以下の文書は、真田志郎の個人用廃棄フォルダーから
サルベージした文書と言われるものであるが、
その真贋の程は不明である。
「コスモクリーナーD動作原理に関する一考察」
宇宙戦艦ヤマト 技師長 真田志郎 記す
イスカンダル星より受領し、ヤマト艦内でアセンブリした
コスモクリーナーDにより、地表の放射能は成功裡に除去された。
その動作原理は、解析の結果おおよそのアルゴリズムは判明しているが
その詳細はいまだ不明である。
それは、イスカンダルからの供与技術の傾向である
主要処理部分のブラックボックス化、隠蔽化に由来する。
おそらく、被供与側文明の技術レベルとのアンマッチを回避するため
あえてインターフェースのみを旧技術体系に合致したレベルで開示し
中枢部分を隠蔽する方式にしているものと思われる。
だが、系としての機能性の観察の結果
その動作原理はおおよそ次の2点と推測されている。
その1が空気清浄機方式(いわゆるクリーナー方式)、
その2が空間指定方式である。
まず1である。
大気中に拡散されている放射能に適用される機能である。
その機能は、比較的ローテクにより構成されている。
まずフィルター処理部。空気循環方式により放射能を漉し取るのである。
フィルターには一部未知のテクノロジーが用いられている。
フィルター処理部によって漉し取られた放射性物質は中和部に送られる。
中和部に送られた放射性物質は、処理され無害化されて排出される。
この中和部の機能が全く不明なのである。
2の空間指定方式も見てみよう
これは汚染土壌、構築物または生物に付着した放射性物質を除染する機能である。
コンソールにより除染しようとする空間座標をパラメータで指定し
広範囲(最大は地球の大陸レベル)で除染可能である。
こちらは全く原理が不明である。
判明しているのが1の中和部の機能がこちらでも使われていることのみである。
「真田の個人的意見」
中和部の外見、機能的な分析からはその原理は全く不明だが
私の所感では、人工ブラックホール発生装置と似ている感じがする。
ひとつの傍証として、初期パラメータを設定していない状況で強制起動させた
事例がある。
地球帰還プロジェクト最末期におけるデスラー近接戦闘時のそれだ。
森隊員が一旦心肺停止状態に陥ったが、
それはコンソールパネル付近が一瞬酸欠空気状態になったのが原因である。
実はその際採取したコンソール周りの空気の状態が、ありえない数値を示していたのである。
酸素原子の原子核が異常な経時変化を起こしており、他の元素への変異を起こしていた。
まるで、酸素原子のみが1万年以上を経過したかのようであった。
ここからは私の仮説であるが、初期パラメータ設定不備で
コンソールまわりの酸素原子のみが1万年の経時変化を起こしたのだが、
これは本来、放射性物質をターゲットにするものだったのではないか?
パラメータ設定のオプションは全てアイコン化されており
そのビジュアルから類推すると大きく分けて、
1.ターゲット分子(分子種類を選択するプルダウン型になっている。半数以上が未知の分子だ)
2.ターゲット範囲(クラシックなXYZの3軸座標で構成されている)
3.浄化パラメータ
4.ホール半径
の3つから構成されている
1のターゲット分子は初期設定では、起動時点での環境分子をランダムに設定するようになっていた。
2のターゲット範囲は、初期設定ではメートル法でいうと7メートル四方の立法体を形成している。
3が謎のパラメータである。初期設定では恒星系、自転年、公転年等の設定を要求しているが
デフォルトでは地球時間の1万年を意味する値が設定されているようである。
4は1との連動で、基本的に分子サイズと同一の半径を指定するようになっている。いくつかのオプションが
あるようだが不明だ。
ここからデスラー近接戦で発生した事象を考察すると、
初期設定なしで強制起動したコスモクリーナーDは
ターゲット分子を酸素と識別し、
コンソールを基点とした7メートル四方の立法体空間において
全ての酸素分子を包み込むマイクロブラックホールを発生させ、
1万年の時を進行させたのではなかろうか。
ターゲット分子を放射性物質に指定し
かかる放射性物質の半減期から適切な浄化パラメータを設定すれば
放射性物質のみが時を進め、無害化されるという原理なのではなかろうか。
それを解明する鍵は・・・・(以下復元不能)