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2つの化学療法薬の組み合わせで癌幹細胞を標的にする

2016-05-05 06:06:31 | 癌の治療法
Two known chemotherapy agents effectively target breast cancer stem cells

May 2, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160502131417.htm


(Puttur D. Prasad博士 (左) とMuthusamy Thangaraju博士

Credit: Phil Jones)

既存の2つの化学療法薬は、乳癌を作り出す異常な幹細胞を標的とするための強力な組み合わせとなるようである
5-アザシチジンと酪酸という2つの薬剤は乳癌の転移と再発の原因である癌幹細胞の数を減少させ、乳癌の動物モデルで生存を改善することがCancer Research誌で報告された
報告によるとどちらも単独では効果がなかったという

※アザ/aza-: 「炭素の代わりに窒素を含む」の意

「現在のほとんどの化学療法は癌幹細胞を殺さず、腫瘍の容積massを減らすだけである」
ジョージア医科大学/Medical College of Georgia(MCG)とオーガスタ大学ジョージアがんセンター/Georgia Cancer Center at Augusta Universityの生化学分子生物学部で生化学者のMuthusamy Thangaraju博士は言う

※ジョージア医科大学はオーガスタ大学(ジョージア州)が設立した
※『Georgia Regents University (GRU) Cancer Center』から『Georgia Cancer Center at Augusta University』に改名した

「この組み合わせは全ての乳癌患者が検討する必要がある
なぜなら、彼女たちに共通する特徴denominatorは癌幹細胞だからである」
責任著者corresponding authorのThangarajuは言う


この2つの薬は現在、エストロゲン受容体が陽性の乳癌を治療するために一般に用いられるタモキシフェンという薬剤の有効性effectivenessを加速するために共に使われている
この性ホルモン受容体は乳癌の約70パーセントで陽性である
タモキシフェンはその受容体を阻害することによりエストロゲンレベルを低下させ、臨床的な経験からこの薬の追加により癌の再発が減少することが示されている

Thangarajuのラボは、この2つの薬剤の追加は幹細胞が乳癌を形成可能にするために重要な経路の少なくとも2つに直接影響するという証拠evidenceを得ている
それには乳癌を骨や肺に転移させることができる筋上皮細胞myoepithelial cellが含まれる


それら薬剤は、変化した遺伝子発現を正常化して増殖促進シグナルを阻害するのを助けるようである

5-アザシチジンはDNMT1遺伝子の阻害剤である
Thangarajuの研究チームは以前、DNMT1遺伝子が正常で健康な胸部の幹細胞と組織の維持だけでなく、癌幹細胞の維持にも必要であることをNature Communications誌で報告しているSciencedialy記事

DNMT1は正常な成人の胸と比較して乳癌で非常に発現が高い
高レベルのDNMT1は通常存在する腫瘍抑制因子であるISL1遺伝子の発現を低下させ、DNMT1は幹細胞のメカニズムを制御する
事実、ジョージア医科大学(MCG)の科学者が乳癌モデルでDNMT1遺伝子を阻害したところ、乳癌腫瘍の80パーセントが除去eliminateされ、特に最も悪性の腫瘍が除去された


また、乳癌ではシグナル伝達分子のRAD51AP1とSPC25も過剰発現する
それらは正常ならば癌を引き起こしうるタイプのDNA損傷の修復を助けるが、どちらも癌に直面するかいくつかの癌の治療にさらされると、癌細胞の増殖と転移を可能にする
母乳に多く含まれる酪酸butyrateは、増殖を支えるために癌が使うこれらの分子が過度に増加し過ぎるのを防ぐ
彼らの研究は乳癌のマウスモデルで行われ、研究結果はヒトの乳癌細胞系統によって支持される

※母乳育児は乳癌リスクの低下と関連があるとされる


今回の研究は「なぜ幹細胞が重要な標的なのか?」についてのさらなる根拠evidenceを(少なくとも彼らの動物モデルでは)もたらす
通常の幹細胞は前駆細胞progenitor cellを作り、前駆細胞は胸を構成する特定の細胞を生み出す
しかし、癌に至るようなダイナミクスdynamicsの変化、例えば遺伝子発現の変化は、自然に起きたり加齢に伴って生じ、または煙草の煙や他の発癌物質、ウイルス疾患などの環境要因によって生まれる
そのような変化は癌幹細胞が腫瘍と筋上皮細胞のどちらも作り出すことを意味し(通常は幹細胞→前駆細胞→筋上皮細胞だが、癌幹細胞→筋上皮細胞)、この筋書きscenarioでは筋上皮細胞が転移を可能にする
腫瘍では前駆細胞はこの異常なタイプの筋肉様細胞を直接は作らなかった

興味深いことに、これらのいわゆる『エピジェネティックな変化/epigenetic change』は癌を作り出すと同時に、癌幹細胞を5-アザシチジン/酪酸の組み合わせ療法に対して脆弱にする可能性が高いlikelyとThangarajuは言う

Thangarajuによると再発は患者の約20%から45%で生じ、最初の診断から数十年経って起きることさえあると言う
再発リスクが最も重大な患者は、乳癌が診断時に既にステージが進行していたかHER2が陽性の乳癌の女性である
それは癌の増殖を助ける成長因子の受容体HER2を癌が持つことを意味する


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-2249
Combined inhibition of DNMT and HDAC blocks the tumorigenicity of cancer stem-like cells and attenuates mammary tumor growth.
DNMT阻害とHDAC阻害の組み合わせは癌幹細胞様細胞の腫瘍形成性を阻止して乳腺腫瘍の増殖を減じる

最近乳腺幹細胞と癌幹細胞(CSC)の単離と検証において印象的な技術的進歩が為されたが、幹細胞の自己再生self-renewalを調節するシグナル伝達経路はほとんど知られていない
さらに、CSCは化学療法と放射線療法への抵抗性の一因であると考えられている

今回の研究で我々はMMTV-Neu-Tgという乳腺腫瘍モデルのマウスを使い、潜在的なCSCを除去するための新たな戦略を同定した

※MMTV: murine mammary tumor virus
※Neu: Her2のこと
※Tg: Transgenic

我々は管腔前駆細胞luminal progenitorと基底幹細胞basal stem cellのどちらもが遺伝子的な・エピジェネティックな修飾genetic and epigenetic modificationsに脆弱であり、それが発癌性の形質転換oncogenic transformationと腫瘍形成性の潜在性tumorigenic potentialを促進することを発見した

DNMT阻害剤の5-アザシチジンとHDAC阻害剤の酪酸の組み合わせはCSCの量を著しく減少させ、マウスモデルの全生存を増加させた

5-アザシチジンと酪酸の組み合わせで処理したCSCをRNA配列決定/RNA-seqで分析したところ、クロマチン修飾因子modifierの阻害はRAD51AP1SPC25のような増殖促進シグナル伝達分子を阻止するというエビデンスがもたらされた
これらはDNA損傷の修復ならびに動原体の組み立てkinetochore assemblyで重要な役割を演じる分子である

さらに、RAD51AP1とSPC25は有意にヒト乳癌腫瘍組織で過剰発現し、患者の全生存の低下と関連した

結論。我々の研究は乳癌CSCが遺伝子的・エピジェネティック的な修飾に対して内因性的intrinsicallyに感受性があることを示唆し、難治性または薬剤抵抗性の乳癌におけるDNMT阻害とHDAC阻害の組み合わせをさらに調査するための根拠となるwarrant



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逆に腫瘍抑制遺伝子のISL1は乳癌で抑制されており、これは5種類の乳癌で同様だった
化学療法と組み合わせて既に使われているバルプロ酸valproic acidは、ISL1の発現を増大させた
DNMT1は造血幹細胞の維持にも必要




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