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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

ミトコンドリアの電子伝達系の障害は発癌を促進する

2015-07-18 06:06:33 | 
Disrupting cells' 'powerhouses' can lead to tumor growth, study finds

July 8, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150708151227.htm



ミトコンドリアの複合体IV/シトクロムcオキシダーゼ/cytochrome c oxidase(CcO)のサブユニットのたった1つだけを阻害すると、ワールブルク効果が見られた
この細胞は「接触阻害contact inhibition」を喪失し、異なる組織へ浸潤する能力が増加した

研究者が既に造腫瘍能のある乳癌と食道癌の細胞系統でCcOサブユニットをサイレンシングすると、さらに浸潤invasiveするようになり、悪性度は高まった

ペンシルバニアのチームが実際のヒトの腫瘍で最も酸素が欠乏した領域を調べると、シトクロムcオキシダーゼの機能しないバージョン/defective versionsが含まれていた

シトクロムcオキシダーゼの妨害はミトコンドリアが細胞核へ「SOS」に似たストレスシグナルを出すように活性化させ、細胞を間違った方向へ変化させる
ミトコンドリアDNAが欠乏した細胞では癌と関連する似たような経路が活性化するのが以前観察されている
この「ミトコンドリアのストレスシグナル経路」は治療戦略となり得る

Avadhaniは言う
「今回の結果だけでは腫瘍の原因なのか結果なのかはわからないが、我々の細胞システムは明らかにこう言う。ミトコンドリアの機能不全が、発癌の駆動力driving forceであると」


http://dx.doi.org/10.1038/onc.2015.227
Disruption of cytochrome c oxidase function induces the Warburg effect and metabolic reprogramming.

CcO複合体の破綻は膜電位の喪失を引き起こし、Ca2+/カルシニューリンを介した逆行性シグナル伝達retrograde signalingを誘導した

このシグナル伝達の広がり/propagationは、「PI3K/IGF1R/Akt、Ca2+感受性の転写因子、TGFβ1、MMP16、ペリオスチン」の活性化を含む
これらは発癌の進行に関与する

ミトコンドリアの電子伝達系の障害は、逆行性シグナル伝達を開始する



関連サイト
http://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/rr-20130226-1.asp
>ミトコンドリアの機能障害は、ミトコンドリアから核への逆行性シグナル伝達を活性化する。
 

膠芽腫の癌幹細胞性はエピジェネティックに調節される

2015-07-16 20:39:29 | 
Epigenetic driver of glioblastoma provides new therapeutic target

Enzyme turns off genes required for maintaining cancer stem cell properties

July 6, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150706163741.htm


Lysine-Specific Demethylase 1 (LSD1) は、膠芽腫において「癌幹細胞の性質を維持するために必要な遺伝子」をオフにする

このエピジェネティック活性は、膠芽腫がどのようにして治療に抵抗するのかを説明するのを助ける
LSD1レベルを調整する薬は膠芽腫治療の新しいアプローチを提供する可能性がある


研究者は、マウスに移植した時の「腫瘍を形成する能力(腫瘍形成性/造腫瘍性tumorigenicity)」が異なる膠芽腫細胞に初めて注目した
今回の観察は、膠芽腫の癌幹細胞では遺伝子配列よりもむしろエピジェネティクスが「造腫瘍性」を決定することを示唆する

「膠芽腫では造腫瘍性な状態とそうでない状態との間に動的で可逆的な変化が存在し、
それはエピジェネティックな調節によって決定される」


LSD1はメチル基をDNAから除去し、癌幹細胞の性質を維持する遺伝子(MYC, SOX2, OLIG2, POU3F2)のスイッチを切る

「例えば、膠芽腫はMYCを標的にする薬の殺傷効果を単純にエピジェネティックにスイッチを切ることで逃れ、薬が存在しなくなるとスイッチを入れる」






関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/04/140410122112.htm
Transcription factors distinguishing glioblastoma stem cells identified
膠芽腫の幹細胞を識別する転写因子が特定される

http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2014.02.030
Reconstructing and Reprogramming the Tumor-Propagating Potential of Glioblastoma Stem-like Cells.

膠芽腫において、幹細胞様の腫瘍増殖細胞/tumor-propagating cells (TPCs) のサブセットは、腫瘍の進行を促進し、治療抵抗性の根本にあるように見えるが、これまであまり理解されていない

今回我々は、膠芽腫の増殖に必要な「神経を発達させる転写因子neurodevelopmental TFs」の中心的な一群core setを同定した (POU3F2, SOX2, SALL2, OLIG2)

これらの転写因子は協調してTPC特異的な調節配列regulatory elementに結合して活性化させる
そして分化した膠芽腫細胞を腫瘍増殖細胞へと完全に再プログラムするのに十分である

Hippo経路/ステロイドホルモンと癌

2015-07-14 08:11:48 | 
Hippo dances with hormones

Hints from fly research for study of cancer, stem cells

July 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150702132305.htm

ショウジョウバエは癌を発症しないが、癌と幹細胞の学者たちはこのハエをたくさん研究してきた
特に、カバ/hippopotamusに似たような臓器の過剰成長を示した変異ハエである

ショウジョウバエのHippo経路は、細胞の増殖を阻害し、臓器の大きさを制限する
ヒトのHippo経路は、胚性幹細胞の形成、癌の増殖の抑制、傷の治癒と再生に関与する


今回のハエでの研究では、Hippo経路の破綻による異常な成長は、ステロイドホルモンであるエクジソン/ecdysoneへの応答に関わる遺伝子に依存することが判明した

「エクジソンは、ある程度はエストロゲンのハエバージョンと言える」


ハエの幼虫larvaeでエクジソンは変態metamorphosisを引き起こし、
羽や眼のような成体の構造が成虫原基imaginal discと呼ばれる小さな部分から出現する

[ハエの幼虫]
 エクジソン→成虫原基→変態

エクジソンはエストロゲンやテストステロンなどステロイドホルモンと似た化学構造を持ち、性特異的ではないが、ステロイドホルモンと似たようなメカニズムで作用する(細胞内に受容体がある)



Hippo経路が壊れると、結果として過剰な成長が成虫原基に生じ、
それはエクジソン応答に関与するタンパク質のTaimanに依存する

この成虫原基の「腫瘍」において、Hippoとエクジソンシグナルの組み合わせによって活性化される遺伝子には、
通常なら生殖器reproductive organsの生殖細胞系幹細胞germline stem cellsでのみスイッチが入る遺伝子が含まれる

生殖細胞系の幹細胞の因子のHippo経路による活性化には、エクジソン応答遺伝子が必要である


Yorkieは通常はHippo経路の上流によって抑制restrainedされているが、解放unleashedされると、核内へ移動して、増殖と関連する遺伝子のスイッチを入れる

Yorkieはdisc tumorsにおいて発達増殖プログラムをengageするだけではなく、
生殖細胞系の幹細胞でのみ見られる異所性のectopicプログラムのスイッチを入れることができる

YorkieはTaimanは物理的に相互作用し、Taimanはエクジソン応答に重要である

[ハエの幼虫]
 Hippo─┤ Yorkie
 エクジソン→Taiman

  Yorkie+Taiman→(生殖細胞系幹細胞遺伝子)→成虫原基→変態


Taimanのヒトで最も近い親戚はAmplified in Breast Cancer-1/AIB1(あえて訳せば『乳癌において増幅される因子-1』)であり、
この発見は、ヒトにおいて、AIB1と、YorkieホモログのYap1とTazとのつながりの可能性を指摘する

[ヒト]
 Hippo─┤Yap1/Taz
 ステロイドホルモン?→AIB1

  Yap1/Taz+AIB1→癌幹細胞の増殖?


「ヒトの癌ではこれらのタンパク質の両方ともしばしば過剰発現しているので、我々はこの発見が癌の(特におそらくは癌幹細胞における)増殖メカニズムの研究と関連があるかもしれないと考えている」


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2015.05.010
The Ecdysone Receptor Coactivator Taiman Links Yorkie to Transcriptional Control of Germline Stem Cell Factors in Somatic Tissue.


Taimanはecdysone受容体コアクチベータ
YorkieはHippoの転写コアクチベータ






Braking mechanism identified for cell growth pathway linked to several cancers

June 26, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150626095513.htm

YAPとTAZという2つの転写共役因子/コアクチベーターはHippo経路ではたらき、遺伝子の発現を誘導することで細胞の増殖を促進する


今回の研究で、この2つには自己制御メカニズムが備わっているbuilt-in self-control mechanismことを発見した

さらに、YAPとTAZは増殖を促進することに加えて、抑制性の遺伝子、例えばNF2(マーリン)を誘導して細胞の成長シグナルを抑える


http://dx.doi.org/10.1101/gad.262816.115
A YAP/TAZ-induced feedback mechanism regulates Hippo pathway homeostasis.

癌細胞が活動停止を回避する方法

2015-07-13 05:22:13 | 
How cancer cells avoid shutdown

July 6, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150706090051.htm




転移を生じるプロセスは癌細胞にとってストレスが多い状態である
なぜなら、腫瘍が大きすぎて(血管が届かず)酸素と栄養が少ないからである

そのようなストレス下で多くの癌細胞はエネルギーを節約するためにmRNAからの翻訳を抑制してタンパク質の産生を停止させ、転移することができなくなるが、
中にはそれを乗り越えてタンパク質を合成するようになる癌もいる


転移性の乳癌はカテプシンLのレベルが高く、生存率の低下と関連することが知られている
研究者たちは、ヒトとマウスの乳癌細胞/組織はストレスにさらされた時でもカテプシンLのレベルが維持されることを発見した


mRNAとポリリボソームの複合体を調べると、
カテプシンLのmRNAは、ストレス状態下でも常にポリリボソームと結合していた

このカテプシンLの優位性advantageは細胞内での局在に依存しているようであり、それによりカテプシンLのmRNAはストレス顆粒stress granuleから逃れる


ストレス顆粒は転写が停止したタンパク質とmRNAが蓄積したものであり、ストレスを受けた細胞内で形成される

※カテプシン
細胞内外の蛋白質の分解だけでなく,外来性抗原のプロセシングにも関与する細胞内プロテアーゼの総称。主にリソソームに局在。エキソペプチダーゼとエンドペプチダーゼに分類され、Lはエンドペプチダーゼ。






Leukemia like Achilles, has its own weakness

March 25, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150325093407.htm

慢性骨髄性白血病Chronic Myeliod Leukemia (CML)

CMLでは、22番長腕から9番染色体に転座したフィラデルフィア染色体が見られ、BCR-ABL1キナーゼの融合により増殖スイッチが入る


CMLが進行するとBRCA1の産生が減少する
BRCA1遺伝子は変異していないが、BRCA1のmRNAはタンパク質複合体(ストレス顆粒)の中に集まって蓄積することで産生が低下する


http://dx.doi.org/10.4161/15384101.2014.965013
Downregulation of BRCA1 protein in BCR-ABL1 leukemia cells depends on stress-triggered TIAR-mediated suppression of translation.

mRNA結合タンパク質のHuRとTIARは、
AU-Rich Element (ARE) のmRNAの3’UTRに特異性specificityを示す

BCR-ABL1は、TIARとHuRの細胞質の局在、そのBRCA1 mRNAへの結合、TIARとHuR複合体の形成を促進する

HuRタンパク質はBRCA1 mRNAの安定性と翻訳をポジティブに調節し、逆にTIARはネガティブにBRCA1の翻訳を調節するが、
それらはCML細胞のストレス顆粒stress granulesに局在することが判明した

[CML]
 BCR-ABL1融合→[細胞質]TIARとHuRが複合体を形成してBRCA1のmRNAへ結合→BRCA1の翻訳↓






Stress granules ease the way for cancer metastasis

March 23, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150323105247.htm

ストレス顆粒stress granuleと、腫瘍の転移


YB-1は、G3BP1をコードするmRNAに結合してタンパク質産生を刺激する
YB-1がない腫瘍の細胞は、そうでない細胞よりもストレス顆粒が少なかった

 YB-1→G3BP1のmRNAに結合→ストレス顆粒

 YB-1×→G3BP1のmRNAに結合↓→ストレス顆粒↓


G3BP1を欠く腫瘍は、そうでない腫瘍よりも、ストレス顆粒が少なかった
そしてG3BP1を持つコントロール腫瘍だけが転移した

 G3BP1→ストレス顆粒→転移

 G3BP1×→ストレス顆粒↓→転移↓



http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201411047
YB-1 regulates stress granule formation and tumor progression by translationally activating G3BP1.
YB-1は、G3BP1を転写的に活性化することにより、ストレス顆粒形成と腫瘍の進行を調節する

ストレス顆粒には、転写を沈黙させられたmRNA、前開始因子preinitiation factors、RNA結合タンパク質が隔離される

 YB-1→G3BP1→ストレス顆粒形成


メラノーマの変異は代謝を配線し直す

2015-07-12 22:45:48 | 
Melanoma mutation rewires cell metabolism

B-raf V600E activates ketogenesis enzyme

July 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150702132307.htm

HMG-CoAリアーゼはケトン体を生成する経路の一部であり、それにより人体は血糖値が低い時のエネルギーとして脂肪を分解することができる

ケトン体生成は、低炭水化物食と高脂肪食により活性化し、それは通常は肝臓で起きる

しかし、メラノーマでよく見られるB-raf V600Eという変異は、どうやら癌細胞でケトン体生成のスイッチをオンにするようである


ケトン体の一つであるアセト酢酸は、HMG CoA リアーゼによって調節される
アセト酢酸はB-raf V600E変異と結合して、増殖を刺激する

V600E変異はB-rafの構造を変化させ、アセト酢酸がB-rafに結合してB-rafの発癌シグナルを促進させる
アセト酢酸の増加は増殖を加速するフィードバックメカニズムとして作用するようだ

「この組み合わせの影響は、なぜヒトの癌でV600EがB-rafの支配的な変異なのかについて説明する」


ヘアリー細胞白血病の患者から直接得られた細胞でも、HMG-CoAリアーゼとアセト酢酸のレベルは対照群よりも上昇していた


http://dx.doi.org/10.1016/j.molcel.2015.05.037
Metabolic Rewiring by Oncogenic BRAF V600E Links Ketogenesis Pathway to BRAF-MEK1 Signaling.


[メラノーマ]
 BRAF V600E→Oct-1→HMGCL→アセト酢酸→V600EとMEK1の結合を促進

HMGCLの発現は、BRAF V600Eメラノーマならびにヘアリー細胞白血病において上方調節される

※HMGCL
3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA lyase
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAリアーゼ

HMGCLを抑制すると、腫瘍の増殖と成長を特に弱める


※ヘアリー細胞白血病
末梢血中にヘアリー細胞と呼ばれる特徴的な白血病細胞の出現がみられる白血病。表面マーカーはB細胞抗原(CD19・20),CD11c,CD25,CD103など。


アセト酢酸
糖尿病患者でケトン体が上昇すると(ケトーシス),血液や尿中に現れるアセト酢酸は不安定で容易に脱炭酸してアセトンとなる。

アセトン
糖尿病患者などでケトーシスになるとアセト酢酸の脱炭酸により生成したアセトンが増量してアセトン臭(acetone odor)がするようになる。

癌細胞は前進するために一歩退く

2015-07-10 12:44:41 | 
Colon cancer: Taking a step back to move forward

June 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150630100504.htm


結腸直腸癌/CRCの転移

L1は、SMOC-2を活性化する

 L1→SMOC-2


SMOC-2は、通常は腸の陰窩の底で保護された幹細胞のニッチでのみ発現する
結腸直腸癌では、より悪性の領域で発現する

SMOC-2は分泌タンパク質をコードし、細胞膜の外側に道を作り、そこで動きを促進する
この分泌される分子は、分化していく幹細胞が隣の細胞から離れて、腸の陰窩の壁を登ることを助けると考えられている
同様に、転移するヒト結腸癌はこの遺伝子を活性化させて「家を離れ」、道を見つけることを可能にするようである

 L1→SMOC-2→陰窩での分化した幹細胞の移動、結腸癌の移動


研究チームのBen-Ze'evは言う
この研究は、癌が成長するにつれて逆戻りするas cancer develops it also revertsという考えを支持する
つまり、癌細胞の中には、より未成熟で、幹細胞のような状態になることを選ぶadoptものがあり、その状態は転移を促進する


http://dx.doi.org/10.1038/onc.2015.127
Induction of the intestinal stem cell signature gene SMOC-2 is required for L1-mediated colon cancer progression.

 β-catenin-TCF→L1─(ezrin→NF-κB標的遺伝子の活性化)→SMOC-2→細胞の移動,肝臓への転移

SMOC-2は、マウスの腸の陰窩の底でLgr5を発現する幹細胞のsignature geneとしても知られる

L1を発現する結腸直腸癌細胞でのSMOC-2発現の誘導は、ストレス下と肝臓への転移中での、L1によってもたらされる細胞の移動ならびに増殖の増大に必要


SMOC-2の発現は、integrin-linked kinase (ILK) を含むシグナルによって、より間葉様の細胞表現型をCRCに誘導し、E-カドヘリンを減少させ、Snailを増加させる


正常組織ではSMOC-2は陰窩の底に局在し、CRC組織では浸潤する領域で主に発現が増大する

L1、p65、またはSMOC-2を過剰発現するCRC細胞において、Lgr5レベルは増大する
このことは、
 L1によるCRCの進行が幹細胞様の表現型の獲得を伴い、
 SMOC-2の上昇がL1による悪性で浸潤性のCRCの性質の誘導に必要である
ことを示唆する


※L1
immunoglobulin family of cell-adhesion receptors member L1

※SMOC-2
secreted modular calcium-binding matricellular protein-2

Dapleの結腸直腸癌への影響はdappledである

2015-07-09 08:38:11 | 
Protein's impact on colorectal cancer is dappled

In early stages, it acts as tumor suppressor; later it can help spread disease

June 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150630155215.htm


結腸癌

WntシグナルのDishevelled-associating protein with a high frequency of leucine residues(略してDaple)は、
健康な状態では、様々な組織の細胞のプロセス(臓器の発達と維持)の調整を助けるために働く


Dapleは結腸癌の早いステージでは腫瘍抑制因子としても働くが、
後期のステージになり原発腫瘍から離れて転移するようになると、Dapleは癌細胞をより浸潤させて転移しやすくする

ステージ2では、Dapleの低さは2年間からそれ以降のover 2-year period予後の悪さと関連した

ステージ4では、血液中のDapleが高いと1000日を越えた生き残りsurvivorshipは20%だったが、Dapleが低いと100%が生存した
3年の到達点markでは、Dapleが高いグループは全員死亡し、発現が低いグループは75%がまだ生きていた


これは3D tumor cell culture testsの結果とも一致した


蛍光タンパク質での画像化によると、Dapleは主にGタンパク質ファミリーの活性を調節することにより機能することが示された
Gタンパク質は、細胞が周囲で起きていることを感知して反応することを可能にする
UC San Diego率いる研究チームは、望ましい腫瘍抑制効果とそれほど望ましくない腫瘍拡大効果、その両方を持つのはGタンパク質シグナルであると報告する
ゆえに、癌患者の予後に関するGシグナルの今回の結果は、どこで、そしていつGシグナルが起きるのかに依存する


http://dx.doi.org/10.7554/eLife.07091
Daple is a novel non-receptor GEF required for trimeric G protein activation in Wnt signaling.
Dapleは、Wntシグナルにおいて三量体Gタンパク質の活性化に必要とされる新たな非受容体GEFである

Dapleをコードするccdc88cはChr 14 (14q32.11) に存在し、この領域は50歳未満での早い結腸直腸腫瘍の発症でしばしば消去されている
事実、14q deletionsは、アデノーマからcarcinomaへのconversionの間のコピー数variationsともっとも高頻度に関連づけられる (Tsafrir et al., 2006).


http://elifesciences.org/lookup/doi/10.7554/eLife.07091.011
Figure 5
 Wnt5a→FZD7R→Daple(GEF)リクルート→Gαi↑→cAMP↓/ PI3K↑Akt↑/ Rac1GEFs↑Rac1↑/ 古典的Wnt↓

(M) Schematic of working model. (From left to right)
Wnt5aリガンドがないとき、
Dvlは細胞膜/PMで不活性のFZD7Rsと複合体を形成し、
Dapleは細胞質で細胞質Dvlと複合体のままで、
Gαi/βγ三量体は細胞膜PMで大部分はlargely不活性である

リガンド刺激により、
Dvl-Daple複合体は乖離してdissociate、Dapleは活性化したFZD7R受容体の細胞質尾部にリクルートされる
Dvlは、DapleによってFZD7R受容体の尾部から追い出されるdisplaced from the receptor tail by Daple
Dapleは、FZD7R受容体-Gαiと複合体を形成するのを好み、Gαiの活性化を引き起こす
活性化したGαiとGβγサブユニットは、それぞれの下流のintermediates (Rac1, PI3K, and cAMP) を介して反応を引き起こす
もう一つの主な結果として、古典的Wnt経路でありWnt標的遺伝子の転写を調節する「β-catenin/TCF/LEFシグナル経路」が抑制される


http://elifesciences.org/lookup/doi/10.7554/eLife.07091.016
Figure 7
(I) Schematic summary.
DapleのGBAモチーフによるGタンパク質の活性の調整が、Wnt5aによって引き起こされる細胞表現型の重要な決定要因である

Daple-WT(GBAモチーフ+)を発現する細胞では、Gαiが活性化し、PI3K-AktとRac1:GTP活性化により細胞膜ベースの移動生成motogeneicシグナルを促進し、EMT(上皮間葉転換)と浸潤が引き起こされる(が、β-カテニン-Wnt経路は抑制される)

Daple-FA(GEF-deficient)を発現する細胞では、機能するGBAモチーフが無く、Gタンパク質は不活性のままであり、非古典的Wntシグナルは抑制される
それによりβ-カテニンの安定性は増大し、古典的Wnt標的遺伝子は上方調節され、結果として形質転換transformationと増殖、そして腫瘍の成長は増大する

※Dapleにより、PI3K-AktとRac1による細胞移動と浸潤は促進されるが、β-カテニン-Wnt経路による形質転換と増殖は抑制される
初期ステージでDapleの発現が高ければ、形質転換と増殖が抑制されて予後が良くなり、
後期ステージでDapleの発現が高ければ、浸潤と転移が促進されて予後が悪くなる


<コメント>
Dapleとdappled(まだらの)をかけている


X線とCTスキャンは、本当に癌を引き起こすのか?

2015-07-06 16:49:43 | 
Does radiation from X-rays and CT scans really cause cancer?

Studies purporting to show cancer link are badly flawed, researchers find

June 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150630202040.htm


X線とCTスキャンは、本当に癌を引き起こすのか?
癌との関連を示すと主張する研究は、不完全で、欠陥がある


医用画像工学medical imagingと癌との関連を示す研究は、典型的にはlinear no-threshold (LNT) を用いている

LNTでは、癌を引き起こすことが十分に確認されている高線量の放射線high doses of radiationの影響を、単純にそのまま下へまっすぐの線を引いて、低線量でも同様であると推定している
LNTモデルの推定では、どんなに小さくても「安全な線量」は存在しない


しかし、バックグラウンド放射線/自然放射線background radiationで起きる変異は、(細胞分裂などで)自然に起きる変異の250万倍も確率が低い

なので、たとえLNTが正しかったとしても、画像化で使われる低線量による変異のわずかな増加は、人体の防御を圧倒する可能性は低いだろう

そのような疑わしいLNT以外にも、それらの研究には欠陥flawsがある



extrapolate [ikstrǽpəlèit]
推定する

purport [pərpɔːrt,pəːrpᴐːrt|pəpɔːt,pəːpət]
(しばしば偽って)〈…であると〉称する,主張する


http://www.gepr.org/ja/contents/20120101-03/
しきい値なし直線(Linear No-threshold)関係は放射線の生物的および実験データと矛盾する






Blood test for lung cancer a step closer

June 29, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150629162652.htm



'Highly effective' new biomarker for lung cancer discovered

June 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150603093722.htm

非小細胞肺癌/NSCLCのマーカー
AKAP4


より大規模な研究でAKAP4の正確さを確認することにより、より不正確で高価で放射線に曝露するCTスキャンではなく、毎年のスクリーニングのための単純な血液検査の開発につながる可能性がある


http://www.impactjournals.com/oncotarget/index.php?journal=oncotarget&page=article&op=view&path%5B%5D=3946
AKAP4 is a circulating biomarker for non-small cell lung cancer.

結腸癌と腸内微生物叢

2015-07-04 07:02:56 | 
New colon cancer culprit found in gut microbiome

June 24, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150624071026.htm

結腸癌と腸内細菌叢/微生物叢


 フソバクテリウム属/Fusobacterium
 プロビデンシア属/Providencia

フソバクテリウム属は以前も結腸癌を引き起こすグループとして関係付けられたが、
プロビデンシア属が結腸癌と関連付けられたのは初めてである


腸の微生物叢で起きる大きな変化の調査は、研究者が特定の細菌の役割を分類して同定することを助ける可能性がある

さらに、結腸癌の組織に存在すると予測される微生物遺伝子に「ビルレンス機能」が豊富であることを示すことにより、臨床家clinicianはこの徴候を、腸での細菌の変化が患者の健康にとってどんな意味があるのかを発見するために使うことができるだろう

しかし現段階では、確実な因果関係を決定することはできない


http://dx.doi.org/10.1186/s13073-015-0177-8
Virulence genes are a signature of the microbiome in the colorectal tumor microenvironment.
ビルレンス遺伝子は、結腸直腸腫瘍の微小環境における微生物叢の徴候である


ビルレンス
[英] virulence
[同義語] 【毒力,菌力】
微生物が宿主に感染し病気を起こす能力を総括的に表した言葉。






Discovery promises new treatments to thwart colon cancer

Giving patients 'good' gut bacteria could help prevent or slow progression of colorectal cancer

June 19, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150619141609.htm

結腸癌の悪性度にAIM2が関与する


AIM2は結腸癌でしばしば変異し、
小腸癌でも半分で変異することが以前わかっている


AIM2を欠損させると腸内細菌叢が悪化し、
幹細胞の増殖と腫瘍の発生が増加したが、
腸内細菌を移植することで回避された


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.06.001
Critical Role for the DNA Sensor AIM2 in Stem Cell Proliferation and Cancer.


AIM2は自然免疫センサー/innate immune sensor

欠損すると腸の幹細胞が制御不能の増殖が起きやすくなり、
異常なWntシグナルが癌幹細胞の集団を拡大した

p-Akt↑
c-Myc↑






Metabolic link between bacterial 'biofilms' and colon cancer found

May 7, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150507122655.htm


結腸癌細胞と腸内細菌バイオフィルムはお互いに促進し合う


上行結腸ascending colonの癌の周囲には、ほとんどの場合、バイオフィルムbiofilmという細菌複合体がある


N1, N12-ジアセチルスペルミン/N1, N12-diacetylspermineというポリアミンは、
腫瘍とバイオフィルム両方で高濃度だった

結腸癌も細菌も、
N1, N12-ジアセチルスペルミンで増殖が促進される

 細菌バイオフィルムが慢性炎症を誘導→結腸癌の増殖→ポリアミン産生↑→細菌増殖


サンプル切除24時間前の抗生物質で、バイオフィルムはなくなり、
N1, N12-ジアセチルスペルミンは著しく減少した


spermine (sper′mēn).
スペルミン; N, N′- bis(3-aminopropyl)-1,4-diaminobutane
(ある種の細菌に認められるポリアミン.ある種のウイルスでは核酸に関連している.ヒトの精子に存在.細胞や組織の増殖に重要).



膵臓癌のマーカー/膵臓癌から肝臓への転移

2015-07-03 23:39:52 | 
Tiny particles in blood useful for early diagnosis of pancreatic cancer

June 24, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150624132431.htm

膵臓癌のマーカー

GPC1/Glypican-1を多く含むエクソソームを検出して、膵臓癌を早期に診断する
乳癌でも検出できた


循環腫瘍細胞CTCと違い、
GPC1+のcrExosエクソソームは、30年前の冷凍した血液からでも調べることができる


http://dx.doi.org/10.1038/nature14581
Glypican-1 identifies cancer exosomes and detects early pancreatic cancer.






Study discovers how pancreatic cancer spreads to the liver

May 18, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150518135141.htm


膵臓癌から肝臓への転移

膵臓癌は、初期の段階からエクソソームexosomeを分泌する
それが肝臓のクッパー細胞/Kupffer cellに取り込まれ、遺伝子発現を変化させる


マウスでの膵臓癌モデルで、
クッパー細胞が作るタンパク質macrophage migration inhibitory factor (MIF) は、
エクソソームによって血流に乗り、
肝臓に線維形成fibrosisを誘導する

肝臓での線維形成は過剰な傷治癒プロセスであり、
正常な肝機能に干渉して、
腫瘍が転移して増殖するのに都合の良いauspicious微小環境を作る


進行した膵臓癌の患者の血流でもMIFはエクソソームで発現していた
エクソソームのMIFは、肝臓への転移が生じた患者の方が多かった

2015年5月7日

2015-05-10 16:45:40 | 

研究者はタンパク質の故障を乳癌と白血病につなげる
Researchers connect haywire protein to breast cancer, leukemia



スクリップス研究所(TSRI)の科学者たちによる新しい研究は、乳癌や白血病などのいくつかの癌の原因を解明する。Current Biology誌の2015年5月7日号で発表された彼らの研究によれば、必要以上に多いサイクリンEというタンパク質はDNAの複製を遅らせ、細胞が分裂するときに癌と関連する有害な突然変異を導入する可能性がある。

「サイクリンEの過剰発現は、癌へとつながる道の一つである」、研究の首席著者でTSRI教授のSteven Reedは言う。



細胞が2つの娘細胞に分裂する時には、まずDNAを複製しなければならない。そして細胞が分裂するごとに、DNAの複製はエラーを起こすリスクを伴う。例えば、余分な複製が生じたり、削除されたり、乱れたりする可能性である。

正常な細胞では、サイクリンEはDNA複製プロセスを開始する酵素のCdk2に結合して活性化させる。細胞が適切に分裂するためには、サイクリンEがちょうど正しい量であることが必要である。不幸なことに、遺伝子の突然変異の中には細胞のサイクリンEの産生を過剰にするものがある。

ReedたちはサイクリンEを最初に発見した研究室である。彼らの先行研究は、異常な高レベルのサイクリンEが染色体不安定性と関係し、細胞が分裂するにつれて染色体の突然変異が増加する可能性が上がることを示した。サイクリンEは癌細胞でしばしば過剰発現し、その過剰発現は乳癌患者の生存率の低下と関連する。今回の新しい研究は、サイクリンEがどのようにして染色体の不安定性とDNAのエラーをもたらすのかについて明らかにする。



 DNAの『綱引き』

研究者は、乳癌の癌細胞で観察されるのと同レベルのサイクリンEを乳腺の上皮細胞で強制的に過剰発現させ、通常のヒト乳腺の上皮細胞と比較することでサイクリンEの役割を調査した。TSRIの助教Leonardo Teixeiraを中心とした実験では、サイクリンEの調節を失った細胞ではDNAの複製に非常に長い時間かかることが判明した。実際、DNAが複製し終わる前でさえ、細胞分裂は次の段階に進むように思われた。興味深いことに、染色体の中で16箇所の極めて特異的な領域は頻繁に複製を失敗した。

研究者は続いて、サイクリンEの調節を失った細胞の中で、細胞分裂プロセス後期の、別々の娘細胞に引き離され始めるときのエラーに関してふるいにかけた。染色体を蛍光性タンパク質で視覚化すると、サイクリンE調節を失った娘細胞の染色体は、複製が終わらなかった箇所で一緒にくっつき合っていた。

「綱引きが続き、片方の染色体がひきちぎられるか、両方の染色体が1つの側へ行くのを観察できる」、Reedは言う。

DNAの異常な「橋」が娘細胞を結びつけ、染色体のかなりの量が引き裂かれて近くで浮いている様子が実験で観察された。これらの異常分裂が生じたあと、サイクリンEの調節を失った細胞の3分の1はDNAの欠失を示した。欠失が起きた領域は、細胞が分裂する前に複製が終わらない傾向があると特定されていた箇所だった。



 癌とのつながり

研究者は次に、サイクリンEの調節を失った細胞のDNA欠失による遺伝子の不安定性がどのようにして癌の原因となりうるのかについて調査した。興味深いことに、DNA欠失箇所の多くは、DNAが脆弱であるか複製が困難であることがすでに知られていた領域だった。

腫瘍DNA配列のデータベースを使った分析では、サイクリンEの過剰発現と直接関連づけることができる乳癌腫瘍において、彼らが研究で特定した16のDNA領域のうちの6つが損傷を示した。

サイクリンE調節を失った細胞で一般的に損傷を受ける領域の1つは、骨髄リンパ混合系統白血病(MLL)と呼ばれる白血病の一種で広く再編成される領域とも一致した。MLLもサイクリンEが一因であることがすでに示されている。



本研究によってもたらされた未解決の問題の1つは、すべての染色体が完全に複製される前にどうやって細胞分裂ができるようになるのかについてである。そのような事故が起きないように「チェックポイント」が存在するとこれまで考えられていた。

Reedは、これらの複製に失敗する領域が十分に小さいために、細胞の「チェックポイント」を迂回して分裂し続け、有害になりうる突然変異を蓄積すると考えている。

学術誌参照:
1.サイクリンEの調節不全は、特異的なゲノム領域の喪失を促進する。

Current Biology、2015年5月

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150507122701.htm

<コメント>
細胞分裂の周期を調節するサイクリンEが過剰になるとDNAの複製を遅らせ、複製が終わらないまま細胞分裂が進んで染色体が引きちぎられてしまうという記事です。

Abstractを見ると、複製が終わらない領域は、いわゆる脆弱部(fragile site)や、骨髄リンパ混合系統白血病の切断点クラスター領域(mixed-lineage leukemia breakpoint cluster region; MLL BCR)のような領域に位置していたとあります。

サイクリンEと乳癌の生存率は以前から報告されているようです。

http://www.nejm.jp/abstract/vol347.p1566
病期 I 期の乳癌患者 114 例のうち,腫瘍中のサイクリン E が低濃度の患者 102 例では,診断 5 年後までに乳癌で死亡した例はなかったが,低分子サイクリン E が高濃度の患者 12 例は全例が同期間内に乳癌で死亡していた.

2015年4月29日

2015-05-06 00:38:22 | 

癌の増殖に関係する遺伝子の新たな機能の発見は、新しい治療の可能性を開く
Uncovering new functions of a gene implicated in cancer growth opens new therapeutic possibilities



胚の発生と腫瘍が増殖する間の血管形成(blood vessel formation)と関連付けられていた遺伝子は、腫瘍が進行する間の免疫も抑制することが明らかにされた。4月29日にNature Communicationsで発表されたワイルコーネル医科大学の研究者らによる今回の発見は、メラノーマや他の後期ステージ癌の新しい治療へのアプローチとワクチン開発への道を開く。

研究者たちは20年前、通常は胚でのみ発現するInhibitor of Differentiation 1(Id1)という遺伝子は癌患者にも存在し、腫瘍の進行に寄与することを発見した。今回の研究はId1の別の作用を明らかにする。Id1は免疫細胞の発生中の通常の経路を乗っ取り、骨髄から始まる免疫システム全体に干渉する。免疫細胞による免疫応答がなければ人体は腫瘍を撃退することができず、代わりに癌は増殖して転移することができるようになる。

「Id1を標的にすることで全体的な免疫機能を回復できる可能性がある」、首席著者のDavid Lyden博士は言う。彼はワイルコーネル医科大学の小児心臓病学のStavros S. Niarchos教授であり、小児学部の教授である。

「免疫システムが作用していれば、治療の選択肢は広がる。進行転移癌の罹患率とそれによる死亡率の増加を考慮すると、免疫を抑制して転移を促進するメカニズムがどのように働くのかについての理解は急務である。」



今回、研究者たちは腫瘍が分泌するトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)がId1の活性化を促進することを発見した。活性化したId1は連鎖反応を開始し、免疫細胞を新しい経路へと方向転換させて、成熟した抗原提示細胞ではなく未成熟な免疫抑制細胞を大量生産する。免疫システムが効果的な防御を開始するための能力は無効化され、癌細胞は免疫に邪魔されることなく増殖して転移できるようになる。

「骨髄は通常、腫瘍の浸潤と増殖を止めることができる樹状細胞という免疫細胞を生じる」、筆頭著者のMarianna Papaspyridonos博士は言う。

「しかし、腫瘍によってTGF-βが分泌されてId1が上方調節されると樹状細胞の正常な発生は妨げられ、代わりに免疫システムを抑制する免疫細胞が生まれる。」

その免疫細胞は骨髄由来免疫抑制細胞(myeloid-derived suppressor cell)と呼ばれ、癌をたやすく増殖して転移できるようにする。研究者は進行メラノーマ患者でこの発見を実証した。患者の血漿ではTGF-βレベルが増加し、骨髄由来の末梢血球ではId1のレベルが高かった。



Id1を標的にすることで、3方向からの(three-pronged)治療アプローチが提供される。
まず最初に、腫瘍それ自体の転移する可能性を低下させる。次に、腫瘍が新しい血管を形成する能力(血管形成)を低下させる。最後に、患者の全身の免疫機能を回復する。

「このアプローチにより、免疫細胞は腫瘍を異物であると認識して攻撃する」、Lyden博士は言う。彼はワイルコーネル医科大学でSandra and Edward MeyerがんセンターとGale and Ira Drukier児童健康研究所にも任命されている。

「ワクチン開発は改善され、より良い治療の転帰と、そして最終的には癌患者への利益につながるだろう。」

学術誌参照:
1.Id1は、骨髄性細胞成熟を損なうことにより、抗腫瘍免疫応答を抑制し、腫瘍進行を促進する。

Nature Communications、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150429145458.htm

<コメント>
腫瘍はTGF-βを分泌して免疫を抑制し、増殖と転移を促進するという記事です。

Abstractを見ると、TGF-β/Id1の過剰発現により生じる骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)により、脾臓での制御性T細胞(Treg)は増加していました。Id1を誘導するのはTGF-βだけでなく、IL-6とBMP-7もでした。


2015年4月20日

2015-04-27 18:19:18 | 

癌遺伝子は生命維持遺伝子のスイッチを切って、意図せず癌細胞の生命を終わらせる
Cancer gene unintentionally ends the life of cancer cells, turns off life supporting genes



新しい研究によると、Mycという癌遺伝子は生命を支えるための健康遺伝子(well-being genes)を抑制することによって細胞を自殺させる。今回の発見は、Mycという癌のドライバ遺伝子を癌の暗殺者へと切り替える新薬の開発につながる可能性がある。そして同時に、どのようにして癌の脆弱性の正体を暴くのかについて再考を促すものだと科学者は言う。

Myc癌遺伝子は容赦なく分裂する能力を腫瘍細胞に与えるが、同時にアポトーシスという細胞自殺プロセスを誘発する。Mycは、細胞の核にある1割もの遺伝子に発現を命令することによって細胞を制御する。しかしながら、20年以上の熱心な研究にもかかわらず、Mycによって発現を刺激される自殺遺伝子は発見されなかった。

ドイツのヴュルツブルク大学とフィンランドのヘルシンキ大学の研究者チームは、そのような自殺遺伝子を探すことは見当違いであることを発見した。新しい発見によれば、Mycは細胞の生命維持に必要な健康遺伝子を抑制することによって、癌細胞を脆弱にして死にやすくするのだという。



Mycは転写を指揮する地位の高い司令官であり、ゲノムで数千箇所の遺伝子制御部位を占有する。Mycは最も親しいパートナーであるMaxとMiz-1と協力し、遺伝子のスイッチを入れたり切ったりする。スイッチが入ることにより生じたmRNAと新しいタンパク質は細胞のエネルギー代謝と細胞分裂プログラムを管理し、必要ならば細胞に死ぬよう命令することさえある。癌の場合、Mycの量とその力は圧倒的になり、細胞は激しく分裂し始めて死ぬことを拒否し、腫瘍の塊は急成長する。

ヴュルツブルク大学の教授Martin Eilersと彼のPh.D学生Katrin Wieseは、Maxとは協力するがMiz-1は拒否するという突然変異を起こしたMycを研究していた。Katrin Wieseは次のように説明する。

「この突然変異Mycは遺伝子のスイッチを入れることに支障はなかったが、遺伝子をオフにすることは難しかった。このような障害があっても、変異Mycは細胞に分裂するよう命令することはできたが、細胞に死ぬように命じることはできなかった。」

この実験のすぐ後、研究者は長い間培われてきた考え、つまりMycがいくつかの自殺遺伝子のスイッチを入れることによって細胞が死ぬという考えは正しくないことに気付いた。代わりに、Mycは生命を維持するために必要な遺伝子をオフにすることによって細胞を殺す可能性がある。

それを確かめるため、WieseとEilersはフィンランドのヘルシンキ大学のJuha Klefstrom博士とPh.D学生Heidi Haikalaと協力を求めた。フィンランドの研究者たちはレンチのような形をしたRNAi分子を使って遺伝子をオフにする実験で、SRF(serum‐response factor)という核内の遺伝子を制御するタンパク質へとつながる道筋を特定した。

「癌細胞のMycとそのパートナーのMiz-1は、本来なら行ってはいけない遺伝子制御装置の領域に侵入する。そこでMycとMiz-1は、生命を健康に維持するために必要な遺伝子を妨害する」、Heidi Haikalaは語る。

「この健康遺伝子は、妨害されなければ細胞に生物エネルギーを供給し、他の細胞との関係を安定化する。MycとMiz-1タンパク質はSRFという遺伝子発現制御タンパク質と特に衝突し、この核での衝突は健康遺伝子を打ち倒して癌細胞を自殺させると我々は考えている。」

これらの細胞死の経路と反応は癌の治療法に利用することができるのだろうか?

首席研究者のMartin EilersとJuha Klefstromは、遺伝子のスイッチを切るMycの能力が細胞死の鍵であるというコンセプトに興奮している。

「細胞の活性を下げることは、上げるよりも既存の薬で簡単にできる。これらの新しい発見は、健康遺伝子の活性を低下させる薬が腫瘍細胞のMycの自殺活性を促進しうることを示唆する。」

この研究は4月20日にEMBO学術誌で発表される予定である。

学術誌参照:
1.SRF標的遺伝子の抑制は、Mycに依存的な上皮細胞アポトーシスにとって重要である。

EMBO、2015年4月

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150420084739.htm

<コメント>
癌遺伝子のMycが、どのように細胞の成長と細胞死を促進するのかについての記事です。

MycはMax(Myc associated factor X)がパートナーの時は遺伝子をオンにして細胞分裂を促進し、Miz1(Myc interacting zinc finger protein 1)がパートナーの時はSRF(serum‐response factor; 血清応答因子)を妨害して細胞を自殺しやすくするとのことです。

Abstractを見ると、MycとMiz1が抑制するのは細胞の接着と移動に関与する遺伝子で、インテグリンも含まれています。本来なら細胞同士の接着がAktのリン酸化による活性化を促進するところを、その接着分子が抑制されるので死にやすくなります。




2015年4月8日

2015-04-10 09:45:46 | 

脳腫瘍の弱点が特定される
Biologists identify brain tumor weakness



MITとホワイトヘッド生物医学研究所の生物学者は、脳腫瘍細胞の脆弱性を発見した。この発見は脳腫瘍に対して今よりも有効な薬を開発するために利用できる可能性がある。

ホワイトヘッド研究所とMITコッホ統合がん研究所の研究者を中心とする研究チームは、膠芽腫という腫瘍の一部がアミノ酸のグリシンを分解する酵素に依存することを発見した。この酵素がないと、代謝による有毒な副産物が腫瘍細胞に蓄積して細胞死に至る。この膠芽腫の酵素を阻害することは腫瘍と戦う新しい方法を提供できるとDohoon Kimは言う。彼はホワイトヘッド研究所の博士課程終了者(postdoc)で、Natureの4月8日オンライン版に発表される今回の研究の筆頭著者である。MITの生物学教授でありホワイトヘッド研究所の一員でもあるDavid Sabatiniは論文の首席著者である。

GLDC(glycine decarboxylase; グリシンデカルボキシラーゼ)という酵素が研究者の注目を引いたのは「先天性代謝異常」という疾患を調査している時である。それらの疾患は細胞が特定の代謝酵素を失っているときに生じる。この障害の多くは、特に脳の発達に影響を及ぼす; 先天的な代謝異常の中で最も一般的なものは、アミノ酸のフェニルアラニンを分解することができないことが特徴のフェニルケトン尿症である。この患者は知的障害と癲癇発作のような問題を防ぐためにフェニルアラニンを避けなければならない。

グリシンを分解するGLDCが欠損すると「非ケトン性高グリシン血症」という障害が生じる。この障害はグリシンが脳で蓄積するために重症の精神遅滞の原因となりうる。そしてGLDCは、膠芽腫の一部でもしばしば過剰に活性化している。膠芽腫は脳腫瘍の中でも最も一般的で最も攻撃的なタイプである。

研究者は、GLDCが過剰発現するのはSHMT2遺伝子の発現も高い膠芽腫細胞だけであることを発見した。SHMT2はセリンをグリシンに変換する酵素である。それらの細胞は非常に強くGLDCに依存しているため、GLDCを失うと細胞は死ぬ。

更なる研究により、SHMT2はいわゆる虚血領域(酸素と栄養が非常に少ない領域)に住む癌細胞で最も高く発現することが明らかになった。虚血領域(ischemic regions)は腫瘍の中心にしばしば見られ、血管が到達することができない場所である。この低酸素環境ではSHMT2が細胞に生存上の優位を与えることが判明した。その理由は、SHMT2はブドウ糖を分解する細胞の仕組み(解糖系)の一部であるPKM2という酵素の活性に間接的に影響することができるためである。

PKM2の調節は新しい癌細胞を作るための素材を生み出すことができるかどうかに影響を与え、さらに、虚血領域では乏しい資源である酸素の消費にも影響を及ぼす。

「SHMT2の活性が高い細胞はPKM2の活性が低く、それゆえに酸素消費率も低い。それは虚血性の腫瘍微小環境において生き残るために好都合である」、Kimは言う。
しかしながら、この過剰に活性化したSHMT2は、グリシンも過剰に供給する。そのグリシンを細胞はGLDCを使って分解しなければならない。
GLDCが存在しないとグリシンは異なる代謝経路に入って有毒な産物を生じ、蓄積して細胞を殺す。
研究者によると、このようなGLDCに依存的な細胞はGLDC活性を阻害する薬で殺すことができるかもしれないという。

彼らは現在、まさにそのような化合物を探しているところである。

学術誌参照:
1.SHMT2は虚血において神経膠腫の生存を促進するが、グリシン除去への依存を強要する。

Nature、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150408141643.htm

<コメント>
脳腫瘍で血液による酸素が届かない領域では、酸素を使わないように代謝が組み替えられているという記事です。

Abstractによると、脳腫瘍の一部ではセリンからグリシンに変換するSHMT2(mitochondrial serine hydroxymethyltransferase 2)の発現が上昇し、SHMT2はPKM2(pyruvate kinase 2)を抑制することで、TCA回路に入るピルビン酸を減少させて酸素の消費を抑えています。

代わりに生じるグリシンをグリシン開裂系のGLDC(glycine decarboxylase)により代謝できないと、アミノアセトン(aminoaceton)やメチルグリオキサル(methylglyoxal)という有害な代謝物が生じるとのことです。



2015年3月4日

2015-03-12 23:05:38 | 

癌治療での画期的な発見
Breakthrough discovery made in cancer treatment



ノースイースタン大学で免疫生理学の専門家であるMichail Sitkovskyたちは、癌の治療における画期的な発見をした。約30年の研究による新しいアプローチは、年間約800万人が死亡する癌の生存率を劇的に増加させる可能性がある。この発見はScience Translational Medicineで発表された。



低酸素は腫瘍微小環境におけるアデノシンの蓄積を促進するが、高濃度の酸素の吸入(supplemental oxygenation; 酸素補充)はその蓄積を阻害して免疫抑制を弱めることをSitkovskyらは発見した。これにより癌の免疫療法は改善し、腫瘍を攻撃するTリンパ球とナチュラルキラー細胞を解き放つことによって腫瘍を縮小できる可能性がある。

「この発見は、数十年続いた成功率の低い薬剤開発のパラダイムを変える」、ノースイースタン大学でEleanor W. Black教授職であり、大学のNew England Inflammation and Tissue Protection Institute(NEITPI)創立ディレクターのSitkovskyは言う。

「実際のところ、我々の酸素補充法は、既存の異なるタイプの免疫療法と組み合わせた臨床試験により比較的早く実行に移されるだろう。」

今回の論文 「酸素補充による抗腫瘍作用の免疫機構」は、国の名門大学、病院、メディカル・スクールの医師と研究者との間の活発な学際的な共同の結果だった。共著者にはNEITPIから参加した12人の研究者が含まれる。NEITPIはノースイースタン大学に拠点を置くコンソーシアムであり、炎症の根底にある原因と分子のメカニズムを理解することを目指している。

今回の発見はSitkovskyの以前の研究を基にしたもので、ノースイースタン大学と米国国立衛生研究所によって支援されている。2000年代の初めにSitkovskyは免疫学で重要な発見をして、それにより彼の研究は癌生物学において知られるようになった。その研究では、免疫細胞の表面にあるA2Aアデノシン受容体(adenosine receptor)はT細胞が腫瘍に侵入することを阻害し、腫瘍の中に侵攻するそれらのキラー細胞に「麻酔をかける」原因となることが示された。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15210754
Cutting edge: Physiologic attenuation of proinflammatory transcription by the Gs protein-coupled A2A adenosine receptor in vivo.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16110315
Regulation of immune cells by local-tissue oxygen tension: HIF1 alpha and adenosine receptors.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16916931
A2A adenosine receptor protects tumors from antitumor T cells.

彼の最新の研究によれば、通常は21パーセントの酸素を40~60パーセントに高めて吸入するとA2Aアデノシン受容体を通して腫瘍を保護するシグナルを弱める。さらに、酸素吸入はT細胞を覚醒させて肺腫瘍に侵入する能力を獲得させた。

「濃度の高い酸素を呼吸することは腫瘍という要塞のゲートを開けて、『眠っている』抗腫瘍細胞を目覚めさせる。兵士は要塞に入って破壊することが可能になる」、Sitkovsyは説明する。

「しかしながら」、彼は付け加えた。「抗腫瘍免疫細胞が存在しない場合、酸素は影響しないだろう。」

加えて、彼が「スーパー・カフェイン」と呼ぶ合成物質と組み合わせると酸素補充の効果はさらに強力になるかもしれないとSitkovskyは言う。スーパー・カフェインは、アデノシン受容体の腫瘍保護効果を阻害することが知られている。彼らは現在、次世代のスーパー・カフェインを設計するために共同研究している。それは本来パーキンソン病患者のために開発されたものである。

「高濃度酸素の抗腫瘍効果は、A2Aアデノシン受容体の天然アンタゴニストによってよりさらに改善することができる。そして、それは偶然にもあなたが飲むコーヒーのカフェインである」、Sitkovskyは言う。

「人々がコーヒーを飲む理由は、カフェインが脳のA2Aアデノシン受容体を阻害して我々を眠りから覚ますからである。」

記事出典:
上記の記事は、ノースイースタン大学によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.酸素補充による抗腫瘍作用の免疫機構。

Science Translational Medicine、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150304190238.htm

<コメント>
高濃度の酸素とスーパー・カフェインは、アデノシンA2A受容体を阻害することにより腫瘍を攻撃するT細胞を活性化するという記事です。

http://stm.sciencemag.org/content/7/277/277ra30
>Antitumor T cells either avoid or are inhibited in hypoxic and extracellular adenosine-rich tumor microenvironments (TMEs) by A2A adenosine receptors.
(低酸素ならびに細胞外アデノシンが豊富な腫瘍微小環境では、抗腫瘍T細胞はA2Aアデノシン受容体により回避するか阻害される)

アデノシン受容体にはA1、A2A、A2B、A3の4種類があり、ストレス反応などで細胞から放出されたアデノシンが結合します。逆にカフェインはどれにも結合するアンタゴニストです。運動やコーヒーに抗腫瘍効果が見られることがあるのは、今回の記事のような作用によるのかもしれません。