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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

乳癌の治療標的となる可能性がある新たな癌マーカー

2015-08-08 06:18:45 | 
New cancer marker identified; possible therapeutic target for breast cancer

July 31, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150731105250.htm

基底細胞様乳癌basal-like breast cancer/BLBC(トリプルネガティブ乳癌とも呼ばれる)は、治療に応答しにくく、早くから転移しやすく、予後が悪い

この致死的なタイプの乳癌を発見するための(そしておそらくは治療するための)方法が発見された


後期ステージの転移する乳癌では、IL13RA2 (IL13R alpha2) の発現が高かった
患者の公開データを分析した結果、癌のIL13RA2レベルが高いかどうかで無増悪生存期間progression-free survivalを予測することができた

また、肺に転移しやすいBLBCサブタイプは早くからIL13RA2レベルが高いこともわかった


研究者がIL13RA2の発現量を減少させると、癌モデルでの腫瘍の増殖は遅くなった
この癌細胞を動物モデルに移植すると、肺への転移は非常に少ないか、まったく起きなかった
これはIL13RA2の増殖と転移における関与を示唆する


研究者によれば、乳癌だけでなく脳腫瘍や膵臓癌、卵巣癌、結腸癌でもIL13RA2レベルが高いことがあり、その重要性が示唆されるという


http://dx.doi.org/10.1186/s13058-015-0607-y
Targeting IL13Ralpha2 activates STAT6-TP63 pathway to suppress breast cancer lung metastasis.

IL-13はTh2系サイトカインであり、炎症と免疫システム調節で重要な役割を演じる [9]

IL-13は構造的および生物学的にIL-4と類似性があり、IL13Rα1と初めにinitially結合することにより機能することが知られている
その後IL4Rαをリクルートしてヘテロ二量体化し、主にJAK2-STAT経路を経由してシグナル伝達を変換するtransduce signaling [10]–[12]

※STAT: Signal Transducers and Activator of Transcription


IL13Rα2はIL-13に高親和性だが、シグナルを伝達しないデコイ受容体であり、IL-13のシグナルを阻害する [14]–[17]

興味深いことに、IL13Rα2の発現の高さは、神経膠腫gliomasと頭頸部癌の発症と関連し、 [18], [19]
膵臓癌、卵巣癌、結腸直腸癌の浸潤と転移を促進することが示されている [20]–[22]


 IL13→IL13Rα1→STAT6→TP63─┤転移


Discussion
しかし、我々の発現プロファイリングにより同定された他の遺伝子(CXCL17など)の関与を排除はできない
 

細胞の増殖にはアスパラギン酸の合成とミトコンドリアの呼吸が必要

2015-08-06 06:17:01 | 
Identifying a key growth factor in cell proliferation

July 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150730131127.htm

MITのコッホ統合がん研究所の研究者は、増殖する細胞が ― 腫瘍も含めて ― なぜミトコンドリアの呼吸を必要とするかについて明らかにする
ATPを作る他の方法があっても、ミトコンドリアの呼吸によって提供される電子受容体へのアクセスが存在しないと、細胞は増殖することができない


増殖する細胞は、DNAとRNA(ともちろんタンパク質)を合成するために大量のアスパラギン酸を必要とする

アスパラギン酸は他のアミノ酸とは異なり、血液から容易に利用することはできない
人体は積極的にactively血液中のアスパラギン酸の量を制限しているようであり、そのため哺乳類の細胞はそれぞれ自分でアスパラギン酸を作らなければならない

さらに、アスパラギン酸と核酸を作るため、細胞は余分な電子extra electronsの置き場所が必要だ
なぜなら、最終産物には細胞が取り入れた分よりも電子が少ないからであるthe end product has fewer electrons than the food cells ingest



余分な電子
Surplus of electrons

MITのMITコッホ統合がん研究所のVander Heidenたちは、哺乳類の細胞がそれら過剰な電子を処分してget those excess electrons out of the way、問題を解決する方法を研究してきた

研究者はミトコンドリアを遺伝子的に修飾して呼吸できないようにした細胞を使った
そのような細胞は増殖するのに失敗し、細胞が死に絶えるにつれてだんだん減少していった
しかし、アスパラギン酸を加えると、細胞集団は幾何級数的にexponentially成長した
このことが示すのは、細胞は自分のアスパラギン酸を呼吸せずには作れないということだった

さらに、電子受容体electron acceptorとしてはたらくピルビン酸を加えても、これらの細胞はアスパラギン酸なしで増殖することができる
このことが示唆するのは、増殖する細胞は加えられたピルビン酸を余分な電子を捨てるために使い、それにより(酸素がなくても)アスパラギン酸を作れるということである
これは癌の研究にとって重要である。なぜなら、これはミトコンドリアの呼吸への攻撃を癌細胞が回避get aroundするために使える抜け穴loopholeだからである


腫瘍は栄養と酸素へのアクセスが限られているため、アスパラギン酸を違う方法で作りそうである
代わりの電子受容体としてはたらくピルビン酸に癌が依存するかもしれないと知ることは、研究者がその抜け道をふさぐ方法を研究できるということを意味する



Cellの同じ号に論文が掲載されたMIT生物学教授のDavid Sabatiniは、アスパラギン酸と細胞の呼吸との間のつながりについて確かめるために彼が使った異なるアプローチについて報告する

Sabatiniたちはゲノム編集ツールのCRISPRを使って遺伝子スクリーニングを実施し、
GOT1という酵素が存在しないと、呼吸が阻害されれば細胞は死ぬであろうということを明らかにした

GOT1: グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ1/Glutamate Oxaloacetate Transaminase 1(GOT1)。別名アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)

正常な状況では、GOT1はアスパラギン酸を消費consumeしてミトコンドリア内へと電子を伝達するが、
さらなる研究により、呼吸ができない時、GOT1は細胞質のアスパラギン酸を消費する代わりにアスパラギン酸を細胞質に生成するという逆の反応reverse reactionを触媒することで、ミトコンドリアによるアスパラギン酸合成の欠如を補おうとすることが判明した

「増殖する細胞での呼吸の主な役割はエネルギーを作ることではなく、むしろたった一つのアミノ酸、アスパラギン酸を作ることであることが我々の研究により明らかになった」
SabatiniのラボのポスドクであるKivanc Birsoyは言う
「この結果は我々にとって非常に驚くべきものだった」



がん以外に利益
Benefits beyond cancer

この洞察insightから得られる利益は癌の研究だけではない
ミトコンドリア病に苦しむ人々は、その異常がしばしば細胞の呼吸に問題がある

さらに、加齢に伴う疾患においてミトコンドリアはしばしば機能不全を起こしているようであり、その欠陥のいくらかは電子の不均衡によって起きるかもしれないとVander Heidenはいう


ピルビン酸が電子受容体としてアスパラギン酸の産生を可能にする役割をさらに確かめるためto be doubly sure that、
Vander Heidenは同じプロセスを別の栄養素、つまり電子受容体として働くだけでピルビン酸の他の機能を何ら満たさないα-ケト酪酸を使って試みた
結果はまったく同一identicalだった



http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.07.016
An Essential Role of the Mitochondrial Electron Transport Chain in Cell Proliferation Is to Enable Aspartate Synthesis.


Summary
ミトコンドリアの電子伝達系を阻害することにより細胞増殖が抑制されるが、その理由は不明だった
また、電子伝達系が欠けていてもピルビン酸の添加により増殖できる理由も十分に理解されていなかった
我々はCRISPRベースの遺伝子スクリーニングにより
GOT1遺伝子の喪失が複合体Iの阻害剤であるphenforminに対して感受性にすることを同定した
GOT1は細胞質のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼであり、GOT1を喪失することで細胞はETC阻害により死ぬ


通常、GOT1はアスパラギン酸を消費してミトコンドリアへ電子を(NADHとして)送るが、ETCの阻害により逆にアスパラギン酸を細胞質に産生する
これはミトコンドリアによるアスパラギン酸合成の喪失を部分的に補う

ピルビン酸は、アスパラギン酸の合成をGOT1依存的に刺激するが、
これはETCが機能しない細胞の増殖をピルビン酸投与で回復するために必要である

アスパラギン酸を補うsupplementationか、またはアスパラギン酸輸送体の過剰発現により、細胞はETCがなくても増殖できるようになる

ゆえに、アスパラギン酸の合成を可能にすることは、細胞増殖においてETCが果たす必須の役割である



http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.07.017
Supporting Aspartate Biosynthesis Is an Essential Function of Respiration in Proliferating Cells.


Highlights
・電子受容体の不足deficiencyは、呼吸に欠陥があるdeficient細胞の増殖を制限する

・電子受容体のα-ケト酪酸/α-ketobutyrateは、呼吸に欠陥がある細胞の増殖を支える

・電子受容体が欠乏していてもアスパラギン酸は増殖を支える

・増殖する細胞における呼吸の主な役割は、アスパラギン酸を作ることである


Summary
ミトコンドリアの呼吸は細胞増殖のために重要である

ここに我々は、増殖する細胞における呼吸の主な役割はアスパラギン酸を合成するための電子受容体を提供することであることを示す
これは、呼吸鎖が機能しない細胞はピルビン酸を要求するauxotrophic for pyruvateという観察と一致し、ピルビン酸は外因性の電子受容体として作用する

ピルビン酸の必要は、代わりの電子受容体であるα-ケト酪酸を投与することで満たされる
α-ケト酪酸は炭素もATPも生じないが、呼吸が阻害されている細胞の増殖を回復する

電子受容体はアスパラギン酸の産生を制限し、アスパラギン酸を供給することで外因性電子受容体がなくても呼吸に欠陥がある細胞の増殖を可能にする



https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%AA%E3%83%9F%E3%82%B8%E3%83%B3%E5%A1%A9%E5%9F%BA
ピリミジン塩基の生合成は、ウリジル酸(ウリジル一リン酸:UMP)を中間体としている。
生体内では、ウリジル酸は、グルタミン由来のカルバモイルリン酸がアスパラギン酸のα位に導入された「カルバモイルアスパラギン酸」を出発物質とする。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%A1%A9%E5%9F%BA
プリン塩基の新生経路は5-ホスホ-α-D-リボシル二リン酸を出発物質として、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸からリボースリン酸上にプリン骨格を構築し、中間体のイノシン酸を生成する。
イノシン酸からは、酵素によりアスパラギン酸由来のアミノ基が導入されてアデニル酸(AMP)が、グルタミン由来のアミノ基が導入されてグアニル酸(GMP)が生成する。

概日リズムの乱れによる乳癌リスクをマウスモデルで検証する

2015-08-02 08:35:21 | 
Mouse model tests health risks of circadian disturbances

July 20, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150720133243.htm

概日リズムの乱れと乳癌リスク


http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2015.06.012
Chronically Alternating Light Cycles Increase Breast Cancer Risk in Mice.

Highlights
・慢性的な「概日リズムの乱れ/circadian rhythm disturbance/CRD」により腫瘍の抑制は低下し、体重は増加する

・体温ならびにコルチコステロンリズムの乱れは、健康への影響より先に起きる

・睡眠の乱れsleep disturbanceは、CRDによって誘導される乳癌に明らかに関与する


Summary
シフト労働者ならびにフライトアテンダントにおける疫学研究は慢性的な概日リズムの乱れと乳癌リスクの増加とを関連付けてきたが、因果関係を示す証拠はない

※shift work: 交代勤務


いくつかのシナリオが提案されている

(1) internal desynchronization
体内の脱同調

※desynchronization: 脱同調。サーカディアンリズムに関して、ある機能の活動リズムが体内時計などによる周期から外れて固有の周期を発現すること


(2) light at night (resulting in melatonin suppression)
夜間の光はメラトニンを抑制する

(3) sleep disruption
睡眠の乱れ

(4) lifestyle disturbances
生活習慣の乱れ

(5) decreased vitamin D levels due to lack of sunlight [ 3 ]
日光不足によるビタミンD減少


ヒトでの研究に固有の交絡因子confounders inherent in human field studiesは動物研究では問題になりにくいless problematic in animal studiesので、概日リズムと癌の因果関係を評価するためには良い

しかし多くの動物実験の実験条件はシフトワーカーの現実realityからは遠い
例えばいくつかの研究は異種移植xenograftsで、これは腫瘍の増殖であって腫瘍のイニシエーション/プログレッションではない [ 4, 5 ]

化学的に腫瘍を誘導したモデル [ 6, 7 ]
連続的に光にさらすcontinuous bright light exposure
も同様に遠い

我々は、癌になりやすいp53R270H©/+ WAPCreコンディショナル変異マウス (in a FVB genetic background) を週ごとに変化する明暗/LDサイクルに曝して慢性的なCRD/概日リズムの乱れの状態にした

週ごとのLD転換inversionsによりマウスの腫瘍抑制は低下を示した
さらに、これらのマウスは体重が増加した
この研究は初めての実験的証拠である


結論。我々のデータは
internal desynchronizationとsleep disturbanceを
交代勤務shift workならびに癌の発症と肥満cancer development and obesityをつなげるメカニズムとして示唆するものである



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150724093730.htm
Prostate cancer not caused by shift work, experts say
交代勤務は前立腺癌の原因ではないと専門家


増殖する癌と転移する癌では遺伝子発現が異なる

2015-08-01 13:20:24 | 
Important molecule in ovarian cancer

Molecule plays pivotal role in making ovarian cancer cells so lethal

July 22, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150722101841.htm

卵巣癌とLKB1


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26068970
Intact LKB1 activity is required for survival of dormant ovarian cancer spheroids.

転移性の上皮卵巣癌metastatic epithelial ovarian cancer/EOC
は懸濁液中in suspensionでスフェロイドspheroidを形成し、
腹膜peritoneumを通過して直接分散してdisperse二次病巣に播種するseed


EOCスフェロイドspheroidsは転移の重要なメディエーターであるという証拠が集まりつつあり、
それらは特殊な細胞内シグナル経路を持ち、細胞の増殖と代謝を制御して生存を増加させる


我々は、スフェロイドではAKTシグナル伝達が減少して、それが細胞の静止状態とオートファジーにつながることを発見した

さらに、AMPKとその上流キナーゼLKB1の活性は、
増殖して隣の細胞と接着するadherentのEOCと比較して、
静止状態のEOCスフェロイドでは増大した

患者の腹水ascitesから直接単離されたスフェロイドでも、AMPK活性は上昇を示した


AMPを模倣mimeticするAICAR、またはアロステリックallostericなAMPK活性化剤activatorのA-769662は、
増殖する接着性の卵巣癌細胞においては細胞分裂の停止につながったが、
スフェロイドにおいてはその効果を発揮しなかった


RNA干渉によりSTK11を阻害してLKB1発現を抑制すると、
スフェロイドだけで生存能力viabilityが低下し、カルボプラチンへの感受性が上昇した
この現象はAMPKに依存しなかったindependent


これは、伝統的に腫瘍抑制因子と考えられてきたLKB1キナーゼの腫瘍の生存促進機能を癌細胞において実証する初めてのエビデンスである



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b203a9eaf2fc7c1965c7e19a43e92e00
転移する癌はミトコンドリアを使う

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/aaeac9a22d739b53b1af889f3f37a814
癌幹細胞はミトコンドリアを使う

遺伝子の発現と免疫系は癌の生存率と関連する

2015-07-31 19:43:41 | 
Gene expression, immune system linked with cancer survival rates

July 20, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150720114751.htm

スタンフォード
約18,000人の患者から得られた39タイプの癌の遺伝子発現パターンと患者の生存期間を統合したデータベース

細胞の成長に関与するFOXM1遺伝子の発現は複数の癌で予後の悪さと関連し、
癌への免疫応答を調整するKLRB1遺伝子の発現は保護的効果をもたらすようである


研究者はさらに、Cibersortという最近Newman in Alizadeh's laboratoryで発表された技術を使い、腫瘍に群がるflock白血球の構成を決定した
Cibersortは、腫瘍と普通の細胞の寄せ集めmishmashから特定の免疫細胞の比率を評価し、 腫瘍丸ごとbulk tumorの遺伝子発現から細胞タイプを推定するdeduce

このプロセスをNewmanは、スムージを分析して中身のフルーツとベリーを確定するようなものだとたとえた


「我々はそれぞれの充実性腫瘍solid tumorにどの免疫細胞が存在し、または存在しないのかを推論inferすることができる。そしてどのような種類が優勢prevalenceかを評価し、患者の生存情報と相関させる」

「我々はさらに、どのような種類の免疫細胞が腫瘍に浸潤しているかにもとづいて癌のタイプを大まかにbroadly区別できることを発見した」


http://dx.doi.org/10.1038/nm.3909
The prognostic landscape of genes and infiltrating immune cells across human cancers.
 
CD161をコードするKLRB1は主としてlargely腫瘍関連白血球tumor-associated leukocytesを反映する

CD161: NK細胞の表面に発現して細胞傷害を調節するタンパク質



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150203123417.htm
Glioblastoma: Study ties three genes to radiation resistance in recurrent tumors

・MELKとEZH2タンパク質は、腫瘍のサブセットにおいて一緒に生じる

・MELKがないと、GBMは放射線により感受性である; MELKが回復すると抵抗性になる

・再発GBM腫瘍は、新規に診断されたGBMよりもMELK陽性とEZH2陽性の細胞が多い

・MELKと腫瘍形成性の転写因子FOXM1は複合体を形成してEZH2発現を促進する

・MELK, FOXM1, EZH2のレベルは患者の予後prognosisと強い関連がある


http://dx.doi.org/10.1016/j.stemcr.2014.12.006

膠芽腫glioblastoma(GBM)に由来する腫瘍形成性の幹細胞様の細胞tumorigenic stem-like cell(GSC)では、
有糸分裂キナーゼmitotic kinaseであるMELKが、発癌性の転写因子oncogenic transcription factorであるFOXM1と結合してリン酸化する

Polycomb repressive complex 2(PRC2)の触媒サブユニットEZH2はMELK-FOXM1複合体の標的であり、GSCの放射線への抵抗性を促進する

 MELK-FOXM1複合体→EZH2/PRC2→放射線への抵抗性

臨床的には、GBMではEZH2とMELKが共に発現coexpressedし、放射線照射後の再発した腫瘍postirradiation recurrent tumorsにおいて著しく誘導される
 


変異だけではなく進化が発癌を促進する

2015-07-31 18:18:00 | 
Evolution, not just mutation, drives development of cancer

Solving 'Peto's Paradox,' new model shows selection pressure of healthy tissue keeps cells with cancerous mutations in check

July 21, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150721134835.htm

発癌は「変異の蓄積」により起きると一般には考えられているが、
今回PNASで発表される論文はそれに対して、
発癌は細胞集団に作用する「進化の圧力」に依存すると論じる

論文は基本的に
健康な組織の状況landscapeの生態系ecosystemでは
健康な細胞は癌の変異を持つ細胞に打ち勝てることを示す

つまり、組織の生態系が加齢や喫煙などのストレス下で変化すると、
癌化する変異を持つ細胞の集団は突然「適応」して膨張できるようになる


提案されたモデルは、いわゆるPeto's Paradoxの理解を助ける
そのパラドックスとは「癌がランダムな変異によるというなら、大きな動物ほど早く癌になるリスクが高いはずだが、実際にはそうではない」


確かに癌の発症には変異や遺伝子の変化が必要である
しかし、それらの変異がどのように癌を引き起こすのか?
そのような変異が偶然「スーパー細胞」を創り出して、突然大暴れするrun amokということはなさそうである

発癌性の変異はしばしば/常に存在しているが、それは選択圧selection pressuresによって排除されている
つまり、組織の生態系tissue ecosystemとその圧力が変化すると、発癌性の変異を持つ細胞を健康な細胞よりも生き残りやすくなり、やがて癌細胞の集団が打ち勝てるようになる


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1501713112
Toward an evolutionary model of cancer: Considering the mechanisms that govern the fate of somatic mutations.

適応度fitnessは動的dynamicで環境依存的な表現型の性質でありenvironment-dependent property of a phenotype、
発癌性の変異は体細胞に対して非常に多様な適応度への影響があり、それは加齢につれて変化する組織微小環境に依存的である



関連記事(元記事と同じくDeGregori氏)
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/07/120702134732.htm
Why cancer rate increases with age (it's not what you think)
「なぜ加齢とともに癌は増えるのか?」
「我々は10代後半には成長が止まり、その時までに一生涯で得る変異の大部分を既に蓄積している」
「癌遺伝子に変異がある幹細胞は、むしろ排除されるとDeGregoriは言う」
「変異が蓄積して癌にする代わりに、我々が加齢するにつれて癌と戦うメカニズムが劣化する」
 

関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/12/111219101858.htm
Tissue structure delays cancer development
「数学モデルにより、結腸に見られるような空間的な組織構造が遺伝子変異の蓄積を抑制して癌化を遅らせることを科学者は示した」



修飾されたシトシンは一部の癌細胞のアキレス腱である

2015-07-29 15:50:54 | 
Modified DNA building blocks are cancer's Achilles heel

July 22, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150722131824.htm

通常の細胞は余計で好ましくないunwanted修飾のあるヌクレオシドを選ばないselectiveが、
癌細胞の中には選択的でないものがいるので、それが弱点になるかもしれない


細胞は新しいDNAを合成するとなると「倹約的thrifty」である
Cells are thrifty when it comes to synthesizing new DNA.

新しく合成することに加えて、死んだ細胞や我々が食べて消化したものに含まれるDNAから化学的な部分を再利用する

しかし、DNAの4文字の1つ、Cはしばしば修飾されている
この「エピジェネティック」な変化は細胞が正常に機能するために重要である
もしエピジェネティックな修飾が間違ったCに付くと、細胞は癌化するか死んでしまう

この再利用される「化学的に修飾されたC」を、細胞はどのようにして新規合成DNAの間違った場所に組み込んでしまうことを防ぐのか?


今回の研究で、ヌクレオシドを再利用する酵素は非常に選択的であることが判明した
この酵素は修飾されたヌクレオシドを使わず、DNAをエピジェネティック的に「綺麗」にする

しかし癌での再利用プロセスを調べたところ、癌細胞の中にはこれらの(修飾された)ヌクレオシドを変形transformさせ、合成するDNAに組み込めるようにするものがいる
このプロセスはしばしば細胞を殺してしまうが、再利用する際にこのような間違いをするのはシチジンデアミナーゼcytidine deaminase (CDA)を発現する癌細胞である

CDAはしばしば腫瘍で過剰発現している。それは例えば膵臓癌である


このエピジェネティックに修飾されたヌクレオシドにより癌細胞を殺すという予期しなかった効果を利用して、Kriaucionisたちは特異的specificな抗癌剤anti-cancer agentとして使えることを実証した


Kriaucionisは言う
「CDAは、血液がんや膵臓癌で臨床的に既に使われているシチジンアナログを不活化することが示唆される」
「逆に言えば、我々が研究で使ったヌクレオシドはCDAが発現しない細胞では比較的無害であり、CDAに出会うと強力な細胞毒へと変化させる」


http://dx.doi.org/10.1038/nature14948
CDA directs metabolism of epigenetic nucleosides revealing a therapeutic window in cancer.

5-メチル-2′デオキシシチジン/ 5-methyl-2′deoxycytidine (5mdC)

5mdCの酸化した形
 5-hydroxymethyl-2′deoxycytidine (5hmdC)
 5-formy-2′deoxycytidine (5fdC)
 5-carboxyl-2′deoxycytidine (5cadC)


ヌクレオシドをサルベージする経路の酵素は基質選択制を示し、
このようなエピジェネティックに修飾された(酸化した)シトシンを新規DNA合成に組み込むことから防ぐ

ゆえに通常の細胞はこのような修飾シトシンを許容できるが、
我々はスクリーニングにより5hmdCまたは5fdCの投与が致死につながる癌細胞系統を発見した

このような系統はCDAを過剰発現し、
CDAは5hmdCと5fdCをDNAに組み込めるウリジンバリアントに変換する
その結果DNAに傷害が蓄積して細胞死に至る


※シトシン
核酸の構成成分となるピリミジン塩基

※シチジン
シトシンを塩基部分に含むリボ(リボース)ヌクレオシド



※5-アザシトシン/5-azacytosine: シトシンの5位の炭素原子を窒素原子に置換した人工的なシトシンアナログ。正常なシトシンと拮抗してRNAなどに取り込まれる



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/05/110503133001.htm
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2011.03.044
Nucleotide Deficiency Promotes Genomic Instability in Early Stages of Cancer Development.

ヌクレオチド不足は初期ステージの癌増殖においてゲノム不安定性を促進する
・Rb-E2F活性化は複製ストレスreplication stressにつながり、DNAの傷害と形質転換を引き起こす

細胞スポンジでバレット食道のサンプルを丸ごと手に入れる

2015-07-28 22:24:38 | 
'Pill on a string' could help spot early signs of cancer of the gullet

July 20, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150720114947.htm



糸のついたピルの中にある『細胞スポンジ 'Cytosponge'』は、飲み込まれると溶けてdissolvesスポンジを露出させてreveal a sponge、
食道から引き上げられるときに細胞をこすってはがすscrapes off cells when withdrawn up the gullet

それにより医師は食道に沿って全ての細胞を集めることができる
通常の生検は個々のポイントのサンプルしか得られない


今回の研究で観察された食道全体でのacross the esophagus変異のバリエーションは、
通常の生検が重要な変異を持つ細胞を見逃してきたかもしれないことを意味する


研究者はゲノムに変異のパターンを発見した
それは癌の原因となる「指紋 'fingerprint'」を提供するものだった

この指紋は胃酸が食道壁にはね散らすsplash ontoすることによって食道の内層liningに引き起こされた傷害によるものである可能性が高いと彼らは考えている

同様の「指紋」はバレット食道と食道癌の両方に見られた
このことは、この遺伝子の変化が(癌化の)プロセスの非常に初期に生じることを示唆する


研究者は
個々の多くの変異はあるが癌ではない状態から、
変異した遺伝子情報の多くが遺伝子間だけでなく染色体間で伝達されるようになる状態へと
切り替わるポイントtipping pointがあるらしいことを発見した

※tipping point: 些細な変化が積み重なって重要な影響を持つように大きく変化する転換点


http://dx.doi.org/10.1038/ng.3357
Whole-genome sequencing provides new insights into the clonal architecture of Barrett's esophagus and esophageal adenocarcinoma.
全ゲノムシーケンシングは、バレット食道ならびに食道腺癌のクローン性構造への新たな洞察をもたらす


癌細胞上のHER2受容体を液体中で電子顕微鏡により観察

2015-07-28 12:49:28 | 
Researchers discover a possible reason for drug resistance in breast tumors

July 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150717153641.htm

HER2を標的とする抗体治療は3分の2で抵抗性が生じる

新しい研究によると、休止状態であるSKBR3乳癌細胞のサブ集団には、HER2二量体が存在しないようだ
この集団は自己再生能力があり、ゆえに抗体治療に抵抗性であるかもしれない


HER2はEGFRファミリーで、このファミリーはEGFリガンドの結合後に二量体化dimerizationするが、
HER2はそういう意味で特別であり、二量体化に成長因子の結合を必要としない
HER2が増幅している乳癌ではその二量体化が無制限の細胞増殖を促進する


HER2二量体化プロセスは細胞集団の平均averagesを基に研究されたが、
平均とは例えばプールされた細胞構成要素を使った生化学的な方法であり、
それはHER2二量体化の局在localizationについての情報は欠いていた


de JongeはLiquid STEMという電子顕微鏡法により、これらの受容体を癌細胞上で画像化することを提唱したpioneer
この細胞は電子顕微鏡内のマイクロチップ上で、水中で完全なままだった


http://dx.doi.org/10.1126/sciadv.1500165
Local variations of HER2 dimerization in breast cancer cells discovered by correlative fluorescence and liquid electron microscopy.

モノマー、ダイマー、高次higher-orderのクラスターを区別する

HER2ホモ二量体が存在しないサブ集団は平坦な膜構造topographyであり、おそらく静止状態の細胞である



※STEM: Scanning Transmission Electron Microscope。走査電子顕微鏡のうち,試料透過光を検出器に受けるもの.

※Liquid STEM: 細胞の液中観察が可能な電子顕微鏡


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19164524
N. de Jonge et al.
Electron microscopy of whole cells in liquid with nanometer resolution.
単一の金原子でタグ付けされたEGFをSTEMで観察
空間解像度は4ナノメートル、描画休止dwll時間は20マイクロ秒


腫瘍のシグナル分子のスイッチを入れる栄養素

2015-07-27 11:37:51 | 
Nutrients turn on key tumor signaling molecule, fueling resistance to cancer therapy

July 13, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150713161429.htm

腫瘍はグルコースを急速に使うなどの通常とは異なる代謝をすることが以前から知られていたが、科学者たちがこの代謝の変化をより具体的に明らかにしたflesh outのはごく最近のことである

Mischelたちはこの代謝の変化がmTORC2 (mTOR complex 2) の活性化によることを以前明らかにした
mTORC2は癌細胞の代謝を過剰に活性化した状態に切り替えることに関与する
それは例えば、グルコースと、そして酢酸acetateの取り込みを増やすことである
グルコースと酢酸は燃料と資材を供給し、それにより腫瘍は急速な増殖をずっと続けることができる


今回の研究で、Mischelと彼の同僚の増井憲太、そしてWeb Caveneeは、
グルコースと酢酸がmTORC2を調節し、腫瘍の増殖を促進して標的治療薬targeted drugをかわすfending offことを発見した

「これは二車線道路two way streetだ」

「mTORC2のようなシグナル分子は代謝を変化させ、その代謝産物がmTORC2を変化させる」


実験では膠芽腫細胞にグルコースか酢酸を加え、少なくともどちらか一つがmTORC2の活性化に必要であることを発見した

EGFRが変異してmTORC2が活性化した膠芽腫でも実験した結果、
グルコースと酢酸が存在しない状態ではEGFR阻害剤はmTORC2シグナルのスイッチを切ることができるが、
グルコースと酢酸を加えると阻害剤は働かず、mTORC2は活性化したままで腫瘍は生き残った


さらに調べると、グルコースと酢酸の代謝産物であるアセチルCoAがmTORC2の活性化に重要な要素であることがわかった

研究者は同様のメカニズムが膠芽腫患者から直接得られた細胞でも働いていることを確かめた


膠芽腫では脳腫脹brain swellingを抑えるためにステロイドの投与が必要だが、ステロイドは血糖レベルを上げることが知られている
今回の研究は、脳腫脹のために必要なステロイドが逆説的にmTORC2の活性化を通じて腫瘍を増殖させる影響があるかもしれないことを示唆する


研究者は、これらの代謝産物の産生を変化させるため、どのように食事を変えるかについて考え始めている
しかしMischelは、今回の研究が癌に対抗するためのどんな食事についても価値を示さないと強調する


広い観点から見て、Mischelは
どれだけの癌が環境のせいであり、どれぐらいがランダムかつ制御不能なのかについて興味がある

今回の研究は、癌に関与する遺伝子と環境との間には以前考えられていたよりも多くの相互作用が存在するかもしれないことを示唆する


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1511759112
Glucose-dependent acetylation of Rictor promotes targeted cancer therapy resistance.


グルコースまたは酢酸塩は脳の2大栄養源である
それらはmTORC2の中心的な要素であるRictorをアセチル化acetylationすることにより、
mTORC2の活性化を通じてEGFRvIII依存的なシグナルを促進する

この活性はアセチル-CoAレベルの上昇を通じて仲介される


今回の研究の驚くべき意味は、グルコースまたは酢酸は成長因子受容体シグナルカスケードの下流の要素を通じてシグナルを維持することにより分子標的治療への抵抗性の一因となりうることである


グルコースレベルが上昇していると、
上流の成長因子受容体シグナル伝達経路の要素がもはや活性化していなくてもRictorのアセチル化は維持され、
mTORC2の自己活性化ループautoactivation loopを形成する
ゆえに、膠芽腫をEGFR阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤に抵抗できるようにする


http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/88c883306ba9a7b3c9ca52a523b074ca
>脳腫瘍は燃料として酢酸を燃焼できる
 

<コメント>
酢酸はアルコールを飲んだ時にも作られます。
ケトン体ができるときにも作られるようです。


http://hobab.fc2web.com/sub4-zesshoku.htm
>ケトン体の産生が増加しているような、脂肪酸のβ-酸化が亢進している際には、ミトコンドリア内の遊離CoAが欠乏し、アセチル-CoAが、加水分解され、遊離CoAと酢酸とに、分解されます。
>酢酸(短鎖脂肪酸)は、肝臓から血液中に放出され、他の組織で、ケトン体と同様に代謝燃料として利用されます。

>大量のケトン体が生成される際には、同時に、酢酸(短鎖脂肪酸)も生成されます。
 

皮膚癌のマーカーは腫瘍の増殖にも重要

2015-07-24 07:59:10 | 
Skin cancer marker plays critical role in tumor growth

Found in many types of cancers, keratin 17 was previously thought to be bystander in development of tumors

July 13, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150713113245.htm

keratin 17は様々な癌のマーカーとして使われてきたが、
腫瘍の増殖においても重要な役割を果たす可能性が示唆された


研究ではヒトパピローマウイルスによる扁平皮膚癌HPV-induced squamous cell carcinomaを発症しやすいマウスを使用した
マウスからケラチン17/keratin 17を欠損させると、発症は著しく遅れ、炎症応答と免疫応答は抑制された
ヒトの腫瘍細胞でも同様の結果が得られた


分析の結果、keratin 17は腫瘍の核に移動して、腫瘍を促進する特異的な炎症応答・免疫応答を引き起こす遺伝子のスイッチを入れた
これまでkeratin 17は細胞質で細胞骨格の一部として機能するだけだと考えられていた

さらに、Aire (autoimmune regulator) というタンパク質はkeratin 17と腫瘍細胞の核内で相互作用することもわかった
Aireは胸腺で自己免疫疾患の抑制に重要であることはわかっていた
Aire遺伝子を消去してもマウスの皮膚での腫瘍形成は遅れた


http://dx.doi.org/10.1038/ng.3355
Keratin-dependent regulation of Aire and gene expression in skin tumor keratinocytes.


中間径フィラメントタンパク質intermediate filament proteinのケラチン17/keratin 17 (K17) は、
炎症性の皮膚疾患、ならびに重層上皮と偽重層上皮pseudostratified epitheliaに由来する多くの腫瘍において強く上方調節されている

※pseudostratified epithelium: 偽重層上皮/多列上皮。重層に見えるが、実際はすべての細胞が基底膜に達しているので単層として分類される


我々は、
自己免疫調節遺伝子autoimmune regulator (Aire) という転写調節因子が
ヒトとマウスの腫瘍角化細胞keratinocytesにおいてK17依存的に誘導されて発現し、
それはGli2によるマウスの皮膚腫瘍発生の時宜を得たtimely発症に必要であることを報告する

※Gli2: ヘッジホッグ経路

角化細胞におけるAire mRNAの(転写の)誘導は、
K17とhnRNP K (heterogeneous nuclear ribonucleoprotein) の機能的な相互作用に依存する


K17は、腫瘍になりやすい角化細胞の核にAireタンパク質と共に局在colocalizesし、
それぞれの因子はNF-κBコンセンサス配列を特徴づけるfeaturing特異的プロモーター領域に結合している
そのコンセンサス配列は、K17依存的とAire依存的な炎症性遺伝子の関連サブセットである
and each factor is bound to a specific promoter region featuring an NF-κB consensus sequence in a relevant subset of K17- and Aire-dependent proinflammatory genes.

この発見は、中間径フィラメントのケラチンとAire機能における根本的に新しい知見を提供する
加えて、皮膚疾患におけるK17依存的な炎症性応答/免疫応答の増幅に関する分子的な基盤についてもである


Figure 4
K17 and Aire associate with target gene promoter regions.

(g) K17は転写レベルとタンパク質レベルの両方でAireを調節して、炎症性の遺伝子発現ならびに肌の腫瘍発生tumorigenesisを促進する



Supplementary Figure 3
Krt17の喪失は胸腺でのAire発現または機能に影響しない
 

前立腺癌が転移するためのかなめ(lynchpin)となる分子が発見される

2015-07-23 20:22:41 | 
Lynchpin molecule for the spread of cancer found

July 13, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150713122306.htm

DNA-PKcsはDNAの修復に関わるキナーゼである

以前DNA-PKcsは前立腺癌の治療抵抗性と関連付けられたが、その理由の一部は、DNA-PKcsが放射線などによるDNAの致命的な損傷を修復してしまうからだろう
しかし今回の研究は、DNA-PKcsが癌において幅広い役割far-reaching roles in cancerをもつことを示した

DNA-PKcsはシグナル伝達ネットワークのマスター調節因子として働き、転移プロセスの全プログラムのスイッチを入れる
DNA-PKcsは特にRho/Racという酵素を調整し、それにより多くの癌は移動することができるようになる
転移カスケードの他のステップ、例えば細胞の移動と浸潤に関わる多くの遺伝子ネットワークも同様である

現在既にDNA-PKcsの阻害剤が開発中であり、フェーズIの臨床試験が実施されている


http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2015.06.004
DNA-PKcs-Mediated Transcriptional Regulation Drives Prostate Cancer Progression and Metastasis.
DNA-PKcsを介した転写調節は、前立腺癌の進行と転移を駆動する


DNA-dependent protein kinase /DNA-PKは、
 Kuヘテロ二量体 (Ku70/Ku80) と、
 触媒サブユニット/catalytic subunit (DNA-PKcs)
から構成されるセリン/スレオニンプロテインキナーゼ複合体であり、
DNAの損傷応答ならびにゲノムの安定性維持において重要な役割を果たす


活性化したDNA-PKcsは、非相同末端結合/nonhomologous end joining/NHEJを仲介する因子をリン酸化して機能を変化させる
因子とは例えばDNA-PKcsそれ自身であり、ヒストンH2AX (γH2AX) である


DNA-PKcsは進行癌で著しく上方調節され、腫瘍の転移と再発、生存率の低下を予測する
DNA-PKcsは転移する腫瘍でも非常に活性化しているが、それはDNA損傷からは独立している(DNAの損傷は増加していないが、DNA-PKcsは活性化している)

DNA-PKcsの発現上昇は、DNAを損傷させる抗癌剤への応答低下と相関するが、
そのような抗癌剤を使わない患者でも予後の悪さとも関連する
これはDNA損傷応答とは独立したDNA-PKcsのヒト悪性腫瘍における役割を示唆する


DNA-PKcsは低酸素、代謝、炎症応答を調整し、転写因子と相互作用することで転写を調節するが、
最近、ステロイドホルモン受容体がDNA二本鎖切断の修復を促進する能力の根本には、男性ホルモン受容体/ARによるシグナルとDNA-PKcsとの間のつながりがあることが同定された

ARは、アンドロゲン刺激とDNA損傷への応答において、DNA-PKcsをコードするPRKDCの調節領域locusに結合し、それによりPRKDCの発現とDNA-PKcsの活性を誘導する

 アンドロゲン→AR→PRKDC→DNA-PKcs発現

この誘導は、ARによる二本鎖切断の修復、ならびにゲノム損傷からの細胞生存に必須であることが証明された


DNA-PKcsのレベル上昇は、
DNA-PKcsがARの共調整因子comodulatorとして作用する能力によって
ポジティブフィードバックを形成することが示された

 アンドロゲン→AR→DNA-PKcs→AR→…


http://www.cell.com/action/showImagesData?pii=S1535-6108%2815%2900214-7

Figure 8

(I) DNA-PKcsは癌と関連する転写ネットワークを調整し、そのネットワークには以下の3つが含まれる
 AR標的の発現
 Rho/Racシグナル伝達経路(転移を促進する)を調節する遺伝子
 ジヒドロテストステロン/DHTの代謝に影響することが知られているUGT酵素/UDP-glycosyltransferasesの発現を抑制

転移性の去勢抵抗性前立腺癌の臨床的にすぐ使用可能なドライバ(clinically actionable driver of metastatic CRPC)としてDNA-PKcsを同定した

 DNA-PKcs→AR標的(PSA↑/TMPRSS2↑)→癌進行

 DNA-PKcs→転移ネットワーク→癌転移
  PREX1,ITGB4→Rac1(GTP)
  VAV3→Rho(GTP)→ROCK2

 DNA-PKcs─┤UGT(UGT2B17,UGT2B15)─┤DHT→癌進行

   └→転移性の去勢抵抗性前立腺癌


※CRPC: Castration-Resistant Prostate Cancer


遺伝による乳癌と卵巣癌の謎の一つが明らかに

2015-07-23 19:12:02 | 
Scientists solve breast, ovarian cancer genetic mystery


July 16, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150716123848.htm

フランシスクリック研究所による線虫での研究

RAD51のいとこcousins(いわゆるパラログparalogs)は、
RAD51の形を変えることで活性化して、癌を引き起こすDNA傷害の修復に関与するので
乳癌と卵巣癌の発症を防ぐためにBRCA1/2と同じくらい重要


乳癌と卵巣癌の20人に1人以上が遺伝的な原因によるものであり、実験薬のPARP阻害剤がそうしたBRCA1/BRCA2遺伝子の変異を標的として開発されている。
それらの「いとこ」に遺伝的な変異をもつ癌患者も、そのような薬が有効であるかもしれない


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.06.015
Rad51 Paralogs Remodel Pre-synaptic Rad51 Filaments to Stimulate Homologous Recombination.
Rad51のパラログ(RFS-1, RIP-1)は、presynaptic filament Rad51フィラメントを改編して相同組換えを刺激する


Highlights
・Rad51パラログ複合体のRFS-1/RIP-1は、RAD-51と一本鎖DNA/ssDNAからなる「プレsynaptic filaments」に結合する

・RFS-1/RIP-1は、RAD-51のssDNAからの解離を減少させることによりfilamentを安定させる

Summary
RAD-51-ssDNA filamentsを凝集nucleateさせるBRCA2とは異なり、RFS-1/RIP-1はプレsynaptic filamentsに結合して再編し、安定した「開いた」状態にして、曲がりやすい構造flexible conformationにする
これによりssDNAはヌクレアーゼにより分解されやすくなり、RAD-51の解離率は低下する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141005134815.htm
First pictures of BRCA2 protein show how it works to repair DNA

(BRCA2 (赤色) は、切断されたDNA鎖上にRAD51 (黄色) が短いフィラメントfilamentsを形成するのを助け、一致するDNA鎖を探して修復させる)




http://ir.soken.ac.jp/index.php?active_action=repository_view_main_item_detail&page_id=29&block_id=155&item_id=942&item_no=1
Rad51は、大腸菌の組換え蛋白質であるRecA蛋白質のホモログであり、DNA鎖交換反応を行う。DNA鎖交換反応は、presynaptic filamentと呼ばれる、Rad51がssDNAに結合して作る特徴的なラセン構造を持つ複合体の形成で始まる。このpresynaptic filament形成では、ssDNA、RPA、Rad51とRad52の間の相互作用がpresynaptic filament形成を促進することが示されている。しかし、Rad55とRad57の組換えにおける機能はわかっていなかった。

癌は血管形成を操る

2015-07-21 15:39:11 | 
Hybrid cells cause chaos around cancers

Researchers model cell signaling in blood vessels that feed tumors

July 8, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150708123319.htm



今回の研究は、jaggedとして知られるリガンドが、腫瘍の周囲で観察される混沌とした血管形成において主要な役割を果たすことを示す


正常の増殖では、上皮細胞が既存の血管からtip細胞として発芽sproutし、それを追ってstalk細胞が血管壁を形成する
この「上皮細胞をtipになるかstalkになるか」を決定するのは細胞間のnotchシグナル伝達経路による

notch受容体にdeltaリガンドが結合すると、いくつかの細胞はtipになるように促し、隣の細胞はstalkになるようにする
これがどのようにして起きるかはRice大学の以前の研究の主題である

※以前の記事を参照。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7057dc22902f75a46a85b30872d876e7


新しいモデルでは「jaggedリガンド」の役割が現れる
jaggedは腫瘍環境において過剰発現し、notch-jaggedの結合はnotch-deltaに打ち勝つoverpower
その結果として「tipでありstalkでもあるハイブリッド」 が現れる
そのような細胞は新しい血管を形成できるものの、血管はめったに成熟しない

これは癌にとって役に立つ
つまり「早く育ち、漏れやすく、血管の広がりは混沌として癌全体に行き渡る」

「腫瘍は血管が発達するのを待たなくてもよい。腫瘍はその漏れやすい構造を利用するからである」


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1511814112
Jagged mediates differences in normal and tumor angiogenesis by affecting tip-stalk fate decision.

 Fringe─(糖鎖修飾)─┤Notch-Jaggedシグナル伝達



http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7057dc22902f75a46a85b30872d876e7
>Notch-Deltaシグナルはトグルスイッチのように送信者と受信者を切り替え、Notch-Jaggedシグナルは送信者でもあり受信者でもある第三の状態を生じる


http://first.lifesciencedb.jp/archives/5730
>tip細胞とstalk細胞との振り分けにはNotchシグナル伝達系がかかわっており,VEGFの刺激によりNotchリガンドのひとつであるDll4の分泌の高まった細胞がtip細胞へ,分泌されたDll4によりNotch系の活性化された近傍の細胞が側方抑制をうけstalk細胞へと変化することがわかっている1).

びまん性大細胞型Bリンパ腫の一部は代謝の破綻と関連がある

2015-07-20 18:02:12 | 
Lymphomas tied to metabolic disruption

Evidence of enzyme deficiency found in these often-fatal cancers

July 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150717142435.htm

びまん性大細胞型リンパ腫/diffuse large B-cell lymphomaの一部のサブセットでは、
D2HGDHが変異している

D2HGDHが変異したリンパ腫細胞はα-ケトグルタル酸/α-KGが不足する

α-KGが少ないと、ジオキシゲナーゼ/dioxygenaseが適切に働かない

※ジオキシゲナーゼは,S+O₂=SO₂のような反応を触媒する二原子酸素添加酵素


α-KGは加齢と幹細胞維持の重要な調節因子であることが最近になり判明している


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms8768
D2HGDH regulates alpha-ketoglutarate levels and dioxygenase function by modulating IDH2.


野生型のD2HGDHはα-KGレベルを上昇させ、ヒストンメチル化とDNAメチル化、HIF-1αのヒドロキシ化hydroxylationに影響する
変異したD2HGDHはびまん性大細胞型Bリンパ腫で見られ、酵素としての活性がないinert


D2-HGは量が少ないが、ミトコンドリアIDH活性を上昇させ、IDH2発現を誘導することにより、有意味にα-KGレベルを上昇させる

 D2-HG→IDH活性↑IDH2発現↑→α-KG↑



イソクエン酸脱水素酵素
isocitrate dehydrogenase/IDH
 イソクエン酸→α-KG


変異IDH1/IDH2
 α-KG→D2-HG


D2-ヒドロキシグルタル酸脱水素酵素
D2-hydroxyglutarate dehydrogenase/D2HGDH
 D2-HG→α-KG


変異D2HGDH
 D2-HG─×→α-KG



α-ケトグルタル酸
alpha-ketoglutarate/α-KG
 =2-オキソグルタル酸


D2-ヒドロキシグルタル酸
D2-hydroxyglutarate/D2-HG



http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/238ef04c9920d98b76f8605cbb1b13ae
IDH1/2の変異によって生じる2-ヒドロキシグルタル酸(2-hydroxyglutarate; 2-HG)は、JHDM/TETを抑制して、ヒストン/DNAの脱メチル化を抑制する。
JHDMはヒストンの脱メチル化反応、TETはDNAの脱メチル化反応を、α-ケトグルタル酸をコファクターとして触媒する酵素。