白洲 正子文学逍遥記

故・白洲正子様の執筆された作品を読み、その読後感と併せて能楽と能面、仏像と仏像彫刻、日本人形、日本伝統美術についてご紹介

能面と能楽・仏像と仏像彫刻ー005

2012-05-31 | 日本の伝統芸術

 

日本の伝統芸術と芸能 

         能面と能楽佛像と佛像彫刻 

                         <その005

 

 

今年はどうも空梅雨気味の様子が見えてきました。毎日真夏のような日が相変わらず続いております。本日は朝からどんよりとした久しぶりの梅雨空。でも明後日からはまた天気勝ちの様子が続きそうです。

レーダー情報を見ていますと、沖縄方面は土砂降りでも奄美方面は晴天とか、とにかくうまく連動はしていない感じ。良い面もあるのですが、こう独自性を発揮されては今後困ることになるかも。でも昔から天気のことは人間の能力の範疇外のこととて、神頼みあるのみですな。

 

 

  さて、先回は木彫の仏像について少し書いてみました。木彫の仏像の製作方法は大きく分けますと、一木造り(丸彫り)と寄木造りの二種類あります。また、この二つの中間的な製作法として、挿し御首の手法があります。

挿し御首・・・佛頭をその他の部分独立させて彫りだし、最後の段階で組み立てるという手法です。

掲載された木彫の写真は、先般ご紹介した松久朋琳、宗琳仏師の彫像されたものを「続・仏像の彫刻のすすめ」から転載しております。正に名著ですのでこれから仏像彫刻をされようとされる方は、是非ご利用ください。

 

         一木造り・松久 宗琳 作(続・仏像彫刻のすすめ より

         

 

この仏像は御首は挿し御首になっております。

寄せ木造り

一木造りのような仏像は、材料が豊富な、且つ巨木が簡単に手に入る時は宜しいのですが、仏像が大きい場合、巨木がおいそれと手に入らない場合は、数本の木を張り合わせて一木のように見立てて、彫刻しなければなりません。

能面の面打ちの場合でも、良い木が少なかったり(脂が各所に出ている場合)には、仏像と同じく張り合わせて、一木と見立てて彫り上げるしかないことになります。特に巨大な仏像などは寄木の手法でなければ、現在では無理でしょう。

 

寄せ木造りの設計図続・仏像彫刻のすすめ より

                       

 

上記の場合は4本の木を張り合わせて、一木に見立てています。完成品は一木と同じになります。もしこの仏像が巨大なものになる場合は、数本の部材だけではとても賄いきれません。従ってより数多い部材の寄せ木造りとなります。

また、巨大な仏像の場合は、日程の関係で一人の仏師が全てを彫刻することは不可能です。この場合は原型の小さな寄木仏をまず彫り上げ、それを湯で煮てばらばらにして、まるでプラモデルのような形にして、数人の仏師がその原型を頼りにして彫り上げ、最後に接着させて一体の仏像を完成させます。

 

 

あるいは鎌倉時代の運慶のように、荒彫りを運慶のような棟梁が行い、それ以降は弟子が持ち場を決めて、彫り上げていくという手法をとる場合も有るようです。すばらしい生産体制ですね。感心させられます。

奈良や京都のような都仏師がたくさん居るような場所では、このような体制で数多くの仏像を製作していたようです。しかし、地方ではそうは行きませんでしたしょう。相変わらず一人か二人の仏師が全てを行うことになったでしょう。それでも地方にも都に負けないくらいの大きな仏像は確かにあります。

 

 

専門仏師を考えず、一人でコリコリ彫っていくことを希望する方はあまり気にしなくても良いことではありますが。

待望の黒薔薇>・・・瘋癲老人の庭にて

 

 

さて、先回お見せした<十六>の額の眉ですが、二通りの作法があります。一つは薄墨で刷毛塗りのように描いていく手法と、面相筆で眉の毛を一本づつ描いていく獣眉の描き方です。

 

 

 上の<十六>は眉を拡大鏡で見てみますと、獣眉の描き方をしております。皆様の中には「市松人形」が好きな方、あるいは一体お持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、この人形の眉はどのように画かれておりますでしょうか。

                  市松人形

           

 

 一目見ただけで、たまらなくなる方もお有りでしょう。 この市松人形はある名人の作です。一目で分ります。顔の造作に特徴があり、大変品格があります。ここでは誰の作は別として、間違いなく下の写真のような画き方をしているはずです。この手法は余程の手の方でなければ無理でしょう。・・・・余談ながらこの市松人形は一体、80万円以下では手に入りますまい。銀座のとある専門店でしか手に入らないと思いますが・・・・・髪も人毛を使っているようですね。

別な市松人形の獣眉 

 

能面でもほぼ同じです。ですから、獣眉の手法で画かれた面は、他の部分でも素晴らしいはずです。当然並みの腕の方ではありません。瘋癲老人など夢のまた夢であります。偉そうなことを言うついでに申し上げると、能面でも市松人形でも顔の面相を一目見て評価もできますが、眉や前髪、毛書きの筆の具合でも判別出来ます。腕の良し悪しがここに出てきます。騙しが利きません。

それにしても掲載の市松人形は可愛いですな~。質八置いてでも一体手に入れたいですな~。でも、人形は新品に限ります。京都の古物商には古い名品がそれなりに有るようですが、・・・・・古い人形は怖~い!

 

最後に林原美術館の池田家伝来の能面3点を掲載してみます。

詳細は次回ということで・・・・

                 平太

 

 邯鄲男                                  若男

       

 * 本日の野の花や薔薇は自宅の庭で咲いていたものです。

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能面と能楽・仏像と仏像彫刻ー004

2012-05-24 | 日本の伝統芸術

 

日本の伝統芸術と芸能 

         能面と能楽佛像と佛像彫刻 

                         <その004

 

 

 

連日、晴天が続いております。梅雨なんて上の空。このままでいいんでしょうか。水不足なんていやですよ。日差しが強いので、海岸に出るとすぐ真っ黒になるほど日焼けをしてしまいます。岩礁のようなところはまともに陽をを受けますので・・・・

PCのウイルス感染には手を焼いています。Windowsのセキュウリティを搔い潜るようなソフトもあるようで。 オタクの得体の知れない奴が四畳半一間の下宿先のようなところで、薄笑いしながらソフトを作っているんでしょうか。悪魔と手を握ると、末路は哀れ・・・なんですがね~。

**********************************************************

 先回は仏像の素材が石材について書いて見ました。日本の場合は場所的にはよい石材に恵まれるのですが、木材のように潤沢ではありません。石材は再生が有りませんので、掘り起こしてしまえばそれで終わりです。それに引き換え木材は百年単位の時間は必要ですが、木の再生は可能です。

木曽の尾州材のように、上手に管理していけば、枯渇することはありません。今回はこの木材について書いてみましょう。現在国宝・重要文化財の指定を受けている彫刻2,400件のうち、90%は木材だそうです。

 

 

 木材は様々な材質がありますが、一番古くから用いられた木材は「樟」だそうで、能面の面打ちにも用いられました。樟は香りがありますので香木に似た木材として、重宝されたのでしょう。次いで針葉樹の檜、カヤが用いられ、桂、欅、桐も用いられました。特に檜は用材の性質も良く、特に木曽の尾州材は最高の用材です。

木材は飛鳥・白鳳時代から使用されており、天平時代の一時期は金銅仏や乾漆仏が流行しましたが、平安時代からは日本の仏像彫刻の主流をなしています。現在でも特別な場合を除き、仏像彫刻は木材、特に檜です。

樟材は材質が堅緻で、しかも彫刻がしやすく、彫り終えた後に漆箔を施した趣がいかにも金銅仏に近似していたという理由があるそうです。

法隆寺・・・・救世観音立像・百済観音・四天王立像・六観音立像

中宮寺・・・弥勒菩薩半足加像  など、皆さんが良くご存知の仏像は樟材です。

 

 

 

 木材を用いて仏像を彫刻する場合、丸太を鑿などで削りこんで製作する、所謂丸彫りを想像されるでしょうが、実際はそう簡単ではありません。胴体の部分はそれも可能ですが、手の部分、坐像であれば腰から膝にかけての部分は、一木から彫出することは、巨木でもない限り不可能です。

仏像の彫刻方法は大きく分けて2種類あります。一木造と寄木造です。結構、複雑な手法ですので次回に詳しくご説明しましょう。 

 

 

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 先回の能面コーナーは大宮大和真盛の名品をご覧いただきました。彼の作の名品「逆髪」の掲載していた文献を持っていたのですが、名古屋を去るときにどこかに紛失してしまいました。残念ですが、生憎お見せできません。

                   

この面などは文献からの拙い撮影ですので、実物をそのまま掲載できては居りません。本物をご覧になれば、その素晴らしさが本当に分ると思います。色合いなどは実物の色をカラー写真では出せないのです。博物館、美術館、宗家の展示などで、本物を見る事をお勧めします。

それでは、本日は林原美術館所蔵の面をご覧ください。

                                      

                                    十六(江戸時代

 

 一の谷の合戦で短い生涯を閉じた閉じた平敦盛を写した面です。二番目の修羅能の「敦盛」、「生田敦盛」のための専用面。この面は眉を高眉ではなくハッキリとした眉を描いてある。 面裏の額の部分に「半」という朱書きがあるそうで、俗名を半蔵という大野出目家第六代甫閑の作。

                       中将(江戸時代

 

在原業平を念頭に創作された面で、平家の公達らしく高眉を描き、歯にお歯黒を塗り、当時の貴族の女性化した容貌になっている。「小塩」、「雲林院」、「融」、「清経」、「忠度」などの曲に用いられる。

この手の面は女面と同じく僅かでも彫り間違えると、即OUTになる。難度の高い面である。甫閑作の<十六>はさすがの出来ですね。彼の作は女面でも何作かありますね。

二面共額に穴が見えますが、傷ではなく演能の際に使用するために穿った穴です。女面では見たことはありませんが・・・・

 携帯電話を海水没させたので、初めてデジタルカメラで撮影したものです。画面が自由に変えられるので以外と便利ですね。瘋癲老人にはPC,カメラなどのメカは扱いにくい。一苦労します。なにせ、すぐ和製英語のコマンドが画面に出てくるので、すぐ投げ出したくなります。でも、仕様がありません。

では、今回はボロが出ないうちに終わりと致します。 

 Attention

 

先日より「BLOGGER」でも、このブログを公開しています。

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能面と能楽・仏像と仏像彫刻ー003

2012-05-12 | 日本の伝統芸術

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         能面と能楽佛像と佛像彫刻 

                         <その003

 

* 「野草」の写真には<花咲かおまさ>さんの著作権が付いています。 

 端午の節句辺りから梅雨空は何処へやら、連日晴天が続いております。大潮の日が重なっておりますので、今日は東シナ海、明日は太平洋岸と場所を変えて、干上がった珊瑚礁の上を目を皿のようにして、あちらこちらとホッツキ歩いております。その割には成果は今一つ。 目の付け所が悪いんでしょうな~。

 

 

 さて、先回は仏像の製作に関わる材料について書き始めました。能面と違って材料の範囲は木材から始まって、貴金属、粘土まで様々な分野に及んでおります。地域的な事も有りまして、日本のような地域では多種多様な材料に恵まれますが、中国以西の砂漠地帯は岩山を削るか、石を削るしか道が無いような所もあります。

日本でも石仏は全国的にあらゆる所に見られますが、先般ご紹介した九州の臼杵や奈良県の山中、滋賀県の山中などには各所に見られます。石仏には「丸彫像」、「半肉彫像」、「線彫像」等があります。

九州 臼杵 阿弥陀三尊像

 

九州 臼杵 大日如来頭部

  

 

 路傍のお地蔵さん>といわれるような石仏には、丸彫りが意外と多いですね。あるいは寺院などには結構大型の観音像などが見受けられます。花崗岩のような硬く緻密な石材は彫刻が大変でしょうが、石質が緻密ですので恒久性に富みます。大谷石のような凝灰岩は堆積岩の一種で、耐久性に乏しいが容易に彫刻できるという利点があります。路傍の石仏や、道祖神などは殆どこれですね。

丸彫佛の名品としては最御崎寺(四国・高知・室戸岬)の如意輪観音半跏像があります。非常に緻密な彫り口になっております。

如意輪観音半跏像

          

最御崎寺は四国八十八箇所第24番札所であり、この観音像の石質は大理石です。イタリアには大理石の見事な彫像がありますね。大理石の名品は世界中に存在しております。 

日本国内に西欧のような見事な大理石が大量に採掘出来たならば、恐らく見事な石仏群が各所に存在したでしょうね。幸いに日本は大量の木材に恵まれましたから、幸運と言わなくてはなりません。敦煌のようなところでは、砂岩の岸壁に横穴を穿って、真っ暗な穴の中で丸彫り、半肉彫り、仏画を夥しい数今に残しておりますが、人間の営みの物凄いパワーを見る思いです。

 

石位寺の三尊佛

半肉彫りでは奈良県桜井市の石位寺の三尊佛が非常に保存の良いものとして挙げられます。奈良から桜井、吉野にかけては素晴らしい石造が数多く見られます。

女人高野 室生寺の手前の近鉄室生寺口のところに松尾寺が有りますが、ここには有名な摩崖佛が有ります。室生寺に行く途中ですので、多くの方がご覧になったと思いますが。近づいて見ると、結構ハッキリ見えるのですが・・・・

                        松尾寺 摩崖佛

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先回は最後に宝生流の重要文化財の<節木増>と、その写しとも云える鐘紡コレクションの名品をお見せしました。

節木増 本面            写し

      

本面がカラー写真であれば、正確な比較が出来ましたでしょうが、何分にも資料が有りませんので、読者の想像にお任せするしか有りません。額の眉の間の距離、顎の長さなどは互いに違っては居りますが、全体の感じは良く捉えております。どちらも文句なしの増女の型です。

増阿彌 久次のそれが正に本面ですが。以降、この型が「節木増」となりました。本面の方はじっと見ていますと、何か語り掛けて来そうな感じがします。

 

泣増 天下一 大宮大和 真盛(おおみや やまと さねもり)

 

面袋と面裏天下一 大和の焼印あり

 大宮大和 真盛といえば彩色の名手である。<泣増>をご覧に成っても分かるとおり、血の気が顔に浮かんでいるような、妖艶でしかも怖いくらいの美しさですね。世の男性諸君、このような面立ちで見詰められたら、何としますか。逃げられませんぞ!

観世流の所蔵(梅若流)の面だったと思いますが、大和の<逆髪>という面もこのような素晴らしい作品で、怖いくらいに美しい。どのような能面師だったんでしょうか。この方は? とにかく名品が多いですね

 

では、本日最後に以前もお見せしました、現代の名工・長沢 氏春師の<増女>を静かにご覧ください。もう講釈は致しません!

                増女

      

申し訳ありませんが、PCが一台故障いたしました。現在、復旧中ですがお陰で、他のブログが大幅に遅れておりますので、お許しの程を。

                       加計路麻の瘋癲老人

 

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能面と能楽・仏像と仏像彫刻ー002

2012-05-06 | 日本の伝統芸術

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         能面と能楽佛像と佛像彫刻 

                         <その002

 

* 「野草」の写真には<花咲かおまさ>さんの著作権が付いています。 

 

 端午の節句は久しぶりの晴天になりました。本日、日曜日も朝から晴れ渡って居ります。大潮の干潮と重なって、恐らく海浜は海遊びの人達で賑わうことでしょう。明日からはゴールデン・ウイークも終わって、大方の人が日常生活に戻っていくことでしょう。また、離島は静かになっていきます。

 先回は仏像の素材の事を少々書いてみました。仏像にしても能面にしても現在の基本材料は木材です。手近かな木材を使用していたのが、経済の発達に伴って、遠方から様々な材質の木材を取り寄せ、使用することになりました。

能面の場合は、檜などの木材、或いは紙を使った張子のような使用方法もありましたが、あくまでも主流は木材です。それに引き換え、仏像は木材、石、青銅、鉄、銀、金、水晶などの宝石と、能面に比較すると多種類に渡ります。

仏像の材質でもっとも身近に有りそうなものに石材があります。耐久性が有りますし、硬く簡単に破損したり、磨耗したりしません。しかしながら、削るという作業は並大抵のものではありません。しかしながら、作品は柔らかな線を帯びた形状になります。 路傍のお地蔵さん、観音さま、里の道祖神など。

 

 

 青銅を素材としたブロンズはより滑らかな形状になり、且つ精巧な出来上がりになります。少々、作成方法を説明しましょう。

ブロンズ像は最初、粘土で大方の形を造り上げます。その後、粘土の表面に蜜蝋などを厚く塗り重ね、さらに外側を粘土、土で覆います。 固まったところで、土の表面を温めると、蜜蝋は解けて下に流れ去ります。その後、青銅などを溶かしたもの・・<湯>・・を予め空けておいた穴から注ぎ込みます。

高温の湯が冷えて固まった後に、土を取り除け、像内の粘土も取り除けますと、大方出来上がった像が完成します。 後は細かい部分は削りだしたり、接着すれば完成品が出来上がります。奈良の大仏のような巨大なものでも、作成方法はほぼ同じです。

 

 

 薬師寺の有名なブロンズ像は、何方でも拝観されたと思いますが、素晴らしい高度な技術を持たれた、渡来の仏師の作品ですね。この技術の源流は古代中国か或いは遥か中東以西でしょうか。

水晶や中には宝石、金銀、陶器なども有りますが数は少ないです。古代中国の今も尚残っている名品は石仏。 敦煌はじめ中国の黄河流域には石仏の素晴らしい作品が仏画とともに残っておりますね。日本では木材、石材、粘土、麻布・漆、青銅、鉄、Etc 様々な材質の仏像が現存しますが、木材、石材が圧倒的に多いのも事実。 経済的理由がその中心にあるのでしょう。

                 大日如来古園石仏群

 

 石材は産地が偏りますので、九州の臼杵などには石仏の名品が数多くあります。磨崖佛などは奈良県、滋賀県など各所に見られます。もちろん運搬可能な地域には小・中品は有りますが。路傍の地蔵・観音・道祖神はいずこにも見られます。 しかし、当地、加計呂麻島には道標、以外には有りませんが。

塑像は粘土等の材質ですが、奈良の「新薬師寺」に素晴らしい名品がありますね。これも脆いということ、重量があることから、現存数は少ないですが。

名品 紹介コーナー

ゴールデン・ウイーク最後の日の日曜ですので、先回ご紹介しました鐘紡コレクションの能面集から女面をご紹介します。

* 鐘紡コレクション ・・・戦前三井財閥、三井家が所有しておりました能面、能楽関係の文化財を、戦後GHQの財閥解体の追及から逃れるため、鐘紡が買取と言う形で所有し、これが後に鐘紡コレクションに発展していく。三井家ではその他の能面等は本家で所有したものが、「三井旧蔵能面」として、能面集になっている。 瘋癲老人は長年追い求めて、この能面集も所有しているので、後日、可能な限りお見せ致したい。

A- 小面     天下一 近江 (近江 満昌) ・ 江戸時代初期

 

        

 

この本面は元加賀前田家に有った面で、近江が宝生宗家に入る前に、写しをとったものだそうです。目鼻が中心に寄ったような感じに見えますが。本面の詳細は不明。 前田家であれば相当の名品・・・龍右衛門の面か?・・であった可能性は高い。人中を少しだけ長くすると、どのようになりますでしょうか・・・小面のキチットした型を持つ名品です。

 

 B- 小面  江戸中期の作。作者不詳。

 

近江 満昌作かどうかは不明。 面裏の処理が近江に似ているとの事。上記とは面立ちの違った小面。穏やかな面立ち。 連面と能面集に書かれているので、シテツレに使用した面か?  何かしらホットするような感じを与える。瘋癲老人としては、この方が好みか。見ていて疲れないから。 

 

 

C-万媚  作者不詳 江戸初期作

万媚は小面の類型面である。髪の毛書きを見ないと、なかなか判別出来ない。慣れてくれば細かい表情の違いは解るようになるが、なかなか難しい。 材質は桐である。 小面より艶麗さが際立っている。

 

  

D-節木増  作者不詳 江戸中期作

 能面の写しはこうするものだと言わんばかりの名品。左が「節木増」となり、右が「増女」と能面集には表記されているが、いずれも節木増です。

     節木増                   増女

         

能書きを書く前に、この面の本面をお見せしましょう。 

昭和38年に重要文化財指定の宝生流の名物面。これが本物です。写しととくと比較してみてください。モノクロなのが残念ですが、我慢されたい。

                本面 節木増  

本面は 増阿弥 久次 60歳以降の作とされている。正に老いてここまでやれるかと思うほどの絶品。 能楽師としてつとに有名であるが・・・

写しの「節木増」も良く表情を正確に捉えており、大変な名手であったろう。2枚同時に見せられて、どれが本面と言われても・・・答えられないと思う。瘋癲老人が神田の本屋街でやっと見つけた「わんや書房」の能面の本。この面を見て胸がドッキンコしたものである。 これに匹敵する面は2面位しかない。

 

龍右衛門の「雪の小面」、孫次郎の「孫次郎」・・これ以外に何が有るなんて、啖呵をきっても仕様がないが・・・

 

瘋癲老人としては、写しの方が好きだが、本面がモノクロームなので、カラーを見せられるとコロッと変わるかもしれない。 そもそも比較なんて無理。

最後に、名称の由来。 製作中に脂が思わぬことに鼻の付け根に出てしまった。でも、余りの名作ゆえにこれが本面になった。 怪我の功名か。 正に、<>様様であろう。

では本日はPCも穏やかにしているので、今の内にお終いとしたい。

 

 

 

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能面と能楽・仏像と仏像彫刻ー001

2012-05-03 | 日本の伝統芸術

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         能面と能楽佛像と佛像彫刻 

 <その001

 

* 野草・薔薇の写真には<花咲おまさ>さんの著作権が付いております。

奄美群島は早々と入梅してしまい、猛烈に蒸し暑くなったり、雨が降り終わると急に風が中国方面から吹き渡ってきて、乾燥しはじめ肌寒くなります。空はどんよりして折角の帰省してきた人達も、さぞがっかりのことと思います。

5/5辺りから大潮ですので、<浜遊び>という潮干狩りが楽しめるのですが、さて今年は如何な事になるやら、運を天に任せることしか・・・・

先回までは、能面と仏像を分けて書いておりましたが、この際一緒くたにして書き進めた方が、自由度が増しますので、今回からは上記のような表題にさせて頂きます。 瘋癲老人はどうも勝手気ままな性質な者で・・・・

 

 

 先回は<九面観音菩薩>のお写真をお見せしたところで、エディターがストライキを起こしましたので、遭えなく終わりになりました。失礼しました。

九面観音菩薩の像の彫刻技法は壇像佛といいまして、全体のプロポーションが一般の仏像(立像)と比較して、佛頭の全体に占める割合が大きいのが特徴であるのと、お身体に付けられるお飾りも全て、木から彫りだされているのが大きな特徴です。彫刻技法の面からも格段に難しいと考えてよろしいと思います。

特に香木である白檀は大変な硬い原木ですので、プロでも悲鳴を上げるくらいの堅物だそうです。一般的には<樟>を使うそうですが・・・価格も安く且つ、匂いが宜しいので。

 

 

 能面の面打ちの際の原木は<檜>ですが、樟も使う作例もあります。しかし、樟は重いので能面には適しません。桐の方が宜しいかも。 とにかく軽く虫が付かない。でも、木の香りからすれば尾州檜が最高ですね。香りが部屋に篭もると、何かしら良い気分になります。仏像もこれまたしかり。

 昔は材料が思うように手に入りませんので、小さな原木を張り合わせて一木にして、それから能面なり仏像を彫刻していたそうです。その為接着剤の効き目が弱くなると破損するという事故が起こりやすくなります。

能面、仏像で後に修復しなければならない事が結構あるようです。そのようなことから、原木の調達には苦労していた言うことになります。ですから、多少重いとかしても使うということも有った訳で、現在とは考えられない状態でした。

 

 

 原木を調達しても即使用は出来ません 自然乾燥しなければ役に立ちません。家の裏に店晒しにして20~30年も置いて、木の中の脂を取らなければ物の役に立たないのです。この脂というのが難物でして、彩色を汚したりすので製作者泣かせという事になります。特に面打ちの場合は脂は即アウトでね。

 

木曽檜の原木の1/4部分

         木取り

 

それで、焼き鏝で焼いたり、脂の部分を取り去って、木の粉と膠を練った<こくそ>というものを詰めてから、掘り進むことになります。にも拘らず、数年のすると他の部分から脂が染み出して来ることもあります。木は生きているのですね。木曽檜の尾州材を使う理由の一つに、香りのほかに脂の多少があるのです。

 

北澤 三次郎氏 製作の能面 「泣増」・・・名人が打つと白木のままでも、匂い立つほど美しい。 これから胡粉の下塗りが始まる

* 北澤 三次郎 名人 澤 耕雲 師の子息。 長男 一念氏も能面師。いずれも越前の片田舎で面打ちを行っている。瘋癲老人は一念氏には京都の画廊で一度お会いしている。 図らずも同年輩。我が身の情けなや身に染みる。

 

 仏像彫刻の場合は白木のままで彩色もしない場合は、能面と同じ事が起きます。木の使用量も各段に能面より多いので、原木の調達と調整には苦労したと思います。仏像の場合は、通常は彫刻が終了すると、漆を木肌に塗り、彩色を始めますので、脂が染み出すことを防ぐことが出来ます。虫除けにもなります。問題は価格でしょうね。日本漆の調達は現在でも可也高価な事もあり難しいのです。

 

                 

名品 紹介コーナー

 

 さて、先回はPCの思わぬサボタージュで、能面の名品が紹介出来ませんでした。今回は今のところ順調なので、大盤振る舞い! 鬼の寝てる間にそろそろと参りましょう。

猩々-001

猩々は中国古来の妖精のことで、水中から浮かび上がったことで、髪が真っ直ぐ額に付き、酒を飲んで赤く顔を紅潮させている面を打ったもの。

この作品は鐘紡コレクションの中の一品。江戸末期のさく。作者は不明。下の作品とは趣が違っていますね。刃物の切れ味が鋭いので、きりっとした感じ。 

 

 

 

猩々-002

名人 出目 洞白 の作。 柔らかな線が出ており、如何にも酒を飲んで酔いしれている感じが出ております。目元の切り方が素晴らしいですね。焦点が合わない酔っ払いの眼ですね。流石ですね。額の罫書きも上手いですね。

左頬の唇の傍に先ほどご紹介した<>が浸み出ております。知らないで選んでおりました。偶然でしたね。能面の場合これが厄介な傷になるのです。 額でなくて良かったです。

 

   

 

喝食(カッシキ)-001

喝食には大・中・小の3形型があり、これは大喝食。喝食とは禅寺で食事を告げる半僧半俗の少年。「自然居士」・・大喝職 、「東岸居士」・・中喝職 、「花月」・・小喝食に当てられます。 喝食は僧だけでなく、高級武家の愛玩の対象になったらしい(両性具有の美というやつですな~・・ムニャムニャ)。

この面は池田藩の池田家伝来の名品で林原美術館所蔵の能面です。生気が感じられ、キリットした面立ちになっております。作者は不詳。江戸時代の作。 恐らく出目家一族に所属する能面師の作であろうと思いますが・・・なかなかの名品です。

 

 

喝食(カッシキ)-002

 この喝食は名工 河内 家重の作 桃山時代の作。  鐘紡能面コレクションの中の一作。この能面集の能書きを読みますと、興味深いことが書かれて居ります。

この能面を河内が一度彩色をした上で、さらに上から分厚い胡粉を塗り、新たに彩色をしたものだそうです。もともとは小喝食の面。面裏には「天下一 河内」の焼印が押されておりますそうです。

 瘋癲老人はこの解説を書いた碩学「田辺 三郎助」にケチを付けるわけではないのですが、また、現物を見ずしていい加減なことを言いたくはないのですが・・・・・そうではなく、<洗い彩色>をしたのではないでしょうか。<洗い彩色>とは一度彩色をしてから、水で洗い流してから、その上に再度彩色し直す、古来からの技法が有るのです。東大の先生はこれを知ってるはずなのか? 知らなかったのか? 分厚く重ね塗り、そんなことはしないと思うんですがね~

故人を責めても仕様がないので・・この辺で。

PCのストライキがまた発生しました。何故なんでしょうか。もう<止めろ>の合図でしょうか。そいういう訳で、本日はこれでお開きと致します。