Breast cancer cells found to switch molecular characteristics
Spontaneous interconversion between HER2-positive and HER2-negative states could contribute to progression, treatment resistance in breast cancer
August 24, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160824135041.htm
マサチューセッツ総合病院/Massachusetts General Hospital (MGH) の研究者は、腫瘍の分子的な特徴における自発的な変化spontaneous changesがどのようにして複数の細胞の集団が混合した腫瘍tumors with a mixed population of cellsへとつながりうるのかを明らかにした
その治療には複数のタイプの治療薬が必要になる
Nature誌9月1日号の報告によると、元々はエストロゲン受容体 (ER) が陽性でHER2が陰性と診断され、後に転移が生じた乳癌患者の血液中を循環する腫瘍細胞/circulating tumors cells (CTCs) の中には、HER2が陽性のCTCとHER2が陰性のCTCが混合して観察されたという
「我々はER陽性でHER2が陰性だった乳癌腫瘍患者においてHER2陽性の獲得を観察しただけでなく、
この腫瘍細胞の集団は自発的にHER2陽性とHER2陰性との間を揺れ動き、それが腫瘍の進行と抵抗性に寄与することを発見した」
MGH癌センターのShyamala Maheswaran, PhDは言う
「また、我々は対処が難しいこれらの腫瘍の治療に役立つ可能性がある治療法の組み合わせをマウスモデルで示した」
腫瘍内の分子的な不均一性molecular heterogeneityは近年の癌治療における交絡因子confounding factorになってきており、
腫瘍の成長を刺激する様々な細胞集団のそれぞれ全てを特異的に標的とする、複数の薬剤を必要とするようになっている
今回の研究は、患者個々人の腫瘍で生じるHER2の発現の違いと、その違いがどのようにして腫瘍の成長や治療に影響するのかをさらに調査するためにデザインされた
研究チームは、MGH医用工学センター/Center for Engineering in Medicineが開発したCTC-iChipというマイクロ流体デバイス/microfluidic deviceを使って血液サンプルからCTCを分離した
CTCを分析した結果、ER陽性/HER2陰性と診断されて治療を受けた後に転移が生じた18人の患者のうち16人のサンプルで、HER2陽性CTCとHER2陰性CTCの両方が見つかった
ER陽性/HER2陰性の乳癌患者から単離されて培養されたCTCもHER2発現に関して同様のパターンを示し、腫瘍細胞の中にはHER2を発現する細胞と、HER2を発現しない細胞の両方が存在した
このHER2陽性の腫瘍細胞を詳しく調べたところ、複数の成長シグナル伝達経路でタンパク質の発現が上昇を示した
しかしHER2の発現レベルは『HER2が増幅された原発腫瘍/HER2-amplified primary tumor』で観察されるほど高くはなかった
HER2陰性のCTCはHER2阻害剤に感受性がなかったが、それと同じく、HER2陽性のCTCもHER2阻害剤に反応しなかった
しかし、HER2阻害剤とIGFR1阻害剤(インスリン様成長因子受容体1)とを組み合わせると、HER2陽性CTCに対して毒性を発揮した
対照的に、HER2陰性のCTCでは、Notchという発達経路のタンパク質と、DNA損傷に応答する経路のタンパク質の発現が上昇していた
それらの違いを反映して、HER2陽性CTCはより急速に増殖し、標準的な化学療法薬の治療に応答したが、HER2陰性のCTCは化学療法薬に対して抵抗性だった
しかし、Notchシグナル伝達を抑制することが知られる『ガンマセクレターゼ阻害剤』は有効だった
HER2陽性またはHER2陰性の乳癌腫瘍細胞のどちらかをマウスの胸部に注入したところ、両方のタイプを持つ腫瘍が発達した
HER2陽性の細胞が優勢な腫瘍に対して化学療法薬のパクリタキセルを投与すると腫瘍は急速に縮小したが、その後に多数のHER2陰性の細胞によって再発が生じた
一方、HER2陰性の細胞の方が多い腫瘍にパクリタキセルを投与しても全く効果がなかった
※パクリタキセルpaclitaxel: 微小管重合を促進することで細胞分裂を抑制する
HER2陽性とHER2陰性の腫瘍細胞を混合mixtureさせたもので腫瘍を発生させたマウスに パクリタキセルとガンマセクレターゼ阻害剤を組み合わせて投与すると、腫瘍の再発は著しく遅くなった
このことは、組み合わせによる治療戦略が腫瘍細胞の混合した集団を排除するために潜在的に有用であることを示唆する
「この2つの腫瘍細胞の集団が相互に変換convert back and forthする能力は、両方の集団を同時に治療することの重要性を強調する」
ハーバード・メディカルスクールの外科部で準教授のMaheswaranは言う
「我々はこの相互変換interconversionのメカニズムをすぐに調査する必要がある」
http://dx.doi.org/10.1038/nature19328
HER2 expression identifies dynamic functional states within circulating breast cancer cells.
HER2発現は、乳癌の循環腫瘍細胞の内部に存在する動的な機能状態を明らかにする
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/606dc709be1c901d9b3a52674b3a422a
小細胞肺癌の循環腫瘍細胞は巨大な集合体を自発的に形成し、中心部の酸素が乏しく化学療法に抵抗する
関連サイト
http://dx.doi.org/10.1016/j.trecan.2015.07.006
En Route to Metastasis: Circulating Tumor Cell Clusters and Epithelial-to-Mesenchymal Transition
Tumor-Antigen-Independent Purification of CTCs
しかしながら、このCTC-iChipの限界はその流体動力学が個々の細胞または小さなCTCクラスター(2~4個)を単離することに最適化されていることにあり、さらに大きなCTCクラスターまたは腫瘍微小塞栓tumor microemboliは デバイスには入らない可能性がある
この難題challengeに対処すべく、CTCクラスターを捉えるために特にデザインされた別の微小流体デバイスmicrofluidic deviceが開発された[47]
このクラスターチップはCTCクラスター内の細胞間の結合の強さに依存し、特別にデザインされた微小流体孔に、グループ化された細胞をくさびのように締めつけて動けなくするwedge
EMT in Circulating Tumor Cells
CTCによる間葉系の転写の発現は、患者一個人の癌から得られた癌細胞でも一致しない
そうではなく、上皮対間葉系 の 構成の劇的な移行 は連続的な治療計画sequential treatment regimensに対する応答または進行の機能として明らかである
患者個人から分離されたCTCでは、癌が治療計画に抵抗性になるにしたがって 間葉系が優勢な細胞画分が生じ、出し抜けにprecipitously新しい効果的な治療が導入された時にのみ減少して腫瘍の縮小につながる [3]
これらの観察は、CTCにおけるEMT的な特徴は単にその内因的な浸潤性を反映したものではなく、治療介入によって開始される生存経路ならびに薬剤抵抗性経路によって修飾を受けるmodulatedという可能性を示す
Spontaneous interconversion between HER2-positive and HER2-negative states could contribute to progression, treatment resistance in breast cancer
August 24, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160824135041.htm
マサチューセッツ総合病院/Massachusetts General Hospital (MGH) の研究者は、腫瘍の分子的な特徴における自発的な変化spontaneous changesがどのようにして複数の細胞の集団が混合した腫瘍tumors with a mixed population of cellsへとつながりうるのかを明らかにした
その治療には複数のタイプの治療薬が必要になる
Nature誌9月1日号の報告によると、元々はエストロゲン受容体 (ER) が陽性でHER2が陰性と診断され、後に転移が生じた乳癌患者の血液中を循環する腫瘍細胞/circulating tumors cells (CTCs) の中には、HER2が陽性のCTCとHER2が陰性のCTCが混合して観察されたという
「我々はER陽性でHER2が陰性だった乳癌腫瘍患者においてHER2陽性の獲得を観察しただけでなく、
この腫瘍細胞の集団は自発的にHER2陽性とHER2陰性との間を揺れ動き、それが腫瘍の進行と抵抗性に寄与することを発見した」
MGH癌センターのShyamala Maheswaran, PhDは言う
「また、我々は対処が難しいこれらの腫瘍の治療に役立つ可能性がある治療法の組み合わせをマウスモデルで示した」
腫瘍内の分子的な不均一性molecular heterogeneityは近年の癌治療における交絡因子confounding factorになってきており、
腫瘍の成長を刺激する様々な細胞集団のそれぞれ全てを特異的に標的とする、複数の薬剤を必要とするようになっている
今回の研究は、患者個々人の腫瘍で生じるHER2の発現の違いと、その違いがどのようにして腫瘍の成長や治療に影響するのかをさらに調査するためにデザインされた
研究チームは、MGH医用工学センター/Center for Engineering in Medicineが開発したCTC-iChipというマイクロ流体デバイス/microfluidic deviceを使って血液サンプルからCTCを分離した
CTCを分析した結果、ER陽性/HER2陰性と診断されて治療を受けた後に転移が生じた18人の患者のうち16人のサンプルで、HER2陽性CTCとHER2陰性CTCの両方が見つかった
ER陽性/HER2陰性の乳癌患者から単離されて培養されたCTCもHER2発現に関して同様のパターンを示し、腫瘍細胞の中にはHER2を発現する細胞と、HER2を発現しない細胞の両方が存在した
このHER2陽性の腫瘍細胞を詳しく調べたところ、複数の成長シグナル伝達経路でタンパク質の発現が上昇を示した
しかしHER2の発現レベルは『HER2が増幅された原発腫瘍/HER2-amplified primary tumor』で観察されるほど高くはなかった
HER2陰性のCTCはHER2阻害剤に感受性がなかったが、それと同じく、HER2陽性のCTCもHER2阻害剤に反応しなかった
しかし、HER2阻害剤とIGFR1阻害剤(インスリン様成長因子受容体1)とを組み合わせると、HER2陽性CTCに対して毒性を発揮した
対照的に、HER2陰性のCTCでは、Notchという発達経路のタンパク質と、DNA損傷に応答する経路のタンパク質の発現が上昇していた
それらの違いを反映して、HER2陽性CTCはより急速に増殖し、標準的な化学療法薬の治療に応答したが、HER2陰性のCTCは化学療法薬に対して抵抗性だった
しかし、Notchシグナル伝達を抑制することが知られる『ガンマセクレターゼ阻害剤』は有効だった
HER2陽性またはHER2陰性の乳癌腫瘍細胞のどちらかをマウスの胸部に注入したところ、両方のタイプを持つ腫瘍が発達した
HER2陽性の細胞が優勢な腫瘍に対して化学療法薬のパクリタキセルを投与すると腫瘍は急速に縮小したが、その後に多数のHER2陰性の細胞によって再発が生じた
一方、HER2陰性の細胞の方が多い腫瘍にパクリタキセルを投与しても全く効果がなかった
※パクリタキセルpaclitaxel: 微小管重合を促進することで細胞分裂を抑制する
HER2陽性とHER2陰性の腫瘍細胞を混合mixtureさせたもので腫瘍を発生させたマウスに パクリタキセルとガンマセクレターゼ阻害剤を組み合わせて投与すると、腫瘍の再発は著しく遅くなった
このことは、組み合わせによる治療戦略が腫瘍細胞の混合した集団を排除するために潜在的に有用であることを示唆する
「この2つの腫瘍細胞の集団が相互に変換convert back and forthする能力は、両方の集団を同時に治療することの重要性を強調する」
ハーバード・メディカルスクールの外科部で準教授のMaheswaranは言う
「我々はこの相互変換interconversionのメカニズムをすぐに調査する必要がある」
http://dx.doi.org/10.1038/nature19328
HER2 expression identifies dynamic functional states within circulating breast cancer cells.
HER2発現は、乳癌の循環腫瘍細胞の内部に存在する動的な機能状態を明らかにする
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/606dc709be1c901d9b3a52674b3a422a
小細胞肺癌の循環腫瘍細胞は巨大な集合体を自発的に形成し、中心部の酸素が乏しく化学療法に抵抗する
関連サイト
http://dx.doi.org/10.1016/j.trecan.2015.07.006
En Route to Metastasis: Circulating Tumor Cell Clusters and Epithelial-to-Mesenchymal Transition
Tumor-Antigen-Independent Purification of CTCs
しかしながら、このCTC-iChipの限界はその流体動力学が個々の細胞または小さなCTCクラスター(2~4個)を単離することに最適化されていることにあり、さらに大きなCTCクラスターまたは腫瘍微小塞栓tumor microemboliは デバイスには入らない可能性がある
この難題challengeに対処すべく、CTCクラスターを捉えるために特にデザインされた別の微小流体デバイスmicrofluidic deviceが開発された[47]
このクラスターチップはCTCクラスター内の細胞間の結合の強さに依存し、特別にデザインされた微小流体孔に、グループ化された細胞をくさびのように締めつけて動けなくするwedge
EMT in Circulating Tumor Cells
CTCによる間葉系の転写の発現は、患者一個人の癌から得られた癌細胞でも一致しない
そうではなく、上皮対間葉系 の 構成の劇的な移行 は連続的な治療計画sequential treatment regimensに対する応答または進行の機能として明らかである
患者個人から分離されたCTCでは、癌が治療計画に抵抗性になるにしたがって 間葉系が優勢な細胞画分が生じ、出し抜けにprecipitously新しい効果的な治療が導入された時にのみ減少して腫瘍の縮小につながる [3]
これらの観察は、CTCにおけるEMT的な特徴は単にその内因的な浸潤性を反映したものではなく、治療介入によって開始される生存経路ならびに薬剤抵抗性経路によって修飾を受けるmodulatedという可能性を示す