Protein threshold linked to Parkinson's disease
February 2, 2015
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150202114450.htm
(合成された脂質小胞から生じたgrow out ofα-シヌクレインからなるアミロイド原繊維を示す、原子間力顕微鏡atomic force microscopyによる画像
Credit: A.K. Buell)
パーキンソン病と密接に関連するタンパク質が脳内で機能不全を起こして凝集し始める『環境circumstances』が、ケンブリッジ大学による研究で初めて定量的に特定された
この研究ではα-シヌクレインというタンパク質の『しきい値threshold』の決定的なレベルが明らかになった
このタンパク質は正常な脳内で化学シグナルのスムースな流れに重要である
いったんしきい値を上回ると、α-シヌクレインが潜在的に有害な構造へと凝集する可能性chancesが劇的に増大する
このプロセスは『核化/nucleation』として知られ、パーキンソン病の発症につながると考えられる一連のイベントの中で最初の決定的に重要な段階である
この研究結果は、どのようにして、そしてなぜパーキンソン病を発症するのかについての理解に向けてさらに一歩前進したことを意味する
慈善団体charityのParkinson's UKによれば現在イギリスでは500人ごとに1人、推定12万7千人がパーキンソン病であり、そして治癒することはないままである
今回の研究の筆頭著者lead authorであるケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジの助教/Research Associate、Celine Galvagnion博士は次のように言う
「パーキンソン病の治療法の発見はその病態の理解にかかっている
我々は最終的に疾患の発症につながりうる最初の分子レベルでのイベントについて仕組みの説明mechanistic descriptionをすることが初めて可能になった」
今回の研究では個々人のパーキンソン病発症の可能性likelihoodはα-シヌクレインとシナプス小胞の数との間の繊細なバランスと関連することが示唆されている
シナプス小胞synaptic vesiclesとはとても小さいtiny泡のような構造を持ち、神経細胞間の化学的なシグナルを伝える神経伝達物質を運ぶ
神経細胞はシグナルを伝えるために絶えず小胞を再生産している
正常な状況下でのα-シヌクレインは神経細胞の一方からもう一方に向けた神経伝達物質の放出の際に重要な役割を演じている
α-シヌクレインは自身を『脂質二重層lipid bilayer』という小胞を包む薄い膜に結合させることによってそれを行う
α-シヌクレインが脂質小胞lipid vesiclesに結合する時、らせん状の形状helical shapeへと折りたたみ方foldingが変化して機能を実行する
しかしながら、特定の状況下で小胞の表面上にあるα-シヌクレインは折りたたみに失敗misfoldし、お互いにくっつき合うstick together
この『核化/nucleation』プロセスがいったん始まると、脳細胞内のフリーなタンパク質分子が脂質表面上の『できそこないの核/misshapen nucleus』と接触する危険がある
これらが結びつくcombineにつれて糸のようにつながった形状thread-like chainsの『アミロイド原繊維/amyloid fibril』が形成され、他の細胞にとって有害になり始める
これらの凝集したα-シヌクレインのアミロイド沈着amyloid depositは『レヴィ小体/Lewy-body』として知られ、パーキンソン病の特徴である
以前の研究で脳内でのα-シヌクレインの過剰発現はどういうわけかsomehowパーキンソン病の発症と関連付けられるassociableことが示唆されており、加えてα-シヌクレインと脂質二重層との相互作用が疾患の発症の加減modulateに関与することがわかっていた
しかし、なぜα-シヌクレインが真に発症につながるのかはこれまで不明だった
今回の研究でケンブリッジのチームは合成した小胞synthetic vesiclesを実験的に作り出すことにより、α-シヌクレインタンパク質が自らを脂質に結合させるプロセスのシミュレーションを実施した
合成された小胞は、様々な量のα-シヌクレインと共にインキュベートされた
実験の結果、小胞に対するタンパク質の比率がおおよそ100のレベルを越えると(これはヒトの脳内で典型的に見られるのよりも10倍高いレベルである)、小胞周囲の脂質二重層に自己を結合させたα-シヌクレインは集中し過ぎて、表面上でお互いにまとまってしまうbunch togetherことが示された
結果として、脂質表面上でのタンパク質の核化の可能性chancesは、溶液中で2つのタンパク質がランダムに結合する可能性と比較して、驚くべきことにremarkably少なくとも数千倍にまで高まることが判明した
Galvagnionが次のように付け加える
「凝集の発生が観察される特定の状況specific conditionsが存在し、他の状況では観察されないということが我々の実験で明らかになった」
「α-シヌクレインタンパク質が核となって凝集するnucleateする能力を左右するのは、比率ratioであることが判明した
これはパーキンソン病につながる始まりの段階がどのようにして起きるのかについてのもっともらしい説明likely explanationを我々にもたらす」
合わせて考えると、今回の結果は膜とタンパク質の相互作用がパーキンソン病を含めた神経変性疾患の開始に関与しうるという重要な役割についての仕組みの説明mechanistic descriptionを初めて提供する
この報告の全体はNature Chemical Biology誌で発表される
http://dx.doi.org/10.1038/nchembio.1750
Lipid vesicles trigger α-synuclein aggregation by stimulating primary nucleation.
Abstract
α-シヌクレインはアミノ酸140残基からなる天然変性タンパク質/intrinsically disordered protein(IDP)である
α-シヌクレインはニューロンやシナプス小胞の可塑性に関与するが、凝集してアミロイド原繊維を形成することがパーキンソン病の特徴である
※天然変性タンパク質: 形状が不安定で相互作用や自己凝集などを起こしやすいタンパク質
α-シヌクレインと脂質表面との間の相互作用は正常な機能を媒介するための重要な特徴であると考えられているが、別の状況下ではアミロイド原繊維の形成を調整modulateすることが可能である
我々は実験的・理論的アプローチを組み合わせ、脂質二重層と結合する状況下でα-シヌクレインが容易に凝集を誘発されるメカニズムを同定した
加えて我々はそのような状況下では最初の核化の速度rate of primary nucleationが3ケタ以上(数千倍)by three orders of magnitude or moreも促進されうることを示す
これらの結果は、α-シヌクレインの可溶性の状態から神経変性と関連する凝集の状態への変換、そして関連する疾患の状態への変換を引き起こす際に 膜とタンパク質の相互作用が持つ重要な役割を明らかにする
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1eb8a3dd9d17a598ad52ad6fc3230e38
α-シヌクレインはシナプス小胞を整理整頓する
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160829163300.htm
α-シヌクレインの変異は凝集の開始initiationと核形成nucleationだけに影響し、延長elongationには影響しない
February 2, 2015
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150202114450.htm
(合成された脂質小胞から生じたgrow out ofα-シヌクレインからなるアミロイド原繊維を示す、原子間力顕微鏡atomic force microscopyによる画像
Credit: A.K. Buell)
パーキンソン病と密接に関連するタンパク質が脳内で機能不全を起こして凝集し始める『環境circumstances』が、ケンブリッジ大学による研究で初めて定量的に特定された
この研究ではα-シヌクレインというタンパク質の『しきい値threshold』の決定的なレベルが明らかになった
このタンパク質は正常な脳内で化学シグナルのスムースな流れに重要である
いったんしきい値を上回ると、α-シヌクレインが潜在的に有害な構造へと凝集する可能性chancesが劇的に増大する
このプロセスは『核化/nucleation』として知られ、パーキンソン病の発症につながると考えられる一連のイベントの中で最初の決定的に重要な段階である
この研究結果は、どのようにして、そしてなぜパーキンソン病を発症するのかについての理解に向けてさらに一歩前進したことを意味する
慈善団体charityのParkinson's UKによれば現在イギリスでは500人ごとに1人、推定12万7千人がパーキンソン病であり、そして治癒することはないままである
今回の研究の筆頭著者lead authorであるケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジの助教/Research Associate、Celine Galvagnion博士は次のように言う
「パーキンソン病の治療法の発見はその病態の理解にかかっている
我々は最終的に疾患の発症につながりうる最初の分子レベルでのイベントについて仕組みの説明mechanistic descriptionをすることが初めて可能になった」
今回の研究では個々人のパーキンソン病発症の可能性likelihoodはα-シヌクレインとシナプス小胞の数との間の繊細なバランスと関連することが示唆されている
シナプス小胞synaptic vesiclesとはとても小さいtiny泡のような構造を持ち、神経細胞間の化学的なシグナルを伝える神経伝達物質を運ぶ
神経細胞はシグナルを伝えるために絶えず小胞を再生産している
正常な状況下でのα-シヌクレインは神経細胞の一方からもう一方に向けた神経伝達物質の放出の際に重要な役割を演じている
α-シヌクレインは自身を『脂質二重層lipid bilayer』という小胞を包む薄い膜に結合させることによってそれを行う
α-シヌクレインが脂質小胞lipid vesiclesに結合する時、らせん状の形状helical shapeへと折りたたみ方foldingが変化して機能を実行する
しかしながら、特定の状況下で小胞の表面上にあるα-シヌクレインは折りたたみに失敗misfoldし、お互いにくっつき合うstick together
この『核化/nucleation』プロセスがいったん始まると、脳細胞内のフリーなタンパク質分子が脂質表面上の『できそこないの核/misshapen nucleus』と接触する危険がある
これらが結びつくcombineにつれて糸のようにつながった形状thread-like chainsの『アミロイド原繊維/amyloid fibril』が形成され、他の細胞にとって有害になり始める
これらの凝集したα-シヌクレインのアミロイド沈着amyloid depositは『レヴィ小体/Lewy-body』として知られ、パーキンソン病の特徴である
以前の研究で脳内でのα-シヌクレインの過剰発現はどういうわけかsomehowパーキンソン病の発症と関連付けられるassociableことが示唆されており、加えてα-シヌクレインと脂質二重層との相互作用が疾患の発症の加減modulateに関与することがわかっていた
しかし、なぜα-シヌクレインが真に発症につながるのかはこれまで不明だった
今回の研究でケンブリッジのチームは合成した小胞synthetic vesiclesを実験的に作り出すことにより、α-シヌクレインタンパク質が自らを脂質に結合させるプロセスのシミュレーションを実施した
合成された小胞は、様々な量のα-シヌクレインと共にインキュベートされた
実験の結果、小胞に対するタンパク質の比率がおおよそ100のレベルを越えると(これはヒトの脳内で典型的に見られるのよりも10倍高いレベルである)、小胞周囲の脂質二重層に自己を結合させたα-シヌクレインは集中し過ぎて、表面上でお互いにまとまってしまうbunch togetherことが示された
結果として、脂質表面上でのタンパク質の核化の可能性chancesは、溶液中で2つのタンパク質がランダムに結合する可能性と比較して、驚くべきことにremarkably少なくとも数千倍にまで高まることが判明した
Galvagnionが次のように付け加える
「凝集の発生が観察される特定の状況specific conditionsが存在し、他の状況では観察されないということが我々の実験で明らかになった」
「α-シヌクレインタンパク質が核となって凝集するnucleateする能力を左右するのは、比率ratioであることが判明した
これはパーキンソン病につながる始まりの段階がどのようにして起きるのかについてのもっともらしい説明likely explanationを我々にもたらす」
合わせて考えると、今回の結果は膜とタンパク質の相互作用がパーキンソン病を含めた神経変性疾患の開始に関与しうるという重要な役割についての仕組みの説明mechanistic descriptionを初めて提供する
この報告の全体はNature Chemical Biology誌で発表される
http://dx.doi.org/10.1038/nchembio.1750
Lipid vesicles trigger α-synuclein aggregation by stimulating primary nucleation.
Abstract
α-シヌクレインはアミノ酸140残基からなる天然変性タンパク質/intrinsically disordered protein(IDP)である
α-シヌクレインはニューロンやシナプス小胞の可塑性に関与するが、凝集してアミロイド原繊維を形成することがパーキンソン病の特徴である
※天然変性タンパク質: 形状が不安定で相互作用や自己凝集などを起こしやすいタンパク質
α-シヌクレインと脂質表面との間の相互作用は正常な機能を媒介するための重要な特徴であると考えられているが、別の状況下ではアミロイド原繊維の形成を調整modulateすることが可能である
我々は実験的・理論的アプローチを組み合わせ、脂質二重層と結合する状況下でα-シヌクレインが容易に凝集を誘発されるメカニズムを同定した
加えて我々はそのような状況下では最初の核化の速度rate of primary nucleationが3ケタ以上(数千倍)by three orders of magnitude or moreも促進されうることを示す
これらの結果は、α-シヌクレインの可溶性の状態から神経変性と関連する凝集の状態への変換、そして関連する疾患の状態への変換を引き起こす際に 膜とタンパク質の相互作用が持つ重要な役割を明らかにする
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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1eb8a3dd9d17a598ad52ad6fc3230e38
α-シヌクレインはシナプス小胞を整理整頓する
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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160829163300.htm
α-シヌクレインの変異は凝集の開始initiationと核形成nucleationだけに影響し、延長elongationには影響しない