褐色脂肪はどのようにエネルギーを燃焼させるか
褐色の脂肪細胞は、脂肪を燃焼させて熱に変える。
今回発表されたベスイスラエル・ディーコネスメディカルセンター(BIDMC)による研究は、転写因子のIRF4(interferon regulatory factor 4; インターフェロン制御因子4)が、褐色脂肪の熱発生プロセス、エネルギー消費、そして寒冷耐性の調節において重要な役割を果たすことを証明する。
褐色脂肪は寒冷やエピネフリンなどのホルモンによってスイッチがオンになり、熱発生遺伝子(thermogenic gene)という遺伝子グループの作用により熱を発生させる。
中でも最も有名なのは脱共役タンパク質1(UCP1)をコードする遺伝子である。
UCP1は褐色の脂肪細胞のミトコンドリアでエネルギーを浪費し、副産物として熱を生成する。
「UCP1遺伝子が調節される方法に対する強い関心があった。そして同時に、PGC1-αという分子に最も注目した。」
研究のシニア著者、BIDMCのEvan Rosen医学博士は説明する。
「PGC1-αは転写コファクターであり、UCP1のような遺伝子の転写を引き起こすのは間接的である。なぜなら、それ自体はDNAと結合する能力が欠如しているからだ。
このことは真の転写因子またはDNA結合蛋白質が存在することを示唆した。何年もの研究の結果、IRF4がそのパートナーであることが判明した。」
インターフェロン制御因子(IRF)は免疫系の調節において重要な役割を果たす。
Rosenのグループは以前、IRF4を脂肪細胞の発達と脂質の処理における重要な要素として特定し、脂肪細胞でのIRF4の発現は絶食によって誘発されることを発見した。
脂肪組織でIRF4がない動物は肥満になり、インスリン抵抗性と寒さへの不耐性を生じた。
今回の新しい研究では、IRF4が脂肪分解の重要な調節因子であることに加えて、褐色脂肪において熱発生に直接関与すると仮定した。
彼らはマウスモデルの実験で、脂肪細胞においてIRF4が寒さとcAMPによって誘発されることを証明した。それは熱発生遺伝子の発現の増加、エネルギー消費と寒冷耐性を促進するのに十分であった。
反対に、褐色脂肪のIRF4の欠損は、熱発生遺伝子の発現の低下とエネルギー消費の減少、そして肥満と寒さへの不耐性に結びついた。
最後に研究者は、IRF4はPGC-1αと物理的に相互作用し、UCP1発現と熱発生を促進することを示した。
記事供給源:
上記の記事は、ベスイスラエル・ディーコネスメディカルセンターにより提供される材料に基づく。
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140703125207.htm

<コメント>
寒さやエピネフリン(アドレナリン)によりIRF4が誘導されて熱が発生しやすくなるという研究です。
以前の研究では、インスリンがFoxO1に影響を与えてIRF4を抑制することが示されています。
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(11)00049-0
>Feeding represses IRF4 in adipocytes via insulin's effect on FoxO1
当時Evan D. Rosen氏の研究室に在籍していた江口潤氏による解説です。
http://first.lifesciencedb.jp/archives/2444
>インスリンは転写因子FoxO1を介してIRF4の発現を抑制する
>高脂肪食をあたえた脂肪組織においてIRF4の発現低下が認められた
褐色脂肪細胞は寒冷や運動によって誘導され、UCP1が機能するためにはビタミンAの誘導体が必要という研究もありました。
ただしPGC-1αはプロモーターがメチル化することもあって、単純ではないようです。