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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2014年8月13日

2014-08-18 22:42:17 | 医学

エボラ・タンパク質は、ウイルスに対する反撃の初期段階を妨害する
Ebola protein blocks early step in body's counterattack on virus



ウイルス感染に対する人体の最初の応答の1つは、インターフェロンというシグナル・タンパク質を作って放出することである。インターフェロンはウイルスに対する免疫システム応答を増幅する。

時間が経つにつれて、多くのウイルスはインターフェロンの免疫強化シグナルを弱体化させるように進化した。

今回、セントルイス・ワシントン医科大学、マウントサイナイ・アイカン医学部、そしてテキサス大学南西メディカル・センターの研究者たちは、エボラウイルスのタンパク質eVP24がどのようにしてインターフェロンを基盤とするシグナルを止めるかについて説明する。



ウイルス感染に対する効果的かつ素早い反応を誘発するため、インターフェロンは他の細胞にそのシグナルを伝えなければならない。

しかしそれはインターフェロンそのものではなく、インターフェロンが伝えるシグナル経路の最後で生じる。その経路の最後では、細胞の核内で免疫応答を駆動する遺伝子がオンになる。



今回の研究では、カリオフェリン(karyopherin)という輸送蛋白質と結合しているeVP24の立体構造を決定した。

インターフェロンシグナルの下流では本来リン酸化したSTAT1がカリオフェリンに結合して核内にエスコートされるが、eVP24はその代わりにカリオフェリンに結合する。

この段階でシグナルを手際よく妨げることによってeVP24は自然免疫を無力化し、エボラウイルス病(Ebola virus disease; EVD)を引き起こす。

研究者はeVP24複合体の立体構造を使ってそれがどのように起こるかを示す。



2006年、マウントサイナイアイカン医学部のクリストファーF. Basler博士たちはエボラウイルスがeVP24により免疫応答を抑制することを発見した。しかし、それがどのようにして起きるかは不明だった。

記事供給源:
上記の記事は、マウントサイナイ医科大学により提供される材料に基づく。

学術誌参照:
1.エボラウイルスVP24(eVP24)はカリオフェリン・アルファ5(KPNA5)の独特なNLS(nuclear localization signal; 核局在化シグナル)結合部を標的として、リン酸化されたSTAT1の核内移行と選択的に競合する。

Cell Host & Microbe、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140813130044.htm


<コメント>
エボラウイルスがどのように自然免疫を抑制するかについての記事です。
エボラウイルスはリン酸化STAT1の核内への移行は阻害しますが、自らの複製に必要な核内輸送は阻害しません。

関連記事にはエボラウイルスが樹状細胞の成熟を阻害するというものがあります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/05/130502192226.htm

Wikipedia英語版にはグリコプロテインが好中球のシグナルを阻害するとあります。

http://en.wikipedia.org/wiki/Ebola_virus_disease

>The sGP forms a dimeric protein that interferes with the signaling of neutrophils, a which allows the virus to evade the immune system by inhibiting early steps of neutrophil activation.

2014年8月13日

2014-08-17 21:59:25 | 医学

非常に重要な結核薬はどのように標的を攻撃するか
Clues uncovered about how most important tuberculosis drug attacks its target



ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部の研究者は、結核(tuberculosis; TB)にとって非常に重要な薬物が、どのように休止中のTB細菌を攻撃するかについての新しい手掛かりを発見した。

抗生物質のピラジナミド(Pyrazinamide; PZA)は1950年代からTBの治療に使われてきたが、そのメカニズムはあらゆるTB薬の中で最も理解されていない。

「PZAは我々が持つ抗生物質の中でおそらく最も独特だろう。PZAは活発に複製しているTBを捜し求めるだけではなく、代わりに休止中のTBを捜し出して破壊する。休止中のTBは他の抗生物質ではコントロールすることはできない。」

ブルームバーグ校の分子微生物学と免疫学部の教授で、研究リーダーのYingチャン医学博士は言う。

「それはまるで草刈りのようだ。現在のほとんどの薬はただ単に葉を切りはなすだけで根元は残る。PZAは、根元に手が届く。」



上海のFudan大学と連携して実行された新しい研究によれば、PZAはヒト型結核菌のエネルギー産生を切り離して細菌を殺すが、それはPanD(aspartate decarboxylase)を阻害することによる。PanDは特に補酵素A(CoA)の合成にとって重要である。

PanDがTB細胞で正しく作用していると、長い治療にもかかわらずTB細胞は生き残ることが可能になる。

唯一このプロセスを停止させるPZAの独特な能力だけが、潜伏中の細菌を消去することを可能にする。

近年、PZAの別の標的であるRpsA(ribosomal protein S1)を発見した研究者は、PanDの突然変異はPZAに抵抗性のTB細菌サブセットだけで見られると言う。



2012年、世界で約860万人がTBを発症し、130万人が死亡した。

新規に診断される率は低下する一方で、薬剤耐性の症例は増加している。

PZAはTBの治療の最前線である。PZAは薬に感受性がありかつ薬剤耐性のTBを有する患者に与えられる。そして開発中のあらゆる新薬がPZAと同時に使われる。

学術誌参照:
1.ヒト型結核菌のピラジナミドの新しい標的としてのアスパラギン酸脱炭酸酵素(Aspartate decarboxylase; PanD)。

新興微生物及び感染症(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140813103938.htm



<コメント>
結核の短期多剤併用で使用されるピラジナミド(pyrazinamide)の標的として、PanDが新たに明らかになったという記事です。


2014年8月10日

2014-08-13 08:34:39 | 医学

男性のまれな遺伝性神経疾患の標的が特定される



カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究者は、ケネディ病という珍しい遺伝性神経変性疾患が、男性の受胎率低下と筋力低下を引き起こすメカニズムを特定した。

ケネディ病の鍵として認識されてきた遺伝子突然変異(CAGリピート)は、「ゴミ」タンパク質を分解して再利用する能力(オートファジー)を損なう。

それらの「ゴミ」はニューロン上に蓄積して、筋収縮を制御する能力を徐々に損なう。



「本研究の価値は、この奇病だけではなく、オートファジー経路の障害と関連する他の多くの疾患のタンパク質蓄積を停止させる標的を特定したということである」、アルバートLaスパーダ博士は言う。



ケネディ病は脊髄球性筋萎縮(spinal and bulbar muscular atrophy; SBMA)としても知られ、男性が母親から遺伝する劣性X連鎖疾患である。2つのX染色体を持つ女性は、この疾患にはかからない。

この遺伝的な異常によりアンドロゲン受容体のミュータント蛋白が作られ、それはオス性ホルモンへの感受性と応答を損なう。時には睾丸萎縮と男の乳房の腫張に結びつく。



マウスの実験によれば、このミュータント・アンドロゲン受容体蛋白は、転写因子EB(TFEB)というタンパク質を不活性化する。TFEBは神経と他の細胞のオートファジーを調節するマスター因子であると考えられている。

つまりケネディ病のミュータント・アンドロゲン受容体蛋白はTFEBに結合して、不要なタンパク質の除去を仲介する能力を妨害する。

学術誌参照:
1.ポリグルタミン拡張アンドロゲン受容体はTFEBに干渉して、SBMAのオートファジー障害を引き出す。

Nature Neuroscience、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140810213654.htm

<コメント>
ケネディ病で障害される経路の一つが特定されたという記事です。

ケネディ病ではCAGリピートの伸長により異常なポリグルタミンがアンドロゲン受容体に生じるため、男性機能やオートファジーが損なわれます。

http://ta4000.exblog.jp/17939031/

>CAGリピートが伸長する AR の多型では、ケネディ病で観察されるように結果としてアンドロゲンに反応しなくなる。


TFEBはmTORとリソソームの活性をつなげる転写因子であるようです。

http://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/ra_20120612_1.asp

>リソソーム↓→mTOR↓→TFEBセリン211リン酸化↓→14-3-3結合↓→TFEB核移行→リソソーム生合成関連転写↑→リソソーム↑


ポリグルタミンをもつARはTFEBと結合してしまうために細胞質に留まり、リソソームの合成が低下するということになるのでしょう。

GenecardsにはTFEBはCD40Lの発現を活性化するとあるので、獲得免疫も低下するのかもしれません。


2014年8月6日

2014-08-09 14:50:13 | 医学

ウイルスが細胞に侵入するためのタンパク質が、研究室で捕まる



セントルイス大学の研究者はインテグラーゼをとらえたことをJournal of Biological Chemistryで報告する。

インテグラーゼはHIVのようなレトロウイルスの一部であり、それはヒトの細胞DNAにウイルスDNAを挿入することができる。

研究者はその姿をインテグラーゼ阻害剤の存在下でX線結晶構造解析によりとらえた。


セントルイス大学の分子ウイルス学の教授、ドゥエーンGrandgenett博士は1978年にインテグラーゼを発見した。

「1974年、我々はHIVについて聞いたことがなかった」、Grandgenettは言う。

「しかし、我々はHIVと同じ種類のレトロウイルスを研究した。

レトロウイルスは細胞のDNAにウイルスの遺伝情報を挿入することによって拡散するが、それはインテグラーゼによってである。」



科学者はインテグラーゼ阻害剤を改善するため、それがどのようにウイルスと相互作用するかについての完全な映像を得ようとしてきた。

「これまで、X線結晶構造解析による高解像度のHIVインテグラーゼ-DNA像を得ることに誰もが失敗してきた」、Grandgenettは言う。

彼らはインテグラーゼとDNAの複合体を作り出し、薬の存在下で動態的に複合体を安定させる必要があった。



研究者は、HIVではなく、代わりのウイルスを使用してショートカットした。

インテグラーゼの構造はすべてのレトロウイルスで類似しているので、Grandgenettはラウス肉腫ウイルス(RSV)で彼のアプローチを試した。RSVのインテグラーゼはHIVのインテグラーゼより確実に操作することができる。

現在の臨床的なインテグラーゼ阻害剤はすべて同様に作用する。つまりそれらは全てインテグラーゼを妨害してHIVの複製を防ぐ。



具体的に言うと、それらはSTI(strand transfer inhibitors; DNA鎖転送阻害剤)でウイルスDNA鎖の転送を止める。

それら阻害剤は、ウイルスDNA、ウイルス・インテグラーゼ、そして薬自体という3つの成分を一緒に結びつけることによって作用する。

本研究の前には誰も、これら3つの要素が接触する箇所の接合部複合体(synaptic complex; SC)を、溶液の状態で作れなかった。

今回研究者は、STIがRSVインテグラーゼのSCを阻害した状態を作り出した。

学術誌参照:
1.協調したDNA組み込みができるラウス肉腫ウイルス(RSV)接合部複合体は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のインテグラーゼDNA鎖転送阻害剤によって、動態的に阻止される。

Journal of Biological Chemistry、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140806095153.htm



<コメント>
HIVのインテグラーゼ阻害剤を使って、別のウイルスのインテグラーゼを阻害した状態のX線回折画像を得ることができたという記事です。


2014年7月18日

2014-07-23 11:03:35 | 医学

遺伝子の変異は、アスピリンの心血管への有益性を修飾するかもしれない



アスピリンは現在、抗血小板療法のゴールドスタンダードであり、日々の低用量アスピリンは心血管疾患の予防に対して広く適用される。

新しい研究によれば、カテコールOメチル基転移酵素(COMT)遺伝子の変異はアスピリンの心血管への有益性を修飾し、軽微な有害性を与える可能性があることを示唆する。

ベスイスラエル・ディーコネスメディカルセンター(BIDMC)とBrigham and Women's Hospital(BWH)が米国心臓協会(AHA)の学術誌で公表する。



COMTは、カテコールアミン(エピネフリン、ノルエピネフリン、ドパミンなど)を代謝する重要な酵素である。

23,000人を超える女性で心血管疾患の一次予防のための低用量アスピリンまたはビタミンEの無作為二重盲検プラセボ対照臨床試験で、10年間経過観察したWomen's Genome Health Studyコホートのデータを使用し、研究者はCOMT遺伝子の異型 val158met に焦点を合わせた:

「val/val」タイプはCOMT酵素の活性が高く、「met/met」タイプと比較してカテコールアミンのレベルが低い。異種接合体の「val/met」はその中間である。



「プラセボグループの女性では、val/valの女性の23パーセントが『自然に』心血管疾患から保護された」、ダニエルi. Chasman博士は言う。

しかし、val/val多型性をもつ女性がアスピリンに割り当てられた場合、この『自然の』予防効果は消滅した。

そして、met/metの女性の28パーセントの間では正反対だった。アスピリンに割り当てられたmet/metの女性は心血管疾患の発生がより少なかった。



プラセボと比較したmet/metのアスピリンの有益性は、10年の追跡調査につき、心血管疾患が91人あたり1症例の減少に達した。

対照的にval/val女性のアスピリンの有害性は、91人当たり1症例の増加であった。



val/valが保護される理由の1つの可能性として、エピネフリンを分解するCOMTの役割が挙げられる。エピネフリンは「闘争または逃走」ホルモンであり、心血管系の調節と強い関連がある。

「エピネフリン・レベルがストレスに反応して上がるとき、血圧も上がる、高血圧は心疾患の前兆である」、ホールは説明する。

学術誌参照:
1.カテコールOメチル基転移酵素の多型性は、心血管疾患のリスクに関して、アスピリンの治療作用を修飾する。

動脈硬化、血栓症と血管の生物学(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140718115624.htm

<コメント>
COMTの活性が高い多型の人はエピネフリンが分解されやすいために、もともと心血管疾患が起きにくい可能性があるという記事です。

91人のうち1人が増えるか減るかというと大したことはないように聞こえますが、予防のために何百万人が使うとなると重要であるとのことです。


2014年7月18日

2014-07-23 09:12:12 | 医学

より安全なIVFにつながる、排卵の新しい引き金



IVF(in vitro fertilization; 体外受精)の治療を受ける女性の排卵を促進するための、新しく、そしてより安全な方法が成功したかもしれない。

その女性たちは卵子を成熟させる自然なホルモンである『キスペプチン』の注射を受け、12人の赤ちゃんが生まれた。

これまで医師は別のホルモン(hCG)を投与してきた。しかしそれには女性の卵巣を過剰に刺激するかもしれないというリスクがあった。



インペリアル・カレッジ・ロンドンの科学者と、インペリアル・カレッジ・ヘルスケアNHSトラストの臨床医は、ロンドンのハマースミス病院で53人の健常ボランティアにおける新しい方法をテストした。

英国人女性の6分の1は不妊症を経験する。2011年には48,147人の女性がIVF治療を受けた。

卵巣過剰刺激症候群(Ovarian hyperstimulation syndrome; OHSS)はIVF患者のおよそ3分の1に影響を及ぼし、悪心嘔吐のような症状を引き起こす。

患者の10パーセント未満は中度から高度のOHSSを経験し、腎不全を引き起こす可能性がある。



キスペプチンは、他の生殖ホルモンの放出を促進するために自然に生じるホルモンである。

注射の後も長期間血液中に残るhCG(human chorionic gonadotropin; ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とは異なり、キスペプチンは急速に分解される。それは過剰な刺激のリスクが低いことを意味する。

今回の研究に参加した女性は、排卵を誘発するためにキスペプチンの単一の注射を受けた。

参加者53人中51人で成熟した卵が成長し、49人が子宮へ移される1つか2つの受精胚を有した。

最終的に12人が妊娠したが、これは従来の標準IVF治療と比較して良好な結果である。



研究者は、多嚢胞性卵巣症候群の女性で第2の研究をすぐに実施する。彼女たちはOHSSを起こすリスクが最も高い。

学術誌参照:
1.キスペプチン-54は、生体外受精を経験する女性で卵子成熟を引き起こす。

JCI、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140718214944.htm

<コメント>
GPR54リガンドのキスペプチン(メタスチン)は性成熟に関与するとされています。

多嚢胞性卵巣症候群の女性は卵巣からのアンドロゲン分泌が多いため、キスペプチンの分泌が抑制されてしまうようです。



2014年7月16日

2014-07-23 07:16:31 | 医学

新しい乾癬薬が可能性を示す



バーミンガムアラバマ大学による無作為のフェーズIII研究で、新薬のセクキヌマブが中等度から重度の慢性尋常性乾癬(plaque psoriasis)に関連する症状を改善することが示された。

慢性尋常性乾癬は落屑と炎症を特徴とする慢性的な皮膚病である。



ERASURE試験は薬をプラセボと比較し、FIXTURE試験ではプラセボまたはエタネルセプトと比較した。

どちらも中等度から重度の慢性尋常性乾癬で最大のフェーズIIIプログラムの一部である。それには35カ国以上で3,300例以上の患者が参加した。

「セクキヌマブを与えられた中等度から重度の乾癬患者で、12週後に皮膚クリアランスを達成した統計的に有意な割合は最高90パーセントだった。さらに、継続的な治療でこれらの大多数の患者は、それらの結果を52週目まで維持した」、Elewskiは言った。

学術誌参照:
1.慢性尋常性乾癬に対するセクキヌマブの、2つのフェーズ3試験の結果。

New England Journal of Medicine、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140716214910.htm

<コメント>
IL-17A阻害剤のセクキヌマブは、TNF-α阻害剤のエタネルセプトよりも慢性尋常性乾癬(局面型乾癬; plaque psoriasis)患者のフェーズIII臨床試験で結果が良好だったという記事です。

NEJMのAbstractによれば、PASI 75(Psoriasis Area and Severity Indexスコアが75%改善)を達成した割合は、エタネルセプトの44%と比較して、セクキヌマブは300mgで77.1%、150mgで67%だったそうです(プラセボは4.9%)。

ノバルティスファーマの日本語でのプレスリリースはこちら


2014年7月2日

2014-07-04 23:43:14 | 医学

結核薬のための新しいアプローチ



現在、年間140万人が結核で死亡している。

そして結核菌の多剤耐性株は現在の薬では治療できないので、特に危険である。

「過去50年で市場に現れた新しい結核薬は、たった1つだ。それは2012年だった」、ETHチューリッヒの生薬学(pharmaceutical biology)教授、カール‐ハインツ・アルトマンは言う。

アルトマンと彼の研究チームは今回、新しい結核薬の基礎を築いた。

それはピリドマイシンという抗生物質によってインスパイアされたものである。



ピリドマイシンはヒト型結核菌の成長を阻害する抗生物質だが、急速に分解されてしまうために効果が低い。

アルトマンと彼の研究グループはピリドマイシンの構造を用いて新たな分子を設計した。

新しい分子はより安定しており、合成するのが容易である。



1953年、日本の科学者はピリドマイシンがヒト型結核菌の成長を阻害することを発見した。

しかしその後、この化合物は何十年も研究されなかった。

「結核の問題は解決されたと誰もが思っていた」、アルトマンは言う。

文献を調査している間に彼はピリドマイシンを見つけ、EPFL微生物病因論教授のスチュワート・コールの研究チームとともに、それがどのように作用するか解読した。

ピリドマイシン(Pyridomycin)は、細胞の代謝の重要な成分であるエノイルACPレダクターゼ(enoyl-ACP reductase)を麻痺させる。それは結核病原体の細胞壁を構築するために必須である。

現在利用可能な薬のイソニアジドも同じタンパク質を目標とするが、それはまず最初に、結核菌の内側で代謝され、機能する阻害剤へと変化しなければならない。

それとは対照的に、ピリドマイシンは目標のタンパク質と直接結合する。したがってイソニアジドの抵抗性メカニズムを迂回する。

この新しいアプローチは、結核の新薬のために多種多様な構造を可能にする。

学術誌参考文献:
1.2,1'-ジヒドロピリドマイシンの合成と抗抗酸菌活性。

ACS Medicinal Chemistry Letters、2013;

2.ピリドマイシンはエノイルレダクターゼInhAの、NADHと基質の結合ポケットに架橋する。

Nature Chemical Biology、2013;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140702102433.htm

<コメント>
1953年に放線菌から発見されたピリドマイシンという抗生物質を元にして、結核菌の重要なタンパク質InhAを標的にする新しい分子が設計されたという記事です。




関連記事は、2012年にピリドマイシンが「再発見」された時のものです。

http://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120917123127.htm

2014年6月25日

2014-06-26 06:09:40 | 医学

科学者は抗生物質の抵抗性に対抗する秘密の武器を発掘する



カナダのノバスコシア(Nova Scotia)に住んでいる真菌は、薬剤耐性細菌との差し迫った戦いにおいて新しい望みを与える。

マクマスター大学の研究者たちは真菌に由来する新しい分子、AMAを発見した。

それは最も危険な抗生物質耐性遺伝子NDM-1(New Delhi Metallo-beta-Lactamase-1; ニューデリー・メタロベータラクタマーゼ-1)を武装解除することが可能である。

AMAはペニシリンなどカルバペネム系抗生物質への薬物抵抗性病原体をブロックする。

「簡単に言えば、この分子は抗生物質が自分の仕事ができるようにNDM-1をノックアウトする」、マクマスター大学のMichael G. DeGroote感染症研究所の責任者、ゲリー・ライトは言う。



マクマスター大学、ブリティッシュ・コロンビア大学、そしてウェールズのカーディフ大学による研究チームは、無害な病原性大腸菌による高度なスクリーニングによりNDM-1を止めることができる分子を分離した。

NMD-1は亜鉛を必要とするが、ヒトで毒性を引き起こすことなくNDM-1から亜鉛を取り除く真菌の分子を、彼らはついに発見した。

「これは気が重い問題の1つの側面を解決する。AMAはカルバペネム系抗生物質の活性を救う」、ライトは言う。

記事ソース:
上記の記事は、マクマスター大学により提供される材料に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140625132358.htm

<コメント>
AMA(aspergillomarasemine A; アスペルギロマラセミンA)という、NMD-1やVIM-2を無効にする分子が発見されたという記事です。

アスペルギルス・バーシカラ(Aspergillus versicolor)という真菌に由来するそうです。


2014年6月23日

2014-06-24 17:06:01 | 医学

2型糖尿病の治療を改善する方法



PPARgammaを活性化する薬(チアゾリジンジオン; thiazolidinedione/TZD)は、抗炎症性とインシュリンの感度を高める活性が2型糖尿病の治療になると長く考えられていた。

しかしながら、そのクラスの大部分の薬物は体重増加、水分貯留と心不全などの危険な副作用があるとされ、現在は市場から回収されたか、使用が厳格に制限されている。

究極の目的は「望ましい」性質を打ち消すことなく、PPARgamma活性の「ネガティブ」な側面を目標とすることである。

BUSMの研究者は、脂肪細胞において脂肪組織活性とPPARgammaを上手く調節する戦略を特定した。

学術誌参照:
1.GPS2/KDM4Aによる活性の先導は、PPARγのプロモーター特異的なリクルートを調節する。

Cell Reports、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/03/140320173158.htm

<コメント>
脂肪細胞でPPARγが転写因子としてプロモーターに結合して機能するためには、GPS2がユビキチンリガーゼのRNF8を阻害して、それによりH3K9脱メチル化酵素KDM4Aが安定することが必要だという研究です。




関連記事は、TZDがどのように腎臓近位尿細管での再吸収を促進して浮腫(edema)を引き起こすかについてです。

http://www.sciencedaily.com/releases/2011/05/110503132700.htm
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(11)00137-9

一人抄読会さんの翻訳があります。

http://syodokukai.exblog.jp/13512716/

2014年6月19日

2014-06-24 07:59:07 | 医学

アテローム性動脈硬化症を促進する新しい治療目標



UTサウスウェスタン医療センターの研究者によって、アテローム性動脈硬化症を促進する新しい分子が特定された。

この27-ヒドロキシコレステロール(27HC)という分子はオキシステロールの一種で、コレステロールの正常な分解により産生され、アテローム硬化性のプラークに蓄積することが知られている。

動物モデルと他の戦略により、研究者は27HCがアテローム硬化性プラークの形成を促進し、動脈壁において脂質の蓄積を二倍にすることを発見した。

エストロゲンは通常、アテローム性動脈硬化症の発症と進行から保護することができる。

27HCはエストロゲン受容体をブロックすることによってその効果を阻害して、アテローム性動脈硬化症を促進する。



研究者はさらに27HCが動脈壁で炎症を引き起こすということを発見した。

この有害な効果は、サイトカインという炎症を引き起こす分子の促進が特徴である。サイトカインはマクロファージの動脈壁への接着を増強した。

アテローム硬化性プラークの形成を引き起こすのは、脂質(例えばコレステロール)を蓄積するマクロファージの動員である。


「スタチンはコレステロールを低下させることにより心血管の健康に劇的な影響を示すが、アテローム性動脈硬化症と戦うためにはまだ補完的な方法が必要である」、Shaul博士は言う。

「27HCを標的にして合成を低下させる、または、その作用を阻害することによって、その補完的なアプローチを提供することができるかもしれない。」

学術誌参照:
1.コレステロールの代謝産物27-ヒドロキシコレステロールは、エストロゲン受容体アルファによって仲介される炎症誘発性のプロセスを経て、アテローム性動脈硬化症を促進する。

Cell Metabolism、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140619172612.htm


<コメント>
コレステロールのCYP27A1による代謝物、27-ヒドロキシコレステロールは、ERαを介してアテローム性動脈硬化を促進するという研究です。

Cell MetabolismのAbstractを見ると、27HCはマクロファージと血管内皮の接着を促進するのに加えて、エストロゲンによるNF-κBの抑制を阻害するとも書かれています。
(27HCはERK1/2とJNKに依存的にIκBαの分解を刺激する)




少し前にも、27-ヒドロキシコレステロールはER+の乳癌を促進するという記事がありました。
今回と同じテキサス大学サウスウェスタンによる研究です。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/25cbc239586c3cd4be7cd940bd012d56

>研究チームは、27-ヒドロキシコレステロール(27HC)というコレステロールの代謝産物が、エストロゲンレセプター・ポジティブな乳癌で腫瘍成長を促進するということを発見した。

>先行研究は、27HCを代謝する酵素のCYP7B1をエストロゲンが上向き調節することを示した。

2014年6月16日

2014-06-19 22:03:44 | 医学

ビタミンA誘導体は、2型糖尿病を治療して心血管系の合併症を予防するかもしれない



寒さに対する曝露は、結果として褐色脂肪と白色脂肪への分化の刺激になる。そして、トリグリセリドから遊離脂肪酸とグリセロールへの転換を促進する。

しかしながら、褐色脂肪細胞では、これらの脂肪酸はミトコンドリアで急速に酸化して、UCP1タンパク質の影響を受けて熱を生じる。

したがって、褐色脂肪は、基底エネルギー代謝を増加させるのを助ける。

ビタミンA誘導体のレチノイン酸は、ミトコンドリア経路(酸化的リン酸化)の脱共役を許すミトコンドリア脱共役タンパク質(UCP1)を促進する。

学術誌参照:
1.オールtransレチノイン酸は、心保護ナトリウム利尿ペプチド系の遺伝子発現を促進して、肥満ob/obマウスの心筋細胞で、線維症とアポトーシスを防止する。

応用生理学、栄養と代謝(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140616141419.htm

<コメント>
ビタミンAから作られるレチノイン酸は、マウスで白色脂肪細胞より褐色脂肪細胞への分化を促進して、さらに褐色脂肪細胞のUCP1(mitochondrial uncoupling protein)を刺激するというものです。
UCP1はATPを作る代わりに熱を作るので、エネルギーの代謝が上昇します。

しかし、そのためには電子伝達系が機能していることが前提です。
ビタミンAを取れば、即、代謝が上がるというものではありません。

そしてビタミンAは様々な作用があるので、もちろん取り過ぎは毒になります。


2014年6月12日

2014-06-19 08:39:18 | 医学

血液脳関門を越える真菌蛋白質



カリフォルニア大学デイビスの研究者は、クリプトコッカス髄膜炎(Cryptococcal meningitis)を引き起こす真菌の一連の実験で、血流から脳内へ越える原因となると思われるタンパク質を分離した。

「本研究は、クリプトコッカス・ネオフォルマンスがどのように血液脳関門を越えて髄膜炎を引き起こすかという我々の理解の隙間を埋める」、UCデイビス薬理学の准教授で本研究の主任であるアンジー・ジェッリは言う。



数としては比較的少ないが、しかしある種の生物は脳血液関門という保護バリアを突破する可能性がある。

クリプトコッカス・ネオフォルマンスがどのように血液脳関門を突破するかを調べていた研究者は、Mpr1というタンパク質をクリプトコッカス細胞表面から分離した。

Mpr1が属するメタロプロテアーゼのM36クラスは真菌に特有で、哺乳動物の細胞では生じない。



研究者は、細胞表面にMpr1がないクリプトコッカス・ネオフォルマンスの株を人工的に生成した。

正常な野生型クリプトコッカス・ネオフォルマンスとは異なり、Mpr1のない株はヒトの血液脳関門の人工のモデルを越えることはできなかった。



彼らはさらに、血液脳関門を越えず、通常はMpr1を発現しない一般のベーキング・イースト(サッカロミセス・セレビシエ)の株で、細胞表面にMpr1を発現するように修正した。

その結果、この株には血液脳関門モデルを越える能力がついた。

学術誌参照:
1.クリプトコッカス・ネオフォルマンスによる中枢神経系の浸潤は、真菌の分泌メタロプロテアーゼを必要とする。

mBio、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140612104954.htm

<コメント>
鳩の糞などから分離されるクリプトコッカスは、Mpr1というメタロプロテアーゼによって血液脳関門を越えるというものです。

いかにも怖そうな内容ですが、普通に免疫が機能している人なら感染の心配はないようです。


2014年6月15日

2014-06-17 02:28:31 | 医学

寄生虫のトンネルを掘る機械を探究する:
寄生虫ゲノムと生物学は、介入の新しい開発に関して強固な基礎を提供する



チームはヒトに感染する鞭虫(Trichuris trichiura)、マウスに感染する鞭虫(Trichuris muris)のゲノムを配列決定し、最も活動的で生存に必須かもしれない遺伝子を調べた。

ゲノム配列と鞭虫が産生するタンパク質の範囲は、この虫が生きて進化した驚くべきニッチの生物学的理解を提供する。



そして鞭虫によって分泌される特定の消化酵素は腸壁の細胞に穴を掘るためのものかもしれないことをチームは発見した。

寄生虫によって分泌される他の酵素は、これらの消化酵素によって引き起こされる『付帯的損害(collateral damage)』を抑制するようである。それは炎症と、宿主の細胞への損傷を低下させる。



鞭虫の卵は現在、さまざまな自己免疫疾患に対する治療として臨床試験で研究されている。寄生虫感染が疾患(例えば多発性硬化症と炎症性腸疾患)と関連する炎症を低下させると考えられるからである。

免疫系がどのように感染に反応するかについて確かめるため、研究者はマウスに特異的な鞭虫を与えた。

その感染は、潰瘍性大腸炎のような炎症性疾患と関連する多くのマウス遺伝子の活性に変化を引き起こした。

記事ソース:
上記の記事は、ウェルカムトラスト・サンガー研究所により提供される材料に基づく。

学術誌参照:
1.鞭虫のゲノムと、宿主-病原体の密接な相互作用からのトランスクリプトミクス。

Nature Genetics(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140615143609.htm

<コメント>
今の日本ではほとんど見られない寄生虫の感染ですが、薬剤耐性の寄生虫を克服する研究や自己免疫疾患の治療として使われる試験が進んでいるようです。



関連記事には、同じくウェルカムトラスト・サンガーによる羊の寄生虫(Haemonchus contortus; 捻転胃虫属)のゲノム配列を決定したというものがあります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/08/130828103351.htm

2014年6月3日

2014-06-11 10:06:12 | 医学

ストレスホルモン受容体は、甘味を感じる味細胞に限局される



Monellセンターの新しい研究によると、ストレスにより活性化されるホルモンの受容体は、甘味、うま味、そしてにがみの検出を行う味細胞に限局された。

「甘味は、特にストレスに影響を受ける可能性がある」、Monellの化学的生態学者で筆頭著者のM.ロックウェル・パーカー博士は言う。

「我々の結果は、強いストレスによりなぜ一部の人が砂糖を含んだ食品を多く食べるかについて分子的に説明できる可能性がある。」



糖質コルチコイド(GC)ホルモンは、細胞の中に位置する専門のGC受容体を起動させることによって、体に影響を及ぼす。

ストレスは、代謝と食物選択に大きく影響する。研究者はマウス・モデルを使用して、GC受容体が舌に存在することを明らかにした。

GC受容体の最も高い濃度はTas1r3という味細胞で見られた。それは甘味と旨味の刺激に対して反応する細胞である。



味覚組織のGC受容体がストレスによって活性化するかどうか、研究者はストレスを与えたマウスで調査した。

対照と比較してストレスに曝されたマウスは、味細胞の核内でGC受容体が77パーセント増加した。



ストレスは塩気のある食品の摂取量に影響を及ぼすことが知られているが、塩味および酸味を感知すると考えられる細胞ではGC受容体は見られなかったことにパーカー博士は言及した。

これに関する説明の1つとして、ストレスが脳の「塩味覚に関するプロセシング」に影響する可能性がある、と彼は言う。



Monell分子神経生物学者のロバートMargolskee医学博士は、味受容単位が体全体を通じて見られることを強調する。

「腸と膵臓の味覚の受容体は、ストレスによって影響されるかもしれない。それは潜在的に糖と他の栄養分の代謝に影響を与えて、食欲に影響を及ぼす。」

学術誌参照:
1.2型味覚受容体細胞における、糖質コルチコイド受容体の発現と核トランスロケーション。

Neuroscience Letters、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140603135603.htm

<コメント>
ストレスホルモンによる味覚の変化についての研究です。

これはストレスが糖尿病の発症に影響する理由の説明になるかもしれません。
実際、2型糖尿病の患者では腸の甘味受容体に異常があるという関連記事があります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/08/130823094219.htm

>Researchers have discovered that the way the gut "tastes" sweet food may be defective in sufferers of type 2 diabetes, leading to problems with glucose uptake.