機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2つの化学療法薬の組み合わせで癌幹細胞を標的にする

2016-05-05 06:06:31 | 癌の治療法
Two known chemotherapy agents effectively target breast cancer stem cells

May 2, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160502131417.htm


(Puttur D. Prasad博士 (左) とMuthusamy Thangaraju博士

Credit: Phil Jones)

既存の2つの化学療法薬は、乳癌を作り出す異常な幹細胞を標的とするための強力な組み合わせとなるようである
5-アザシチジンと酪酸という2つの薬剤は乳癌の転移と再発の原因である癌幹細胞の数を減少させ、乳癌の動物モデルで生存を改善することがCancer Research誌で報告された
報告によるとどちらも単独では効果がなかったという

※アザ/aza-: 「炭素の代わりに窒素を含む」の意

「現在のほとんどの化学療法は癌幹細胞を殺さず、腫瘍の容積massを減らすだけである」
ジョージア医科大学/Medical College of Georgia(MCG)とオーガスタ大学ジョージアがんセンター/Georgia Cancer Center at Augusta Universityの生化学分子生物学部で生化学者のMuthusamy Thangaraju博士は言う

※ジョージア医科大学はオーガスタ大学(ジョージア州)が設立した
※『Georgia Regents University (GRU) Cancer Center』から『Georgia Cancer Center at Augusta University』に改名した

「この組み合わせは全ての乳癌患者が検討する必要がある
なぜなら、彼女たちに共通する特徴denominatorは癌幹細胞だからである」
責任著者corresponding authorのThangarajuは言う


この2つの薬は現在、エストロゲン受容体が陽性の乳癌を治療するために一般に用いられるタモキシフェンという薬剤の有効性effectivenessを加速するために共に使われている
この性ホルモン受容体は乳癌の約70パーセントで陽性である
タモキシフェンはその受容体を阻害することによりエストロゲンレベルを低下させ、臨床的な経験からこの薬の追加により癌の再発が減少することが示されている

Thangarajuのラボは、この2つの薬剤の追加は幹細胞が乳癌を形成可能にするために重要な経路の少なくとも2つに直接影響するという証拠evidenceを得ている
それには乳癌を骨や肺に転移させることができる筋上皮細胞myoepithelial cellが含まれる


それら薬剤は、変化した遺伝子発現を正常化して増殖促進シグナルを阻害するのを助けるようである

5-アザシチジンはDNMT1遺伝子の阻害剤である
Thangarajuの研究チームは以前、DNMT1遺伝子が正常で健康な胸部の幹細胞と組織の維持だけでなく、癌幹細胞の維持にも必要であることをNature Communications誌で報告しているSciencedialy記事

DNMT1は正常な成人の胸と比較して乳癌で非常に発現が高い
高レベルのDNMT1は通常存在する腫瘍抑制因子であるISL1遺伝子の発現を低下させ、DNMT1は幹細胞のメカニズムを制御する
事実、ジョージア医科大学(MCG)の科学者が乳癌モデルでDNMT1遺伝子を阻害したところ、乳癌腫瘍の80パーセントが除去eliminateされ、特に最も悪性の腫瘍が除去された


また、乳癌ではシグナル伝達分子のRAD51AP1とSPC25も過剰発現する
それらは正常ならば癌を引き起こしうるタイプのDNA損傷の修復を助けるが、どちらも癌に直面するかいくつかの癌の治療にさらされると、癌細胞の増殖と転移を可能にする
母乳に多く含まれる酪酸butyrateは、増殖を支えるために癌が使うこれらの分子が過度に増加し過ぎるのを防ぐ
彼らの研究は乳癌のマウスモデルで行われ、研究結果はヒトの乳癌細胞系統によって支持される

※母乳育児は乳癌リスクの低下と関連があるとされる


今回の研究は「なぜ幹細胞が重要な標的なのか?」についてのさらなる根拠evidenceを(少なくとも彼らの動物モデルでは)もたらす
通常の幹細胞は前駆細胞progenitor cellを作り、前駆細胞は胸を構成する特定の細胞を生み出す
しかし、癌に至るようなダイナミクスdynamicsの変化、例えば遺伝子発現の変化は、自然に起きたり加齢に伴って生じ、または煙草の煙や他の発癌物質、ウイルス疾患などの環境要因によって生まれる
そのような変化は癌幹細胞が腫瘍と筋上皮細胞のどちらも作り出すことを意味し(通常は幹細胞→前駆細胞→筋上皮細胞だが、癌幹細胞→筋上皮細胞)、この筋書きscenarioでは筋上皮細胞が転移を可能にする
腫瘍では前駆細胞はこの異常なタイプの筋肉様細胞を直接は作らなかった

興味深いことに、これらのいわゆる『エピジェネティックな変化/epigenetic change』は癌を作り出すと同時に、癌幹細胞を5-アザシチジン/酪酸の組み合わせ療法に対して脆弱にする可能性が高いlikelyとThangarajuは言う

Thangarajuによると再発は患者の約20%から45%で生じ、最初の診断から数十年経って起きることさえあると言う
再発リスクが最も重大な患者は、乳癌が診断時に既にステージが進行していたかHER2が陽性の乳癌の女性である
それは癌の増殖を助ける成長因子の受容体HER2を癌が持つことを意味する


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-2249
Combined inhibition of DNMT and HDAC blocks the tumorigenicity of cancer stem-like cells and attenuates mammary tumor growth.
DNMT阻害とHDAC阻害の組み合わせは癌幹細胞様細胞の腫瘍形成性を阻止して乳腺腫瘍の増殖を減じる

最近乳腺幹細胞と癌幹細胞(CSC)の単離と検証において印象的な技術的進歩が為されたが、幹細胞の自己再生self-renewalを調節するシグナル伝達経路はほとんど知られていない
さらに、CSCは化学療法と放射線療法への抵抗性の一因であると考えられている

今回の研究で我々はMMTV-Neu-Tgという乳腺腫瘍モデルのマウスを使い、潜在的なCSCを除去するための新たな戦略を同定した

※MMTV: murine mammary tumor virus
※Neu: Her2のこと
※Tg: Transgenic

我々は管腔前駆細胞luminal progenitorと基底幹細胞basal stem cellのどちらもが遺伝子的な・エピジェネティックな修飾genetic and epigenetic modificationsに脆弱であり、それが発癌性の形質転換oncogenic transformationと腫瘍形成性の潜在性tumorigenic potentialを促進することを発見した

DNMT阻害剤の5-アザシチジンとHDAC阻害剤の酪酸の組み合わせはCSCの量を著しく減少させ、マウスモデルの全生存を増加させた

5-アザシチジンと酪酸の組み合わせで処理したCSCをRNA配列決定/RNA-seqで分析したところ、クロマチン修飾因子modifierの阻害はRAD51AP1SPC25のような増殖促進シグナル伝達分子を阻止するというエビデンスがもたらされた
これらはDNA損傷の修復ならびに動原体の組み立てkinetochore assemblyで重要な役割を演じる分子である

さらに、RAD51AP1とSPC25は有意にヒト乳癌腫瘍組織で過剰発現し、患者の全生存の低下と関連した

結論。我々の研究は乳癌CSCが遺伝子的・エピジェネティック的な修飾に対して内因性的intrinsicallyに感受性があることを示唆し、難治性または薬剤抵抗性の乳癌におけるDNMT阻害とHDAC阻害の組み合わせをさらに調査するための根拠となるwarrant



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150511163014.htm
妊娠時の正常かつ急速な胸の成長を維持させる幹細胞と、乳癌を引き起こす乳癌幹細胞、その両方の維持にDNMT1は必要
逆に腫瘍抑制遺伝子のISL1は乳癌で抑制されており、これは5種類の乳癌で同様だった
化学療法と組み合わせて既に使われているバルプロ酸valproic acidは、ISL1の発現を増大させた
DNMT1は造血幹細胞の維持にも必要




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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160404152906.htm
iPSC/induced pluripotent stem cellは現在のところ組織修復の客観的証拠が何もない
PDGF-ABと5-アザシチジンの組み合わせで作成できるiMSC/induced multipotent stem cellは組織修復が可能であり、それはサンショウウオの修復と似ている



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5-アザデオキシシチジン/5-aza-deoxyCというDNAほど有効ではないが、RNAは安く作れるためにHIVが流行しているアフリカのような貧困地域で有用である




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血管新生を標的にしても癌は代謝を切り替える

2016-05-04 06:06:26 | 
New discovery in the fight against cancer: Tumor cells switch to a different mode

April 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160428103153.htm


(抗血管新生療法の後、腫瘍は血管(緑色)が存在せず、したがって酸素が欠乏した領域(赤色)をむしろ発達させる
腫瘍細胞は核が青色で染色されている

Credit: University of Basel, Department of Biomedicine)

バーゼル大学(フランス)とバーゼル大学病院の生物医学者たちがCell Reports誌で報告したところによると、腫瘍細胞への酸素の供給を止めるための薬剤を使っても、細胞は酸素を使わずエネルギーを作るようにスイッチを切り替えることにより、ある程度の期間medium termは代謝を適応させる
この観察は長期にわたって腫瘍の増殖を阻害しうる治療のために使われる可能性がある


3人に1人が人生のどこかで癌を発症し、その症例の半数が死に至る
したがって癌と戦うための新たなアプローチが早急に必要である

癌は一連のステージを経て進行することが一般的に知られている
そのステージの一つは血管新生angiogenesisであり、新しい血管が形成されて腫瘍が成長するための酸素と栄養を供給する

癌がどのようにして形成されるのかという基礎についての理解が進むにつれ、腫瘍と戦うために特定の目標を攻撃するための技術が徐々に開発されてきた
現在腫瘍の血管新生を調節するためのシグナル伝達経路を複数同時に阻害することが可能であり、このプロセスの分子的な基礎の理解は特殊な治療法を臨床現場で日常的に利用するための道を開いてきた
例えば、腫瘍に栄養を供給する血管形成を阻害するためにいわゆる抗血管新生療法/anti-angiogenic therapyを使うことができる
しかしこれは一時的な効果しか発揮しない
腫瘍の増殖は初めこそしばらく遅くなるか止まるものの、治療を続けるにつれて腫瘍は治療への抵抗性を獲得して再び増殖し始める


『予想もしなかった観察』
"An unexpected observation"

バーゼル大学とバーゼル大学病院で生物医学部の教授であるGerhard Christoforiを中心とする研究グループは、最新治療が血管形成の阻害には有効であるものの、新しい血管が作られなくても腫瘍は増殖し続けられることを示す報告を発表した

生物医学的かつ分子遺伝学的な観点biochemical and molecular genetic perspectiveから見た今回の発見の分析から、腫瘍細胞は異なるタイプの代謝に切り替えることが明らかにされた
腫瘍細胞は血管から送られる酸素を使ってエネルギーを作り出すことはなくなり、代わりに酸素を使わない嫌気性anaerobicのエネルギー産生である解糖系へとスイッチを切り替える
解糖系の結果として生まれる乳酸はまだ十分な酸素を受け取っている細胞へと送られ、そこで乳酸は酸素と共にエネルギーを作るために使われる


新たな治療の可能性
New therapies possible

研究グループはさらに、この特別な腫瘍細胞の代謝は嫌気性anaerobicのエネルギー産生を阻害するか乳酸の輸送を阻害することにより妨げることが可能であり、したがって腫瘍の増殖を抑制できることを示した

共著者のChristoforiは結果について次のように述べた
「我々の発見は、抗血管新生療法を最適化して長期にわたって効果的に腫瘍増殖を阻止するための新たなアプローチへの道を開く」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.028
Targeting Metabolic Symbiosis to Overcome Resistance to Anti-angiogenic Therapy.
抗血管新生療法への抵抗性に打ち勝つために代謝的な共生を標的とする



Highlights

・腫瘍はマルチキナーゼ阻害剤による抗血管新生療法を回避しうる
・マルチキナーゼ阻害剤に対する抵抗性の根底には、解糖系への移行がある
・低酸素の細胞と酸素が豊富な細胞oxygenated cellsとの間の代謝的な共生が、治療への抵抗性を喚起する
・解糖系の阻害または乳酸輸送の阻害は代謝的な共生を崩壊させる


Summary
複数の抗血管新生療法が承認されたにもかかわらず、臨床的な結果は不十分なままであり、一時的な利益があってもその後は急速に腫瘍が再発する

今回我々は乳癌マウスモデルにおいて、マルチキナーゼ阻害剤であるニンテダニブnintedanib(VEGFR、PDGFR、FGFR等を阻害)ならびにスニチニブsunitinib(VEGFR、PDGFR、Kit等を阻害)の強力な抗血管新生の効能を実証する
しかしながら、最初の退縮regressionの後、活発な腫瘍血管新生がないにもかかわらず腫瘍は増殖を再開した

腫瘍細胞の遺伝子発現プロファイリングを実施したところ、嫌気性解糖系への代謝的再プログラムが明らかになった
事実、マルチキナーゼ阻害剤を解糖系阻害剤の3POと組み合わせることで腫瘍の増殖は効果的に阻害された

※3PO: 3-(3-pyridinyl)-1-(4-pyridinyl)-2-propen-1-one。解糖系を活性化するPFKFB3(phosphofructokinase-2/fructose-2,6-bisphosphatase 3)を上皮細胞で阻害する (Schoors et al., 2014)

さらに、腫瘍は代謝的な共生metabolic symbiosisを確立し、それはモノカルボン酸トランスポーターであるMCT1とMCT4のそれぞれ異なる発現によって説明される
MCTは解糖系腫瘍からの乳酸の交換で活発に活動する

それと一致して、MCT4の発現を遺伝学的に除去すると、抗血管新生療法への適応的な抵抗に打ち勝った

したがって、代謝的な共生を標的とすることは抗血管新生療法への抵抗性の発生を回避するための魅力的なやり方である



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160407221441.htm
癌は最初は自分で血管を作らせているが、マルチキナーゼ阻害剤であるソラフェニブのような血管形成の阻害剤を投与すると、肝臓の血管を取り込んで吸収co-optionするようになる
血管形成と血管吸収を両方とも阻害するのが良いかもしれない

http://dx.doi.org/10.1093/jnci/djw030
Co-option of Liver Vessels and Not Sprouting Angiogenesis Drives Acquired Sorafenib Resistance in Hepatocellular Carcinoma.
肝細胞癌におけるソラフェニブ抵抗性の獲得を促進するのは、血管新生の発芽ではなく肝臓血管の取り込み/吸収である



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d3bf55e0185cfc1c02ad1c249e3a46bf
[神経内分泌腫瘍の血管]─(PDGF-DD)→<PDGFRβ>[わずかな癌細胞サブ集団]─(成長因子)→[腫瘍]増殖,転移↑↑



Linked Article
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.029
Metabolic Symbiosis Enables Adaptive Resistance to Anti-angiogenic Therapy that Is Dependent on mTOR Signaling
代謝的共生は抗血管新生療法への適応的抵抗性を可能にし、それはmTORシグナル伝達に依存的である




Linked Article
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.015
Resistance to Antiangiogenic Therapies by Metabolic Symbiosis in Renal Cell Carcinoma PDX Models and Patients
PDXモデルと患者の腎細胞癌における代謝的共生による抗血管新生療法への抵抗性







参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

はぁ?
 

なぜテストステロンと糖尿病リスクが関連するのか

2016-05-03 06:06:08 | 代謝
How low testosterone raises diabetes risk

April 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160428132612.htm


(Dr. Franck Mauvais-Jarvis, Price-Goldsmith professor in the Department of Medicine at Tulane University School of Medicine.

Credit: Paula Burch-Celentano, Tulane University)

血中テストステロンが低い男性は2型糖尿病を発症するリスクが高いことが以前から知られている
テュレーン医科大学の研究者は、テストステロンが膵臓でインスリンを作る細胞の重要なシグナル伝達メカニズムの引き金を引くことにより男性の血糖調節を助けることを初めて明らかにした
Cell Metabolism誌で発表される今回の発見は、加齢や前立腺癌の治療のためにテストステロン濃度が低い男性たちの2型糖尿病の新たな治療につながる可能性がある

「我々はテストステロンが欠乏する男性における2型糖尿病の原因と、そして潜在的な治療への道筋を発見した」
首席著者senior authorのFranck Mauvais-Jarvis博士は言う

「我々の研究はテストステロンが男性の糖尿病に拮抗するホルモンであることを示す
その作用を副作用なく調整できれば、それは2型糖尿病の治療への新しい道を開く」


テュレーンの研究者は、膵臓のβ細胞がテストステロンの受容体(アンドロゲン受容体)を持たない特別なマウスを使った
マウスに脂肪fatsと砂糖sugarが豊富な西洋食を与えてグルコースglucoseへの反応をテストしたところ、
通常のマウスと比較してアンドロゲン受容体を持たないマウスは全てインスリン分泌が低下し、耐糖能障害/グルコース不耐性glucose intoleranceを生じた

テストステロンがどのようにして膵臓のインスリン産生と相互作用するのかを理解するため、研究者はアンドロゲン受容体の阻害剤で処理したヒトの膵臓細胞とアンドロゲン受容体を持たないマウスから取り出した膵臓細胞に、テストステロンとグルコースを直接投与した

実験の結果、テストステロン受容体が阻害されていないか失われていない膵臓の細胞と比較して、どちらの膵臓細胞もインスリン産生の低下を示した
培養されたマウスとヒトの膵島細胞でさらに実験したところ、テストステロンによるインスリン産生を促進する効果はGLP-1の阻害により無効化されることが示された

今回の研究ではGLP-1ホルモンの膵島への影響をテストステロンが増幅することが示唆される
GLP-1は現在糖尿病の治療で使われている薬剤である


http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2016.03.015
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(16)30118-8
Extranuclear Actions of the Androgen Receptor Enhance Glucose-Stimulated Insulin Secretion in the Male.
アンドロゲン受容体の核外作用は、グルコースによって刺激されるインスリン分泌を男性で促進する


Highlights
・アンドロゲン受容体(AR)をノックアウトしたオスのマウスのβ細胞では、グルコースによって刺激されるインスリン分泌(GSIS)が減少する
・テストステロンは培養されたマウスとヒトのβ細胞からのGSISを促進し、それはARを介するものである
・β細胞でのARは核外で、cAMP依存的なやり方でGSISを促進する
・活性化されたARは、GLP-1のインスリン分泌効果insulinotropic effectを増幅する


Summary
テストステロンの欠乏した男性は2型糖尿病(T2D)リスクが増大するが、以前の研究では膵臓β細胞におけるテストステロンとアンドロゲン受容体(AR)の役割が無視されてきた

我々はβ細胞にARを持たない(βARKO)オスのマウスがグルコースによって刺激されるインスリン分泌(GSIS)の減少を示しexhibit、耐糖能障害につながることを示すshow

ARアゴニストのジヒドロテストステロン(DHT)は培養したオス/男性の膵島からのGSISを促進し、その効果はマウスのβARKO−/y膵島ならびにARアンタゴニストで処置したヒト膵島では無効化された

β細胞ではDHTにより活性化されたARは主に核外に存在し、膵島cAMPを増加させてPKAを活性化することによりGSISを促進する

マウスとヒトの膵島ではDHTのインスリン分泌効果はGLP-1受容体の活性化に依存し、したがってDHTはGLP-1のインクレチンincretin効果を増幅する

今回の研究はARをβ細胞機能を促進する新たな受容体として同定するものであり、この発見は年老いた男性におけるT2Dの予防にとって潜在的な重要性implicationを持つ



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160308091110.htm
β細胞にはニコチン性アセチルコリン受容体があり、正常なインスリンの分泌に影響する
この受容体の遺伝子変異はβ細胞上の機能する受容体の数に影響して糖尿病リスクになる
β細胞内のMafAはニコチン性受容体の数に影響する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c5430d8634bdca32080281683490f6fd
α細胞とβ細胞はカンナビノイドで会話する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2011/02/110225122912.htm
α細胞はグルタミン酸を分泌し、グルタミン酸はβ細胞に毒性を発揮する
 

パーキンソン病を発症する20年前から何が起きているのか

2016-05-01 06:06:02 | 
Study shows how neurons decline as Parkinson's develops

Electrical activity dwindles in cells long before movement issues become visible

April 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160428094510.htm


(A new study shows how neurons decline as Parkinson’s develops.

Credit: Image courtesy of University of Texas Health Science Center at San Antonio)

こんなことを聞くと動揺するだろうか?

「もしあなたがパーキンソン病を発症しても、それを知ることなく20年間過ごすのかもしれない
 そしていったん症状が現れると、もう治療するには遅すぎる」

では、パーキンソン病の根本的な原因の治療を、早くから始められるとしたらどうだろう?


テキサス大学(UT)医学部保健学/Health Scienceサンアントニオ・センターの研究者たちは、パーキンソン病に冒された細胞の変化を疾患の様々な段階、特に症状が現れるずっと前の状態からの変化を研究している
その変化についての研究結果はJournal of Neuroscience誌の4月号で発表される

この研究の希望として2つの要素がある
1つは疾患を途中で止めるための薬剤を調剤formulateするために利用できる知識を得られることであり、
もう1つはパーキンソン病の患者が健康で豊かな人生を送ることができる時間を延ばす方法を知ることである


隠れた変化
Hidden changes

「パーキンソン病という疾患が確立take holdしていない間に、一体どのような変化が起きているのか?
その点を我々は初めて詳しく調べたget a look at」
首席著者senior authorのMichael Beckstead, Ph.D.は言う
彼は生理学の助教授であり、UT保健学センターBarshop加齢長寿研究所の一員でもある

パーキンソン病は黒質という中脳の一部に存在するドーパミンニューロンの変性と細胞死が特徴である
保健学センターの研究者たちは、そのニューロンだけに遺伝子の突然変異を持つマウスを研究した

この『MitoPark』というマウスは黒質のドーパミンニューロンだけでミトコンドリアmitochondrialの活性が妨げられており、
細胞のエネルギーを作り出すミトコンドリアが損なわれているためにドーパミンニューロンが十分なエネルギーを作ることができなくなっている


ヒトのパーキンソン病を真似る
Mimics human Parkinson's

マウスは最初、完全に正常である
しかし何週間か何ヶ月か経つにつれて突然変異はドーパミンニューロンを徐々に病ませていき、ニューロンはやがて死に絶える

「このマウスは変化が一夜のうちに起きるようなものとは違い、進行性のモデルprogressive modelである」
Beckstead博士は言う

「これによりマウスはヒトのパーキンソン病と似たものになる
ヒトのパーキンソン病は症状が現れるようになるまでおよそ20年ぐらいsomewhereの期間がかかるプロセスであると考えられている」

MitoParkマウスで振戦tremorのような症状が明らかになり始めるのは約20週齢からである
UT保健学センターの研究ではその前の時点でのドーパミンニューロンの機能的な状態を評価し、6~10週齢、11~15週齢、16週齢以上の機能を互いに比較した


機能低下のタイムライン
Timeline of decline

これらの比較から研究者はドーパミンニューロンの機能低下のタイムラインtimelineを構築した
彼らは以下の3つのカテゴリーで変化を観察した

・ドーパミンニューロンの大きさの縮小
・ニューロン間のコミュニケーションの減少
・ニューロンの電気活動electrical activityの低下

「我々が計測した機能の、ほとんど全てが低下した」
Beckstead博士は言う

「我々が研究した全てがどれほど変化したかというのは、本当に驚くべきことだった
それは全体的な低下で、しかもそれらの変化が生じたのはすべてマウスの症状が現れる前であり、その動きにはどんな種類の欠陥も検出できなかった」


パーキンソン病の異常行動を示し始めた年老いたマウスには、もう一つ別の現象が観察された
ドーパミンニューロンで電気活動を増加させる遺伝子発現が高まったのである

「これは疾患の進行では遅くに現れた
我々はこれをニューロンが低下した電気活動を補おうとしているのだと考えている
それはおそらくヒトがパーキンソン病にかかった時にドーパミンニューロンが30パーセント以上死に絶えても長い間症状が出ずに済む理由だろう」

この研究結果はすぐに臨床的な治療へと応用translateされるわけではないが、このような発見はいつかパーキンソン病の根本的な原因を理解して治療できるかもしれないという見込みをもたらす
現在の治療はすべて対症療法symptomaticであり、それらは動きにくさを改善して患者を楽にするためのものである

「疾患のプロセスに真に影響する治療は現在まったく存在しないが、その理由はこの疾患の初期に何が起きているのかを我々が理解していないからだ
我々が行ったような研究はそのような知識の不足gapを満たすのに役立つだろう」


http://dx.doi.org/10.1523/JNEUROSCI.1395-15.2016
Dopaminergic Neurons Exhibit an Age-Dependent Decline in Electrophysiological Parameters in the MitoPark Mouse Model of Parkinson's Disease.
パーキンソン病モデルのMitoParkマウスにおいてドーパミン作動性ニューロンは電気生理学的パラメーターの低下を加齢依存的に示す


Abstract
黒質ドーパミン作動性ニューロンは報酬と関連する行動や自発的な行動など日々の行動で重要な役割を果たしており、このニューロンの喪失はパーキンソン病の主な特徴である

長い間ミトコンドリアの機能不全がパーキンソン病と関連付けられてきており、多くの動物モデルではミトコンドリア機能を破綻させることでパーキンソン病の特徴を誘発させる

MitoParkマウスは最近開発されたパーキンソン病の遺伝学的モデルであり、ドーパミン作動性ニューロン特異的に ミトコンドリア転写因子A/mitochondrial transcription factor A(mtTFA)を欠く
このモデルは黒質ドーパミンニューロンの選択的で進行性の喪失などのパーキンソン病の多くの特徴を再現mimicする
このマウスの運動障害はl-DOPAで改善し、加えて封入体inclusion bodyの発達が見られる

今回我々は脳スライス電気生理学を用いて、MitoParkマウスの黒質ドーパミン作動性ニューロンにおける機能低下のタイムラインを構築した

MitoParkマウスの黒質ドーパミン作動性ニューロンは細胞の静電容量capacitanceの低下と入力抵抗input resistanceの上昇を示し、加齢とともに重症化する

MitoParkではペースメーカー発火の規則正しさpacemaker firing regularityが破綻disruptし、発火と関連するイオンチャネルの伝導力conductanceが低下する

加えてMitoParkマウスのドーパミン作動性ニューロンは内因性ドーパミンレベルとドーパミン分泌が進行性の低下を示し、D2ドーパミン受容体を介する外向き電流outward currentが低下していく

興味深いことに、年老いたMitoParkマウスではインパルス活性と関連するイオンチャネルのサブユニット(Cav1.2, Cav1.3, HCN1, Nav1.2, NavB3)の発現が上方調節される

この結果は、運動障害が起きる前から生じ、または加齢時の運動障害と同時に起きるMitoParkドーパミン作動性ニューロンに固有intrinsicの性質かつニューロンのシナプス的な性質における変化を描写する

これらの発見は、前駆状態prodromalのパーキンソン病を標的とする治療に向けた将来の調査に知識をもたらす助けになる可能性がある



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160412091004.htm
パーキンソン病のレヴィ小体型認知症を顎下腺のα-シヌクレインで診断する
病理解剖autopsyで確認、生検biopsyでも確認する予定



関連サイト(PDF)
https://www.astellas.com/jp/byoutai/other/reports_h21/html/index_2.html
パーキンソン病原因遺伝子産物PGAM5がミトコンドリアの機能を維持する分子メカニズム

http://dx.doi.org/10.1371/journal.pgen.1001229
The Loss of PGAM5 Suppresses the Mitochondrial Degeneration Caused by Inactivation of PINK1 in Drosophila




http://dx.doi.org/10.1038/ncomms5930
Genetic deficiency of the mitochondrial protein ​PGAM5 causes a Parkinson’s-like movement disorder

>Contrary to a previous study in Drosophila(26, we found ​PGAM5 protects DA neurons from degeneration, presumably by promoting ​PINK1 stabilization.
(以前のハエでの研究とは反対に、我々はPGAM5がドーパミンニューロンを変性から保護することを発見した
それはおそらくPINK1の安定化を促進することによるものだろう)

http://www.nature.com/ncomms/2014/140915/ncomms5930/fig_tab/ncomms5930_F3.html
Figure 3: Inside-out ​PINK1 translocation model.

PGAM5はミトコンドリア内膜IMMタンパク質で、PARLを含めたミトコンドリアプロテアーゼによる分解からPINK1を保護する
脱共役剤のカルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン/carbonyl cyanide m-chlorophenyl hydrazone(CCCP)で処置した後、PGAM5によって保護された完全長full-lengthのPINK1はミトコンドリア外膜OMMに移動するが、PGAM5はIMM上に留まる
PGAM5が存在しない状態でのPINK1はPGAM5による保護を失い、切断されて分解される
CCCPはPGAM5による安定したPINK1のIMMからOMMへのトランスロケーションを引き起こしうる
PINK1はそこでパーキンと結合associateし、結果としてp62リクルートと関連するユビキチン化イベントが生じて、最終的にLC-3を介するマイトファジーmitophagyに至る



http://dx.doi.org/10.15252/embr.201540514
(Patho‐)physiological relevance of PINK1‐dependent ubiquitin phosphorylation