蝉の羽

ダム建設が中止になって、無人になった村に新たに入った人々の間で起きる事件、そこに薬屋のメンバーが乗り込んでいくストーリーです。
依頼者が実は・・・というのは推理小説の定番ともいえますが、それが怪奇現象と結びついて複雑化したストーリーでした。といっても、若干結末が弱いように感じました。
「楽園は把想像の数だけ存在する」というのがテーマでしたが、もうひとつ孤独というものもテーマでした。その点だけは作者の意図が伝わってきました。
ゼロの焦点、映画化されてみてきましたが、舞台となる昭和32年が驚くほどよく再現されていました。
原作の方は読みましたが、半分以上内容を忘れていたので、その読み返してみました。映画はおおむね原作に沿って描かれていますが、オリジナルの部分も見られます。
ストーリーは主人公の禎子は広告代理店に勤める鵜原憲一と見合い結婚した。憲一は新婚旅行後、仕事の引き継ぎのため金沢へ旅立つが、予定を過ぎても帰京せず、行方不明になる。禎子は金沢へ向かい、そこで憲一の後任の本多や主要な取引先の室田耐火煉瓦の室田社長夫妻から、金沢での話を聞いて調査を始め、隠された夫の過去を知ります。
1991年の火曜サスペンス劇場放映の放送を見た記憶があるのですが、確かこのときは真野あずさが主演して舞台も現代でした。1992年8月4日、松本氏が亡くなられたその日に、急遽再放送されたのを記憶しています。
それで映画のキャストは主人公禎子は広末涼子が、鵜原憲一が西島秀俊、耐火煉瓦会社の社長の室田儀作が鹿賀丈史、その妻の佐知子が中谷美紀となっています。
その耐火煉瓦会社の受付には、田沼久子という女性がおり、これがキーポイントになるのですが、演じたのが木村多江で、こういう薄幸な役ははまり役としか思えません。
映画の方ですが、昭和32年が舞台と言うこともあり、相当考証されて撮影されています。金沢の町並みは韓国で撮影されたらしいのですが、それ以外は日本で撮影されています。旅館から出るシーンは飛騨古川で撮影されていますが、このシーン、わざわざ乗鞍スカイラインから除雪した雪を持ってきて撮影しています。そのため雪の質感が妙に有りました。この飛騨古川の旅館、八ツ三館では旅館のシーンの多くが撮影されたようです。
この古川や能登のシーン以外では、食塩や貝殻を砕いて粉にしたものが使われているようです。
耐火煉瓦会社の工場は妙にリアルだったのですが、調べてみると岡山県の三石耐火煉瓦で撮影されたようです。
大井川鐵道の全面協力で当時の上野駅や金沢駅などが撮影されましたが、どうもあちこち違和感があります。というのも金沢行き列車が上野駅から蒸気機関車(C11)のけん引なのですが、高崎線の電化は昭和27年(上越線の全線電化はさらに早く昭和22年)なので、当時すでに上野から高崎もしくは長岡までは電気機関車(おそらくEF56・EF57・EF58のどれか)がけん引していたはずです。それ以前にローカル線用のC11が重量級の本線急行列車をけん引するのはかなり無理があるのですが。本来ならC51もしくはC57のけん引だと思われます。北陸や白山というなじみ深い列車名も登場しましたが、これらは当時から運転されています。
あと、北陸本線の親不知の旧線か信越本線の青海川あたりの海岸線をイメージして列車が走るシーンもあるのですが、これも同じくC11がけん引しています。これはいろいろ調べたのですが、どうも函館本線銭函あたりの映像が組み合わされているようです。このシーンは公式サイトから見られる特報3でも見られます。
もう一つ、北陸鉄道鶴来駅のシーンも大井川鐵道で撮影されていますが、元近鉄南大阪線の特急車16000系が登場しています。