白洲正子文学逍遥記
「十一面観音巡礼」編
美濃の旅-003
ようやく奄美群島も秋の気配が濃くなり、毎朝気温が16℃位まで下がるようになりました。朝7:00ころから農作業を始めます。気温が低い内はさしもの蚊も飛び回らず、静かに仕事が出来るからです。これからが奄美群島の秋野菜の植え付けが始まります。本土と比較すると季節感がなく、凡そ何でも植えつける事が出来るのです。ハイビスカスが年から年中咲いております。年中春というような感じでしょうか。
美濃 ・ 横蔵寺
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横蔵寺・境内
この境内の美しさは眼の覚めるような美しさである。おそらく日本だけの秋の彩かもしれない。
宝物殿
筆者が横蔵寺を訪れていた頃は、まだ、「宝物殿」は完成されていなかった。もう少し後で訪れていたら美濃の正倉院と呼ばれる寺宝が拝観出来たであろうに、真に残念である。
現在の比叡山・根本中堂の本尊が横蔵寺の本尊・薬師如来であるとされている。伝教大師・最澄縁の寺であることはすでにご紹介の通り。このような美濃の山深い中に、あること事態不思議な感じがする。
薬師如来 (現在の横蔵寺)
比叡山・根本中堂の薬師如来の胎内佛
胎内佛
喫茶店で一息 -01
仏教伝来-03
仏教伝来図・・WIKIより
中国の仏教
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仏教伝播・・東大HPより
日本へ最初に仏教が伝来したのは朝鮮半島からであるが、隋、唐、宋時代はもっぱら中国からであった。遣隋、遣唐使の派遣の際には、数多くの留(る)学僧が日本を出立した。歴史上有名な空海や最澄、道元は数年の間の短い期間であったが、数多くは長期間中国国内にとどまった。阿倍仲麻呂のように人生の最後までを中国で終えた者も居た。
空海
長年の留学によって中国の仏教のみならず、あらゆる文化を吸収し日本へもたらした。文化のみならず土木のような治水技術などもあった。四国の満濃池などの工事は空海の中国からもたらした土木技術であった。また、栄西に纏わるお茶などの伝播も身近なものである。
朝鮮半島からも同種の仏教学が日本に伝播されたが、質量ともに中国からのものが凌駕していたことは間違いない。空海、最澄の密教、天台仏教、そして、鎌倉期の浄土系の仏教、道元を代表とする禅宗の教義は殆ど中国ルートである。洛陽、五台山、天台山は中国仏教のメッカでもあった。
道元
奈良の南都仏教も中国からの仏教伝播がなければ、是ほどに興隆はしなかったであろう。南都、高野山、比叡山は日本仏教の三大拠点と言っても間違いはあるまい。現在でもこの形は変わらない。特に仏教哲学・論理学というような高度な仏教学は南都六宗と呼ばれ、今でも虹彩を誇っている。
法相宗・・・唯識論<唯識>、 倶舎宗・・・倶舎論<説一切有部>、三論宗・・・<中論、十二門論、百論>、 成実宗・・・成実論 、華厳宗・・・華厳経 律宗・・・四文律
その内、三宗は東大寺である。その点からも東大寺は日本仏教の原点と言っても良いであろう。
大方広佛華厳経
鎌倉時代に入って浄土系、禅宗系の仏教が盛んになったが、これとて法然、親鸞、道元にしても、何れも若き頃比叡山延暦寺にて、仏教の基礎を習得したのである。密教の世界では最澄は空海に後塵を拝するような結果になったが、最澄の元からはその後の日本仏教界の宝となる僧が数多く輩出した。その面からこの二人は日本仏教の至宝的存在であった。
最澄
古代インドでヒンズー教のような宗教の中から発生した釈迦仏教は、原始仏教、大乗仏教、密教と変化し、ヒマラヤの高嶺を越えて、タクラマカン砂漠を踏破し、中国で大きく発展し、留学僧によって日本にもたらされ大きく花は咲いた。しかし、現在その他の地域ではイスラム教やヒンズー教やその他の原因で逼塞状態にあることも現実である。
白山信仰
白山の山塊
「十一面観音巡礼」にも記載の有るとおり、横蔵寺の境内内の本堂の上に拝殿があるとの記述がある。ここは太古の昔から霊峰白山の遥拝所であったようである。日本の三名山である富士山・立山とこの白山がそれに当たる。越前、加賀、美濃の境に聳える霊峰である。白山は遥拝の山として、さらに修験道の山として、全国から多くの山伏が集まって来た。
養老元年(717)、越前の僧「泰澄」が初めて白山に登拝し、翌年山頂に奥宮を祀り、以来、神々しい神の山は人々の憧れとなり、白山信仰は急速に全国に広まって行った。
泰澄
泰澄と十一面観音との関係については<十一面観音巡礼>に詳しいので、そちらを参考にしていただきたいが、美濃、近江には数多くの十一面観音菩薩像が寺や神社、観音堂などに祀られていることは、筆者も足を棒にして歩き回ってきたから、それは断言できる。加賀一帯は経験がないから偉そうなことは言えないが、越前、美濃、近江、若狭は十一面観音尽くしである。
著者である白洲正子様がどこで十一面観音菩薩と出会わされたかは筆者には良く分からないが、恐らく<白山信仰>に纏わる縁からかもしれない。いずれにしてもこの一帯は不思議な空間であるり、有名な仏像群が神社・仏閣に祀られている。
白山神社 神門
祭神
白山比大神(しらやまひめのおおかみ)=菊理媛尊(くくりひめのみこと)、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)の三柱。
本宮 石川県白山市三宮町ニ105-1
奥宮 石川県白山市白峰白山嶺上(白山国立公園)
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