白洲 正子文学逍遥記

故・白洲正子様の執筆された作品を読み、その読後感と併せて能楽と能面、仏像と仏像彫刻、日本人形、日本伝統美術についてご紹介

白洲正子文学逍遥記-0009

2013-08-24 | 日本の伝統芸術

 

白洲正子文学逍遥記

 & 能面・仏像・日本人形・・etc

 

 

臨時公開

 

以前別のブログで掲載しておりました「能面と能楽」を8/末迄、数回程、再公開します。ご覧になっていない方はどうぞ参考にしてください。

 

 能面能楽   
                        

             能楽の歴史と能面-009
 
 
 
 
 
 
              能面集・特集」-02
 
 
 
 
 先回もお見せしました著者の能面集関係の書棚ですが、最近はデフレ経済下ですので以前よりは古書店に能面集が並ぶようになりましたが、絶対数が少ないのは変わりません。依然として流通量が少ないのです。ですから貴重な本は特別な事情がない限り、手放さないのが原則です
 
今回は先回ご紹介できなかった、貴重な能面集などをご紹介しましょう。
 
 
A 「橋岡 一路能面集」
 
 
 
 
 最近はたまに古書店で見つかる程度です。以前は先ず手に入らない代物でした。橋岡家は関東の有名な能楽家の家柄であり、著者・橋岡一路師も当代一流の能面師でした。特に三井家所蔵の「孫次郎」の写しを許されたという稀有な存在の能面師でした。これだけでもこの方の腕前が解かろうと言うものです。
 
その内に「三井家所蔵の本面」と「写し」をこのブログで比較ご紹介しようと思います。正に写しのお手本みたいなものですね。長沢 氏春 ・ 堀 安右衛門(初代) ・ 橋岡 一路 は現代能面界のビッグネームです。著者が持っている能面集は、東京銀座で開催された能面展示会の際に売られたもので、本人の素晴らしい達筆の署名が、能面集の見返しに残っており居ります。
 
この筆跡を見るだけでこの方の技量が分ろうと言うものです。名人と言うものははこのようなものなのですね。時々、古書の中には贈呈先の署名があるのが存在しますが、まず例外なく達筆です。
人形店「吉徳」の人形師・山田 徳兵衛師などもその例に漏れません。
 
 
B 「三井家旧蔵・能面」・「能面手鑑
 
 
 
 
「A」でご紹介した「三井家旧蔵 能面」は可なりの期間、幻の能面集でした。兎に角、市場の古書店では見かけたことが有りませんでした。同じ題名で復刻版も有ったのですが、これとてもすぐ市場から消えてしまいました。幻の名面「孫次郎」がその原因だったと思います。これも蒐集に10年ほど掛かりました。いずれ「孫次郎」のご紹介のときに、詳細をお見せしましょう。
もし、古書店で見かけたら必ず手に入れておくべきです。
 
次の「能面手鑑」は定価75.000円の高価な能面集ですが、発行部通が多いので、今でも比較的手に入れやすい能面集です。 梅若万三郎家の所蔵の能面を掲載しております。2冊の合本になっております。高価なので簡単と言うわけには行きませんが。余裕のある方は・・・
 
 
C 「能面を打つ
 
 
 
 
 
ご覧のように能面集と型紙集が合本になっている形態のものです。著者は神奈川県方面で活躍しておられる、高津紘一氏の作品集です。比較的市場に多く出ておりますので、手に入れやすいかも。下記のDに掲載の「能面の彩色」も同じ著者です。彩色の専門書は殆どありません。写しやり方を通して、能面の彩色を学べる良書です。
 
 
 
 
D 「能面の彩色」・「能のおもて
 
 
                              ↓ 中西通著
                           
 
 
                                                   ↓ 「能面」・中西通
 
 
 
 
日本の代表的な能面収集家が著した能面集です。丹波笹山に在住の方で、能面資料館と丹波古陶資料館を公開されております。「能面」は幻の能面集で、「能のおもて」が比較的簡単に手に入るに比較して、可なり手に入れるのが難しい能面集です。左となり「金剛家の面」は高価な能面集ですが、市場で簡単に新本が手に入ります。印刷部数が多いからでしょう。資料として持つ価値はあります。
 
E 「能面次元」・「羽生光然能面集」
 
 
 
 
 
能面次元は女性能面師で堀 安右衛門師のお弟子さんで、京都で作品を打たれておられ、能面教室を関西一円で開かれておられなす。 筆者も何回か展示会場でお会いしました。
女性ならではの作品が多く、素晴らしい技量の方です。京都市立芸大・油絵科の出身の方で、その影響が多分に感じられる方です。長沢 氏春流の作品とは彩色がはっきり違います。作品を見ると男と女の鑑識眼の違いを感じさせられます。
 
羽生光善能面集」は比較的手に入る能面集です。彩色が淡い感じがする、どちらかと言えば鈴木慶運師とおなじ柔らかな人柄を感じる作品が掲載されております。
 
比較的新しい価格の安い能面集は、印刷部数が多いので市場で手に入りやすいのですが、奇
鑑本は運が伴います。 オークションで偶然、新古本を手にすることがあります。また、専門店は価格が高いのが難ですが、品物に信頼が置けます。 その方の意欲と運と感が影響してきます。
 
次回は最終回として、残りの能面集をご紹介しましょう。
 
 
 
 お知らせ 
 
                          
 
  それでは ブログをご覧の方にプレゼント  を先回ご案内しました。
 
締め切りは8/31でなく、翌日が日曜なので9/01とします。
詳しくは
http://blog.goo.ne.jp/nippondentougeinou/ 0008をご覧ください
 

                                      

 

姉妹ブログ

 

 <サワラちゃんの加計呂麻日記>

http://blog.goo.ne.jp/sawarachan    

 <西南諸島貝殻学入門 

http://blog.goo.ne.jp/amamichan  

<加計呂麻島貝殻図鑑>

  http://shirasumasako.blog.fc2.com/

http://ritounikki.amamin.jp/ 

http://sawarachan.seesaa.net/


白洲正子文学逍遥記-0008

2013-08-18 | 日本の伝統芸術

 

 

白洲正子文学逍遥記

 & 能面・仏像・日本人形・・etc

 

 

臨時公開

 

以前別のブログで掲載しておりました「能面と能楽」を8/末迄、数回程、再公開します。ご覧になっていない方はどうぞ参考にしてください。

 

 能面能楽   
                        

             能楽の歴史と能面-008
 
 
              能面集・特集」-01
 
 
 
                                                     猩々
 
 
 
 
「能面集とは」

 

 001~007で、能面に纏わる事柄を書いてきました。本日は少し視点を変えて「能面集」に特化してご紹介してみたいと思います。能面集は戦前から可なりのものが出版されてきましたが、何れも専門家が使用するような、廉価で一般向きのものは少ない傾向がありました。

最近、全国で能面ブームが一時起きまして、素人の方が趣味で文化スクールなどで、面打ちを学ぶような風潮が出始め、それに伴って能面集の出版も盛んになりました。しかし、能面集は廉価のものは少なく、一冊数万円もするものが大部分で、廉価のものは面打ちの製作資料にはとても無理でした。

 

 

能面は宗家に専一的に収蔵されており、原則として非公開が建前ですから、一般の方がおいそれと拝見できる種類のものではなかったのです。当然、能面集は宗家から発行という建前となりますから、結果的に高価な価格となって、一般人にはなかなか手に入らなくなっていたのでした。また、専門家がすぐ買い占めてしまいますので、印刷数の少ないこともあって、ますます取得が困難になりました。

有名な方の能面集や面打ち技術書などは、短期間に市場価格(古書価格)が4~5倍の価格に跳ね上がりました。かの有名な文化財技術保持者・長沢 氏春氏の能面集は、発行当時¥30.000円でしたが、現在の市場価格は東京・神田では¥100.000円となっております。また、この手の書籍は一度人の手に入ると、なかなか市場に出てこないという性質があり、それがますます市場価格を押し上げる結果になってしまいます。

 

実際に皆さんが近在の都道府県の図書館に行っても、なかなかこれはという能面集にはお目にかからないと思います。 因みに自慢話になるかもしれませんが・・・

最近まで住まっていた滋賀県でも同じことが言えました。県立、市立の図書館の所蔵している能面集・能面関係の著書は、私の所蔵の図書の方が良く揃っておりました。やはり、特殊な分野の図書なのですね。少ない予算の中で余り閲覧数の多くない、高価な能面集などは購入は控えるのが人情です。

 

       著者の自宅の能面関係書

 

 一見何でもない様に見えましょうが、能面集に多少の知識のある方は<生唾を飲む>ような感じになると思います。つまり、古書市場には余り出回っていない能面集が何冊も見えるからです。大凡8冊は有るでしょうか。

1- 面打ち 長沢 氏春  2- 古能面傑作五十撰  3- 能面 鐘紡コレクション 

4- 池田家伝来 能面  5- 能面 中西 通  6- 三井家旧蔵 能面 

7- 橋岡 一路能面集  8- 能面の美 中村保雄

上記の内、2・3・4・5・6・8は最近古書店でのHPであまり見たことがありません。(1) は最初の説明の通り¥10万円が市場価格となっております。兎に角「時間と金」が掛かるのです。

その他に能楽関係では、能楽論関係図書、VHF、DVDなど様々の商品が出回っております。

1- 岩波講座 能・狂言 2- 能面 中村保雄 も時間が掛かるかもしれません。

その他、VHFやDVDなども市販されておりますが、殆ど手に入れるのは困難なのもあります。能楽は特殊な日本の古典芸術なのです。

 

 

 

 

正に資金が幾らでも必要な世界でしょうか。それでは簡単に面打ち技法書、能面集をご紹介して参りましょう。

初歩的面打ち技法書

 - 「面打ち入門」  著者・長沢 氏春

  誰でも知っているがなかなか手に入らない著書。定価・¥3.500円(東京・神田 古書価格¥18.000円)

参考 古書価格

http://takayama.jimbou.net/catalog/advanced_search_result.php?keywords=%E9%95%B7%E6%B2%A2%E3%80%80%E6%B0%8F%E6%98%A5

 - 「小面を打つ」  著者・倉林 朗

  長沢氏春師の直弟子で、関東地方で現在活躍中です。定価・¥3.500円

 

 

初めて面打ちを手がける方には、値段も内容もてごろですが、「面打ち入門」はなかなか手に入るのが難しい。内容は下記の写真の通り。

 

 

その点、「小面を打つ」は手に入れやすく最適。通信教育も手がけているので、初歩の段階は最適かもしれません。

 

中級的面打ち技法書

長沢氏春氏の言葉として有名な言葉・・・「一面覚えるには十年掛かる」・・天才にしてこのような謙虚な言葉。 そう簡単にこなせるものでは有りません。

比較的簡単に手には入れやすい能面の入門書です。

 

 

 

次は、現代日本の能面師の最高峰「初代 堀 安右衛門師」が著した実作者の「面打ち技法書兼能面集」です。内容は「長沢 氏春 能面集」と同レベルで、これ以上のものはありません。古書は市場では可なり品薄かも。4冊の内、「能面を打つ」は比較的手に入れやすい。

 

                          各 230x310mm 200P程度

                          

 

 

出来れば下記のVHFのライブラリーは是非用意したいのですが、これも運が良ければ市場で手に入るかも。 ¥5~70.000円程度でしょうか。(東京・神田 ¥70.000円)

 

 

 

そして、何度も出て来ました「長沢 氏春 能面集」・・・

 

 

上記の2冊は能面師は必ず所蔵している逸品ですが、なかなか市場に出てこない。また、非常に高い。「面打ち 長沢氏春」は定価は¥30.000円ですが、東京で¥10万、京都で¥8~9万、大阪では幾分安いでしょうか。因みにAMAZONでは¥39.800~98.500円です。

参考までに

http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/B000JBTY9I/ref=dp_olp_used?ie=UTF8&condition=used

古能面傑作五十撰は残念ながら、余程の運が良くなければ無理かも。 いずれにしてもHPで古書店やオークションで丹念に探していくと、時間は掛かりますが手に入ることもあります。根気の勝負です。

余談ですが、筆者がこの能面集(長沢 氏春能面集)を今までに3冊手に入れましたが、初版本は簡単でしたが人にあげてしまい、後日慌てて探したのですがOUTの連続。 手に入れるまでその後10年以上掛かりました。2冊の内1冊は専門の業者に探してもらい、1冊はオークションでした。

   大事な本は決して手放さない事。 手放したら戻ってきません。後が大変!

                            

 


 

        

         それでは ブログをご覧の方にプレゼント 

 

 アンビバレンツな気持ちなのですが、兎に角今まで能面集の蒐集で苦労しました。ですから欲しい方の気持ちは良くわかるのです。現在、「長沢 氏春能面集」・「面打ち入門」を各2冊持っておりますので、能面を趣味でやられている方に、希望者には各1冊を今回に限り譲渡致します

品物のご紹介

・ 「長沢 氏春 能面集」

              能面集の中に面打ち技法も併設しております。

 写真の一部

ダンボールのケースは有りません。ケンドレイクの能面打ち道具のパンフレットをお付けします。

 初版本 天小口に若干経年によるしみ、やけがありますが、中は汚れは有りません。新古本ではありませんので、その点ご了解ください。

               265x370mm・カラー部分128p 型紙 11種 全ページ185P

 

・ 「面打ち入門

 

 

            「面打ち入門」 ↓          「小面を打つ」 ↓

                

 

         「譲渡について」 ・・・  8/31に締め切ります。

応募が複数の場合は、抽選で決めましょう。

譲渡価格・・

・ 「長沢 氏春 能面集」  ¥30.000円 商品送料は全国一律 ¥1.000円・ゆうパック便 

・ 「面打ち入門」  ¥5.000円 商品送料は全国一律 ¥1.000円・ゆうパック便

C・ 「 A+B   ¥35.000円  (商品送料は無料)

オークションをする気持ちは有りませんので、本当に欲しい方に差し上げたい。価格はHPでいろいろお調べください。その上で納得した方のみ。ご希望の方はこのブログのコメント欄に

1-お名前 2-メールアドレス を投稿してください。 8/31にこちらからメールを差し上げます。尚、メールは8/31まで非公開とします。その後消去します

また、勝手ながら再度希望者は募りません。これが最初で最後です

  


 

 中・上級面打ち技法書

 

先回にもご紹介した技法書はですが、内容的にも非常に幅広い名著です。仏像彫刻を専門に去れておられた面打ち師の著書で、専門家から初心者までのベストセラーです。価格も低廉で今でも手に入る最近再発行した名著です。

 http://sawarachan.seesaa.net/article/343133471.html   でご覧ください。

               わんや-02.bmp   わんや-01.bmp

 

 

 

さて、次回も能面集・技法書をお送りします。

 

 

 

姉妹ブログ

 

 <サワラちゃんの加計呂麻日記>

http://blog.goo.ne.jp/sawarachan    

 <西南諸島貝殻学入門 

http://blog.goo.ne.jp/amamichan  

<加計呂麻島貝殻図鑑>

  http://shirasumasako.blog.fc2.com/

http://ritounikki.amamin.jp/ 


白洲正子文学逍遥記-0007

2013-08-16 | 日本の伝統芸術

 

白洲正子文学逍遥記

 & 能面・仏像・日本人形・・etc

 

 

臨時公開

 

以前別のブログで掲載しておりました「能面と能楽」を8/20迄、数回程、再公開します。ご覧になっていない方はどうぞ参考にしてください。

 

 能面能楽 
  
                        

           能楽の歴史と能面-007


      浅井能楽資料館
(アザイノウガクシリョウカン)
                                                -
002


P3021681.jpg

 

 


 連日20℃以上の乾燥した日が続いております。もうそろそろ一雨ほしいのですが、気象衛星の写真は、無常にも中国大陸も含んで快晴の天気、当分お湿りはない模様です。

                                                               晴れ

 さて、先回は浅井能楽資料館をご紹介しました。ここら辺りは時の武将・浅井長政の所領であった所で、近くには織田信長、羽柴秀吉に攻められ落城した小谷城跡が今も有る、歴史のある土地柄です。

                                 小谷山おだにやま

image4235.jpg

 



 筆者も2年ほどこの地に住んだことが有ります。 自宅の住居の傍に、浅井長政の産湯の水を使った地として、神社があり、玄関から右手のほうに小谷山の山塊がまじかに見えました。神社の中に博物館クラスの観音菩薩座像が小さな祠のような中に祀ってあり、近在の爺様がお使いしておりました。
多少、仏像の目利きが出来るものですから、二度吃驚!
さすが、近江は凄いと感じたものです。 府県でしたら間違いなく、博物館や大寺に安置されるでしょうが。鎌倉か室町時代の作の仏像でしたでしょう。・・・

歴史に詳しい方でしたら・・小谷=オダニ 、 浅井=アザイ と呼称するのはお分かりのことと思います。これが長野に行きますと 小谷=オタリとも呼んでおります。 浅井でもオタリも有ったようですが。いずれにしても安土・桃山時代は大変な文化の高い所であったと言うことでしょう。 今は昔ということになりましたが・・・
彦根城の城の一角には、小谷城の一部分が実際使われております。


          彦根城・西の丸櫓(元、小谷城遺構

 

79a568ad26ede8ff1424-LL.jpg

 




 余談ですが、この西の丸の櫓の下が濠になっており、地続きに国立・滋賀大のキャンバスがあり、筆者も濠の傍の学生食堂で安くて旨い学食に舌鼓を打って居りました。(その節はお世話になりました・・(^-^))
彦根キャンバスは旧制第八高等商業が前身で、なかなか趣きある落ち着いた風景で、阪大や京大、神戸大にはない、歴史を感じさせるキャンバス風景でした。春は濠に桜が咲き、譜代大名・井伊家の静かな雰囲気が漂って居りました。
授業の前後によく濠沿いに歩いて、彦根城博物館によく行ったものでした。

 先回は浅井能楽資料館についてご案内しました・・・
資料館の館長は能装束の研究の過程で、東京神田にある能楽専門の書店・「わんや書房」の社長といろいろなご縁を持たれたようです。筆者も東京の茗荷谷に住まいしていた時は、毎週日曜日ともなると神田の書店通いをしておりました。目的は能面関係の資料でした。未だパソコンなどこの世にないころでしたから、HPで書籍の検索などは夢のまた夢の世界で、兎に角足を使って一軒一軒古書店を見て回るという、人海戦術に明け暮れておりました。

能の謡関係は沢山有るのですが、能面の本というとまったく手にするということは有りませんでした。ある日、神田の横丁で一軒の能楽関係の専門店「わんや書房」を偶然見つけて、内心小躍りしたものでした。
この書籍が筆者が始めて手に入れた能面の本でした。


                  

         わんや-02.bmp   わんや-01.bmp


以後、六十数歳に至るまで各種の能面の書籍を蒐集し続けて来ました。
この本は東京美術学校(東京芸大)の教授・高村光雲(詩人・高村 光太郎の父親)の弟子、鈴木慶雲氏が書かれたものです。この方はもともと仏師でしたが、その後宝生流の宗家に出入りするようになり、その関係で能面を打たれるようになりました。嵯峨人形の研究者でもあります。現役の能面師が著したものなので、実務関係の記述が多く、学者先生の書籍とは一線を画しておりました。今でも素晴らしい研究書として読まれております。


                  鈴木 慶雲 師
                  P3061715.jpg


全体で正・続2冊の構成で、能面史の段階から掘り起こし、各時代の名人の紹介、能面の紹介、実際の面打ちの際の細かな技術的な注意点など、実作者ならではの内容となっております。能面集を出す能面師は居られるのですが、なかなか文章の面まで手がけられる方は、なかなか居られません。その点この方は正に二刀流使いでした。

ご存知の方も多いと思いますが、能面の面打ちの過程は大きく分けると、二つに分けることが出来ます。
一つは彫刻の段階、二つは絵画の段階です。彫刻と絵画の技法の集合体が能面になります。仏像もこの範疇に入りますが、白木の仏像も可也有りますので、能面のそれとは比較になりません。

                     彩色

 

P3061718.jpg

 




実際に面打ちをしてみますと、彫りの部分は全体の40%程度の作業であり、時間を掛ければ何とかこなす事が出来ます。しかし、次の絵画の部分・・彩色になると俄然レベルが上がってしまいます。秘伝の部分が多く、本や能面の木型を見ながら作業をするのとは、まったく違うのです。素人はこの段階でGive upしてしまいます。

師匠の仕事の様子を盗んで観ながら仕事を覚えたり、あるいは古面を師匠に技を磨く方も居られます。彩色の際、どのような岩絵の具をどの程度の濃さの膠で溶き、どのような調子で塗るかということは、自ら学ばなくてはいけないからです。師匠や古面に縁のない方は、美術館、博物館、展覧会、宗家の虫干しの際に名面の古面を師匠とするしかないのです。そして、能面集を揃えるということになります。 筆者は専門家にも付きましたが、能面集も師匠にしました。
それが上記の神田本屋街を散策することになった訳です。


                 研ぎは大変重要!
                 P3061715.jpg

 筆者が読者の皆様に、古面鑑賞を強く薦めるのは、このような背景があるからです。骨董屋の丁稚に本物を徹底的に見せるという教育は絶対に必要なのです。そのうちに自然に審美眼が出来て来ます。これは焼き物、絵画、その他の美術品の鑑定にも応用できます。これは筆者の経過から自信を持って言うことが出来ます。

筆者は当初、仏像から入りました。自ら足を使って、数十kmも歩いてまでも、たった一体の仏像を観る為に、美濃の山中の山道を歩いたことがありました。都合3~4回も同じ仏像を観る為に歩きました。それだけの価値が有ったのです。


                 完成した面。
                  P3061716.jpg


鈴木慶雲師はその点でも、素晴らしい能面師であったと考えております。
筆者が浅井能楽資料館で鈴木慶雲の面を20~30分も見続けていた為に、館長がモニターで呆れられたのも、それだけの筆者の執念を感じたのでしょう。それで、後日、奥さんが<まじかで、能面を見せましょう>と言ってくださったのでしょう。

本日は余談のような記述になりましたが、筆者の昔の思い出を披露させて貰いました。

 


                姉妹ブログ

 <サワラちゃんの加計呂麻日記>

http://blog.goo.ne.jp/sawarachan    

 <西南諸島貝殻学入門 

http://blog.goo.ne.jp/amamichan  

<加計呂麻島貝殻図鑑>

  http://shirasumasako.blog.fc2.com/

http://ritounikki.amamin.jp/ 


 


白洲正子文学逍遥記-0006

2013-08-13 | 日本の伝統芸術

 

白洲正子文学逍遥記

 & 能面・仏像・日本人形・・etc

 

 

臨時公開

 

以前別のブログで掲載しておりました「能面と能楽」を8/20迄、数回程、再公開します。ご覧になっていない方はどうぞ参考にしてください。

 

能面と能楽 

                  

能楽の歴史と能面-007

  西南諸島も春たけなわとなりました。畑の野菜も終わりを告げ、白菜、大根、青梗菜の類は下葉が枯れてきました。ジャガイモなどは春植えが終了し、芽の出るのを待っております。渡り鳥も数が少なく名なって来た様に感じられます。とは言え、本州はまだまだ厳寒の所もあるでしょう。あと、半月ほどの辛抱でしょうか。春は其処まで来ております。


                                                         本


P3021687.jpg





浅井能楽資料館 (アザイノウガクシリョウカン) -001

 

所在地  〒526-0267       滋賀県長浜市力丸町106
 

先回は滋賀県彦根にある彦根城博物館をご案内しました。今回は少し山側に寄ったところ、浅井長政の縁の地にある浅井能楽資料館をご案内します。


 

4a2667f47faa5ca37c731c022da311cc.jpg

 



能楽資料館といっても、格式ばったところではなく、一般の民家のような感じの建物です。
辺りは畑がありますので、混雑した街中とは違うのですぐ分かりますが・・・・
美術館や博物館のイメージは有りません。

今から10年以上も前に筆者はここを訪れました。それから都合2~3回は尋ねておりますでしょう。始めて伺った時は少し戸惑いましたが。つまり、窓口、受付のような改まった感じのものはありませんでした。民家の家を訪ねるがごとく、伺ったような感じでした。 観覧料金は現在¥700円だそうですが、当時実際に支払ったかどうか、記憶にありません。


 

04_02.jpg

 



館内は当時3箇所のエリアに分かれており、一つは「能装束」の陳列エリア。 二つ目は「能面」の陳列エリア。最後が「機織」のエリアでした。筆者の目的は能面鑑賞で、能装束は最初頭に中にはありませんでした。しかし、能装束を見た瞬間、余りの美しさに心の中で驚きました。能装束は彦根城博物館ですでに見ておりましたが、暗い照明の中でもあり、かつ、江戸時代の作でも有ったことから、くすんだ色合いで、お世辞にも心ときめくということは有りませんでした。
能舞台の中の照明に映し出された能装束の色合いと、自然光に近い中での能装束の色合いは違うのです。


 

jtba3602120a.jpg

 




ここの資料館で実際に機を使用して、絹糸を折り、染色していたわけですので、新品のまっさらなので余計に色合いの鮮やかさと華麗さと美しさに、心を奪われたのかもしれません。にもかかわらず、能面のほうに寄り好奇心が勝っておりました。ためつすがめつ能面を見入っておりました。特に名工・鈴木 慶雲明治の彫刻家・高村光雲の弟子)打ちの<鷲鼻悪尉(わしばな あくじょう)を20~30分間も見つめておりました。

後で、館長が曰く・・<こちらのほうが心配になって(泥棒でもするのかと?X!>・・
モニターで監視しておりました (^-^)

こちらの方が聞いて吃驚!・・・呆気にとられた感じ・・・どちらがそうだったか?

 

DSCN0642_thumb.jpg

 



それでも、そのことが幸いしたかどうかは分かりませんが、後日伺った時は女性の館員の方が一人居られたのみでしたが、能面を直に見せても良いとの話をしてくれました。こちらの方が吃驚してしまったことがあります。
最近分かったことですが、館長は筆者より3歳若く、その女性は奥さんだった由・・・(^-^)

余談ですが・・・以前にも東京の麻布の知り合いの奥様が、喜多流の宗家の喜多六平太氏と知り合いだったので、私が余りにも能面のお話をするものだから、<じゃ、喜多さんから能面借りてあげましょうか?>言われて、こちらがどぎまぎした経験があります。このような経験はこちらから願っても普通は有り得ない世界なのです。 
運が良かったとしか言えませんが・・・(^-^)


これも後で知ることになるのですが、館長は中々の人材で業界では高名な方でした。 ある本屋介して少しは筆者も関係が有ったのです。この話は鈴木 慶雲と一緒に次回に致しましょう。


 

0714001811.jpg

 


姉妹ブログ

 

 <サワラちゃんの加計呂麻日記>

http://blog.goo.ne.jp/sawarachan    

 <西南諸島貝殻学入門 

http://blog.goo.ne.jp/amamichan  

<加計呂麻島貝殻図鑑>

  http://shirasumasako.blog.fc2.com/

http://ritounikki.amamin.jp/ 


 

 


白洲正子文学逍遥記-0005

2013-08-10 | 日本の伝統芸術

 

白洲正子文学逍遥記

 & 能面・仏像・日本人形・・etc

 

 

臨時公開

 

以前別のブログで掲載しておりました「能面と能楽」を8/20迄、数回程、再公開します。ご覧になっていない方はどうぞ参考にしてください。

 

能面と能楽 

 

若女・河内-02.jpg

 

  
  能楽の歴史と能面-005

                  童子  

童子-01.jpg



 
ようやく西南諸島も春らしくなって来ました。年から年中咲いている真っ赤なハイビスカスの花も、心なしか真新しさが出て来たような感じです。季節の変わり目が北海道や本州などのようにハッキリしておりませんので、花の栽培、野菜などの栽培も戸惑うことがあります。海水温も生暖かく、とても厳寒の二月の雰囲気は味わえません。それでも4月になれば雨の多い季節に入り始め、だんだん梅雨の前触れを感じるようになります。

先回は「丹波笹山・能楽資料館」をご案内しました。なかなか交通の便利なところではありませんので、近在の方でも簡単に出向かれるのは少しばかり難しいかもしれません。車を使われるのが一番でしょう。
今回は滋賀県彦根市にあります「彦根城博物館」をご案内しましょう。


                 彦根博物館

彦根城博物館.jpg



 
JR・東海道線彦根駅で下車しますと、いろいろな交通機関がありますが、割と近くなのと目標がお城ですのでハッキリしていますので、堀沿いに場内を歩きながら、城内に設置されている博物館の向かった方が宜しいかも。
春4月の桜の季節は非常に美しく、国立滋賀大学が傍に有った他関係で、筆者も大学の授業の時間の間合いに、時々博物館に立ち寄っておりました。辺りは民家がありませんので最高の散策の場所でもありました。

博物館には敷設の能舞台が有りますので、時々演能が催されておりました。チケットも販売されており、予約システムを使われるとよろしいかも。抹茶のサービスコーナーもあり、なかなか宜しい雰囲気です。



P2231588.jpg




 
歴史に詳しい方はご存知の通り、この城は徳川家の譜代大名・井伊家の城でもあり、桜田門外の変で有名な「井伊直弼」の城でもありました井伊直弼は無類の能楽の趣味人で、いやいや専門家ですね。能の曲まで造るのですから・・・
そのような訳で夥しい能面、能装束、その他が現在は博物館に所蔵されております。先般の笹山の能楽資料館とはスケールが違います。


P2231589.jpg



ただ、難を申しますと、館内の照明が少し文化財の保存の関係からか落としてありますので、能面の色彩がハッキリ見えないというきらいが有ります。ですから、能面を打たれる方には不満かもしれませんね。しかし、名品がかなりい多いので、我侭は言えませんでしょう(^-^)


P2231595.jpg



能面の所蔵数は数百点を超えますから、全てを一度に観ることはかないません。月に何回かに分けて展示替えをしますので、度々行かれるのがよろしいかも。交通の便が良いので、近在の方は便利でしょう。兎に角可也の名品が所蔵されておりますので、十分堪能出来ましょうし、同時に能衣装なども観覧出来ます。日本でも有数の能楽資料館と言っても宜しいでしょう。

さらに彦根博物館から北近江の方に向かっていくと、能楽資料館がありますので、次回はそこをご紹介しましょう。
ここでは能面のほかに素晴らしい新作の能衣装が観覧出来ます。女性ならその鮮やかさに眼が点になりそうな感じです。



P2231593.jpg

 

 

 

 

姉妹ブログ

 

 <サワラちゃんの加計呂麻日記>

http://blog.goo.ne.jp/sawarachan    

 <西南諸島貝殻学入門 

http://blog.goo.ne.jp/amamichan    

http://ritounikki.amamin.jp/