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PDACの30%で見られる分子シグネチャーが悪性度と関連する

2016-05-19 06:06:27 | 
Study identifies potential treatment target for pancreatic cancer

Molecular signature found in 30 percent of PDAC tumors associated with more aggressive cancer

May 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160512124911.htm

マサチューセッツ総合病院 (MGH) の研究者たちは、最も一般的な膵臓癌に対する潜在的な分子治療の標的を初めて明らかにした
膵管腺癌/pancreatic ductal adenocarcinoma (PDAC) という膵癌では患者の90パーセント以上が死亡する

PDACでは症例の約30パーセントでSIRT6という腫瘍抑制タンパク質が不活化していることに加え、SIRT6がPDACの発症を抑制するための正確な経路を研究チームは同定した
それはSIRT6が結腸直腸癌を抑制するのとは異なるメカニズムだったという
この論文はCell誌の6月2日で発表される予定であり、オンラインでは既に先行発表されている


「癌では遺伝子の変化だけでなく、エピジェネティックな要素における変化が見られる
エピジェネティックな変化は遺伝子がいつ発現するか、そして遺伝子が発現するかどうかそのものを制御するが、
それらは癌における最も頻繁に見られる変化のいくつかを代表することが 癌ゲノミクスの進歩と共に明らかになってきた」
今回の報告の首席著者でありMGHがんセンターの一員であるRaul Mostoslavsky, MD, PhDは言う

「しかし、それらエピジェネティックな要素の多くはまだ説明されておらず、明らかになっているものでも特定の下流の標的に関連付けられてはいない
我々が明らかにした分子シグネチャーは 今回分析されたPDAC患者の3分の1以上で見られただけでなく、そのような患者の予後は非常に悪いことが判明した」


SIRT6は様々な機能を持つが、その中でも特に 細胞がグルコースをどのように処理するのかを制御することが知られている
2012年の研究でMostoslavskyのチームは、SIRT6が結腸直腸癌を抑制する能力には解糖系の制御が含まれることを明らかにした

しかし、その研究ではPDAC腫瘍の細胞でもSIRT6の発現の低下が観察された
そして今回の調査でSIRT6の欠乏がPDACを促進するのは異なるメカニズムを通じてであることが示された

細胞系統と動物モデルの実験により、PDACにおけるSIRT6レベルの低下はLin28bの発現の上昇と相関することが明らかにされた
Lin28bは通常は胎児の発達時に発現する『発癌タンパク質oncoprotein』である

Lin28bの発現はSIRT6欠損PDAC細胞の増殖と生存に必須であり、その作用はlet-7という『腫瘍抑制mRNA』を阻害することによる
let-7は、膵癌の悪性度と転移の増大と関連付けられている3つの遺伝子の発現を抑制する

 SIRT6↓─┤Lin28b↑─┤let-7↓─┤HMGA2,IGF2BP1,IGF2BP3↑→転移↑

より早く死亡した患者から得られた腫瘍サンプルでは、これらの特徴の全て、つまりSIRT6が低下し、Lin28bは増加して、そしてlet-7は低下していることが発見された


「これらの研究からの一般的なメッセージは、
癌細胞はSIRT6のようなエピジェネティックなファクターを調整することで利益を得るということである
それにより細胞の正常な増殖制御パターンを無効にするoverride能力を獲得する」
Mostoslavskyは言う
彼はハーバードメディカルスクールの内科学準教授associate professor of Medicineで、ブロード研究所では准会員associate memberである

「それぞれの腫瘍のタイプは、増殖と生存のアドバンテージをもたらす腫瘍特異的で独特な能力を獲得する可能性がある
それはそれぞれの癌ごとに決定する必要があるかもしれない
PDACに関する我々の発見について言えば、我々はLin28bによって制御される下流の経路とそれらがどのようにして悪性度と転移を増すのかについて興味がある
我々が望むのは、将来Lin28bの阻害剤が開発されることにより このPDAC患者のサブセットに利益がもたらされることだ
彼らには現在、治療オプションがほとんどまったく存在しない」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.04.033
SIRT6 Suppresses Pancreatic Cancer through Control of Lin28b.


SIRT6↓─(脱アセチル化↓)─┤c-MycによるLin28bの発現↑─┤Let-7↓


Highlights
・SIRT6の喪失は発癌性Kras(KrasG12D)と協力して膵癌を駆り立てるdrive
・SIRT6はプロモーターヒストン脱アセチル化を通じて腫瘍胎児性タンパク質oncofetal proteinのLin28bを調節する
・Lin28bはSIRT6を欠く膵癌の増殖と生存を駆り立てるdrive
・SIRT6とLin28bの発現は、特定の膵癌サブセットにおける予後を規定するdefine

Summary
ヒトの癌ではクロマチン再編成タンパク質chromatin remodeling proteinsがしばしば調節を失うが、それらがどのようにして腫瘍発生tumorigenesisを制御するのかについてはほとんど知られていない

今回我々はNAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素サーチュイン6(SIRT6)によって仲介されるエピジェネティックなプログラムが膵管腺癌(PDAC)の抑制に決定的に重要criticalであることを明らかにする

SIRT6の不活化はLin28bの上方調節を介してPDACの進行と転移を加速する
Lin28bはlet-7というマイクロRNAを負に調節する

SIRT6の喪失の結果としてLin28bプロモーターの位置でヒストンの過剰なアセチル化が生じ、MycがリクルートされてLin28bが顕著に誘導され、let-7の下流の標的遺伝子であるHMGA2、IGF2BP1、IGF2BP3が発現する

このエピジェネティックなプログラムは予後の悪いサブセットを明確に規定し、それはヒトのPDACの30%から40%を占める
その特徴はSIRT6の発現低下と、そして腫瘍増殖のためにLin28bへ非常に強くexquisite依存するということである

したがって我々はSIRT6をPDACの重要な腫瘍抑制因子として同定し、分子的に定義されたPDACサブセットの一つとしてLin28b経路が潜在的な治療標的であることを明らかにする



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