機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

Aβは脳内の天然の抗生物質である

2016-05-28 06:06:17 | 
Human amyloid-beta acts as natural antibiotic in the brain: Alzheimer's-associated amyloid plaques may trap microbes

May 25, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160525161351.htm


(培地でβ-アミロイド微小繊維が酵母から広がり、カンジダ・アルビカンスを捕らえている画像

Credit: D.K.V. Kumar et al. / Science Translational Medicine (2016))


マサチューセッツ総合病院(MGH)の新たな研究によると、ベータアミロイド・プラーク/beta-amyloid plaqueという形でアルツハイマー病患者の脳内に蓄積するアミロイドベータタンパク質(Aβ)は『正常な自然免疫系の一部』であるというさらなる証拠がもたらされた
自然免疫系は病原体による感染に対する人体の防御の最前線である

Science Translational Medicine誌で発表された彼らの研究はマウスと線虫、培養されたヒト脳細胞で実施されたもので、致命的となりうる感染に対してAβの発現は保護的であることが明らかになった
この研究結果は新たな治療戦略につながる可能性があり、そして同時に、患者の脳内からアミロイド・プラークを除去するようにデザインされた治療への限界を示唆する

「アルツハイマー病における神経変性は、Aβという分子の異常なふるまいによって引き起こされると考えられてきた
Aβは患者の脳内でアミロイド・プラークという微小繊維状の頑丈toughな構造へと凝集することが知られている」
論文の共責任著者であるRobert Moir, MDは言う
彼はマサチューセッツ総合病院-マサチューセッツ神経変性疾患総合研究所/MassGeneral Institute for Neurodegenerative Disease (MGH-MIND)の遺伝学加齢研究ユニットに所属している

「この支配的な見方は30年以上もの間、治療戦略と薬剤開発を導いてきた
しかし我々の研究結果は、この見方が不完全だったことを示唆している」


MoirがMGH-MIND遺伝学加齢研究ユニットのディレクターであるRudolph Tanzi, PhDと共に主導した2010年の研究(※)は、Aβが抗菌ペプチド/antimicrobial peptide (AMP) の性質qualityを多く持つというMoirの観察から生まれたgrow outものだった
AMPは広範囲な病原体から防御する自然免疫系の小分子タンパク質である

※"The Alzheimer's Disease-Associated Amyloid β-Protein Is an Antimicrobial Peptide"

彼らはその研究で、合成したAβをLL-37という既知のAMPと比較し、Aβが複数の病原体の増殖を阻害することを発見した
その効果はLL-37と同等か、LL-37よりも優れていることすらあった
アルツハイマー病患者の脳内のAβは、培養カンジダイースト菌の増殖も抑制した
その後の別のグループによる研究ではインフルエンザウイルスとヘルペスウイルスに対する合成Aβの作用も実証された

※イーストyeast: サッカロミセス科Saccharomycetaceaeの真菌類を表す一般名

今回の研究ではヒトAβの生物モデルにおける抗菌作用を初めて調査した
研究者たちは、ヒトAβを発現するトランスジェニックマウスが通常のマウスよりも脳内へのサルモネラ菌Salmonellaによる感染後も著しく長く生きることを初めて明らかにした
一方、アミロイド前駆体タンパク質/amyloid precursor protein (APP) を持たないマウスは急速に死亡した

トランスジェニックなAβ発現は、線虫であるC.エレガンスでもカンジダ菌やサルモネラ菌による感染から保護するようだった
同様に、ヒトAβの発現は培養ニューロン細胞をカンジダから保護した
事実、生きている細胞で発現させたヒトAβは、以前の研究で合成されたAβよりも感染に対して1000倍も強力であるようだ


このような優位性は、アルツハイマー病の病理pathologyの一部と考えられてきたAβの性質に関係があるように思われた
つまり、互いに結合していわゆるオリゴマーとなり、ベータアミロイド・プラークへと凝集する小分子の傾向propensityである

※オリゴマーoligomer: 少数oligo + 化合体mer

抗菌ペプチド(AMP)は複数のメカニズムを通じて感染と戦うが、基本となるプロセスの一つはオリゴマーを形成して微生物の表面に結合し、互いに凝集clumpするというものである
それにより病原体が宿主の細胞に結合するのを防ぎ、同時に、細胞膜を破綻させて微生物を殺すのである

以前の研究で使われた合成Aβの調合preparationは、オリゴマーを含んでいなかった
しかし、今回の研究ではオリゴマー状のヒトAβがさらに強い抗菌活性を示しただけでなく、ベータアミロイド・プラークを形成する微小繊維という形態への凝集が微生物を捕えて閉じ込めるentrapことがマウスと線虫モデルの両方で観察された


Tanziは次のように説明する
「抗菌ペプチド/AMPは、軽症minorから重症majorまで広範囲の炎症性疾患に関与することが知られている
例えばLL-37はAβ抗菌活性の我々のモデルだが、これは関節リウマチ、狼瘡lupus、アテローム性動脈硬化症など人生後期の複数の疾患に関与している
それらの病態ではAMP活性の調節が失われて炎症の持続を引き起こすが、そのような調節の異常dysregulationがアルツハイマー病でもAβによる神経変性作用の一因である可能性がある」


Moirがさらに付け加える
「我々の研究結果は興味深い可能性を提案する
つまりアルツハイマー病の病理は脳が病原体による攻撃を受けていると『気付く』時に始まるのかもしれない
真に感染が関与しているかどうかを決定するためにはさらなる研究が必要だが、
実際、自然免疫系の炎症性の経路は潜在的な治療標的であるようだ

もし我々のデータが立証されれば、それはベータアミロイド・プラークを完全に除去することを目指す治療法へ警告する必要性の根拠となるwarrant
ベータアミロイドを抑制dial downはするが一掃wipe outはしないことを目標とするアミロイドベース療法が、ベターな戦略であるかもしれない」


Tanziは言う
「我々のデータは全て実験モデルだが、次の重要なステップはアルツハイマー病患者の脳内の微生物を調べることである
それが保護的な応答としてアミロイド蓄積を引き起こし、後に神経細胞の死と認知症につながる
もし我々が容疑者culpritを明らかにできれば(それは細菌、ウイルス、真菌かもしれない)、我々はそれらをアルツハイマー病を初期primaryに防ぐための治療的な標的とすることができるかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1126/scitranslmed.aaf1059
Amyloid-β peptide protects against microbial infection in mouse and worm models of Alzheimers disease.

『悪いやつ』だったβ-アミロイドの更生/復権
Rehabilitation of a β-amyloid bad boy

Aβというタンパク質はアルツハイマー病(AD)においてニューロンの細胞死を引き起こすと考えられている
AβはAD患者の脳内に、疾患の顕著な特徴である不溶性の凝集体aggregateを形成する
Aβとその凝集する傾向は本質的intrinsicallyに異常であると広く見られてきた

しかしながら、Kumarらによる新たな研究で、Aβは脳を感染から保護するための生まれつき備わった抗生物質natural antibioticsであることが示される
非常に驚くべきことに、Aβ凝集体は細菌病原体を捕えてtrap閉じ込めるimprison

ADにおいてAβが実際の感染と戦っているのか、それとも誤って感染と認識されたものと戦っているのかは不明のままである
しかしながら、いずれにしてもin any case、これらの研究結果はADを治療するための新しい潜在的な薬剤標的としての炎症性の経路を明らかにする


Abstract
アミロイド-βペプチド/amyloid-β peptide (Aβ) はアルツハイマー病の病において鍵となるタンパク質である

我々は以前in vitroでAβが抗菌ペプチドであることを示唆するエビデンスを報告した
今回我々はマウス・線虫・培養細胞ADモデルにおいてAβ発現が真菌感染と細菌感染から保護するというin vivoのデータを提供する
我々は本質的に病理的な性質であると伝統的に考えられてきた反応behaviorであるAβのオリゴマー化oligomerizationが、Aβペプチドの抗菌作用に必須である可能性を示す
まとめると、我々のデータは、可溶性のAβオリゴマーがヘパリン結合ドメインを介して微生物細胞壁の炭水化物carbohydrateに優先してfirst結合するというモデルと一致する

Aβから原繊維(プロトフィブリルprotofibril)が生じることにより、宿主細胞への病原体の接着は阻止された
β-アミロイドの微小繊維(フィブリルfibril)の広がり/増加propagateは細菌の凝集反応agglutinationを仲介し、結果として、結合していないunattached微生物は閉じ込められるentrapment

我々のモデルと一致して、トランスジェニック5XFADマウスの脳へのネズミチフス菌Salmonella Typhimuriumによる感染は結果として急速なシーディングを引き起こし、β-アミロイド沈着は加速された
β-アミロイドの沈着は、侵入したネズミチフス菌the invading bacteriaの近くで共に集中していたclosely colocalized

我々の研究結果は、β-アミロイドが自然免疫と感染において保護的な役割を演じる可能性、もしくは、病原体によるものではない/無菌のsterile炎症性の刺激がアミロイド症amyloidosisを促進するかもしれないという興味深い可能性をもたらす
これらのデータは保護的であり/有害でもあるというAβの二重の役割を示唆する
それは他の抗菌ペプチドに関してこれまで記述されてきたのと同様である



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141020104930.htm
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)感染はアルツハイマーのリスクが2倍



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cd647de22c38a65141f364bcf8118b36
真菌の中には血液脳関門を超えることが可能なものもある



関連サイト
https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/10270
アルツハイマー病患者の脳組織が真菌に感染していた



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160223074923.htm
アルツハイマー病モデルマウスからT細胞、B細胞、NK細胞をなくすと、βアミロイドの蓄積が2倍になった
完全な免疫系のアルツハイマーマウスではB細胞の抗体が脳に蓄積し、ミクログリアによるAβの除去を助けていた



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/da5b1460551c4cedbd472dd8037649d4
アルツハイマー病の3つのサブタイプ、炎症性/Inflammatory、非炎症性/Non-inflammatory、皮質性/Cortical



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/44dd380eae54a796f94b7b5fb5d93849
Aβオリゴマーは補体分子のC1qとC3を活性化し、C3はミクログリアの受容体CR3を通じてシグナルを伝達して、ミクログリアが脆弱なシナプスを飲み込むように刺激する



関連サイト
http://dislocon.blog.fc2.com/blog-entry-330.html
>PLoS Oneの 「The Alzheimer's Disease-Associated Amyloid β-Protein Is an Antimicrobial Peptide」 の Discussion

>アミロイドβペプチドは、細菌性髄膜炎の主な原因であるS. pneumoniae(肺炎連鎖球菌)や中枢神経系カンジダ症の最も一般的な原因であるカンジダ・アルビカンスを含む12種類の臨床的に重要な病原体の内8種類を抑制した。
>もしアミロイドβの通常の機能が抗微生物ペプチド(AMP)として機能することにあるのなら、このペプチドの欠如は感染に対する脆弱性の増加をもたらすかも知れない。
>我々の知る限りでは、ヒトでの免疫欠乏と低いアミロイドβレべルとの関係は、これまでは検討されていない。しかし、内因性の齧歯類(本来の)アミロイドβを生成するプロテアーゼを欠いたノックアウトマウスでは、病原体に対する感染性が増加しているように思われる。
>低レベルのアミロイドβしか産生しない BACE1 ノックアウトマウスと、BACE1- と BACE2の何れも欠きアミロイドβを産生しないダブルノックアウトマウスの死亡率はそれぞれ40%と60%である。これらの動物を無菌環境で飼育すると生存率は野生型のもの(95%以上)に戻る。この免疫不全の病因をずっと調べているが、未だに確認されていない。
>つい最近、アミロイドβ42を低下させる薬剤 Tarenflurbil(Flurizan)の臨床試験では、この薬剤を投与された患者は感染率が有意に増加していた。