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nishimino

にしみの鉄道情報局付属ブログ

沈まぬ太陽・5

2009-11-25 | 書評
会長室編の後半は、社内に潜む数々の不正などを一掃すべく動くのですが、組合の統合については道半ばで断念する事になります。
国見会長は解任され、関西紡績に戻り、恩知は再びアフリカ、ケニアに赴任することになります。

この小説、モデルは日本航空であることは言うまでもないのですが、結構脚色が多く、社内対立に恣意的に利用されたなどと言われたり、あるいは一方向のみを取材し、対立側の組合関係者の描写が酷く、ここまで書いて良いのかと思えるような所も。週刊誌に登場人物とモデルとなった人物の相関関係図が載ったこともあります。
その日航が現在倒産寸前の状況になっているのは、このような複雑な労使関係を本気で解消しようと思った経営者がこれ以降出なかったからで、まさに国鉄末期の状況になりつつあるようです。

デルタ航空やアメリカン航空からの出資なども噂されていますが(日航内部では同じワンワールドのアメリカン航空からの出資、国交省側はデルタ航空からの出資)、ナショナルフラッグキャリアを外国資本に売り飛ばして良いのかもいう意見もあります。

日航もかってのパンナムと同じ状況に追い込まれてるとも言えます。昨今の報道を見ていると、さすがに政府も含めて支援の方向のようですが、日本のナショナルフラッグが全日空に移ってしまうのも時間の問題かもしれません。

沈まぬ太陽・4

2009-11-15 | 書評

沈まぬ太陽4は日航機墜落の後にその対応として発足した会長室編です。
このときに政府によって、会長に送り込まれたのが、関西紡績の国見会長で、モデルはカネボウ(現クラシエホールディングス)の伊藤淳二氏とされています。
作者は直接伊藤氏に取材したので、会長就任に至る経緯などが詳しく書かれています。もっとも、脚色も多いと言われていますが。中曽根元首相がモデルの利根川首相が登場しますが、首相の参謀役として、龍崎なる人物が登場します。モデルは、元大本営参謀、伊藤忠商事会長の瀬島龍三とされています。山崎豊子は瀬島龍三をモデルにした作品、不毛地帯を書いていますが、その主人公の壱岐正とは描き方が違うとも言われています。

国見会長は複数に分かれている組合を一つにまとめる事を目的として、様々な部門から集まった人間を一堂に集めて会長室を発足させます。この会長室に恩知が呼ばれるわけです。

沈まぬ太陽・3

2009-11-08 | 書評
沈まぬ太陽の3巻は日航123便墜落事故をあつかったノンフィクションとも言える内容になっています。作者の山崎豊子も、遺族や当時の関係者、警察消防自衛隊などの救援側、当時の上野村の村長であった黒沢丈夫氏などに相当取材を重ねているようです。

ただし、恩知のモデルとなった小倉貫太郎氏は当時、二度目のアフリカケニアへの赴任中で、日本航空の遺族係には就任しておらず、別の日航社員がモデルになっているようです。なお、この二度目のアフリカ赴任は作中では触れられていません。

もう一つ書いておきたいことは、当時の日航社長高木養根氏で、作中の堂本信介のモデルとなった人物です。同氏の名誉に関わることなので誤解の無いように考えてほしいのですが、作中の堂本のような非人間的な人物ではなく、病身にもかかわらず酸素ボンベを持って墜落地点の御巣鷹の尾根に登ったり、ポケットマネーから慰霊碑の資金を出したり、遺族会からもこの社長で保証交渉や再発防止対策をしてほしいと言われた人物です。

沈まぬ太陽・2

2009-11-01 | 書評
沈まぬ太陽の2巻はパキスタンのカラチに飛ばされた恩知が、さらに中東のイランのテヘランへ支店開設のために移動するところから話が始まります。

テヘランで中東独特の商習慣に苦労しつつも無事支店を立ち上げ、日本に帰れるはずでした。しかし・・・
恩知に待っていたのは、国民航空が乗り入れていないケニアナイロビへの支店開設の辞令でした。
会社側が恩知をさらに困難な状況に追い込み退職させようとしていることがわかります。

さて、ここで物語の中で恩知はアフリカケニアの地で、現地で活躍する様々な日本人に出会うわけですが、それらの人々にはモデルが居ます。一部は恩知のモデルである小倉貫太郎氏が出会った人だと思いますが、多くはおそらく作者の山崎豊子がアフリカケニアへの取材の過程で出会った人々ではないかと思います。

その中の比較的名前の通った人に、西江雅之(文化人類学者)、阿部昭三郎(写真家)、神戸俊平(獣医師・参考)、柏田雄一(ウガンダにてシャツ工場経営)などがあります。

その後、10年以上の海外赴任を終えて、ようやく日本に戻れることになります。

沈まぬ太陽・1

2009-10-25 | 書評
10月24日に映画公開された山崎豊子の名作「沈まぬ太陽」。前々から一度読んでみたいと思っていましたが、少し前に書店で見かけて衝動的に文庫の1巻を購入しました。
ちなみに映画の方は早速公開初日に見に行きました。

この沈まぬ太陽は国民航空という会社が出ており、言うまでもなく日本航空がモデルとなっています。この日本航空という会社、労働組合についてはいろいろ言われており、旧国鉄と同じぐらいかそれ以上複雑な労組関係があります。それをいろいろ描いたため、連載中はその掲載雑誌の機内販売を自粛すると言うことになったか。

主人公の恩知元のモデルとなった人物は故小倉貫太郎氏と言われています。同氏はアフリカのサバンナの野生動物の著書を何冊か残しています。また、日本人唯一のケニア政府公認のプロハンターでもあります。

さて、物語は遠いアフリカの地、国民航空が乗り入れていないケニアナイロビのワンマンオフィスで、チケットを販売しているところから始まります。
ここで恩知は単身赴任で、週末は趣味のハンティングを行い、平日は国民航空のオフィスで現地採用の人間とともに仕事をしています。恩知がなぜこのような境遇になったのかは、その遙か10数年前の労働組合の委員長就任から始まっています。あまりに低すぎる待遇や、大空の安全を守るため戦い、それが元で左遷されます。首相フライト時にストライキを行い会社と激しく対立して、それが元で2年という約束で、パキスタンのカラチ支店に行くことになります。しかし社内に反対勢力あり、さらにイランのテヘランに支店を開設するときに、その準備人員となり、そのままテヘラン支店に配属されることになります。