようになり、官僚も民主党の方を向き始めたといわれています。

民主党政権の可能性・前編

2009-07-12 | 書評
民主党政権の可能性

数ヶ月中には必ず有る、衆議院の総選挙。選挙での政権交代となれば、1947年の吉田内閣から片山内閣への政権交代以来、実に62年ぶりといわれています。なお1955年以降では唯一の非自民政権の細川内閣の場合、複数の政党による連立内閣と与党の分裂などによるもので、総選挙による純粋な政権交代ではありません。片山内閣も社会党と民主党(1947-1950)の連立内閣で、保守と革新の連立内閣のため純然たる政権交代とは言いがたい面もあります。当時は自由党と民主党、社会党の三大政党があり、二大政党制では有りませんでした。この後自由党と民主党は集合離散を複雑に繰り貸し1955年に自由民主党となり、いわゆる55年体制が成立しています。
そのため純然たる二大政党制による政権交代は、戦前の政友会と民政党による政権交代、憲政の常道にまでさかのぼることになります。


その民主党政権になると何が変わるのかを書いた本が、上杉隆著「民主党政権は日本をどう変えるのか」飛鳥新社刊です。著者の上杉氏はNHK記者から鳩山邦夫(以下敬称略)の公設秘書をへてフリージャーナリストになった人物です。
1996年の民主党結党の事情から、1998年の新進党解党の時の事情などが簡単に書かれていて、民主党がどういう経緯で最大野党になり、どういう人たちが集まったのかが分かります。また小沢一郎という人物が、どういう政治思想があり、どういう性格の人物なのかが書かれています。
この中からいくつか紹介しますが、100ページも無い薄い本にもかかわらず、紹介しきれないほど結構濃い内容が書かれています。

まず小沢一郎という人は、あまり説明をしない人だということ、それは独善的でもあり、ある意味シャイで小心者でもあるということです。まず、こういう方針で行くと結論を決めたら、自分の考えは正しく、まわりに説明しなくても周りは付いてきてくれると思っているところが有ります。当人が分かりきったことを説明するのは面倒だというのもあるようです。
さらに、小心者でシャイなためか、何も説明しないし、人の悪口も言わない、さらに自身に対する批判の反論もしないという面もあります。これは大いなる誤解を招く場合もあり、これがマスコミや周りの人たちが小沢神話を作っていくことになります。小沢一郎という人は、あまり自身で説明をするタイプではないようです。2007年10月の大連立騒ぎは自民党の懐に飛び込んで、自民党型の政治システムをつぶすという構想だったといわれています。従来の小沢一郎の場合、大連立を決めて後はまったく説明しないスタイルだったのですが、話を党に持ち帰って議論しています。結果はご存知の通り、猛反発を受け大連立を撤回するのですが、このとき説得に応じて民主党の代表を辞めなかったのが、小沢一郎の変化といわれています。もっとも、ここで代表を辞めると、政権交代は実現できず、死んでも死にきれないという思いが強かったようです。

続く

蒼い千鳥 花霞に泳ぐ

2009-06-07 | 書評
今回は高里椎奈の薬屋探偵妖綺談の8作目、「蒼い千鳥 花霞に泳ぐ」です。
薬屋が舞台ではなく、それ以前の設定となっていて、座木が高校時代で、リベザルは登場しません。

「1週間家を貸してほしい」という差出人不明の手紙が届いたという依頼があり、そこから調査しています。まあお約束というか、別々の依頼が実はつながっていたというのがあり、これも途中からうすうす感じるのですが最後まで読むとやっぱりかと思うところです。
過去の話なので、出てくる人物に違いがあって、それらの人物の再登場も期待したい所です。

ブラック・ケネディ オバマの挑戦

2009-05-17 | 書評
大統領就任後、4ヶ月になるバラク・オバマ。自身は奴隷解放の父、リンカーンになぞらえていますが、多くの人はケネディの再来と言っています。アメリカの歴代大統領は一人を除きオバマも含めてプロテスタントなんですが、歴代大統領の中で唯一カトリックの大統領がケネディなんです。マイノリティであり白人プロテスタントという枠から外れた二人目の人物ということと、ケネディのような変革が期待できるということもあって、ケネディの再来と言われているようです。

この本は、そのオバマの大統領選に至までの伝記とも言える本です。この本の前半では、もう各メディアで報道され有名になったオバマの経歴の詳細が書かれています。ハワイでケニアからの留学生の父親と、白人の母親の間に生まれ、一時期インドネシアで育ち、その後様々な経緯があってシカゴで社会運動を行い、イリノイ州議会に出てそして上院議員に立候補するまでが書かれています。
この本の後半では、オバマの考え方や大統領への挑戦、アメリカの信仰と黒人運動について語られています。現状のアメリカは相当な宗教大国で、キリスト教の教会が政治的な発言力を相当持っていることが分かります。
イスラム過激派によるテロとの戦いにに明け暮れる現在も「神の存在を全く信じない」という一部のヨーロッパ人よりは、定期的にモスクを訪れる穏健派のムスリムの方がずっと信頼できる―というアメリカ人は多い。
その中でこんな記述がありました。これだけではないのですが、現状のアメリカでは、宗教とは切っても切れない関係になっており、これが比較的詳しく書かれており、ここが1つのこの本の見所ではないかと思います。