白洲正子文学逍遥記
「十一面観音巡礼」編
登美の小河-008
* ゴールデン・ウイーク期間中は(5/06まで) お休みします。
中宮寺周辺-03
長弓寺~王龍寺
長弓寺・本堂
もう少しするとゴールデンウイークを迎えます。奄美群島はその後はだんだん梅雨のはしりに至り、鬱陶しい季節に入って行きます。今年の梅雨の雨量と台風の到来数は心配の種です。今年は日本の夏は冷夏とか・・・さて、どうなりましょうか。いずれにしてもお手柔らかに願いたいと思います。
長弓寺 ・ 真弓塚
先般は「霊山寺」を訪れ、小野一族の話をしたが、今回の「長弓寺」もやはり小野一族に縁のある寺である。ただ、白洲正子著・「十一面観音巡礼」に書かれた、長弓寺の寺暦は現在の長弓寺のHPに掲載されているものとは少し違っている。ただ、聖武天皇、行基が登場するのは同じである。所謂、古代からの伝承の複雑性が表されているようである。
真弓山 長弓寺 薬師院
長弓寺は4箇所「薬師院・円生院・法華院・宝光院」の塔頭寺院で構成されており、薬師院は阿弥陀如来を祀っている寺院である。
長弓寺 本堂
弘安2年(1279)に建てられた国宝でもある。本尊は十一面観音菩薩である。
現在の寺暦
「奈良時代、土地の豪族・小野真弓長弓(おののまゆみたけゆみ)とその養子であった長麿(ながまろ)が、若年の聖武天皇に従ってこのあたりで狩猟をした時のこと、森より一羽の怪鳥が飛び立ったのを見て、親子でこれを追っていました。この時、養子である長麿(ながまろ)が誤って父・長弓(たけゆみ)を射殺してしまいました。聖武天皇はこのことを深く哀しみ、行基に命じてこの地に小さな御堂を建て十一面観音をおまつりになって長弓(たけゆみ)菩提を弔いました 」
長弓寺本堂
白洲正子著の寺暦
<かってこの辺りに怪鳥がいて田畑を荒らすので、聖武天皇が「鳥見」をおいて監視させた。よって登美の小河が「鳥見河」と改称された。依然として怪しい怪鳥が出没するので、天皇自ら狩に来られ首尾よく怪鳥を射落とした。そのとき怪鳥は忽然として金色の鷹と化し、仏法擁護の神である事を告げたので、行基に命じて白檀の十一面観音を祀り、牛頭天王を持って鎮守とした。観音を造るにあたり天皇所持の弓を持って、頂上の佛面を彫らせたので、山号を「真弓」、自寺号を「長弓寺」と名付けた>
かなり登場人物が同じところと、由来が違うところがある。筆者にはその可否は判らない。
秘仏 長弓寺・十一面観音菩薩立像
木造、彩色、切金 116.4cm
本堂内陣の須弥壇上「黒漆厨子」の中に安置されている秘仏本尊です。 胸飾りなどが壇像佛のように木地の掘り込まれている。平安~鎌倉時代の作とされている。
「真弓」 近辺
大阪府や奈良近在の方はお分かりの事と思うが、大阪府太子町(奈良県当麻町の傍)には滋賀県大津市小野町と同じく「小野妹子の墓」がある。大層立派な墳墓であるということであるが、聖徳太子に大変信任があった証で、ここにも設営されたのであろう。滋賀県のそれは父上との同葬であるから、また、周辺が小野一族の領地でもあるので、ここが真の墓であろうと思う。また、非常にこの場所に霊感を強く感じるので、筆者はここで間違いないと思う。
その事から小野一族の長弓の話に真実性を感じる。また話の流れが仏法に篤い聖武天皇らしい感じが出ているし、素直である。いずれにしても先回に話も含めて、小野一族の強い影響の土地柄だったようであることが判る。
登美・富人・鳥見といような音が似ている名称が数々出てきた。古代からの伝承は複雑であり、その信憑性も断定が難しい。あくまでも神話伝承として信じるしかない。百済から朝鮮族の一族が亡命帰化したとき、在来の現地の豪族といろいろな確執が有ったに相違ない。それが様々な説話として伝承されているのであろう。科学的な確証もないものである。話として聞くしかないのであろう。
真弓塚
長弓寺の山号の由来となった「真弓塚」は境内の北東の住宅地にある。墳丘は聖武天皇の弓の木屑を埋めた所とも。この地を治めていたニギハヤノミコトの弓矢を埋めた場所とされている。
長髄彦(ながすねひこ)=登美彦 、 ニギハヤヒ など山と地域に活躍した集団の古層を示しているようである。
海龍山 王龍寺
長い参道の石段
先の長弓寺の南西に位置した王龍寺は禅宗・黄檗宗の寺である。聖武天皇の勅願によって建立された。戦国期に筒井順慶氏によって兵火で焼かれ衰退した。 その後黄檗宗の開祖・隠元禅師の孫弟子・梅谷和尚が招かれ再建開山された。山門から石段を登っていくと、本堂に至る。
本堂
本尊の十一面観音菩薩立像は高さ450cm、幅550cmの磨崖佛である。花崗岩に半肉彫りで刻まれている。十一面観音の磨崖佛は少ないようである。日本は朝鮮半島と比較して、石の資源が少ないようで、石仏の名品は少ない。路傍の石の地蔵、道祖神など多くは凝灰岩などの柔らかい石仏が多い。 朝鮮半島にはそれに比較して名品が多い。
王龍寺・十一面観音立像
石仏寺 ・ 韓国
忠清南道論山 ・ 弥勒菩薩 韓国
臼杵磨崖佛(九州・臼杵)
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