
「東京メトロをゆく」、この本は以前紹介した首都高をゆくの東京メトロ版です。
東京の地下鉄のうち、旧営団地下鉄の戦後の建設の歴史で、表紙は初のシールド工法によって作られた駅である、東西線の木場駅のようです。
この中に興味深いデータがあって、各路線の開削工法(オープンカット)とシールド工法の割合がありました。
銀座線 開削97% シールド2% 地上1%
(東京地下鉄道施工の新橋渋谷間の詳細不明)
丸ノ内線 開削92% シールド1% 地上7%
日比谷線 開削86% 地上14%
東西線 開削51% シールド6% 地上43%
千代田線 開削62% シールド18% 地上20%
有楽町線 開削62% シールド30% 地上8%
半蔵門線 開削31% シールド69%
南北線 開削24% シールド76%
副都心線 開削26% シールド74%
年々シールド工法の割合が増えていますが、駅部分は開削工法で作らないと難しいため、100%シールド工法というのは無いようです。
それ以外で目立っているのが、荒川より東はすべて高架区間の東西線で、地上部分の43%となっています。
さて、戦前に作られた銀座線や、戦後すぐに作られた丸ノ内線はともかく、1970年代に主に建設された、千代田線や有楽町線も開削工法の割合が意外と高く、約60%は開削工法によって作られています。建設が、本格的にシールド工法に移行したのは半蔵門線以降ということがわかります。その半蔵門線も首都高の下に後から地下鉄を作った所があり、その工事の制約から開削工法を選択した区間もあるようです。
銀座線や丸ノ内線でも川の下を通るところなどで、シールド工法が採用さており、シールド工法自体は結構昔からあった工法でした。驚いたのが日比谷線で、結構深いところを走っていますが、すべて開削工法で作られていました。
もう一つ注目したのが、東西線と千代田線のシールド工法区間の違いで、東西線6%に対して、千代田線が18%に増えています。東西線と千代田線には国鉄の103系が乗り入れていましたが、単線トンネル区間が多い千代田線では抵抗器の排熱がかなりの問題になりました。結局10年程度で203系に置き換えられ、103系は地上に転用される事になりました。東西線の方は103系と301系が寿命で廃車になるまで使われましたが、シールド工法が少なく、複線トンネルが多かったため、同じ抵抗制御の営団5000系の存在もあり、大きな問題にならなかったと言われています。
さて、この本でもう一つ注目したのが、地下鉄の普段公開されていない空間が紹介されています。
現在、東京の地下鉄には3つの廃駅があります。いずれも銀座線で、一番有名なのが新橋駅で、これは各メディアに紹介されています。あと表参道駅で、こちらは、半蔵門線を作ったときに、ホームの位置が浅草側に180m移動しています。
もう一つ有名なのが万世橋仮駅で、銀座線が上野から神田まで延長するときに、神田川の下を潜る工事に時間がかかったため、暫定的に万世橋に仮の駅を設けたものです。この駅は、1930年1月から1931年11月までのわずか2年弱しか営業されなかった幻の駅で、廃駅になってからは一度も公開されたことがないとされています。その幻の万世橋駅の現在の写真が掲載されています。
仮駅のため片側の線路を封鎖してホームにしていたため、現在残っている地下空間は、結構狭いスペースとなっています。
ちなみに余談ですけど、地下区間の廃駅は、この三駅と京成本線の上野の山のトンネル区間の博物館動物園駅、寛永寺坂駅、京王本線の初台駅(京王新線に移転)、東京モノレールの旧羽田駅があります。
というわけで、この本はどちらかというと、建設の歴史の本ですが、鉄道ファンが読んでも十分面白い内容の本です。