白洲 正子文学逍遥記

故・白洲正子様の執筆された作品を読み、その読後感と併せて能楽と能面、仏像と仏像彫刻、日本人形、日本伝統美術についてご紹介

日本の伝統芸術と伝統芸能-040

2013-02-23 | 日本の伝統芸術

 

 

日本の伝統芸術と伝統芸能

 

         

 

                     仏像と仏像彫刻 

          青い目の人形答礼人形 

                                            -040

 

 

  西南地方も二月も下旬の頃ともなると、いよいよ春めいてきます。 琉球イノシシの襲来で田畑がめちゃくちゃになったり、コンピューターウイルスの侵入で、5台のPCがめちゃくちゃになったり、はるか沖合いの尖閣諸島には中国の監視船がうろつき回り、ごろつきチンピラのような振る舞いをしております。ここしばらくは災難続きでした。

 古代中国は礼を重んずる国だったはずですが、もうこれもはるか昔の寝物語となってしまったようです。日本は飛鳥・奈良時代の初頭から朝鮮半島や中国から多くの高僧が帰化したり、苦難を超えて来日し、多くの文物文化を招来せしめました。しかし、政治体制が激変し、一党独裁の国家が出現したあとは、ご覧の通りのならず者国家が出来上がってしまいました。

                          鑑真和上

 

インドでヒンズー教から派生し、その後独自の発展を遂げて、世界的な宗教となった仏教は、原始仏教からから密教へと変化し、その都度それらは高山・ヒマラヤを超え、タクラマカン砂漠を踏破して、中国にそして朝鮮半島や日本に伝播して行ったのです。

仏教は最後の地日本で大きく花開き、21世紀においても厳然と存在しております。ある時代には中国仏教は全盛を誇ったこともあったのですが、共産党一党独裁体制の基本的に唯物論主義の無心論者の世界では、逼塞の状態のようです。悲しむことですね。現在の中国の人民の人心は大いに乱れ、デモ・動乱が国中に蔓延し、近隣諸国の領有権までもを脅かし続けております。

          竜門石仏群(中国)

 

 古代中国は日本と違って連綿と続く国家は、唐の時代頃までで、何時も内乱や動乱が多発し、侵略したりされたりの繰り返しの歴史でした。 現在の中華人民共和国でさえまだ建国から100年も経っておりません。ここ数十年の将来も現在の政治状況では危ないものです。

 春三月の初旬には、奈良東大寺の「お水取り」(修二会)が始まります。これは本来的には「十一面観音の悔過」という、奈良時代から千百年間も執り行われてきた行事です。「悔過」といのは、われわれ人間の持っている心の汚泥を、懺悔することにより、心の平安をえるということです。十一面観音菩薩を主尊に祀って奈良の各所のお寺で、古くから行われてきました。

* 詳しくは姉妹ブログ「白洲正子著作集・読書日記」に詳しく取り扱われておりますので、ご参考までに。次週は<若狭のお水送り>に入っていきます。

http://livedoor.jp/sawarachan/

                          

  さて、先回までは石の仏像のことについて書いてみました。ご存知のように仏像の材質は多岐に渡っており、石材、木材、ブロンズ、鉄、錫、金銀、粘土、多種類です。各国、各地の一番の良い材料を使用されてきたようです。インドやパキスタンでは決めの細かい粘土岩が、すばらしい効果をあらわしております。場所によっては断崖の岸壁に彫ったり、岩窟の中に仏殿を構築している敦煌のような例もあります。

           バーミアン

 

中国本土では石仏、金属仏、岸壁に彫った仏像群が比較的多いですね。翻って日本は材料が多種多様で、殆どの材質の仏像が見られますが、何と言っても木仏が圧倒的に多いです。中には金属の板に仏像を刻印したり、木材を仏像の芯に使って、麻布と漆を使用した乾漆仏というのも有ります。アジアの各国の仏教文化の集大成が日本に花開いた感があります。

          中国石仏

 

石は加工が簡単でないという事情から、彫刻の際にあまり鋭い線が出せません。しかしそのためか、出来上がりは柔和な表情に仕上がるのです。路傍の石仏を見ていると良くわかると思います。 日本は良質の大理石が産出できないため、硬い花崗岩が多いのでどうしてもそのような結果になります。

 

 

イタリアのような国では同じ火山国でありながら、良質の大理石が産出するので、すばらしい石造が多いのですね。皆さんご存知の通り。

次回からは少し石仏を探索して見ましょうか。

答礼人形に移りましょう。  

         「

 

答礼人形・里帰り第一号

           Miss 広島

 

所蔵場所  メリーランド州ボルティモア ボルティモア美術館

製作者    滝澤 光龍斎

 

 ミス 広島は1974年に吉徳人形・山田 徳兵衛氏の下で答礼人形としては、初めての里帰りとなり、修理を受けた。下の写真は十世山田徳兵衛氏の傍に立つミス・広島です。

   

さて、ミス 広島ですが、ワシントンDCの傍の州でもあり、日米開戦と原爆投下を受けた日本の県ということから、複雑な取り扱いを受けて今日に至っているようです。ただ、場所がアメリカ東部でワシントンDCである事から、ある面では安全だった可能性があります。

この人形も残念ながら取り違えが有ったようで、実際はミス 山口が本当です。高岡 美知子氏の調査でわかりました。しかし、彼女の著書に掲載されていたミス 広島の人形の着物の色と吉徳の山田 徳兵衛氏の傍の人形とでは、色合いが明らかに違います。どちらも原図ははっきりとした写真ですので、非常に不思議です。筆者もいろいろ検討しましたが、分かりませんでした。

 

        滝澤 光龍斎 作

        

                  道具の模様       人形の紋

                                    

 青い着物の帯の上につけている「黄色いしごき」は来日の折に、付けられたとされております。しかし、吉徳の写真には「黄色いしごき」は有りません。どちらかが間違ってる可能性??

この人形が答礼人形の里帰りの第1号になった裏には、日系二世のメアリー・トク杉山という女性の献身的な努力が有ったのを忘れてはいけません。彼女が自費でこの人形を日本に持ち込んで、いろいろと手を尽くして吉徳で修理を行ったのです。このことから吉徳には<ミス 大日本>、<ミス 京都>が修理のために、来日したのでした。その後数十体の答礼人形の来日につながったのです。

それでは次回は先回ご紹介した Miss 大阪市Miss 山口をご紹介します。 

Miss 大阪市 

 


日本の伝統芸術と伝統芸能-039

2013-02-15 | 日本の伝統芸術

 

日本の伝統芸術と伝統芸能

         

                     仏像と仏像彫刻

          青い目の人形答礼人形

                                            -039

暫くの間、貝の整理のためお休みしておりました。本日より更改いたします。休止期間中に<琉球イノシシ>の被害に遭い、かなり時間を取られてしまいました。

 

         ガンダーラ佛(パキスタン)

 

 

 先回までは仏像の中でも、少し特殊な菩薩や天部系仏像を紹介してきました。これからはオーソドックスな形のどこのお寺でも見られるような、如来、菩薩、特に観音菩薩系の仏像を紹介してまいります。

                  仏足石

 

 仏教の起源はご承知の通り古代インドですが、もともと当初から仏像は存在しておりませんでした。 この傾向はキリスト教でも類似しておりますが、偶像崇拝を忌避する習慣が古代にはあった様です。仏足石はその名残です。日本では余り多く見られませんが、存在することは確かです。

仏教の母胎となる宗教は、古代インドのヒンズー教ですし、キリスト教の母胎となる宗教はユダヤ教です。これらは古代において現在の中央アジア付近で発生した宗教から分派して、独自に発展して来たようです。どちらにもかなり似たようなところがかなり見受けられますので、全くの異宗教ではなかったようです。

              仏像・ マトゥーラMathura Museum

 

 ところが時代の変遷にともない、仏教、キリスト教にもギリシャの文化の受け入れがあり、現在のパキスタン・ガンダーラにおいて、上記のような素晴らしいガンダーラ佛が造られたり、インド中央部のデカン高原のマトゥーラでも仏像が製作されていたようです。

上記の仏像は肌理の細かい素晴らしい石仏ですが、全体から受ける感じは、日中の仏像と大きな差は感じられません。中国では石仏、木佛、金属佛が多く観られ、日本では木佛、金属佛が多いという傾向があります。

 清涼寺式・釈迦如来

 

上記の釈迦如来はマトゥーラの仏像と形式が似ております。デカン高原からヒマラヤを越えてタクラマカン砂漠の先の中国に伝播し、さらに朝鮮や遣唐使などで日本に伝わったのでしょう。

 

石仏寺(韓国)

 

上記の韓国・石仏寺の石仏は非常に素晴らしいものですが、衣文の彫り方などは、インド伝来のそれと変わりがありません。石仏は材料の入手と産出の影響を受けますので、日本では大分県臼杵が有名です。

           臼杵・摩崖佛

 

日本では路傍の石仏が全国各地に見受けられます。観音像、地蔵像が多く、また、道祖神も非常に多いです。

                 路傍の石仏

 

不思議なことに西南諸島・奄美大島の加計呂麻島には一体の石仏も道祖神もありません。文化の違いでしょうか。驚きました。当然。寺も有りません。教会は多いですね。

  道祖神

  

 

本日は石仏を主にご紹介しました。

石仏は材質が固いのですが、木質と違って鋭さが出ませんので、穏やかな顔立ちの仏像などが多く観られますし、独特の良さがありますね。

 

 

それでは<青い目の人形に移りましょう。                

 

           青い目の人形  -005

宮城県

宮城県中田町立上沼小学校

先回の高知県から今回は宮城県です。この学校には昭和2年4月19日に人形が贈られてきました。名称は不詳だそうです。横にすると「マンマー」。可愛いい声を出し、目もつむるんだそうですね。 戦時中の厳しい中で隠されていたそうです。

 

 

           昔この人形が入っていた人形ケース

                    

 

  新しく新調された人形ケース

          

 

宮城県では8体の存在が確認されています。上沼小,米谷小,桃生小,広淵保育所,川渡小,三本木小,村田第四小,金山図書館で保存されていました。

 金山小学校(宮城県伊具郡丸森町金山)にある人形は,金山図書館にあったものを修復し,平成16年1月に贈呈された“ローズマリー”です。

         Rose Marry 

                                 ↑ Jean Marry


なお,右側の人形は,青い目の人形が現存している学校に,現在市松人形を所持しているマーガレット・コルベットさんから贈られたもので,平成16年5月に,宮城県の青い目の人形を調査する会から届けられた“ジェーン・マリー”です。

 

答礼人形>に移りましょう。

 

           

 

先回はMiss 沖縄 で、大分戸惑いました。今回はMiss 大阪府 です。    

  

二代目 平田 郷陽作の素晴らしい市松人形です。とても表情がありますね。

MIss 大阪府           

 

人形所蔵場所 オハイオ州 コロンバス オハイオ歴史協会

作者        二代目 平田 郷陽

 

人形の紋

揚羽蝶
道具の紋

 

オハイオ州シンシナティ ・ シンシナティ美術館 にMiss 沖縄 が所蔵されておりましたが、オハイオ州には合計3体の答礼人形が贈られました。この人形が2体目です。

 

 

1988年に19体の人形と供に帰国し修理、着付け直しを受けたそうです。翌年には大阪市制百年記念でMiss 大阪市 と供に共同展示されました。

1927年10月20日の人形の送別会

          大阪市      大阪府 

 

答礼人形はMiss 大阪府とMiss 大阪市の2体ありました。しかし、ここでも「府」と「市」の取り違いが有りました。

当初の予定では

Miss 大阪府 → ニュージャージー州ニュワーク

Miss 大阪市 → オハイオ州コロンバス

でしたが、そっくり取り違ってしまいました。一緒に付いていたお道具と手紙も同じく取り違っておりました。

                Miss 大阪府のお道具

 

それでも単純な取り違えでよかったですね。さて、問題のMiss 大阪市ですが、相当複雑な様子ですので、ご紹介は次回にしましょう。

本日最後は、3体目のオハイオ州に贈られた答礼人形をご紹介。

 

Miss 岐阜(正しくは Miss 徳島

 

 

 

作者 滝沢光龍斎
所蔵都市 オハイオ州クリーブランド
所蔵館 クリーブランド美術館

 

 

この人形は贈呈先をオハイオ州クリーブランド市公立図書館としていたため、長く消息が分かりませんでした。戦時中人形を安全に保存するために、公立図書館から現在のクリーブランド美術館に送られ、保管され発見が遅れたようです。

 

 

しかし、ここでもとり違いが有ったようで、調査の結果この答礼人形は、正しくはMiss 徳島です。では、この子はどこから来たのでしょうか? 現在のところ解らないのです。お腹のところに(キュッと鳴る装置がついております)

 

                  Miss 徳島の紋

 

人形の紋

庵木瓜
道具の紋

四つ割菊に花角

 

                   お道具一式 

              

次回はMiss 大阪市をご紹介します。

次回の更改は暫くの間、隔週土曜日に更改させていただきます。

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